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187.伴侶の夢~ドゥニームside
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「ここが、ヨハンの夢?」
明るくて何もない、白いだけの空間だ。
『嘘よ!
どうしてあの子に効く薬がないの!』
突然甲高い声が耳に響く。
脳がぐらぐらと揺れるほどのヒステリックな叫びに顔をしかめる。
『落ち着きなさい』
『落ち着けですって?!
このままじゃあの子はあと5年もしないうちに死んでしまうのよ!
原因もわからない、薬も何もないのにどうやって落ち着くの!』
太い雄の声が宥めようとするが、甲高い声には逆効果のようだった。
どこの言葉かわからないが意味は不思議と理解できたが、がそれよりも雌が叫ぶ度に頭痛がするのはどういう事だ。
『ぼく、死んじゃうの?
どうして?』
幼い声が聞こえる。
「ヨハン?」
今の伴侶の声とは全く違うが、これは愛しい伴侶の声だと直感が告げる。
声に出して呼びかけるが返事はない。
2つの声の主が息を飲む気配だけがした。
周囲が少しずつ暗くなる。
『ヨハン、聞いてくれ····』
『違うの、違うのよ、ヨハン。
私の可愛い子』
焦って取り繕う声と共に空間が完全に闇に支配された。
ガン!
突然何かにぶつかる音がして立っていられなくなるほどの振動が足下におきた。
不意の揺れに耐えられず、思わず片膝をついた。
『他人の夢に入ればお前は魔力も竜人としての能力も使えないただの精神体だ』
あの黒竜の番の言葉が頭を過る。
確かにその通りだと思うほどに自分という存在が心許ない。
何が起きた?
『また倒れちゃった。
僕、足に力が入らなくなってる。
このまま歩けなくなるの?』
少し成長した声だが、これはヨハンだ。
困惑したような、恐怖に苛まれているのを必死に堪えるような····。
「ヨハン!
どこだ!
返事をしてくれ!」
『嫌だ····怖い。
死ぬの?
死にたくない!
死にたくない!!
助けて····誰か····誰か助けて!』
「ヨハン!
私だ。
ドゥニームだ!
頼む、返事をしてくれ!
助けにきたんだ!」
錯乱していく心の底からの叫びに再び脳が揺れるような感覚に陥る。
しかし伴侶の危機を感じてしまえば自分のそれなど気にしてはいられない。
声を限りに叫ぶ。
しかし私の声は全く届かない。
次第に幼い声の伴侶は半狂乱に陥って泣き叫ぶ。
こんな伴侶は見た事がない。
私が眠らせる間際、死を感じさせたあの時ですら死を受け入れて穏やかに微笑んでいた。
私が気づかなかっただけなのか?
『もう、起き上がるのもつらい。
心臓に欠陥があるってなんだよ····難病があるから誰も手術だってしてくれない····助けて····誰か····』
弱々しい声。
泣いている。
どこだ?!
早く駆け寄って抱きしめてやらないと!
邪魔な壁らしき物を何度も殴りつけるがびくともしない。
どれくらい暗闇の中でそうしていただろうか。
「必ず薬は私が作る。
助かりたいなら最長であと8年は生きるつもりでいて欲しい」
突然聞き覚えのあるはっきりとした声がして、一気に周囲が明るくなる。
ここは白い空間ではなくなっていた。
随分狭いが、客室か?
ヨハンと同じく濃淡はあるが金髪に緑の目の、1人は恐らく雌だろうが雌雄で揃ってソファに座っている。
真ん中には幼い伴侶がちょこんと座っているが、顔色の悪さに駆け寄る。
だが掻き抱こうにも体が透けて触れられない。
金髪の3人の目の前には髪の長い、あの黒竜の番が立っているが、いくぶん若い。
もしやこれはヨハンの記憶だろうか?
「だけどぼく、あと3年で余命に····」
「本当に8年以内に作れるのか?」
「作る。
でも3年以内は恐らくできない」
ヨハンを遮って雄が番殿に念を押す。
あの難病の特効薬の話だろうか?
