188 / 210
4
188.伴侶の夢2~ドゥニームside
しおりを挟む
「君達じゃない。
私はヨハンに聞いてる。
確かにヨハンはまだ7才の子供だけど、この子は聡い。
自分の生き死にくらいは決められる子だ。
それと医者だから当然助けろというのは無理がある。
私の時間は有限で、君達の息子より幼い難病持ちの娘もいる。
君達が息子を優先したいのと同じく私も薬の開発すらしないで本当は娘の側で過ごしたい」
その言葉に義理両親は何も言えなくなったようだ。
「そもそも君達はどうしてヨハンに先がないなんて決めつける?」
「「それは····」」
『どうせ僕はあと何年かで死んじゃうってパパもママも思ってるんだ····そっちの方がいいのかな····僕がいない方がパパもママも楽になれる?』
ヨハンの口元は動いていない。
心の声が聞こえているのか?
「君達が本当は諦めてる事にその子は気づいてる」
「「「?!」」」
驚いて3人は互いの顔を交互に見る。
「諦めてる君達の気持ちなんか知るわけない。
諦めたくないから私は医者になったんだ。
薬は必ず娘には間に合わせる」
「はっ、結局自分の娘の事しか考えないのか!」
「当然では?
焦って薬ができるならとうにできてるだろう。
だけど私の娘の時間も君達の息子より何年か長いだけ。
だから今は同じ難病を患う子供のデータが多く欲しい。
患者人数も少ないからまだ足りてない。
本音を言えば新薬開発の合間に娘との時間も少しは親として確保したいけど、睡眠時間を削って寝ずに過ごすのにも限界はある。
そんな状況で君達の息子に時間を割くんだ。
母親の私の気持ちは察せないと?
医者だから難病のわが子を放って奉仕しろと?
それこそ何の為に医者になったかわからないだろう」
「そ、れは····」
同じ母親である義母殿が口ごもる。
番殿はヨハンに視線を合わせて問いかける。
「難病より先に心疾患をどうにかするのに渡米もしないといけないから私と娘は間違いなく1ヶ月は離れ離れになる。
データの1つも要求しないとかあり得ない。
うちは母子家庭だ。
手伝いは金でどうにかなるけど、君より小さい女の子が死への恐怖や心細い思いをするのに私はその期間は娘についてやれなくなる。
君が苦しんでいる時、側に親がいないとどう思う?」
「あ····捨てられたって····」
「「そんな····」」
恐らく義理両親はヨハンの言葉が予想外だったんだろう。
それくらい息子が追い詰められているとは思ってなかったはずだ。
そこでふと我に返る。
私も····愛おしいヨハンを無意識に追い詰めていたんだろうか。
私も全てを諦めてヨハンの時間を止めて眠らせた。
「だから生きるのを諦めないでいられるかその子に直接聞いてる。
無駄骨は折りたくない。
心疾患まで患ってるからね。
生半可な覚悟での治療は仮に手術が成功しても苦痛を伴って心が折れかねない。
私は病は気からってのはあると思ってる。
親だけでは駄目だし、当人が決めなければ乗り越えられない事は必ずある。
幼くても君の病気で、戦うのは君だろう?
自分で生きるか死ぬか選べ」
「ちょっと待ってくれ。
渡米って····」
ヨハンの面影がある義父殿が目を見張る。
「国内の医者は腕も根性も対処しきれる奴がいなかった。
アポだけは入れてる。
あと明日ならリモートで彼とも話せる。
手術の腕は天才的に良い。
幸い君達の懐はそこそこ潤ってるだろうから渡米して手術受ける金はあるよね。
君達の息子のデータを今後も私に提供し続けるのを報酬にするのなら私の報酬は特に必要ない」
「そんな····リスクが高すぎて誰も引き受けては····」
「あっちの心臓外科医は天才。
大学の先輩だったからよく知ってる。
私は内科医的には名医だと思ってるし、その病気に関してはスペシャリスト。
彼も私が内科医としてヨハンの術後管理を担当するなら引き受けると言ってくれた。
ただ君達がリスクを前に現状維持を望むのならそれはそれで仕方ない。
限りある時間を親子で過ごすのも君達の権利だから」
義理両親は明らかに迷っている様子だ。
「だけど私の条件はデータの提供はもちろん、その子が自分から生きたいと望んで行動する事だ。
手術にしても薬ができるまでの時間稼ぎにしても、その子にとって過酷になるのは間違いないからね」
「生きたい!
