《完結御礼》【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語

嵐華子

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154.レンカの頼み

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「ねえ、書き物得意なのってどっち?」

 自責の念に苛まれていると部屋からひょこりと小さな人影が出てきて尋ねた。
気づけば日が落ちてしまっているが、どれくらい経ったんだろうか····。

「レン、起きたのですか」

 副団長が父親のような顔で立ち上がって近づく。

 レンの顔色はだいぶ良くなったように見える。
しかし、雰囲気に違和感を覚えるが何でだ?

「君が得意なの?」
「レン?」

 口調も雰囲気も全てが見知ったレンとは違う言動に副団長が戸惑うが、俺は何となく正体がわかった。

「レンカ、なのか?」
「え····あなた、が?」

 俺の言葉に副団長がレンカの顔をまじたじと見ながら驚く。

 そんな俺達の自分の質問への反応の鈍さにレンカが少し苛ついたのか、ため息を吐く。

「ねえ、どっち?」
「何か手伝って欲しいのですか?
副会長は?」 
「トビドニアは寝てなさそうだから寝かした。
来て」

 副団長がレンカに続くから、俺ももちろんその後ろに続いた。
ファルをチラリと見やると、いなくなっていた。
森に戻ったのか?

 トビはレンの眠っていたベッドで仰向けに寝ていたが、俺達が入っても起きる気配はない。
こうさせた犯人はレンカだろうな。

「座って。
今から私が話す内容をそのままその紙に書いてって」
「どういう事です?」

 そのまま部屋の端に備えつけられた机の横に立って椅子を引いて副団長を呼ぶ。
 
「言葉は15年前に覚えたから話せるけど、私は君達の書く文字は殆ど書けない。
レンの記憶から読み取るにしても、文字は少し時間がかかって効率が悪い」
「レンはどうしてるんだ?」
「あまりにもビービー泣いて煩わしいし、このままだと体も衰弱死しそうだから私が奥に引っ込めた。
とはいえ時間もそこまでないから書ける人間に書いてもらう方が手っ取り早い。
で、やってくれる?
くれない?
時間が余れば君達との時間も取れるかもしれないよ?」

 そうか、ビービー泣いてたのか····。

 大事な番であるレンを深く傷つけてしまった事実を突きつけられたようで苦しくなる。
それにトビが言うようにレンカはその気になれば本当に主導権を握れるのはその話からうかがえた。
とはいえ本人はずっと握り続けるつもりも無さそうだが。
 
「····わかりました」

 レンカと話せる時間があるなら欲しいと思ったのか、副団長は椅子に腰かけた。

「ねえ、ウェストミンスターだっけ?
アイスクリーム食べたい。
持ってきてよ。
あの厳つい料理人に頼んでたのに、何でまだ食べてないの?
助けておいた意味ないんだけど」

 レンは憮然としながら眠るトビの横にポスンと腰かけた。

「ジェロム殿の事ですか?
そういえばレンカにアイスを頼まれたとか言ってましたね」
「助けておいたって、レンカが何かしてたのか?」

 夢見で会ってアイスを食べさせるよう頼んだとは聞いていたが····。
ジェロムも護衛に戻ってアイスを用意はしたが食べさせには来れていない。

 というか、レンカも番である事に変わらない。
食べさせるなら俺がやるぞ!

「あの麻薬を投与されるのは未来視でわかってたから、前もってレンが隠し持ってた解毒剤を彼の飲み水に溶かしこんどいた。
その時にアイスをレンに食べさせてって言っておいたのに、彼は何やってんの?
お陰で栄養不足でこの体ふらふらだし。
そのまま厨房の奥の隠し通路で寝てれば騒がしそうな子供達が外に連れ出すのはわかってたから、まあ助けたのはついでではあったけどさ」

 そういえばジェロムは厨房の休憩室で仮眠取ってる時にレンカと夢で会ったんだったか。
レンカがいなくなってからの足取りがこのタイミングでわかるなんて思わなかった。

 それにしても機嫌は悪そうだが、食欲があるならアイスでもいいから食べさせておきたい。

「副団長、取って来ます。
俺が····その、食べさせてもいい、か?」
「は?
自分で食べるけど?」

 何言ってんだ、こいつ、みたいな顔をその顔でしないで欲しい。
普通に傷つく。

 ジェロムからは作り置きしているのは聞いている。
今まではレンが食べようとしなかったらしいが····まさか····ジェロムが給餌すれば食べていたのか?
まさかの可能性に気づいて人知れず衝撃を受ける。

「まあいいや。
さっさと取ってきて」

 レンカはひらひらと手を振る。
つくづく俺には興味が無いようだ。

 しかしレンカを認識してから気づいた事がある。
レンの時のように、猛烈に惹きつけられる、揺さぶられるような情動が起こらない。
同じ体だ。
番の豊潤な香りはもちろん俺を刺激するが····やはり何かが違う。

 番だからじゃない、レンだから愛していると何度もいい続けた己の言葉に確証を得たようで。
それが心底嬉しく感じた。

 その体でどこぞの兎と万が一が起こらないようにさっさと戻らないとな。

 俺の番はそう危惧してしまうほどに外見もべらぼうに可愛いのだ。
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