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161.朔月7
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「何か話の腰折ってもたな。
朔月はその後どないなったん?」
「さ、き····先、は····」
トビが先へと促す。
と、俺を見ていたレンが急に赤面した。
何故?!
「あ····う····え、えと····」
そしてファルを見て更に赤くなって慌て始めた。
何でだ?!
「ぼ、僕····僕····やっぱりトビ君がいい!」
バッとファルから飛び降りたかと思うと、トビに抱きついた?!
「へ?!
レンちゃん?!」
しかも瞬きする間にもうコアラしてる?!
レン····そんな素早い動きができたんだな。
「レ、レン?」
いつもと違ってトビに殺意を覚える暇がないくらいには、すぐ横に座って思わず呼びかけた団長も、俺達周りも唖然としてしまう。
もちろん今回はファルもだ。
「ま、待って、お願い。
落ち着くから、待ってぇ」
レンはレンでぎゅうぎゅうとトビの胸に顔を押しつけてものっ凄く照れている。
いや、その様子は何やら幼子のようで可愛らしいけどな!
チラリとのぞく形の良い耳まで真っ赤····何故?!
とりあえず俺達は困惑しつつも大人しく、誰も喋らずしばらく待った。
その間もレンはうー、とか、あー、とか唸っていたが、少しずつ耳の赤味は引いていく。
「朔月は····その····鷹親と妻の子供を····ひ、引き取った、の。
それから····えと、親之との間にできてた····こ、子供、を····産ん、で····」
途切れ途切れでいくぶん小さくなった声ではあるが····え、えええええ?!
「は?!
え?!
いや、覚えは····ある····が····できてたの、か····」
俺ではない、親之の感情が歓喜に揺れている気がした。
逆にファルはどことなく複雑そうな顔をしている。
「鷹親と親之が死んだ後、何があった?
あんな事をしでかした妻の子供を引き取ったとは····朔月はそれで良かったのか?」
そこでレンはコクリと頷いた。
「あの時の朔月にとっては親之と鷹親が全てだった。
だから親之との子供も鷹親の子供も同じくらい愛しかったし、あの子達がいなかったらきっと絶望に耐えられなかった。
それに鷹親の妻が全て悪いわけじゃないよ?
鷹親には妹のような感情しかなくても、妻は違ってた。
妻が自分から持ちかけた政略結婚でも、事前に鷹親が朔月の事をはっきり伝えていても、鷹親を諦めきれなかった事は責めたりできない。
特に子供が産まれてしまえば、余計に想いは募ってしまったんだと思う」
「妻はどのような立場の方だったんですか?」
副団長が静かに尋ねる。
「国王の同母妹。
だから婚姻して朔月を神殿から匿えるだけの後ろ楯になったの。
国王があの時神殿に入る権限を2人に与えたのは、その場に主犯としての妹がいて、事が大きくなったから。
あの時代は呪力の類いは普通に在るものとして扱われていたし、妹がしたような呪詛や呪殺は王族だろうと平民だろうと関わる事すら絶対的な禁忌だった。
その禁忌に同母の妹が主犯として関わった事が公になる前に国王はどうにかしたかったらしい。
加苦死御贄の生贄に使った人達の中には鷹親に好意を寄せる女性····こっちではフィルメにあたる人も何人かいて、権力者達の娘····子供だったから、余計に。
親之にきてた縁談も神殿に影響力を持つ権力者の子供だったから、鷹親の妻としては親之の縁談が纏まって朔月の守りが強固になる前に殺そうとしたんじゃないかな」
苦笑したようなため息が洩れる。
「そんな事しなくても····」
どこかやるせないような、苦々しい声色だ。
「レンちゃん?」
トビがそっと小さな頭を慰めるように撫でる。
「····2人が亡くなった後、呪詛を唆して加担した罪で神殿は責任を負って大規模な粛正が行われた。
そして妻が起こした責任を背負わされた2人の家紋は取り潰しとなったの。
国王は妹が嫁いでから狂ったとして責任を全て2人の家紋に負わせた。
あの時犠牲になった人の中には権力者の子供がいたって言ったでしょ?
責任を有耶無耶には出来なかったんだ」
レンはふうっとため息を吐いた。
「ただあの時····2人が悪魔に殺された時、朔月に助けられた神々の何柱かが朔月を依代にして悪魔や溢れてた呪力を浄化してたのを駆けつけた東宮····王太子や側近達も目にしてた。
その上で、朔月に神々の中でも王族縁の神が神託を下ろした」
王族縁の神····話がかなり壮大になってきたな。
俺達全員が前のめりで次の言葉を待つ。
「朔月は神々との約束によって生かされている。
生殺与奪の権限は神にある。
その下に継ぐ王族や神殿には決してなく、神和の望まない干渉もしてはならない。
神々との約束の1つが小さな神々を助ける事、ひいては悪魔を祓い幽世と現世····んー····あの世とこの世····うーん····死者と生者の国かな····を往き来し、時に神の威光を国王や神殿へと継ぎ示す。
それに相応しい地位と土地、姓を与えて神和とその子孫をこの地に根付かせる事で国は栄えると心得よ。
それが神託の内容だった」
途中この世界の概念や言葉に置き換えるのに手間取りながらだったが、全員意味を理解したようだ。
つまりそれは····親之と鷹親の死後、とんでもない後ろ楯を朔月が手に入れたという事になる。
※※※※※※※※※
お知らせ
※※※※※※※※※
新作を本日から投稿しました。
全4話完結のホラージャンルです。
こちらのお話の関係者が登場しますが、こちらを知らなくても問題ない作りとなっています。
タイトルは【かくしおに】です。
ここでは失敗した正しいかくしおにのやり方が登場します。
恐怖を自家発電しようとしましたが、怖くありません。
ホラーは難しいですね。
お暇な時に読んでいただけると幸いです。
朔月はその後どないなったん?」
「さ、き····先、は····」
トビが先へと促す。
と、俺を見ていたレンが急に赤面した。
何故?!
