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160.朔月6
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「2人が亡くなった後朔月は彼らの体だけじゃなく、魂そのものまで呪いで穢れてしまった事に気づいたの。
それくらい妻の怨念は凄まじかったんだ。
その状態ではまともに輪廻の輪に入って転生しても、転生した先で何かしらの呪いを引き寄せて死んで、また転生して呪いを引き寄せての繰り返しになる。
だから神と····えっと、神に····頼ん、だ?」
ん?
何か今、言い方がおかしくなかったか?
「自分の魂に宿った寿ぎを、神の資格を引き剥がして半分に割って2人の魂に宿らせた。
その上で呪力の存在しない世界の神に託して寿ぎの力で少しずつ浄化させる事をお願いしたんだ」
『鷹親!
親之!
お願い、死なないで!
1人にしないで!
誰か····誰か助けて!』
気づいたら、2人で並んで寝かされていた。
ヒューヒューと息をする度にどこかから音がする。
『親之!』
薄く目を開けた事に気づいたんだろう。
朔月が涙で泣き濡れながら名を叫ぶ。
言葉をかけたいけれど、声が出ない。
痛みも感覚も感じない。
ただ、寒い。
それでも流れ続ける涙を拭ってやりたくて、手に力を入れるが、やはり持ち上がらない。
指先が動いたのか朔月が片方の手を両手で取って、そっと自分の頬に持っていく。
手はどす黒く変色していて朔月の白い手が余計に綺麗に見えた。
『ぁ····お願い····ちゃんと言う事を聞くから、死なないで····。
うっ、うっ····おね、がい····』
昔に戻ったかのような話し方に、こんな時だが心が少し温かくなったような気がした。
けれどもう、目を開けていられなくてゆっくり閉じていく。
『いや、嫌だ!
親之!
鷹親!』
『ねぇ、朔月ぅ。
そんなに泣かないでぇ。
僕達と取り引きしようよぉ』
ふいに第三者の声が聞こえた。
緊迫した朔月とは対称的な、間延びしたような独特の話口調。
それに聞き覚えのある声····ゼノリア神?!
「レン、もしかしてその時に頼んだ神がゼノリア神か?」
俺の言葉に、ファルにコアラ中のレンの肩がピクリと震えた。
「レン、もしかして朔月は本当は取り引きしたんじゃないのか?」
俺の言葉に思わず顔を上げてしまう。
顔には困惑した様子がありありと出ていた。
「言いたくないか?」
昨日までの俺なら間違いなく問いただそうとしただろう。
だけどもう泣かしたくない。
レンは再びファルの胸に顔を埋めてしまう。
ゆっくり考えてくれればいい。
苦しめたくないんだ。
しばしの間時間が過ぎて、やがて首を振る。
「ちゃんと····言う。
朔月が寿ぎを手離すのは、本当はしちゃいけない事だった。
神になるのは権利じゃなく、義務だったんだ」
心を落ち着かせるように、何度か深呼吸する。
ファルも背中を撫でると、少しずつ体の緊張が解けていく。
「だから魂を磨いてもう1度寿ぎを手に入れる為に千年の研鑽ていう試練を受ける事、朔月と千年目の転生体だけは必ず愛する者の為に死ぬ事、朔月が生きている間は小さな神々が引きずられて堕ちないよう助け続ける事、堕ちた神はできるだけ救う事、千年の間生きている限り呪力を浄化し続ける事を贖罪として義務づけられた。
そうすれば朔月の世界から2人の魂を出す事を許すと。
そして2人の魂の引き取り先はゼノの世界に決まった」
『あの時の呪いまみれの子が呪いの無い僕の世界とはいえ、よくここまで浄化できたものだなぁって感心してたんだぁ』
あの時ゼノリア神が言ってた言葉はそういう意味だったのか。
ここからは知らない話になるんだろうな。
親之としての記憶はもうない。
「千年の研鑽とは具体的にどういうものなのじゃ?」
隣の親父が初めて口を開いた。
「そ、れは····」
ファルの服を握る手に力がこもる。
「····それは····その····」
再び口を閉ざすが、俺達はレンのタイミングを気長に待つ。
そうして少しすると手の力が弛んだ。
「千年の間は何度転生しても必ず殺され続ける事、理不尽で短い生と多くの死を繰り返す事、記憶を引き継ぎ続ける事。
それからもし千年経っても寿ぎを得られない時は魂が消滅する事」
全員が息を飲んだ。
あの時の夢見で転生体が全員殺されていた理由がわかる。
けれどそれが親之と鷹親のせいだったとは····。
血の気が引く。
ファルも珍しく絶句しているから、初めて知ったんだろう。
「それで、レンカちゃんは寿ぎを手に入れれたん?
レンカちゃんが最後やってんやろ?」
トビはやはりレンカを気にしているみたいだ。
レンカの話になるとどこか熱を帯びている気がする。
「レンカは····レンカの話は後でもいい?
ちゃんと····する、から」
「そっか、ごめんな。
ちょっと気になってもた」
「ううん。
トビ君にとってレンカは初めてトビ君を守ってくれた人だもの。
気になるよね」
「ん····ごめんな」
····何だこの空気は?!
まさかトビとレンとレンカの三角関係?!
いや、レンカは全然気にも留めて····いや、留めてたよな?!
「「「「グラン(さん)····」」」」
ん?
何でトビとファル以外残念な何かを見るみたいに····。
え、レンまで?!
