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第15章 魔王国

15ー10 反乱

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 15ー10 反乱

 シタールは、わたしたちを砦の中へと招いた。
 砦の一角にある広間に通されたわたしたちに猫耳の獣人のメイドさんがお茶を運んでくれた。
 「こんなものしかありませんが」
 メイドさんは、わたしたちの前に黄金色の小さな丸い焼き菓子がつまれた皿を差し出した。
 「クコの実をすりつぶして焼いた菓子です。味は、それほどよくないですが栄養があります」
 シタールは、そういうとわたしたちの前に腰を下ろした。
  「なぜ、イーサ王国の将軍であったあなたが盗賊の真似事などされているんです?」
 クロノフさんが問うとシタールさんが答えた。
 「この砦にいる者たちは、みな、幼かったり、傷ついていたりして戦うことができない者たちです。私は、ジェリコ王子とともに彼らを守るために王国と戦っているのです」
 「王国と?」
 クロノフさんが問う。
 「なぜ、あなた方が王国と戦わなくてはいけないのです?」
 「それは」
 「そのことは、俺が話そう」
 シタールの横にいたジェリコが口を開いた。
 「すべては、過去からの亡霊の起こしたことだったんだ」
 ジェリコは、話し始めた。
 ある日、イーサ王国に現れた一人の聖者がいた。
 それは、みすぼらしい黒いフードを身にまとった一人の老人だった。
 彼は、イーサ王国の王都の中心にたっていた聖樹へと近づくとそこで自らの体に刃をたてた。
 その聖樹に己の血を吸わせながらその聖者は、告げた。
 「滅ぶがいい、この世界は、ヤムエル様のもの。すべて、闇に染まるがいい!」
 聖者の汚れた血を吸った聖樹は、瘴気を放ち始めた。
 これが、イーサ王国の滅びの始まりだった。
 「聖者は、かつてイーサ王国に遣えていた魔道師の一族の出身だった。彼らは、邪神ヤムエルの信徒だったためにイーサ王国を追放されたことを恨んでイーサ王国を滅ぼそうとしたんだ」
 王都の聖樹を汚された王国では、瘴気による病が流行した。
 王であったジェリコの父フロイツも病に倒れた。
 国は、あっという間に病に蝕まれて崩壊していった。
 それと同時に邪神の信徒たちは、勢力を拡大していった。
 そして。
 魔王の誕生。
 人々は、イーサ王国の王族たちを追放すると魔王を新しい王とした。
 「シタールは、俺を守るために国を捨てた。そして、魔王のもとでは、生きていけない弱者たちを集めてこの砦にこもった」
 

 
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