「あ····う····え、えと····」
そしてファルを見て更に赤くなって慌て始めた。
何でだ?!
「ぼ、僕····僕····やっぱりトビ君がいい!」
バッとファルから飛び降りたかと思うと、トビに抱きついた?!
「へ?!
レンちゃん?!」
しかも瞬きする間にもうコアラしてる?!
レン····そんな素早い動きができたんだな。
「レ、レン?」
いつもと違ってトビに殺意を覚える暇がないくらいには、すぐ横に座って思わず呼びかけた団長も、俺達周りも唖然としてしまう。
もちろん今回はファルもだ。
「ま、待って、お願い。
落ち着くから、待ってぇ」
レンはレンでぎゅうぎゅうとトビの胸に顔を押しつけてものっ凄く照れている。
いや、その様子は何やら幼子のようで可愛らしいけどな!
チラリとのぞく形の良い耳まで真っ赤····何故?!
とりあえず俺達は困惑しつつも大人しく、誰も喋らずしばらく待った。
その間もレンはうー、とか、あー、とか唸っていたが、少しずつ耳の赤味は引いていく。
「朔月は····その····鷹親と妻の子供を····ひ、引き取った、の。
それから····えと、親之との間にできてた····こ、子供、を····産ん、で····」
途切れ途切れでいくぶん小さくなった声ではあるが····え、えええええ?!
「は?!
え?!
いや、覚えは····ある····が····できてたの、か····」
俺ではない、親之の感情が歓喜に揺れている気がした。
逆にファルはどことなく複雑そうな顔をしている。
「鷹親と親之が死んだ後、何があった?
あんな事をしでかした妻の子供を引き取ったとは····朔月はそれで良かったのか?」
そこでレンはコクリと頷いた。
「あの時の朔月にとっては親之と鷹親が全てだった。
だから親之との子供も鷹親の子供も同じくらい愛しかったし、あの子達がいなかったらきっと絶望に耐えられなかった。
それに鷹親の妻が全て悪いわけじゃないよ?
鷹親には妹のような感情しかなくても、妻は違ってた。
妻が自分から持ちかけた政略結婚でも、事前に鷹親が朔月の事をはっきり伝えていても、鷹親を諦めきれなかった事は責めたりできない。
特に子供が産まれてしまえば、余計に想いは募ってしまったんだと思う」
「妻はどのような立場の方だったんですか?」
副団長が静かに尋ねる。
「国王の同母妹。
だから婚姻して朔月を神殿から匿えるだけの後ろ楯になったの。
国王があの時神殿に入る権限を2人に与えたのは、その場に主犯としての妹がいて、事が大きくなったから。
あの時代は呪力の類いは普通に在るものとして扱われていたし、妹がしたような呪詛や呪殺は王族だろうと平民だろうと関わる事すら絶対的な禁忌だった。
その禁忌に同母の妹が主犯として関わった事が公になる前に国王はどうにかしたかったらしい。
加苦死御贄の生贄に使った人達の中には鷹親に好意を寄せる女性····こっちではフィルメにあたる人も何人かいて、権力者達の娘····子供だったから、余計に。
親之にきてた縁談も神殿に影響力を持つ権力者の子供だったから、鷹親の妻としては親之の縁談が纏まって朔月の守りが強固になる前に殺そうとしたんじゃないかな」
苦笑したようなため息が洩れる。
「そんな事しなくても····」
どこかやるせないような、苦々しい声色だ。
「レンちゃん?」
トビがそっと小さな頭を慰めるように撫でる。
「····2人が亡くなった後、呪詛を唆して加担した罪で神殿は責任を負って大規模な粛正が行われた。
そして妻が起こした責任を背負わされた2人の家紋は取り潰しとなったの。
国王は妹が嫁いでから狂ったとして責任を全て2人の家紋に負わせた。
あの時犠牲になった人の中には権力者の子供がいたって言ったでしょ?
責任を有耶無耶には出来なかったんだ」
レンはふうっとため息を吐いた。
「ただあの時····2人が悪魔に殺された時、朔月に助けられた神々の何柱かが朔月を依代にして悪魔や溢れてた呪力を浄化してたのを駆けつけた東宮····王太子や側近達も目にしてた。
その上で、朔月に神々の中でも王族縁の神が神託を下ろした」
王族縁の神····話がかなり壮大になってきたな。
俺達全員が前のめりで次の言葉を待つ。
「朔月は神々との約束によって生かされている。
生殺与奪の権限は神にある。
その下に継ぐ王族や神殿には決してなく、神和の望まない干渉もしてはならない。
神々との約束の1つが小さな神々を助ける事、ひいては悪魔を祓い幽世と現世····んー····あの世とこの世····うーん····死者と生者の国かな····を往き来し、時に神の威光を国王や神殿へと継ぎ示す。
それに相応しい地位と土地、姓を与えて神和とその子孫をこの地に根付かせる事で国は栄えると心得よ。
それが神託の内容だった」
途中この世界の概念や言葉に置き換えるのに手間取りながらだったが、全員意味を理解したようだ。
つまりそれは····親之と鷹親の死後、とんでもない後ろ楯を朔月が手に入れたという事になる。
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全4話完結のホラージャンルです。
こちらのお話の関係者が登場しますが、こちらを知らなくても問題ない作りとなっています。
タイトルは【かくしおに】です。
ここでは失敗した正しいかくしおにのやり方が登場します。
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ホラーは難しいですね。
お暇な時に読んでいただけると幸いです。
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