僕、死にたくない!
痛いのも苦しいのも我慢するから助けて!」
とうとうヨハンは己の渇望を口に出した。
「「ヨハン····」」
「ん、わかった。
だったらちゃんと自分の親を自分の言葉で説得しろ。
君の願望を言葉にして伝えろ。
自分の人生だろう。
資料は置いていく。
君の心臓手術についても纏めておいた。
まだ小難しい字は読めないだろうから、誰かに読んでもらいなよ。
明日のリモートを無視したり、1週間以内に返事が無ければこの話は無いものとする。
いい?」
「はい。
ねえ、僕は生きられる?
生きても迷惑にならない?」
「生きられるかは君次第。
生きても迷惑になるかは君の生き方次第」
言うだけ言って放心状態となった義理両親と目に希望の宿ったヨハンに踵を返して出て行こうとした。
だが何かを思い出したように再びヨハンの前に来て膝を折って視線を合わせた。
「よく今まで頑張った。
よく諦めずに生きたよ」
ぽんぽんと頭を撫でて優しく微笑む。
その笑みは慈愛に満ちていた。
ヨハンの胸の傷を思い出す。
心臓の手術をした時の傷だと教えてくれた。
『僕の頑張った証なんだ』
誇らしげな顔を思い出した。
私はヨハンに聞いてる。
確かにヨハンはまだ7才の子供だけど、この子は聡い。
自分の生き死にくらいは決められる子だ。
それと医者だから当然助けろというのは無理がある。
私の時間は有限で、君達の息子より幼い難病持ちの娘もいる。
君達が息子を優先したいのと同じく私も薬の開発すらしないで本当は娘の側で過ごしたい」
その言葉に義理両親は何も言えなくなったようだ。
「そもそも君達はどうしてヨハンに先がないなんて決めつける?」
「「それは····」」
『どうせ僕はあと何年かで死んじゃうってパパもママも思ってるんだ····そっちの方がいいのかな····僕がいない方がパパもママも楽になれる?』
ヨハンの口元は動いていない。
心の声が聞こえているのか?
「君達が本当は諦めてる事にその子は気づいてる」
「「「?!」」」
驚いて3人は互いの顔を交互に見る。
「諦めてる君達の気持ちなんか知るわけない。
諦めたくないから私は医者になったんだ。
薬は必ず娘には間に合わせる」
「はっ、結局自分の娘の事しか考えないのか!」
「当然では?
焦って薬ができるならとうにできてるだろう。
だけど私の娘の時間も君達の息子より何年か長いだけ。
だから今は同じ難病を患う子供のデータが多く欲しい。
患者人数も少ないからまだ足りてない。
本音を言えば新薬開発の合間に娘との時間も少しは親として確保したいけど、睡眠時間を削って寝ずに過ごすのにも限界はある。
そんな状況で君達の息子に時間を割くんだ。
母親の私の気持ちは察せないと?
医者だから難病のわが子を放って奉仕しろと?
それこそ何の為に医者になったかわからないだろう」
「そ、れは····」
同じ母親である義母殿が口ごもる。
番殿はヨハンに視線を合わせて問いかける。
「難病より先に心疾患をどうにかするのに渡米もしないといけないから私と娘は間違いなく1ヶ月は離れ離れになる。
データの1つも要求しないとかあり得ない。
うちは母子家庭だ。
手伝いは金でどうにかなるけど、君より小さい女の子が死への恐怖や心細い思いをするのに私はその期間は娘についてやれなくなる。
君が苦しんでいる時、側に親がいないとどう思う?」
「あ····捨てられたって····」
「「そんな····」」
恐らく義理両親はヨハンの言葉が予想外だったんだろう。
それくらい息子が追い詰められているとは思ってなかったはずだ。
そこでふと我に返る。
私も····愛おしいヨハンを無意識に追い詰めていたんだろうか。
私も全てを諦めてヨハンの時間を止めて眠らせた。
「だから生きるのを諦めないでいられるかその子に直接聞いてる。
無駄骨は折りたくない。
心疾患まで患ってるからね。
生半可な覚悟での治療は仮に手術が成功しても苦痛を伴って心が折れかねない。
私は病は気からってのはあると思ってる。
親だけでは駄目だし、当人が決めなければ乗り越えられない事は必ずある。
幼くても君の病気で、戦うのは君だろう?
