《完結御礼》【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語

嵐華子

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193.前国王夫妻の目覚め

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「うっ····はっ、ヨハン!」

 レンカ達が眠ってから小一時間ほどした頃だろうか。
まず最初に目を覚ましたのは前国王だった。

 目を覚ました途端、すぐに腕の中の伴侶を慌ててのぞきこむ。

 少し前の事だが、いつものレンの黄金色の魔力がうっすらと現れて伴侶を包んで消えた。
その後すぐに伴侶が無意識にだろうがレンカを抱き込んでしまっていた。

 お陰で蓮香の小ささが更に目立つ。
栄養不良で過ごした幼少期が響いているのかもしれない。

 あの闇色の華はパラリ、パラリと花びらを散らしては消え、残りは数枚だ。

「ん····」
「ヨハン!」

 前国王は掠れた声と共に睫毛が震え、ゆっくりと目を開く。
前国王はそんな伴侶を歓喜の声で名を呼んだ。

「ドゥニーム?」

 碧い目の焦点が合い、ぼんやりと彼の名を呼ぶと藤色の目元がほころんだ。

「良かった····ヨハン」
「俺、悪夢から覚めたんだね」
「ああ」

 前国王は伴侶の額に口づけ、抱きしめる。

 おい、蓮香も一緒に抱きしめてんじゃねえよ。
思わず睨みつけそうになる衝動を何とか抑える。

「ん、ちょっと腕弛めて」

 起き抜けに自分達の世界に入りつつあった雰囲気は、伴侶の一言で現実に舞い戻った。

 だが俺達はそんなそんな2人の雰囲気よりも、未だに目覚めない蓮香の方に気を取られている。

 そんな俺達を伴侶はひたと見つめて口を開いた。

「あなた達にレンカさんからの伝言があります」
「伝言とはなんじゃ?」

 親父がおや、と問いかける。

「黒竜とグランという騎士に起きるまで手を握っているように、と。
それから虎属のトビドニアという方はいますか?」
「俺や」
「耳を」

 前に出たトビに耳打ちする。

 それを聞いてトビは顔を歪めたが、片手で顔を覆って苦笑する。
たった一言だけ「わかった」と漏らした。

「ちょっと出てくるわ。
黒竜と兄さんはレンカちゃんを別室連れてって側についといて」

 トビが足早にその場を立ち去り、俺は改めて金髪に碧目の伴侶を見る。
顔立ちは人属によくいる優しげな面差しだ。
眠っている時はそうでもなかったが、随分顔色が悪くなっていて呼吸も早い。

 ベッドに座っているにしても、いつまでも蓮香を抱え続けるのはきつそうだ。
体も少し震えている。
そっと近づき、声をかけた。

「グラン=ウェストミンスターです。
蓮香を連れ行きます」
「あなたがグランさんですね。
ドゥニームやザガド、それからペネドゥル達が何をしたかはレンカさんから聞きました。
皆さんにも俺を含めて家族達が迷惑をかけてしまい、申し訳ありません」

 伴侶は腰かけたまま、ペコリと頭を下げてから再び俺を見た。
今までのこの国の王族が王族だったから伴侶もそうかと思っていたが、よくも悪くも普通の常識は持っている好青年ではあるようだ。

「レンカさんを頼みます。
俺の恩人で、大事な人なんです」
「共に行かれるか?」

 一応貴人ではある為聞いておく。
だがそれは前国王が否定する。

「ヨハンは目覚めたが、病の進行は止まっていない。
体に力が入っていないのだ。
ずっと体を起こしていたからか、疲労も蓄積していて自分で歩く事もできないだろう。
しばらく休ませてから、折りを見て連れていく」
「わかりました」

 俺もそちらの方が良いだろうと相槌を打つ。
蓮香を抱えると頭上にあった呪華が蓮香の腹の辺りに降りてきて浮かぶ。

「グランは黒竜と共に蓮香を連れて客室へ行け。
儂らは伴侶殿が目覚めたからのう。
今後の事を話さねばならぬじゃろう。
副団長は王太子を連れて来るのじゃ。
ザガド国王よ、してそちらはどうするかのう?」
「ドゥニーム、俺の事はいいから行って」
「しかし····」

 確かに番に個室して異世界から伴侶を召還した竜人だ。
目覚めたばかりの伴侶なら置いて行けないだろうな。

「俺の病気は今すぐどうにかなるものじゃないし、レンカさんが使えるようになったらしい魔法を使っていくらか体力を回復させてくれてる。
すぐに何か起こったりしないよ」

 そうか、あの時の黄金色の魔力は····。

「いや、それでも····」
「俺ね、レンカさんからドゥニームが俺の時間を止める魔法を使ってからどうしたのか聞いたよ」

 微笑みながらも多分すごんでいる。
伴侶である前国王には効果があるんだろう。
バツの悪そうな顔をし始める。

「いや、それは····」
「本当に何やってるの?!
俺がレンカさんに怒られたんだからね!
親を蔑ろにして男選んで世界まで渡った結果がこれか、って」

 確かにその通りだ。
そういえば伴侶を殴ると言っていたな。
その為にも早く目覚めてくれ。

「その····すまない····ヨハンは不可抗力なのはわかって····」
「不可抗力じゃないよ。
レンカさんに怒られた通りだよ。
俺はいきなり倒れたわけじゃない。
時間もあった。
なのにドゥニームに甘えきってて悲劇の主人公みたいに自分を憐れんでた。
俺がドゥニームの番だっていうだけで、伴侶になったっていうだけで、何もせずに衣食住を当然のように満たされて過ごしてた事に何の疑問も持ってなかった」
「それは····竜人の習性で、私が····いや、そうだな。
番殿にも竜人だから、獣人の習性だから仕方ないと····我慢をしようともせずに王座に座り続けたのが····」
「うん、そうだよ、ドゥニーム。
だからこれから変わろうよ。
俺はどこまで生きられるかわからないけど、少なくとも義弟のザガドが王座に座って王様らしくやっていけるようになるまでは、俺を優先せずにドゥニームも支えてあげてよ」
「ヨハン····」
「ヨハン、兄上、すまない。
私も本当は兄上にもっと手伝ってもらいたいのだ····」
「うん、それがいい。
俺にも何かできる事あったら手伝うし、邪魔しないようにする。
俺さ、ドゥニームの家族もこの国も大好きなんだ。
だからできるだけ長く生きるよ」

 前国王が伴侶を抱きしめる。

「わかった。
ありがとう、ヨハン」
「私も義弟として、家族として長く生きてほしい。
礼を言う、義兄あに上」

 ザガド国王もほっとした様子を見せる。

「うむ、話がまとまって何よりじゃ。
ほれグラン、黒竜、はようレンカちゃんを連れて行け」
「わかりました」

 親父の催促にファルと一瞬アイコンタクトを取って客室へと急いだ。
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