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205.この2年1〜レイブside
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「グラン、今から森へ行くんですか?」
「はい」
腹ごしらえを終えたのだろう獅子属のグランが騎士寮の食堂からちょうど出てきたのを見つけて声をかけます。
今日は他国への遠征直後の宿直明け、からの明日から数日間は久々の非番になっていたはず。
意気揚々としているのは予想通り私の息子、いえ、娘の眠る魔の森へ行くからのようですね。
私の隣にいた熊属の騎士団長、ベルグルも最近はある話に浮ついています。
「もう2年か。
そろそろなんだろう?」
「はい。
白竜からはもうそろそろ仮死状態から完全に脱すると聞いています。
いつ目覚めてもおかしくないかと」
知らず顔がほころぶのは私も同じでしょうね。
「良い顔になりましたね。
ペンダントの魔石への魔力補填はちゃんとしていますから、あの子が目覚めたら知らせて下さい。
私もベルグルも最優先で森に行きます。
黒竜への許可はもう取ってありますから」
「わかりました」
「すぐだぞ。
わかっているな」
浮かれて忘れられては困ると思っているのはわたしも、念を押すベルグルも同じです。
あれから2年経っても私達は相変わらずあの子の父親を自負していますからね。
「もちろんです。
それじゃあ、俺はこれで」
「ああ」
「気をつけて行ってらっしゃい」
私達は手を上げ、見送ります。
グランは軽く会釈して首から下げた魔石具に魔力を通して転移しました。
白竜によって改良されたそれはペンダント型で、彼限定で使える魔の森か騎士寮のどちらかに転移できるよう設定された最先端の代物です。
魔力補填の苦手なグランに代わり、私がしています。
白竜の愛し子の番だからこそ譲られた逸物ですね。
グランを見送ったあと、私達は本日の打ち合わせをする為にベルグルの執務室で顔を突き合わせて座ります。
「良い顔をするようになりましたね」
「ああ。
一時はどうなるかと思っていたが、そこは元とはいえさすが王族だ」
しかし打ち合わせの前に話すのはやはり我が国の元王族であり、第5騎士隊隊長であり、娘の番について。
思い出されるのは2年前。
何かしらの胸騒ぎを覚えたらしい我らが国王陛下より、あの子の様子を確認しに行くよう指示されて向かった私達がまず目にしたのは、茫然自失となってベッドの横でへたり込むグラン。
そして訝しげな表情でベッドを見下ろす黒竜でした。
そんな2人に見つめられていたのは、いつの間にか蓮香から元の姿へ戻った娘のレン。
レンはへたりこむグランに手を握られてベッドに横たわり、腹と胸のあたりから大量に出血して息をしていない状態でした。
長く騎士として働く私でも一瞬頭が真っ白になってしまいます。
『レン····結局お前は1人で逝くのか。
だがお前だけを逝かせない。
そう言っただろう』
そんな私達に関心を払う事もなく、グランは血の気のない番の額に口づけ立ち上がると懐から取り出した隠しナイフで首を掻き切ろうとしました。
それをいち早く制したのは黒竜です。
真横にいた彼はグランの腕を掴んで静止し、落ち着けと諭します。
そこへ突如転移で現れたのがトビドニア副会長と白銀の髪と目をした美丈夫でした。
『お待たせ』
『全く私の愛し子は5年経っても無茶苦茶だ。
それにしても我が息子ながら、情けない』
美丈夫は黒竜を冷ややかな目で一瞥します。
『ふん、伴侶を失って正気を失った者が何を言う』
『そう言われると堪えるものがあるけどね』
大して堪えていないような顔でふっと笑う。
『それより師匠、はよレンちゃん助けてや!』
師匠?
副会長の師匠といえば····まさかの白竜ですか?!
副会長はレンの様子に慌てます。
『やれやれ、目覚めたばかりなのに竜使いが荒いね』
文句を言いながらも、さすが白竜と言うべきでしょうか。
彼は落ち着いたもので、そう言うが早いか白銀の魔力がレンを包んで体を浄化し、出血を止めたようでした。
黒竜は精神魔法に特化し、白竜は治癒魔法に特化すると大叔父から聞いた事があります。
どちらも破壊が得意なのは言うまでもありませんが。
『レンの傷は特殊だからね。
私に出来るのは出血を押さえて強制的に心臓を拍動させる事くらいだよ。
うん、後は呼吸かな』
そう言われてよく見れば、腹と胸の表面、そして心臓の位置に白銀の魔力残滓を確認できました。
美丈夫、いえ、白竜はそっとレンに近づきます。
『治療だからね』
誰にともなく念を押すとレンの顎を捉えて少し上げ、薄く開いた土気色の唇の隙間から直接魔力を込めた息を何度か吹き込みました。
これにはグランも黒竜も殺気立ちますが、治療は確かなようなので何とか抑えたようです。
私もベルグルも幼子のような外見の我が子への口づけに苛ついたのは間違いありませんが。
何度目かの吹き込みの後、胸が僅かにですが自発的に上下し始めました。
『ひとまず体はこれで大丈夫だ』
白竜の言葉に私達はほっとします。
しかしグランとファルは未だに緊張を解きません。
『兄さん達、大丈夫や』
その理由を察しているかのように副会長が声をかけ、懐から何かを取り出しました。
それは蓮香が吸っていた元の世界の煙草でした。
こちらの世界の煙草と同じ用途だと思うのですが、蓮香の物よりかなり太いので同じ物かはわかりませんが。
もしかしたら副会長はあの時あのヨハンという人属を通して蓮香から何かを聞かされていたのかもしれないと思い当たり、見守ります。
副会長はそれをそっとレンの胸の上に置きました。
すると白かったそれは一瞬で黒く染まり、煙のように形を変え、レンの胸に溶け込むようにして消えました。
しばしの間見守っていた時です。
瞼がぴくりと震え、開きます。
上位種である2体の竜を除き、私達は口々に名を呼びベッドの周りに群がりました。
しかし体を支えられながら起こしたレンは、蓮香だったのです。
グラン達の様子も相まって娘の身に何か起こったのだと悟った私は、固唾を飲んで見守ります。
他の者達も同じような心境だったでしょう。
彼は、いえ、彼女はそんな私達に告げたのです。
※※※※※※※※※
お知らせ
※※※※※※※※※
このお話もあと少しで完結します。
応援いただいた方、お気に入り登録していただいた方、誤字脱字を報告下さった方ありがとうございます。
他にも短編、長編小説をいくつか作品を投稿しておりますので、気が向かれましたらそちらもご覧下さい。
こちらを完結させましたら、次回作の投稿を開始する予定です。
今後ともよろしくお願いしますm(_ _)m
「はい」
腹ごしらえを終えたのだろう獅子属のグランが騎士寮の食堂からちょうど出てきたのを見つけて声をかけます。
今日は他国への遠征直後の宿直明け、からの明日から数日間は久々の非番になっていたはず。
意気揚々としているのは予想通り私の息子、いえ、娘の眠る魔の森へ行くからのようですね。
私の隣にいた熊属の騎士団長、ベルグルも最近はある話に浮ついています。
「もう2年か。
そろそろなんだろう?」
「はい。
白竜からはもうそろそろ仮死状態から完全に脱すると聞いています。
いつ目覚めてもおかしくないかと」
知らず顔がほころぶのは私も同じでしょうね。
「良い顔になりましたね。
ペンダントの魔石への魔力補填はちゃんとしていますから、あの子が目覚めたら知らせて下さい。
私もベルグルも最優先で森に行きます。
黒竜への許可はもう取ってありますから」
「わかりました」
「すぐだぞ。
わかっているな」
浮かれて忘れられては困ると思っているのはわたしも、念を押すベルグルも同じです。
あれから2年経っても私達は相変わらずあの子の父親を自負していますからね。
「もちろんです。
それじゃあ、俺はこれで」
「ああ」
「気をつけて行ってらっしゃい」
私達は手を上げ、見送ります。
グランは軽く会釈して首から下げた魔石具に魔力を通して転移しました。
白竜によって改良されたそれはペンダント型で、彼限定で使える魔の森か騎士寮のどちらかに転移できるよう設定された最先端の代物です。
魔力補填の苦手なグランに代わり、私がしています。
白竜の愛し子の番だからこそ譲られた逸物ですね。
グランを見送ったあと、私達は本日の打ち合わせをする為にベルグルの執務室で顔を突き合わせて座ります。
