《完結御礼》【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語

嵐華子

文字の大きさ
207 / 210

207.眠る番

しおりを挟む
「レン、やっと会える」

 そう呟いた俺は、いつぞやのあの日親父から聞かされた白竜とファルの住む本邸の玄関ホールに転移した。
レンが眠りについてからのこの2年ですっかり勝手知ったる邸となった。
もちろんどこにあるのかもよく知っている番の部屋へと急ぐ。

 今回は遠征があったせいで3週間も会えなかった。
その間に目覚めてしまったらと考えるだけで眠れぬ夜を過ごしたんだ。
加えて夜勤明けで実はいささか眠気と疲労感があるものの、足取りは軽い。

 家主である白竜とファルには転移した時点でわかるらしい。
もちろん事前に許可も得ているから不法侵入ではない。

 レンの部屋のドアに手をかけようとしたところで中から白銀の髪と目の美丈夫モードの白竜が顔を出す。

「いらっしゃい」
「白竜、久しぶりだな。
レンは変わりないか?」

 気安い仲になった白竜に促されるまま、部屋に入る。
ファルと違って同じ竜でも白竜の物腰は柔らかい。
外は冬が近づきつつあり冷えるが、部屋の中は暖炉に薪が焚べられていて暖かく、思わずほっとする。

 あの狭い小屋とは比べ物にならないほど広い部屋。
この部屋の更に奥にある、あのドアを開けた部屋がレンの寝室だ。
レンの部屋はあの小屋よりも広い。

「そんなに久しぶりだったかな?」

 首を傾げる白竜には悪いが、寿命がとんでもなく長い竜にとっての3週間と俺の3週間を一緒にしないで欲しい。

「レンは変わりないよ。
でも先週から仮死状態を完全に脱しているからね。
レン自身の気も魔力も体にしっかり満たされたから、早ければ本当に今目覚めても不思議じゃないかな」
「本当か!
レン!」

 喜び勇んで寝室へと向かう。

「何や兄さん、さっそくやん」
「こんにちは、グラン隊長」
「トビ、お前達もいたのか。
カミュラ、いつもレンをありがとう」

 先ほどの白竜同様、白竜の伴侶であり、レンが会長を務めるビビット商会副会長でもあるトビこと、トビドニアがドアを開けて迎えてくれる。

 今はレンの身の回りの世話役としてこの邸で過ごすカミュラと違い、副会長として世界を飛び回るトビとはかなり久々だ。

 レンの幼馴染みのカミュラが番のゼネガラと伴侶となった時に開いた内々の祝宴以来だから、半年ぶりだろうか。
カミュラはレンの体の傷が裂けたあの日、蓮香からレンに戻ってすぐに血塗れでトビの元に走って助けを呼んでくれていた。

 カミュラ達夫婦はレンが目覚めるまで別居婚を選択してくれている。
新旧の魔の森の主達がこの森でのゼネガラの同居を許さないせいだ。
彼は元々魔の森の侵入者だったせいだろう。
だからカミュラは俺がこの邸にいる時は夫の元へ帰っている。

 ちなみにトビが白竜の伴侶という事は安全の観点から秘密だ。

「これ、遠征先で有名だった菓子だ。
ゼネガラと食べてくれ」
「あ、ありがとうございます」

 ペコリと会釈し、渡した土産を嬉しそうに受け取ってくれる。

「それじゃあ、僕は帰ります」
「ああ。
旦那によろしく」
「送って行くよ」

 白竜と揃って出ていくカミュラはここ1年ほどでやっと俺にも慣れてくれたが、元奴隷として幼少期を過ごした人属の彼は未だに獣人への警戒心と恐怖心を併せ持つ。

「レン、ただいま」

 トビがそれまで自分が使っていただろう椅子を差し出すのでそれに腰を下ろし、熱望した最愛に声をかける。
いつも通り力のこもらない手を取って甲に口づけ、小さな手の平に頬をすり寄せた。

 レンは仮死状態だったせいでこの2年、姿は全く変わっていない。
ただ、気がある程度華奢な体を巡るようになった頃から髪だけは伸びた。

 まだあどけなさの残る寝顔は仮死状態から完全に脱したからだろうか。
随分血色が良くなっていて目覚めの兆候のようで心が踊る。

 いつも通り番である俺の獣気を小さな体に流す。
いつの頃からか、そうするとほんの少しだが表情が和らぎ、弱々しいが手を握り返してくれるようになった。

「たまにやけど、一昨日くらいからちょっとだけ手足を動かすようになったてカミュラが言うてたで」
「本当か!
レン、俺の声が聞こえているか?!
今日から暫くここにいるから、安心して目を覚ましていいからな!」