自分で生きるか死ぬか選べ」
「ちょっと待ってくれ。
渡米って····」
ヨハンの面影がある義父殿が目を見張る。
「国内の医者は腕も根性も対処しきれる奴がいなかった。
アポだけは入れてる。
あと明日ならリモートで彼とも話せる。
手術の腕は天才的に良い。
幸い君達の懐はそこそこ潤ってるだろうから渡米して手術受ける金はあるよね。
君達の息子のデータを今後も私に提供し続けるのを報酬にするのなら私の報酬は特に必要ない」
「そんな····リスクが高すぎて誰も引き受けては····」
「あっちの心臓外科医は天才。
大学の先輩だったからよく知ってる。
私は内科医的には名医だと思ってるし、その病気に関してはスペシャリスト。
彼も私が内科医としてヨハンの術後管理を担当するなら引き受けると言ってくれた。
ただ君達がリスクを前に現状維持を望むのならそれはそれで仕方ない。
限りある時間を親子で過ごすのも君達の権利だから」
義理両親は明らかに迷っている様子だ。
「だけど私の条件はデータの提供はもちろん、その子が自分から生きたいと望んで行動する事だ。
手術にしても薬ができるまでの時間稼ぎにしても、その子にとって過酷になるのは間違いないからね」
「生きたい!
僕、死にたくない!
痛いのも苦しいのも我慢するから助けて!」
とうとうヨハンは己の渇望を口に出した。
「「ヨハン····」」
「ん、わかった。
だったらちゃんと自分の親を自分の言葉で説得しろ。
君の願望を言葉にして伝えろ。
自分の人生だろう。
資料は置いていく。
君の心臓手術についても纏めておいた。
まだ小難しい字は読めないだろうから、誰かに読んでもらいなよ。
明日のリモートを無視したり、1週間以内に返事が無ければこの話は無いものとする。
いい?」
「はい。
ねえ、僕は生きられる?
生きても迷惑にならない?」
「生きられるかは君次第。
生きても迷惑になるかは君の生き方次第」
言うだけ言って放心状態となった義理両親と目に希望の宿ったヨハンに踵を返して出て行こうとした。
だが何かを思い出したように再びヨハンの前に来て膝を折って視線を合わせた。
「よく今まで頑張った。
よく諦めずに生きたよ」
ぽんぽんと頭を撫でて優しく微笑む。
その笑みは慈愛に満ちていた。
ヨハンの胸の傷を思い出す。
心臓の手術をした時の傷だと教えてくれた。
『僕の頑張った証なんだ』
誇らしげな顔を思い出した。
0
あなたにおすすめの小説
こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果
てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。
とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。
「とりあえずブラッシングさせてくれません?」
毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。
そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。
※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
目覚めたら魔法の国で、令嬢の中の人でした
エス
恋愛
転生JK×イケメン公爵様の異世界スローラブ
女子高生・高野みつきは、ある日突然、異世界のお嬢様シャルロットになっていた。
過保護すぎる伯爵パパに泣かれ、無愛想なイケメン公爵レオンといきなりお見合いさせられ……あれよあれよとレオンの婚約者に。
公爵家のクセ強ファミリーに囲まれて、能天気王太子リオに振り回されながらも、みつきは少しずつ異世界での居場所を見つけていく。
けれど心の奥では、「本当にシャルロットとして生きていいのか」と悩む日々。そんな彼女の夢に現れた“本物のシャルロット”が、みつきに大切なメッセージを託す──。
これは、異世界でシャルロットとして生きることを託された1人の少女の、葛藤と成長の物語。
イケメン公爵様とのラブも……気づけばちゃんと育ってます(たぶん)
※他サイトに投稿していたものを、改稿しています。
※他サイトにも投稿しています。
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。
和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。
黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。
私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと!
薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。
そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。
目指すは平和で平凡なハッピーライフ!
連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。
この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。
*他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる