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206.この2年2〜レイブside
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『今のこの体は1度死んで全ての気も魔力も完全に失ってる。
それを白竜の魔力を循環させる事でどうにか生体機能を無理矢理維持しているだけだ。
このままでは近からずそれは止まる。
つまり死ぬ事になる』
その言葉に息をのみ、思わずグランを見やります。
しかし彼は落ち着いて蓮香の言葉の続きを待っています。
どうやらここ最近の蓮香との関わりで彼女への対応に慣れたのかもしれません。
『ただ、ほんの少しだけど今この体に呪力を取り込ませた。
それはあちらの世界特有の力だけど、それでこの体から完全に消失した気に作り変える事はできる。
少しでも気に作り変えれば後は少しずつ増やすだけだから問題ない。
ただ無から有を生み出すようなものだから年単位で時間はかかるし、それまで仮死状態で眠る事にはなる。呪力で気を作り変えるのはあちらの世界にも気は存在してて、朔月がまあまあ気を扱えてた記憶はあるから、多分可能だ』
そういえば、朔月と初めて対面した時はまるで神気のような気をほぼ無意識に放っていましたね。
まあまあなどというレベルではありませんでしたが。
しかし····。
『何で仮死状態になんの?』
私の疑問を副会長が代弁してくれました。
『気を作り出した時点で白竜の魔力をこの体から引き上げる必要がある。
この世界では番じゃない者の魔力は体に取り込むと反発してしまうらしい。
バカが竜の伴侶紋を無理矢理体に取り込むようなもんだとでも思えばいい。
まああの時よりは全然マシだけど」
そうでしたね。
レンはそのバカをやらかしていたようですが。
それにしても蓮香は口が悪いのでしょうか。
「そうすると普通に起きてたら生体機能は維持できないから、仮死状態にでもなっていないと間違いなく完全に死ぬ。
体に気を満たせば多分魔力も戻るはずだから、魔力を体に満たせられれば起きても問題ない。
馴染むまではまた年単位でかかるだろうし、病気にもかかりやすいかもしれないけど。
そこらへんは白竜と夢見を繋げて相談済みだ』
その言葉にほっとする。
しかし、そうではなかったのがグランでした。
『レンは?
レンは····もう····』
この時は何故グランがこんなに苦しそうな顔をしているのかわかりませんでした。
もっとも真相を知ったのはかなり後。
グラン自身も最愛の番を死なせかけ、直前まで受け入れて貰えなかった事がトラウマになって口にできなかったそうです。
そんなグランに対して蓮香はふっ、と笑います。
こんなにも優しく微笑む蓮香は出会ってからこの時初めて見ました。
『“待ってて”。
レンが最後に告げた言葉だ。
ぎりぎりの心変わりだったけど、間に合って良かった。
あの子の絶望した気持ちを初めて否定せず、ただ寄り添ってくれた君達を失いたくないと心から思えたらしい』
『それじゃあ····』
やっとグランの目に歓喜が宿ります。
『うん。
言っておいただろ?
レンは私達の誰よりも前向きで弱いって。
今すぐは弱り過ぎてて、まだ私が止めてた千年分の記憶の処理で流石に手一杯だけど。
表に出られるほどの余裕はないし、今現実世界で何かしら問題が起こったら間違いなくまた心が折れるから、むしろ出せない。
けど仮死から目覚める頃には安定してると思う』
『蓮香ちゃんはこれからどないすんの?』
副会長はやはり蓮香には何かしらの感情を持っているようですね。
きっともうその答えを確信しているのか、悲痛な表情をしていました。
『ひとまずレンの代わりに商会会長の仕事だけこなしたら、今度こそ消える。
そんな顔すんな。
私としてはやっと肩の荷が下りるんだ。
トビドニアはあの薬をヨハンに高値で売りつけといて。
タダでやるのはちょっと癪だ』
どうやらまだ怒りは治まっていないようです。
夢で伴侶を殴ったらしいですが、虚弱過ぎて逆に手を痛めたのかと心配したと聞きました。
『それから白竜』
『何かな?』
『今度こそ傷つけてくれるなよ』
『わかっている。
君にとってどういう意味のある子だったのかは、夢見で見せてもらったからね』
『なら、いい』
蓮香も副会長への態度は当初から他の者より柔らかい気がしていましたが、何故かは未だにわかっていません。
『そろそろ1度眠るといい。
番でない私の魔力が体内に巡り続けるのは魔力酔いを誘発してつらいだろう』
『ああ。
天候が荒れてる時の船上で酒のちゃんぽんと飲み比べやって、二日酔いと船酔いのダブルパンチに見舞われた時以来の気持ちの悪さだ』
『····君も大概色々やらかしてるよね』
ふと懐かしさを感じたのかくすりと笑う蓮香が横になるのを白竜が手伝っていましたが、その呆れた様子には思わず同調してしまったのは秘密です。
グラン、そんな目を向けていると蓮香に叱られるんじゃありませんか?