「良い顔をするようになりましたね」
「ああ。
一時はどうなるかと思っていたが、そこは元とはいえさすが王族だ」
しかし打ち合わせの前に話すのはやはり我が国の元王族であり、第5騎士隊隊長であり、娘の番について。
思い出されるのは2年前。
何かしらの胸騒ぎを覚えたらしい我らが国王陛下より、あの子の様子を確認しに行くよう指示されて向かった私達がまず目にしたのは、茫然自失となってベッドの横でへたり込むグラン。
そして訝しげな表情でベッドを見下ろす黒竜でした。
そんな2人に見つめられていたのは、いつの間にか蓮香から元の姿へ戻った娘のレン。
レンはへたりこむグランに手を握られてベッドに横たわり、腹と胸のあたりから大量に出血して息をしていない状態でした。
長く騎士として働く私でも一瞬頭が真っ白になってしまいます。
『レン····結局お前は1人で逝くのか。
だがお前だけを逝かせない。
そう言っただろう』
そんな私達に関心を払う事もなく、グランは血の気のない番の額に口づけ立ち上がると懐から取り出した隠しナイフで首を掻き切ろうとしました。
それをいち早く制したのは黒竜です。
真横にいた彼はグランの腕を掴んで静止し、落ち着けと諭します。
そこへ突如転移で現れたのがトビドニア副会長と白銀の髪と目をした美丈夫でした。
『お待たせ』
『全く私の愛し子は5年経っても無茶苦茶だ。
それにしても我が息子ながら、情けない』
美丈夫は黒竜を冷ややかな目で一瞥します。
『ふん、伴侶を失って正気を失った者が何を言う』
『そう言われると堪えるものがあるけどね』
大して堪えていないような顔でふっと笑う。
『それより師匠、はよレンちゃん助けてや!』
師匠?
副会長の師匠といえば····まさかの白竜ですか?!
副会長はレンの様子に慌てます。
『やれやれ、目覚めたばかりなのに竜使いが荒いね』
文句を言いながらも、さすが白竜と言うべきでしょうか。
彼は落ち着いたもので、そう言うが早いか白銀の魔力がレンを包んで体を浄化し、出血を止めたようでした。
黒竜は精神魔法に特化し、白竜は治癒魔法に特化すると大叔父から聞いた事があります。
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『レンの傷は特殊だからね。
私に出来るのは出血を押さえて強制的に心臓を拍動させる事くらいだよ。
うん、後は呼吸かな』
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何度目かの吹き込みの後、胸が僅かにですが自発的に上下し始めました。
『ひとまず体はこれで大丈夫だ』
白竜の言葉に私達はほっとします。
しかしグランとファルは未だに緊張を解きません。
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その理由を察しているかのように副会長が声をかけ、懐から何かを取り出しました。
それは蓮香が吸っていた元の世界の煙草でした。
こちらの世界の煙草と同じ用途だと思うのですが、蓮香の物よりかなり太いので同じ物かはわかりませんが。
もしかしたら副会長はあの時あのヨハンという人属を通して蓮香から何かを聞かされていたのかもしれないと思い当たり、見守ります。
副会長はそれをそっとレンの胸の上に置きました。
すると白かったそれは一瞬で黒く染まり、煙のように形を変え、レンの胸に溶け込むようにして消えました。
しばしの間見守っていた時です。
瞼がぴくりと震え、開きます。
上位種である2体の竜を除き、私達は口々に名を呼びベッドの周りに群がりました。
しかし体を支えられながら起こしたレンは、蓮香だったのです。
グラン達の様子も相まって娘の身に何か起こったのだと悟った私は、固唾を飲んで見守ります。
他の者達も同じような心境だったでしょう。
彼は、いえ、彼女はそんな私達に告げたのです。
※※※※※※※※※
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応援いただいた方、お気に入り登録していただいた方、誤字脱字を報告下さった方ありがとうございます。
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今後ともよろしくお願いしますm(_ _)m
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