「余命っていうのは平均から割り出した数字だから必ずしもその年で死ぬわけじゃない。
ただ、君の場合は先天性の心疾患があって予後がとても悪い。
このままなら来年を待たずに死ぬ可能性もなくはない」
待ってくれ。
いきなり人の伴侶、それも子供に何を言ってくれている?!
あまりの言い方に殺意が湧く。
ここが夢で良かった。
黒竜殿の前だったら間違いなく私の方が殺られていた。
「そんな····」
「子供に何てことを!
あなたそれでも医者なの!」
全くその通りだ。
ショックを受けて絶句する幼い伴侶が可哀想だ!
雌は私の代わりにもっとやってくれと思わずにはいられない。
「医者で、私の娘も君達の息子と同じ難病患者だ。
事実を言っている」
君達の息子と言ったか?
ということは彼等がヨハンの····。
番殿にいたって冷静な返しをされて義理両親の怒りの導火線に火を着けた。
「事実だと!
あんたに何がわかる!
金ならいくらでも出せるのに、治療すらも拒否される親の気持ちがわかるか!」
「そうよ!
治療じゃなく、対症療法しかできないって、苦しみを長引かせるしかできないって言われてどうする事もできない無力な親の気持ちを逆撫でして何様よ?!
それに難病で先がないのに、手術して痛みを長引かせるどころか、もし失敗なんてしたら····」
義母殿は顔を覆って泣き始める。
義父殿はそんな義母殿の肩を慰めるようにそっと抱く。
「ねえ、ヨハン。
君のデータをくれるなら私が君を少なくとも平均的な余命までは必ず生かせると思うけど、君は少しでも長く生きたい?」
「ふざけないで!
まだ子供なのよ?!
わかりっこないわ!
それに助けられるなら助けて当然じゃない!
あなた医者でしょう!」
泣き叫ぶ義母殿を無視して黒竜の番殿は立ち上がり、ヨハンの前に進むも金髪の両親が遮る。
番殿は雌だから小柄かと思っていたが、雌の中でも小さい事に気づく。
態度はかなり大きいが。
明るくて何もない、白いだけの空間だ。
『嘘よ!
どうしてあの子に効く薬がないの!』
突然甲高い声が耳に響く。
脳がぐらぐらと揺れるほどのヒステリックな叫びに顔をしかめる。
『落ち着きなさい』
『落ち着けですって?!
このままじゃあの子はあと5年もしないうちに死んでしまうのよ!
原因もわからない、薬も何もないのにどうやって落ち着くの!』
太い雄の声が宥めようとするが、甲高い声には逆効果のようだった。
どこの言葉かわからないが意味は不思議と理解できたが、がそれよりも雌が叫ぶ度に頭痛がするのはどういう事だ。
『ぼく、死んじゃうの?
どうして?』
幼い声が聞こえる。
「ヨハン?」
今の伴侶の声とは全く違うが、これは愛しい伴侶の声だと直感が告げる。
声に出して呼びかけるが返事はない。
2つの声の主が息を飲む気配だけがした。
周囲が少しずつ暗くなる。
『ヨハン、聞いてくれ····』
『違うの、違うのよ、ヨハン。
私の可愛い子』
焦って取り繕う声と共に空間が完全に闇に支配された。
ガン!
突然何かにぶつかる音がして立っていられなくなるほどの振動が足下におきた。
不意の揺れに耐えられず、思わず片膝をついた。
『他人の夢に入ればお前は魔力も竜人としての能力も使えないただの精神体だ』
あの黒竜の番の言葉が頭を過る。
確かにその通りだと思うほどに自分という存在が心許ない。
何が起きた?
『また倒れちゃった。
僕、足に力が入らなくなってる。
このまま歩けなくなるの?』
少し成長した声だが、これはヨハンだ。
困惑したような、恐怖に苛まれているのを必死に堪えるような····。
「ヨハン!
どこだ!
返事をしてくれ!」
『嫌だ····怖い。
死ぬの?
死にたくない!
死にたくない!!
助けて····誰か····誰か助けて!』
「ヨハン!