その後は商会の会長としての仕事と、番として白竜と黒竜に支えられながらもしっかりと各国国王達との会談を済まし、すぐに魔の森にある本邸へ戻りました。
気づけば白竜と黒竜が何重にも張った結界の中で仮死状態となってもう2年が経過しています。
その間もグランは可能な限り娘の元へ通い、私とベルグルも半年に1度だけならと白竜と黒竜に極秘で魔の森への訪問を許されました。
「この2年でワルシャマリ国も落ち着きましたね」
「ああ。
まさかあの伴侶が言語に関する異能を持っていて、外交官長と摂政を兼任するとは思わなかったが」
「しかもワルシャマリ国元国王が伴侶とはいえ彼の護衛となるとは更に予想外です」
娘の話の流れでふと隣国の2年を思い返します。
元国王は当初、罪人として放逐との声もありましたが在位中の治世と国民からの減刑への嘆願を鑑み、伯爵位への臣籍降下となりました。
ヨハンは元国王の伴侶として伯爵夫人となった後、病をビビット商会から仕入れた薬によって半年ほどで完治させています。
彼が摂政兼外交官長に就任したのはそれから更に半年後。
ザガド国王の戴冠と開国1周年祝賀会で公表されました。
あの反乱の首謀者だった王弟ペネドゥルとその元近衛騎士だったラジェットですが、実は蓮香が地下牢に訪れた翌日、亡くなっていました。
ペネドゥルは笑いながら舌を噛み切り、ラジェットは憤怒の形相で床に何度も頭を打ちつけ、見つけた時には既に事切れた後でした。
新国王戴冠の日、魔の森でレンに誓った通り全ての罪を明らかにし、攘夷の可否を国民に求めた彼は無事、国民に受け入れられ今も国王として邁進しているそうです。
娘の誘拐が引き金となり開国したあの国の行く末が、実りある物になるよう切に願うばかりです。
※※※※※※※※※
お知らせ
※※※※※※※※※
このお話もあと少しで完結します。
応援いただいた方、お気に入り登録していただいた方、誤字脱字を報告下さった方ありがとうございます。
他にも短編、長編小説をいくつか作品を投稿しておりますので、気が向かれましたらそちらもご覧下さい。
こちらを完結させましたら、次回作の投稿を開始する予定です。
今後ともよろしくお願いしますm(_ _)m
それを白竜の魔力を循環させる事でどうにか生体機能を無理矢理維持しているだけだ。
このままでは近からずそれは止まる。
つまり死ぬ事になる』
その言葉に息をのみ、思わずグランを見やります。
しかし彼は落ち着いて蓮香の言葉の続きを待っています。
どうやらここ最近の蓮香との関わりで彼女への対応に慣れたのかもしれません。
『ただ、ほんの少しだけど今この体に呪力を取り込ませた。
それはあちらの世界特有の力だけど、それでこの体から完全に消失した気に作り変える事はできる。
少しでも気に作り変えれば後は少しずつ増やすだけだから問題ない。
ただ無から有を生み出すようなものだから年単位で時間はかかるし、それまで仮死状態で眠る事にはなる。呪力で気を作り変えるのはあちらの世界にも気は存在してて、朔月がまあまあ気を扱えてた記憶はあるから、多分可能だ』
そういえば、朔月と初めて対面した時はまるで神気のような気をほぼ無意識に放っていましたね。
まあまあなどというレベルではありませんでしたが。
しかし····。
『何で仮死状態になんの?』
私の疑問を副会長が代弁してくれました。
『気を作り出した時点で白竜の魔力をこの体から引き上げる必要がある。
この世界では番じゃない者の魔力は体に取り込むと反発してしまうらしい。
バカが竜の伴侶紋を無理矢理体に取り込むようなもんだとでも思えばいい。
まああの時よりは全然マシだけど」
そうでしたね。
レンはそのバカをやらかしていたようですが。
それにしても蓮香は口が悪いのでしょうか。
「そうすると普通に起きてたら生体機能は維持できないから、仮死状態にでもなっていないと間違いなく完全に死ぬ。
体に気を満たせば多分魔力も戻るはずだから、魔力を体に満たせられれば起きても問題ない。
馴染むまではまた年単位でかかるだろうし、病気にもかかりやすいかもしれないけど。
そこらへんは白竜と夢見を繋げて相談済みだ』
その言葉にほっとする。
しかし、そうではなかったのがグランでした。
『レンは?
