風音樹の人生ゲーム

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風音樹。12月24日生まれ。B型。

宝帝学園高等部1年X組所属。
元中等部生徒会副会長親衛隊隊長。
現在帰宅部。
風紀要監視Lv5(Max)。

 ほぼ絶縁状態となっている、母違いの同い年の弟(1年S組所属の現在生徒会庶務)がいるけどーーまぁ当然の如く、使用人含め風音家の人達からは、存在しないものとして扱われている。
 ちなみに実の母は5歳の時に死亡。

 特筆すべきこととしては、中学一年生の健康診断で胃癌が発覚したことか。現在ステージ3らしい。知らないけど。
 診断された時には余命5年程、と言われたから多分余命あと2、3年くらい。ちなみに手術、延命治療などなどは一切行っていない。
 あと、診断した医者、理事長以外には誰にも教えていない。




 俺について語るとすれば、こんなものだろうか。









 食堂から出て、俺は人目もはばからず真っ直ぐに人気のない2階端のトイレへと駆け込む。風紀の追っ手の気配を感じつつも、胃がぐるぐると回る気持ち悪い感覚と刺すような痛みに、我慢出来ずに個室の鍵を閉めた。
 そのままトイレに着いた安心感からか、俺は込み上げる吐き気を抑えることも出来ず、便座に倒れ込むようにしゃがみこみ、胃の中のものを思いっきり吐き出す。


「ぅ"ぇ、えぇぇ"え"っっゲホッゴホッ、うぐ、え""……」


 胃液すらも全て吐き出してしまって、直ぐに少ない体力が底を尽きた。冷や汗が背筋を流れる感覚を味わいながら、重い瞼を閉じる。


「おい!!!ここを開けろ!!!!」


 しかし、間もなく追いついてきてしまったらしい。個室のドアをガンガンと容赦なく叩く風紀委員に苛立ちを覚えて、思わず大きなため息を吐いてしまう。それすらもしんどいというのに。
 とはいえ無視をするとこのままドアを蹴破って来かねないので、俺は震える手を無理矢理あげて鍵を開けた。すると直ぐに乱暴にドアを開けた風紀委員が、個室に立ち込める異臭に不快そうに顔を顰める。

 ……その顔に優越感がチラついているのには気付いていないんだろうなぁ。


「監視対象が個室で1人になろうとするな。……汚物は汚物らしくしていようとするその姿勢は認めるがな。」


 そう吐き捨てるように言った風紀委員は、しゃがみこんでいる俺の襟を掴むと乱暴に個室の外に投げ飛ばした。そさて、あまりの勢いにそのまま倒れ込んでしまった俺の腹を足で押さえつけ、グリグリと執拗に踏みにじる。
 加虐を愉しんでいる心が映し出されて歪みきった笑顔を、俺は何処か遠くに立ったような不思議な気分で生理的な涙で滲んだ視界で眺める。


「ぐっっぅ、ゲホッ……!」

「お前の我儘にこうしていちいち付き合わされる俺の身にもなれ。朝は毎日遅刻ギリギリで、お前如きの生活をいちいち報告せねばならない。ーー不愉快極まりない。


 いっそさっさと死んでくれ」


 何処までも冷徹に告げられるその言葉が冗談ではないことくらい、……皆の総意である事くらい、知っている。実際に「頼むから死んでくれ」と叫ばれた事もある。

 再び訪れる吐き気を堪えながら、ぼんやりと溶けた思考のまま俺を踏み付ける風紀委員を見上げる。当然目が合って、直ぐ様おぞましいとばかりに顔を顰められて、腹から退けられた足で今度は頬を蹴られた。冷たい床に頭が打ち付けられ、脳が揺れる。

 まぁ、この暴力にも既に慣れた。何よりも自業自得であるし、殺されても文句は言えない身分だ。寧ろ、真上に立つ風紀委員が憐れでならない。

 可哀想に。俺なんかの監視を任されて。
 でも安心してよ。どうせもうすぐ死ぬから。


 ふと、血の味がこみあげて来るのを感じた。あぁダメだ。吐血をしてしまえば流石に怪しまれる。ただの体調不良で居られなくなる。

 俺はゆっくりと重たい身体を持ち上げ、再び個室に入る。吐くとわかっているからだろう。今度は特に咎められることは無かった。
 必死の思いで個室の扉を閉め、咳き込みながら目を閉じ、腹の中で燻るものを吐き出す。

 
 ゆっくりと目を開けると、やはり便器の中は血みどろで。こればっかりは何度見ても慣れない。

 苦笑が零れる。
 あぁ、なんでだろう。泣きそうだ。



「そ、…な、しかく、ないのになぁ……」
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