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帝国からの迎え
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「エドゥアルド殿下であられますな?」
「この国風に発音するならそうだね。帝国式に倣った方がよいならエドワードと発音するべきだけど……。ただ、皇帝陛下と同じ名前であるのをよしとしない者も居るかもしれない。その辺りは君たちの事情に合わせよう」
暫くして帝国からの使者がやって来た。
離宮には謁見の間などないが、応接室として使える部屋くらいはある。そこへ離宮の主人として初めて座りながらエドゥアルドは可能な限り澄まして答えた。被征服者が征服者に逆らっても良いことは何一つないが、使者ごときに王族であり皇族である者が阿るのもおかしな話だ。素直に皇帝はしないが、概ね認識は正しいとだけ答えて、後の反応は相手に任せたのである。
「陛下はそれで構わぬとの仰せです。また我が国にも同じ名前の者は多数おりますので、概ね地位や立場で呼ばれることになるでしょう」
「そうか。では陛下の御気が変わったら改めるとして……。さて、本題だな」
ここまでは軽いジャブのようなものだ。挨拶に続く潤滑油でしかない。
もっともこれから語られることは一切断る事は出来ないし、ただ頷き続けるしか出来ない事だ。被征服者であるエドゥアルドには征服者の走狗に対して出来る事など何も無かった。だが何も無いからこそ出来る事もある。
「殿下にあられましては帝都に御移り戴く事になります。何か質問やご要望はござますかな? 可能な範囲でお応えいたしますが」
「特にない。持って行くモノは侍従見習いであるこのカルロスのみだ」
要望と言われてエドゥアルドは従者についてだけ望んだ。
どうせ我儘を言っても叶えられることもあるまい。だから他には何も告げたりはしない。最初から自由になる物など何も無く、この部屋にある調度品は国家の財産。自室にある飾り武器や書物に大した価値がある訳でもなかった。それらに恋々と語るよりも、必要なモノは一つだけだと答えたのである。
「……何かお持ちする物は?」
「これから帝国で暮らすのだ。こちらの装束を身にまとって行くわけにもいくまい。君らが案内した場所で用意された服に袖を通すさ。ただ、私の体や動きに合わせてくれるのは彼だけでね。居なければ服を着るのもままなるまいよ」
何も所持していない貧乏暮らしだが、それを正直に語る事もない。
卑屈になるのではなく帝国流に合わせるから過去は不要と告げただけだ。もちろんソレとして文句を付けるなら『卑屈過ぎる。所詮は征服された国の小僧か』と言われるだろう。だが、事実に抗って何に成ろう。ただカルロスという少年にのみ言及したのだ。
「承知しました。早速に帝都へ参りましょう」
「任せる、カルロス。ただし命じられた場合はすまないがチャールズとして頼むぞ」
「はっ。エドゥアルド様の赴くところが臣の居場所であります」
幸いにも使者は特に何も言わなかった。
侍従見習いの少年など気にもしていないのだろうし、貴人に付き従う下働きが存在するのは当然の事だ。帝都に移ってから専任の者を宛がわれるにせよ、『どの程度の扱い』すらロクに決まっていない現状である。『そこの小僧も置いていけ。身一つで帝都に行け』と言うつもりもないのであろう。もちろん連れて行った先で、お前は余分だと放逐される可能性もゼロではないのだろうが。
「エドゥアルド殿下であられますな?」
「この国風に発音するならそうだね。帝国式に倣った方がよいならエドワードと発音するべきだけど……。ただ、皇帝陛下と同じ名前であるのをよしとしない者も居るかもしれない。その辺りは君たちの事情に合わせよう」
暫くして帝国からの使者がやって来た。
離宮には謁見の間などないが、応接室として使える部屋くらいはある。そこへ離宮の主人として初めて座りながらエドゥアルドは可能な限り澄まして答えた。被征服者が征服者に逆らっても良いことは何一つないが、使者ごときに王族であり皇族である者が阿るのもおかしな話だ。素直に皇帝はしないが、概ね認識は正しいとだけ答えて、後の反応は相手に任せたのである。
「陛下はそれで構わぬとの仰せです。また我が国にも同じ名前の者は多数おりますので、概ね地位や立場で呼ばれることになるでしょう」
「そうか。では陛下の御気が変わったら改めるとして……。さて、本題だな」
ここまでは軽いジャブのようなものだ。挨拶に続く潤滑油でしかない。
もっともこれから語られることは一切断る事は出来ないし、ただ頷き続けるしか出来ない事だ。被征服者であるエドゥアルドには征服者の走狗に対して出来る事など何も無かった。だが何も無いからこそ出来る事もある。
「殿下にあられましては帝都に御移り戴く事になります。何か質問やご要望はござますかな? 可能な範囲でお応えいたしますが」
「特にない。持って行くモノは侍従見習いであるこのカルロスのみだ」
要望と言われてエドゥアルドは従者についてだけ望んだ。
どうせ我儘を言っても叶えられることもあるまい。だから他には何も告げたりはしない。最初から自由になる物など何も無く、この部屋にある調度品は国家の財産。自室にある飾り武器や書物に大した価値がある訳でもなかった。それらに恋々と語るよりも、必要なモノは一つだけだと答えたのである。
「……何かお持ちする物は?」
「これから帝国で暮らすのだ。こちらの装束を身にまとって行くわけにもいくまい。君らが案内した場所で用意された服に袖を通すさ。ただ、私の体や動きに合わせてくれるのは彼だけでね。居なければ服を着るのもままなるまいよ」
何も所持していない貧乏暮らしだが、それを正直に語る事もない。
卑屈になるのではなく帝国流に合わせるから過去は不要と告げただけだ。もちろんソレとして文句を付けるなら『卑屈過ぎる。所詮は征服された国の小僧か』と言われるだろう。だが、事実に抗って何に成ろう。ただカルロスという少年にのみ言及したのだ。
「承知しました。早速に帝都へ参りましょう」
「任せる、カルロス。ただし命じられた場合はすまないがチャールズとして頼むぞ」
「はっ。エドゥアルド様の赴くところが臣の居場所であります」
幸いにも使者は特に何も言わなかった。
侍従見習いの少年など気にもしていないのだろうし、貴人に付き従う下働きが存在するのは当然の事だ。帝都に移ってから専任の者を宛がわれるにせよ、『どの程度の扱い』すらロクに決まっていない現状である。『そこの小僧も置いていけ。身一つで帝都に行け』と言うつもりもないのであろう。もちろん連れて行った先で、お前は余分だと放逐される可能性もゼロではないのだろうが。
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