竜の国のカイラ~前世は、精霊王の愛し子だったんですが、異世界に転生して聖女の騎士になりました~

トモモト ヨシユキ

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第13章 暗黒の大地へ

13ー2 ラネア様

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 13ー2 ラネア様

 というか王妃様は、ほんとに淑やかな女性で、腕だって剣など持ったことがないというぐらいほっそりしていて。
 きっと、わたしが聖女アニノマス様の騎士だからということで無理してそんなことをおっしゃっているのだとばかり思ったのだ。
 だけど。
 見たことのない片刃の美しい刀剣を手にされた王妃様は、まさに鬼神のごとく強かった。
 わたしは、油断も相まって瞬殺されてしまった。
 地面に這いつくばったわたしの喉元に刃を突きつけて王妃様は、にっこりと微笑まれたのだ。
 「さあ、約束ですわね?カイラ」
 というわけでわたしは、この休暇を王宮で王太子妃教育を受けて過ごすことになった。
 後で知ったのだが、ラネア王妃様は、東の小国ジパングの姫君であると同時にそのジパングの守護騎士とまで呼ばれていた姫騎士だったのだという。
 「控えめにいわせていただいてもラネア様は、最強の騎士でございました」
 わたしの世話をしてくれているラネア様のメイド長であるサリアンがほぅっと吐息をついた。
 「カイラ様のおかげで久々にラネア様の勇姿を拝見することができました」
 マジですか?
 それからわたしは、昼夜木刀を隠し持ちラネア様の隙をうかがう生活を送っていた。
 ラネア様に勝てば王太子妃教育から逃れられる。
 そう、ラネア様がおっしゃったのだった。
 「私を倒せたらここから出ていくことを許しましょう」
 ラネア様は、花のように微笑まれた。
 しかし。
 長い休暇の間、ずっと王妃様の隙を探していたけれど、まったくダメだった。
 なんども木刀で挑んだけれど、一本もとれなかった。
 ラネア様は、余裕でわたしの一撃を防いでは、わたしをお茶やらなんやらに誘ってくださった。
 一緒に日光浴をしながら苦手な刺繍をさせられているときも、ダンスの練習をさせられているときも、ラネア様には隙がなかった。
 常に美しいほどに研ぎ澄まされたエレガントな動きにわたしは、翻弄されていた。
 ラネア様は、わたしにご自分の祖国のお話をしてくださった。
 「私の祖国では、強い者がすべてを凌駕する国でしたの。強さこそが善。そんな私がこの国の若い王太子のもとへ嫁ぐことになったのです」
 ラネア様は、懐かしむように目を細められた。
 「嫁ぐ日に私の父王は、いいました。『もしも王太子がお前にふさわしくない男ならお前の手で殺して戻ってくるがいい。そうしたらその時は、お前をこの国の時期王として認めよう』」
 
 
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