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しおりを挟むざわざわ。
ざわざわ。
朝の食堂。
そこで俺は今日も、毎日代わり映えのしない食事をとる。
目の前には、豪奢な食堂に見合った豪華なメニューの中で唯一胃に優しいと言えるだろう、最早ほとんど流動食と化しているおじや。1番食堂で安い料理。
つい最近導入されたこの料理は、この学園のメニューの中で一番人気がない。
学生証代わりにもなっている学園支給のスマートフォンを座席にあるタブレット端末に翳し、精算完了の文字を確認する。とんでもない金持ちが集まる『宝帝学園』のあらゆる設備は学校としては考えられない程進んだものだ。何人もの美しいウェイターが、生徒個人個人に丁重に料理を運ぶ姿はホテルと言っても過言ではない。
俺の元へと間もなく運ばれてきたおじやを、恐る恐る俺の前に置くウェイター。ウェイターの中でも一際美しい顔をしたこの人は密かにここに集う生徒達の人気者だったりするらしい。ーーどうでもいい事だが。
「ありがとうございます」
それでもにっこりと笑って御礼を言うと、ウェイターは真っ青な顔でいっそ憐れな程唇を震わせながらお辞儀をし、せかせかと去っていった。きっと他のウェイターに押し付けられたのだろう。
周りの生徒達も息を詰めて俺達の事を観察していたようで、あちこちで安堵の息を吐く音が聞こえる。
俺はそんな様子を気にせず両手を合わせ、おじやを口に入れてもう一度微かに微笑んだ。
そんなに怖がらなくても、もう何も出来ないのに。
ほら、今だって俺の周りを囲むように座った数人の風紀委員が、食事をとる俺を睨みつけるように監視している。俺に恨みを持つ生徒が、あちこちから殺意を込めて俺を見ている。
憤怒、恐怖、憎悪。
中等部でたくさんの生徒を地獄に晒した俺。
腹違いの、それでも同い年の弟の親衛隊長として覇権を握り、制裁と評して無差別に色んな生徒をリンチした。リンチの内容には敢えて不干渉だったが、中にはレイプされた生徒も何人もいた事を事実として知っている。俺の悪逆非道な制裁行為の全ては、統率の取れた忠実な部下たちのもと完全犯罪となって行われた。
どれだけ俺を疑おうと風紀は証拠を見つけられず、五月蝿い弟には「どうかやめてくれ」と何度も何度も言われた。昨日まで仲の良かった友人達が、次の日には俺の気まぐれによってボロボロになりながら憎悪の篭もった目で俺を見る。
そんな毎日が、楽しくて楽しくて仕方がなかった。
しかし。
ある日突然なんの脈絡もなく、俺の「制裁」の要である情報屋にして忠臣の1人だったはずの部下が裏切った。瞬く間に風紀に俺達の悪行の証拠が集まり、俺は風紀に連行された。その時の生徒達の嘲笑の声を、今でも覚えている。
他の部下は俺の罪を全て代わり、俺以外は退学処分。
そして。
俺は無罪で今もこの学園で悠々と過ごしている。
でも、これでお前らは俺を忘れない。
ずっと覚えていてね。
どうか、忘れないでね。
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