江ノ島の小さな人形師

sohko3

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自由研究

七里ヶ浜

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「すごいなぁ。
ここまでちゃんと考えてくれてるなんて。
でも、オレの宿題なのに下描き手伝ってもらっていいのかな」

「だって、わたしが見たいからって理由でやってもらうんだから、いちばん手間がかかりそうなところは手伝いたくて。
それに……葉織くんと合作って、楽しそうだなって」

 もじもじと手をいじり、恥じらいながら「葉織くんが嫌なら、いいんだけど」と付け足す。

 九月から地元の小学校に転入する予定の羽香奈には、夏休みの宿題がない。

 自由研究ひとつだけ、それも手伝いってことならないしょで合作ってことにさせてもらってもいいかなぁ。

 葉織もそう思った。

「そういうことなら、甘えさせてもらおうかな」

「ほんと? やったぁ」


 本来やらなくていいはずの手間だというのに、羽香奈は純粋に嬉しそうだ。

 葉織も羽香奈が楽しそうな姿を見るのは単純に嬉しく思える。


 羽香奈が下描きするのにしばらく時間がかかるので、葉織は時間潰しに海岸を歩いて流木探しをすることにした。

 片瀬海岸は水着の海水浴客が多く、服を着たまま無為にうろつくのも落ち着かないので、

「ちょっとだけ歩いて七里ヶ浜の方を見てきていいかな。
お昼ごろまでに戻ってくるから」

「了解です!」

 ハツは素手でおにぎりを作るし、保冷剤を入れる工夫などもしているわけでもない。

 あんまり時間が経つと傷んでしまうから、早めに食べてしまう必要がある。

 裏表なく、ちょっとだけ見てすぐに戻るつもりだった。


 七里ヶ浜の方はいつも通り、人の姿がまばらだった。

 サーファーが思い思いに楽しんでいる姿もいつも通り。

 葉織はサーフィンのような全身使ったアクティブな趣味への関心は薄いが、波に乗ったり波間に揺られたりしているのは普通に気持ちよさそうだなぁとは思いながら眺めている。


 海岸の、波のかぶらない位置に呆けるように立ち尽くし。

 そんなサーファーを羨ましそうに、あるいは恨めしそうに眺めながら黒い靄を出している人の姿も、葉織には日常的だった。

 ああ、今日もそんな感じの人がいる。

 羨ましいなら自分もやってみればいいのに、どうしてああいう人達をそういう目で見ているんだろう。

 いくら心に触れてみても、未だに葉織にはよくわからない。

 まだ若い、二十代半ばくらいの男性だったから余計にそう思う。

 彼は右手にだけ、かすかに黒い靄をまとわせている。

「お兄さん、こんにちは」

「……ん?」

 何の小細工もなく、葉織は男性の隣に立ち、小さな体で長身の彼を見上げている。

 しかもなぜだか右手を差し出している。握手?

 義理立てする必要もないのだろうが、相手は子供だし、と思ったのか男性は素直に握手を受け入れてくれた。

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