※※※※※※※※※
お知らせ
※※※※※※※※※
新作を本日から投稿しました。
全4話完結のホラージャンルです。
こちらのお話の関係者が登場しますが、こちらを知らなくても問題ない作りとなっています。
タイトルは【かくしおに】です。
ここでは失敗した正しいかくしおにのやり方が登場します。
恐怖を自家発電しようとしましたが、怖くありません。
ホラーは難しいですね。
お暇な時に読んでいただけると幸いです。
それくらい妻の怨念は凄まじかったんだ。
その状態ではまともに輪廻の輪に入って転生しても、転生した先で何かしらの呪いを引き寄せて死んで、また転生して呪いを引き寄せての繰り返しになる。
だから神と····えっと、神に····頼ん、だ?」
ん?
何か今、言い方がおかしくなかったか?
「自分の魂に宿った寿ぎを、神の資格を引き剥がして半分に割って2人の魂に宿らせた。
その上で呪力の存在しない世界の神に託して寿ぎの力で少しずつ浄化させる事をお願いしたんだ」
『鷹親!
親之!
お願い、死なないで!
1人にしないで!
誰か····誰か助けて!』
気づいたら、2人で並んで寝かされていた。
ヒューヒューと息をする度にどこかから音がする。
『親之!』
薄く目を開けた事に気づいたんだろう。
朔月が涙で泣き濡れながら名を叫ぶ。
言葉をかけたいけれど、声が出ない。
痛みも感覚も感じない。
ただ、寒い。
それでも流れ続ける涙を拭ってやりたくて、手に力を入れるが、やはり持ち上がらない。
指先が動いたのか朔月が片方の手を両手で取って、そっと自分の頬に持っていく。
手はどす黒く変色していて朔月の白い手が余計に綺麗に見えた。
『ぁ····お願い····ちゃんと言う事を聞くから、死なないで····。
うっ、うっ····おね、がい····』
昔に戻ったかのような話し方に、こんな時だが心が少し温かくなったような気がした。
けれどもう、目を開けていられなくてゆっくり閉じていく。
『いや、嫌だ!
親之!
鷹親!』
『ねぇ、朔月ぅ。
そんなに泣かないでぇ。
僕達と取り引きしようよぉ』
ふいに第三者の声が聞こえた。
緊迫した朔月とは対称的な、間延びしたような独特の話口調。
それに聞き覚えのある声····ゼノリア神?!
「レン、もしかしてその時に頼んだ神がゼノリア神か?」
俺の言葉に、ファルにコアラ中のレンの肩がピクリと震えた。
「レン、もしかして朔月は本当は取り引きしたんじゃないのか?」
俺の言葉に思わず顔を上げてしまう。
顔には困惑した様子がありありと出ていた。
「言いたくないか?」
昨日までの俺なら間違いなく問いただそうとしただろう。
だけどもう泣かしたくない。
レンは再びファルの胸に顔を埋めてしまう。
ゆっくり考えてくれればいい。
苦しめたくないんだ。
しばしの間時間が過ぎて、やがて首を振る。
「ちゃんと····言う。
朔月が寿ぎを手離すのは、本当はしちゃいけない事だった。
神になるのは権利じゃなく、義務だったんだ」
心を落ち着かせるように、何度か深呼吸する。
ファルも背中を撫でると、少しずつ体の緊張が解けていく。
「だから魂を磨いてもう1度寿ぎを手に入れる為に千年の研鑽ていう試練を受ける事、朔月と千年目の転生体だけは必ず愛する者の為に死ぬ事、朔月が生きている間は小さな神々が引きずられて堕ちないよう助け続ける事、堕ちた神はできるだけ救う事、千年の間生きている限り呪力を浄化し続ける事を贖罪として義務づけられた。
そうすれば朔月の世界から2人の魂を出す事を許すと。
そして2人の魂の引き取り先はゼノの世界に決まった」
『あの時の呪いまみれの子が呪いの無い僕の世界とはいえ、よくここまで浄化できたものだなぁって感心してたんだぁ』
あの時ゼノリア神が言ってた言葉はそういう意味だったのか。
ここからは知らない話になるんだろうな。
親之としての記憶はもうない。
「千年の研鑽とは具体的にどういうものなのじゃ?」
隣の親父が初めて口を開いた。
「そ、れは····」
ファルの服を握る手に力がこもる。
「····それは····その····」
再び口を閉ざすが、俺達はレンのタイミングを気長に待つ。
そうして少しすると手の力が弛んだ。
「千年の間は何度転生しても必ず殺され続ける事、理不尽で短い生と多くの死を繰り返す事、記憶を引き継ぎ続ける事。
それからもし千年経っても寿ぎを得られない時は魂が消滅する事」
全員が息を飲んだ。
あの時の夢見で転生体が全員殺されていた理由がわかる。
けれどそれが親之と鷹親のせいだったとは····。
血の気が引く。
ファルも珍しく絶句しているから、初めて知ったんだろう。
「それで、レンカちゃんは寿ぎを手に入れれたん?
レンカちゃんが最後やってんやろ?」
トビはやはりレンカを気にしているみたいだ。
レンカの話になるとどこか熱を帯びている気がする。
「レンカは····レンカの話は後でもいい?
ちゃんと····する、から」
「そっか、ごめんな。
ちょっと気になってもた」
「ううん。
トビ君にとってレンカは初めてトビ君を守ってくれた人だもの。
気になるよね」
「ん····ごめんな」
····何だこの空気は?!
まさかトビとレンとレンカの三角関係?!
いや、レンカは全然気にも留めて····いや、留めてたよな?!
「「「「グラン(さん)····」」」」
ん?
何でトビとファル以外残念な何かを見るみたいに····。
え、レンまで?!
※※※※※※※※※
お知らせ
※※※※※※※※※
新作を本日から投稿しました。
全4話完結のホラージャンルです。
こちらのお話の関係者が登場しますが、こちらを知らなくても問題ない作りとなっています。
タイトルは【かくしおに】です。
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