私だ。
ドゥニームだ!
頼む、返事をしてくれ!
助けにきたんだ!」
錯乱していく心の底からの叫びに再び脳が揺れるような感覚に陥る。
しかし伴侶の危機を感じてしまえば自分のそれなど気にしてはいられない。
声を限りに叫ぶ。
しかし私の声は全く届かない。
次第に幼い声の伴侶は半狂乱に陥って泣き叫ぶ。
こんな伴侶は見た事がない。
私が眠らせる間際、死を感じさせたあの時ですら死を受け入れて穏やかに微笑んでいた。
私が気づかなかっただけなのか?
『もう、起き上がるのもつらい。
心臓に欠陥があるってなんだよ····難病があるから誰も手術だってしてくれない····助けて····誰か····』
弱々しい声。
泣いている。
どこだ?!
早く駆け寄って抱きしめてやらないと!
邪魔な壁らしき物を何度も殴りつけるがびくともしない。
どれくらい暗闇の中でそうしていただろうか。
「必ず薬は私が作る。
助かりたいなら最長であと8年は生きるつもりでいて欲しい」
突然聞き覚えのあるはっきりとした声がして、一気に周囲が明るくなる。
ここは白い空間ではなくなっていた。
随分狭いが、客室か?
ヨハンと同じく濃淡はあるが金髪に緑の目の、1人は恐らく雌だろうが雌雄で揃ってソファに座っている。
真ん中には幼い伴侶がちょこんと座っているが、顔色の悪さに駆け寄る。
だが掻き抱こうにも体が透けて触れられない。
金髪の3人の目の前には髪の長い、あの黒竜の番が立っているが、いくぶん若い。
もしやこれはヨハンの記憶だろうか?
「だけどぼく、あと3年で余命に····」
「本当に8年以内に作れるのか?」
「作る。
でも3年以内は恐らくできない」
ヨハンを遮って雄が番殿に念を押す。
あの難病の特効薬の話だろうか?
「余命っていうのは平均から割り出した数字だから必ずしもその年で死ぬわけじゃない。
ただ、君の場合は先天性の心疾患があって予後がとても悪い。
このままなら来年を待たずに死ぬ可能性もなくはない」
待ってくれ。
いきなり人の伴侶、それも子供に何を言ってくれている?!
あまりの言い方に殺意が湧く。
ここが夢で良かった。
黒竜殿の前だったら間違いなく私の方が殺られていた。
「そんな····」
「子供に何てことを!
あなたそれでも医者なの!」
全くその通りだ。
ショックを受けて絶句する幼い伴侶が可哀想だ!
雌は私の代わりにもっとやってくれと思わずにはいられない。
「医者で、私の娘も君達の息子と同じ難病患者だ。
事実を言っている」
君達の息子と言ったか?
ということは彼等がヨハンの····。
番殿にいたって冷静な返しをされて義理両親の怒りの導火線に火を着けた。
「事実だと!
あんたに何がわかる!
金ならいくらでも出せるのに、治療すらも拒否される親の気持ちがわかるか!」
「そうよ!
治療じゃなく、対症療法しかできないって、苦しみを長引かせるしかできないって言われてどうする事もできない無力な親の気持ちを逆撫でして何様よ?!
それに難病で先がないのに、手術して痛みを長引かせるどころか、もし失敗なんてしたら····」
義母殿は顔を覆って泣き始める。
義父殿はそんな義母殿の肩を慰めるようにそっと抱く。
「ねえ、ヨハン。
君のデータをくれるなら私が君を少なくとも平均的な余命までは必ず生かせると思うけど、君は少しでも長く生きたい?」
「ふざけないで!
まだ子供なのよ?!
わかりっこないわ!
それに助けられるなら助けて当然じゃない!
あなた医者でしょう!」
泣き叫ぶ義母殿を無視して黒竜の番殿は立ち上がり、ヨハンの前に進むも金髪の両親が遮る。
番殿は雌だから小柄かと思っていたが、雌の中でも小さい事に気づく。
態度はかなり大きいが。
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