《完結御礼》【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語

嵐華子

文字の大きさ
182 / 210

182.半分と拠り所

しおりを挟む
「天馬と詩は····」

 片腕に蓮香を乗せ、片手に神刀を持ったトビの質問を反芻するかのようにぼうっと呟く。
あくびを噛み殺しているから眠くなってしまったのだろうか?

「天馬は半分で、詩は拠り所。
2人がいたから最期まで突っ走れた」

 過去を思い出すように、懐かしむように優しい口調になる。

「愛してたん?」

 どこか不機嫌そうなトビのその一言に蓮香が首元から頭を持ち上げて見上げた。
横顔を見れば、きょとりとした顔だ。
だがすぐににんまりと笑う。
いたずらっ子のような顔で幼く見えた。

「気になる?」
「····からかっても何も出えへん」

 ぶすっとした顔で今度こそ不機嫌な声を出す。
その様子にくすりと笑う。

「馬鹿だな。
私に情を傾けるなと言っただろう」

 再び首元に形のいい頭を預ける。

「今の君は詩に少し似てる。
だけど詩に許さなかった事を君に許す事はないんだ」

 どこか自嘲するような、どこかもの寂しげな声だ。

「何を許さへんかったん?」
「秘密。
でももし次に会う事があっ、たら····ふぁ」

 噛み殺しきれなくなったのか、あくびをしてしまう。

「天馬が半分というのは?」
「お互い考えてる事が手に取るようにわかるから。
親友で、戦友で、兄で、弟で、恋人で····他ならぬ私自身」
「恋人?!」
「人肌恋しい時は抱き合えたし、私が多少理不尽に八つ当たりしても天馬は受け流す。
それに死ぬ時は必ず一瞬の苦痛だけで殺してくれる」

『あの千年の間にね、僕達を見つけたら苦しまずにさくっと殺してくれる存在がついて回ってたの。
ていっても見つけてくれたのは多分半分くらいだけど、彼が見つけられずに彼以外の誰かに殺される時は死ぬ瞬間まで痛くてつらい目に合う事がほとんどだった』

 穏やかな蓮香の口調に、レンの話を思い出す。

「レンちゃんは千年来のストーカー言うてたな」

 トビの言葉に思わず蓮香が吹き出す。

「ぶはっ。
ふっ、ふふ、た、確かに。
ふくくっ」

 そうして少し笑いが治まってからトビがまた尋ねる。

「そいつは何で千年も追いかけられたん?
普通は転生したら前世の記憶は兄さんみたいに無くなるんとちゃうの?」
「朔月が死んだ後、今上は朔月の血肉を食らって自分自身に呪詛をかけて命を絶った」
「「は?!」」

 トビとザガド国王が思わず声を出す。
ザガド国王は状況が飲み込みきらない間は黙っていようとしてたんだろうが、蓮香の話があまりにも突拍子もなかったからだろう。

「朔月からは死んだ後の千年の研鑽の話を聞かされていたから、呪詛で互いの魂を縛って後を追ったらしい。
自分以外の誰かが私達を殺すのを許したくなかったんだろう。
お陰で私達の半分は苦痛を伴う死から救われたし、だから千年持ちこたえられた」

 千年目の転生体だからこそ、その言葉は重い。

「それでも拠り所は詩の方なん?」
「そう。
鷹親と正室との間に産まれた子供は朔月にとっても息子だった。
最愛の2人を亡くして絶望しそうになった朔月の心を最初に救ったのは、間違いなくあの子なんだ。
詩はそんなあの子の転生体で、千年目の転生体である私を地下から引き上げてた恩人でもある」

 ここで朔月の時の義理の息子が出てくるのか?!
確かに朔月にとって義理とはいっても愛息に変わりはない。
その時の記憶がある蓮香にとっては拠り所になるのかもしれない。

「詩も前世の記憶を持ってたん?」
「それはない。
ただ、朔月の息子だった時の因果が働いたんだろう」
「因果?」
「鷹親の息子は母親以上の感情を抱いていた朔月の冤罪を晴らして救う為に匿おうとしたけど、親之の息子に邪魔されて結局は磔にされて炎に炙られる様をただ見ているしかなかった」

 ザガド国王がぎょっとした顔をするが、そういえば朔月がどうやって殺されたのかまでは知らなかったな。
生きたまま磔に火炙りなんて酷い殺され方はあまりにも非道が過ぎると、何百年も前から重罪人であっても認められない刑になっている。

 というか、今さらっと母親以上の感情を抱いていたって言わなかったか?!

「ちょ、ちょお待って!
鷹親の息子は朔月をどう見てたん?!」
「母親で初恋の相手。
血は繋がってないし、思春期の淡い初恋とか可愛らしいよね」

 当時の朔月の記憶でも思い出したのかくすくすと笑う。

「まあそんな対象だった朔月を殺した今上と親之の息子に反発して神継から出たのはあの子からすれば当然の行動だったんじゃない。
その後政治的な後ろ楯の無さから冷遇されてた皇子を東宮に据えて鬼逆の家紋を興した。
だけど元々の元凶だった当時の今上はさっさと自殺してたし、親之の息子も無気力状態になったみたいで次代にさっさと当主を譲って消息をくらませた。
怒りの矛先をどこにも向けられなくて、死ぬ瞬間まで無念さと虚無感は拭えずに一生を終えたんだ。
因果っていうのはそういう強い負の感情を解消しないままに死んだ時、来世に持ち越される課題みたいなもの。
もちろん人によって様々だけど、詩の因果はそれだった」
「つまり?」

 トビも詩の因果と蓮香の拠り所が繋がらなくて先を促す。

「そういう因果は解消するまで何度転生しても何か満たされないと無自覚な絶望を与えながら本人について回る。
だから詩を傍に置いておけば詩は本能的に因果を解消しようとする。
私を絶対に裏切らず、私を受け入れ、私を守って尽くし続ける。
確約されたような安全な場所があったから、私の中の狂気を休められた」

 最後にぽつりお洩らした言葉は、どこか寂しげな響きを持っていた。

『正直なところ私の感情は元々欠陥だらけだ。
千年も殺され続けた記憶を普通の感覚のままに処理なんかできない。
とっくに私は壊れてるんだと思う。
他者への執着が極端に少ないし、その分何かを期待する気持ちもあまりない』

 少し前の蓮香の話が頭を過る。

 そうなるまでに蓮香はどれほどの理不尽に狂気してきたんだろうか。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!

エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」 華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。 縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。 そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。 よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!! 「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。 ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、 「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」 と何やら焦っていて。 ……まあ細かいことはいいでしょう。 なにせ、その腕、その太もも、その背中。 最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!! 女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。 誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート! ※他サイトに投稿したものを、改稿しています。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。

和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。 黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。 私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと! 薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。 そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。 目指すは平和で平凡なハッピーライフ! 連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。 この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。 *他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

処理中です...