 嬉々として話しかけるが、特に反応はない。
だがそれでもこうやって言ってやれる事が何より嬉しかった。

「ファルはどうした?」
「黒竜やったら侵入者片してくる言うて出てったわ」
「そうか。
遠征先の他国の兵の間でもわが国の黒の番の話は聞いた。
今後もレンを狙う奴らは後を絶たないだろうな」
「それに関してはホンマ悪い思うわ」
「仕方ないさ。
レンが白竜と黒竜の番だと誤解させておく方が都合が良いのは間違いない。
その為にあの時蓮香が白竜と黒竜をわざと両側につけて番として挨拶したんだ。
それに番に関しては俺の存在も秘密になっているからトビの事は言えない。
まあ俺達と違ってレンは魔の森から出ない。
森にいれば侵入者が多少出てもレンは安全なはずだ。
蓮香もそうしろと言っていただろう」
「まあなあ。
蓮香ちゃんて口悪いし腹黒いけど、レンちゃんと同じで懐に入れた人にはやたら面倒見ええねんなあ」
「そうだな。
特にトビにはな」

 ジトリとした目で見れば肩を竦める。

「しゃあないやん。
俺も何でかはわからへんもん。
知ってるんは2年前に蓮香ちゃんと夢見で話した師匠だけや」
「相変わらず教えられていないのか?」
「まだ今やないて毎回言われてるわ。
それより兄さんもちょっと仮眠取ったら?
何や顔が疲れてるで」
「ああ、顔に出ていたか。
遠征から帰った直後の宿直明けはきつかった」
「何でそんな事したん?」
「レンとの時間を数日もぎ取る為に決まってるだろう。
お陰で4日は確保できた」
「兄さん····」

 何故そんな呆れた顔をされるのかわからん。

「ま、それやったらレンちゃんと眠ったら?
師匠はカミュラ送った足でゆっくり買い物して最近趣味になってる人の観察したらベル爺の隠居地で一泊する言うてたし、俺はレンちゃんの小屋の地下にちょっと用あるし。
黒竜も兄さんおるんやったら森の周辺見回ってから帰るんちゃう?」
「そうする。
獣体で寝てればレンが起きてひっついて来るかもしれないしな」
「う、うーん····まあそうやったらええな」

 微妙な顔すんな。
手足を時々動かすならそれくらいありえるだろう。

「ま、ほなおやすみ~」

 俺の不穏な気配を察知したのかトビはそそくさとでていった。

 俺は服を脱いで獣体になるとレンの体の下に自分の体を滑らせて腹に乗せる。
潰さないように気をつけながら丸くなって抱えこんだ。

 番特有の甘い香りを楽しみつつ、目を閉じて微睡む。

 レンが気になって数週間眠りが浅かったのもあるだろう。
遠征の疲れが抜けないまま無理に宿直をしたのも悪かったのかもしれない。

 ふと心地良い腹の重みが無くなった気がして目を覚ます。

「レン?」

 最愛の番が腹から忽然といなくなっていた。


※※※※※※※※※
お知らせ
※※※※※※※※※
このお話もあと少しで完結します。
応援いただいた方、お気に入り登録していただいた方、誤字脱字を報告下さった方ありがとうございます。
他にも短編、長編小説をいくつか作品を投稿しておりますので、気が向かれましたらそちらもご覧下さい。
こちらを完結させましたら、次回作の投稿を開始する予定です。
今後ともよろしくお願いしますm(_ _)m
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

遊鷹太
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!

エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」 華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。 縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。 そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。 よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!! 「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。 ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、 「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」 と何やら焦っていて。 ……まあ細かいことはいいでしょう。 なにせ、その腕、その太もも、その背中。 最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!! 女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。 誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート! ※他サイトに投稿したものを、改稿しています。

目覚めたら魔法の国で、令嬢の中の人でした

エス
恋愛
転生JK×イケメン公爵様の異世界スローラブ 女子高生・高野みつきは、ある日突然、異世界のお嬢様シャルロットになっていた。 過保護すぎる伯爵パパに泣かれ、無愛想なイケメン公爵レオンといきなりお見合いさせられ……あれよあれよとレオンの婚約者に。 公爵家のクセ強ファミリーに囲まれて、能天気王太子リオに振り回されながらも、みつきは少しずつ異世界での居場所を見つけていく。 けれど心の奥では、「本当にシャルロットとして生きていいのか」と悩む日々。そんな彼女の夢に現れた“本物のシャルロット”が、みつきに大切なメッセージを託す──。 これは、異世界でシャルロットとして生きることを託された1人の少女の、葛藤と成長の物語。 イケメン公爵様とのラブも……気づけばちゃんと育ってます(たぶん) ※他サイトに投稿していたものを、改稿しています。 ※他サイトにも投稿しています。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

処理中です...