レンは····もう····』
この時は何故グランがこんなに苦しそうな顔をしているのかわかりませんでした。
もっとも真相を知ったのはかなり後。
グラン自身も最愛の番を死なせかけ、直前まで受け入れて貰えなかった事がトラウマになって口にできなかったそうです。
そんなグランに対して蓮香はふっ、と笑います。
こんなにも優しく微笑む蓮香は出会ってからこの時初めて見ました。
『“待ってて”。
レンが最後に告げた言葉だ。
ぎりぎりの心変わりだったけど、間に合って良かった。
あの子の絶望した気持ちを初めて否定せず、ただ寄り添ってくれた君達を失いたくないと心から思えたらしい』
『それじゃあ····』
やっとグランの目に歓喜が宿ります。
『うん。
言っておいただろ?
レンは私達の誰よりも前向きで弱いって。
今すぐは弱り過ぎてて、まだ私が止めてた千年分の記憶の処理で流石に手一杯だけど。
表に出られるほどの余裕はないし、今現実世界で何かしら問題が起こったら間違いなくまた心が折れるから、むしろ出せない。
けど仮死から目覚める頃には安定してると思う』
『蓮香ちゃんはこれからどないすんの?』
副会長はやはり蓮香には何かしらの感情を持っているようですね。
きっともうその答えを確信しているのか、悲痛な表情をしていました。
『ひとまずレンの代わりに商会会長の仕事だけこなしたら、今度こそ消える。
そんな顔すんな。
私としてはやっと肩の荷が下りるんだ。
トビドニアはあの薬をヨハンに高値で売りつけといて。
タダでやるのはちょっと癪だ』
どうやらまだ怒りは治まっていないようです。
夢で伴侶を殴ったらしいですが、虚弱過ぎて逆に手を痛めたのかと心配したと聞きました。
『それから白竜』
『何かな?』
『今度こそ傷つけてくれるなよ』
『わかっている。
君にとってどういう意味のある子だったのかは、夢見で見せてもらったからね』
『なら、いい』
蓮香も副会長への態度は当初から他の者より柔らかい気がしていましたが、何故かは未だにわかっていません。
『そろそろ1度眠るといい。
番でない私の魔力が体内に巡り続けるのは魔力酔いを誘発してつらいだろう』
『ああ。
天候が荒れてる時の船上で酒のちゃんぽんと飲み比べやって、二日酔いと船酔いのダブルパンチに見舞われた時以来の気持ちの悪さだ』
『····君も大概色々やらかしてるよね』
ふと懐かしさを感じたのかくすりと笑う蓮香が横になるのを白竜が手伝っていましたが、その呆れた様子には思わず同調してしまったのは秘密です。
グラン、そんな目を向けていると蓮香に叱られるんじゃありませんか?
その後は商会の会長としての仕事と、番として白竜と黒竜に支えられながらもしっかりと各国国王達との会談を済まし、すぐに魔の森にある本邸へ戻りました。
気づけば白竜と黒竜が何重にも張った結界の中で仮死状態となってもう2年が経過しています。
その間もグランは可能な限り娘の元へ通い、私とベルグルも半年に1度だけならと白竜と黒竜に極秘で魔の森への訪問を許されました。
「この2年でワルシャマリ国も落ち着きましたね」
「ああ。
まさかあの伴侶が言語に関する異能を持っていて、外交官長と摂政を兼任するとは思わなかったが」
「しかもワルシャマリ国元国王が伴侶とはいえ彼の護衛となるとは更に予想外です」
娘の話の流れでふと隣国の2年を思い返します。
元国王は当初、罪人として放逐との声もありましたが在位中の治世と国民からの減刑への嘆願を鑑み、伯爵位への臣籍降下となりました。
ヨハンは元国王の伴侶として伯爵夫人となった後、病をビビット商会から仕入れた薬によって半年ほどで完治させています。
彼が摂政兼外交官長に就任したのはそれから更に半年後。
ザガド国王の戴冠と開国1周年祝賀会で公表されました。
あの反乱の首謀者だった王弟ペネドゥルとその元近衛騎士だったラジェットですが、実は蓮香が地下牢に訪れた翌日、亡くなっていました。
ペネドゥルは笑いながら舌を噛み切り、ラジェットは憤怒の形相で床に何度も頭を打ちつけ、見つけた時には既に事切れた後でした。
新国王戴冠の日、魔の森でレンに誓った通り全ての罪を明らかにし、攘夷の可否を国民に求めた彼は無事、国民に受け入れられ今も国王として邁進しているそうです。
娘の誘拐が引き金となり開国したあの国の行く末が、実りある物になるよう切に願うばかりです。
※※※※※※※※※
お知らせ
※※※※※※※※※
このお話もあと少しで完結します。
応援いただいた方、お気に入り登録していただいた方、誤字脱字を報告下さった方ありがとうございます。
他にも短編、長編小説をいくつか作品を投稿しておりますので、気が向かれましたらそちらもご覧下さい。
こちらを完結させましたら、次回作の投稿を開始する予定です。
今後ともよろしくお願いしますm(_ _)m
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