《完結御礼》【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語

嵐華子

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188.伴侶の夢2~ドゥニームside

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「君達じゃない。
私はヨハンに聞いてる。
確かにヨハンはまだ7才の子供だけど、この子は聡い。
自分の生き死にくらいは決められる子だ。
それと医者だから当然助けろというのは無理がある。
私の時間は有限で、君達の息子より幼い難病持ちの娘もいる。
君達が息子を優先したいのと同じく私も薬の開発すらしないで本当は娘の側で過ごしたい」

 その言葉に義理両親は何も言えなくなったようだ。

「そもそも君達はどうしてヨハンに先がないなんて決めつける?」
「「それは····」」

『どうせ僕はあと何年かで死んじゃうってパパもママも思ってるんだ····そっちの方がいいのかな····僕がいない方がパパもママも楽になれる?』

 ヨハンの口元は動いていない。
心の声が聞こえているのか?

「君達が本当は諦めてる事にその子は気づいてる」
「「「?!」」」

 驚いて3人は互いの顔を交互に見る。

「諦めてる君達の気持ちなんか知るわけない。
諦めたくないから私は医者になったんだ。
薬は必ず娘には間に合わせる」
「はっ、結局自分の娘の事しか考えないのか!」
「当然では?
焦って薬ができるならとうにできてるだろう。
だけど私の娘の時間も君達の息子より何年か長いだけ。
だから今は同じ難病を患う子供のデータが多く欲しい。
患者人数も少ないからまだ足りてない。
本音を言えば新薬開発の合間に娘との時間も少しは親として確保したいけど、睡眠時間を削って寝ずに過ごすのにも限界はある。
そんな状況で君達の息子に時間を割くんだ。
母親の私の気持ちは察せないと?
医者だから難病のわが子を放って奉仕しろと?
それこそ何の為に医者になったかわからないだろう」
「そ、れは····」

 同じ母親である義母殿が口ごもる。

 番殿はヨハンに視線を合わせて問いかける。

「難病より先に心疾患をどうにかするのに渡米もしないといけないから私と娘は間違いなく1ヶ月は離れ離れになる。
データの1つも要求しないとかあり得ない。
うちは母子家庭だ。
手伝いは金でどうにかなるけど、君より小さい女の子が死への恐怖や心細い思いをするのに私はその期間は娘についてやれなくなる。
君が苦しんでいる時、側に親がいないとどう思う?」
「あ····捨てられたって····」
「「そんな····」」

 恐らく義理両親はヨハンの言葉が予想外だったんだろう。
それくらい息子が追い詰められているとは思ってなかったはずだ。

 そこでふと我に返る。
私も····愛おしいヨハンを無意識に追い詰めていたんだろうか。
私も全てを諦めてヨハンの時間を止めて眠らせた。
 
「だから生きるのを諦めないでいられるかその子に直接聞いてる。
無駄骨は折りたくない。
心疾患まで患ってるからね。
生半可な覚悟での治療は仮に手術が成功しても苦痛を伴って心が折れかねない。
私は病は気からってのはあると思ってる。
親だけでは駄目だし、当人が決めなければ乗り越えられない事は必ずある。
幼くても君の病気で、戦うのは君だろう?
自分で生きるか死ぬか選べ」
「ちょっと待ってくれ。
渡米って····」

 ヨハンの面影がある義父殿が目を見張る。

「国内の医者は腕も根性も対処しきれる奴がいなかった。
アポだけは入れてる。
あと明日ならリモートで彼とも話せる。
手術の腕は天才的に良い。
幸い君達の懐はそこそこ潤ってるだろうから渡米して手術受ける金はあるよね。
君達の息子のデータを今後も私に提供し続けるのを報酬にするのなら私の報酬は特に必要ない」
「そんな····リスクが高すぎて誰も引き受けては····」
「あっちの心臓外科医は天才。
大学の先輩だったからよく知ってる。
私は内科医的には名医だと思ってるし、その病気に関してはスペシャリスト。
彼も私が内科医としてヨハンの術後管理を担当するなら引き受けると言ってくれた。
ただ君達がリスクを前に現状維持を望むのならそれはそれで仕方ない。
限りある時間を親子で過ごすのも君達の権利だから」

 義理両親は明らかに迷っている様子だ。

「だけど私の条件はデータの提供はもちろん、その子が自分から生きたいと望んで行動する事だ。
手術にしても薬ができるまでの時間稼ぎにしても、その子にとって過酷になるのは間違いないからね」
「生きたい!
僕、死にたくない!
痛いのも苦しいのも我慢するから助けて!」

 とうとうヨハンは己の渇望を口に出した。

「「ヨハン····」」
「ん、わかった。
だったらちゃんと自分の親を自分の言葉で説得しろ。
君の願望を言葉にして伝えろ。
自分の人生だろう。
資料は置いていく。
君の心臓手術についても纏めておいた。
まだ小難しい字は読めないだろうから、誰かに読んでもらいなよ。
明日のリモートを無視したり、1週間以内に返事が無ければこの話は無いものとする。
いい?」
「はい。
ねえ、僕は生きられる?
生きても迷惑にならない?」
「生きられるかは君次第。
生きても迷惑になるかは君の生き方次第」

 言うだけ言って放心状態となった義理両親と目に希望の宿ったヨハンに踵を返して出て行こうとした。

 だが何かを思い出したように再びヨハンの前に来て膝を折って視線を合わせた。

「よく今まで頑張った。
よく諦めずに生きたよ」

 ぽんぽんと頭を撫でて優しく微笑む。
その笑みは慈愛に満ちていた。

 ヨハンの胸の傷を思い出す。
心臓の手術をした時の傷だと教えてくれた。

『僕の頑張った証なんだ』

 誇らしげな顔を思い出した。
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