36 / 121
第8章
ストラディゴス、ショックを受ける
しおりを挟む
ネヴェルから少し離れた山間の滝。
フィリシスに助けられた彩芽とストラディゴスは、ひと気のない場所におろされる。
「お前の事、俺の好きにさせてくれるんだよな」
「何でもする。煮るなり焼くなり好きにしてくれ」
「ストラディゴスさん……」
ストラディゴスが、彩芽がオルデンと付き合うと勝手に思い込んで、身を引く覚悟だった事は、先ほどの告白までの会話から察しがついていた。
だからこそ、フィリシス達に最初から殺されても良いから償おうと、彩芽を助ける覚悟のもと城に乗り込んできたのは明らかだ。
それなのに、告白をして尚、フィリシスに対して罪を償おうと本気でぶつかっていくストラディゴスは、ただ彩芽の事が好きなだけでは無い事が彩芽にもわかった。
愛する人に対して相応しい人間になりたいと言う、覚悟がそこにはある。
ストラディゴスは、相応しい人間に近づくには、命を懸けても足りないと思っている。
ブルローネでルイシーが彩芽に言っていた通り、巨人の望む自分へ変わる為に必要な事が、この贖罪なのだろう。
フィリシスは、許しを乞うのではなく、償いたいと願うストラディゴスを見て、悔しいと思った。
自分と仲間達を蔑ろにした愛する男が、別の女の為に、誠実で前よりも魅力的に変わろうとしているのだ。
なぜそれが自分の為では無かったのか、未練があればこそ思ってしまう。
だからこそ、試したくもなる。
「アヤメ、ディーに計画の事を全部話してやってくれ。俺は城に戻る」
「待ってくれフィリシス!」
「それとアヤメ、お前も聞いてたよな。俺の好きにさせるって言ってたのをよ。ディー、お前が俺達にした事を全部アヤメに話しな、それでチャラだ」
フィリシスは、悪戯に悪い笑顔をストラディゴスに向け、それだけ言うと、二人を置いて城へと飛び去って行ってしまった。
* * *
滝のほとり、岩場に座る二人。
彩芽に計画の全貌を説明され、ストラディゴスはショックを受けていた。
ルイシーがオルデンに自分よりも遥かに信用されていた事。
オルデンやエルム達、計画に関わるメンバーの一連の行動が演技であった事。
元カノ四人組が、自分の事を既に許し、今でも好意を持っていた事。
そして自分が騎士団の副長の地位にありながら、信頼されずに計画の外側に置かれていた事にである。
自分の行動が全てにおいて空回っていた事実に、愕然とするしかない。
「大丈夫?」
彩芽の言葉に我に返る。
彩芽に出会う前の自分が、どんな風に周囲に見られ評価されていたのかを知り、わかっていても吐き気がした。
しかし、周囲からその様に見られていた事が、今なら十分に理解も納得も出来た。
自業自得。
フォローのしようのない自業自得である。
騎士団副長、元傭兵団団長、金も地位も部下もあり、酒も女も選び放題。
その全ての上に胡坐をかいて、快楽にふけっていたのが、ほんの少し前の自分なのだ。
あの夜、彩芽に聞かされた肩書の話を思い出す。
目の前の女性に出会うまでは、いや、出会ってからも、肩書に踊らされ続けて来たのかもしれない。
「大丈夫だ……」
全然大丈夫では無いが、受け入れるしかない。
アイデンティティだった騎士の肩書を捨て、目の前の女性以外に心の拠り所が残されていないストラディゴス。
それでも、約束を果たさなければならない。
それが、彩芽に相応しい自分になる為の乗り越えなければならない試練と言うならば。
「アヤメ、フィリシスの言っていた……話なんだが」
「酒場でも言ってたよね……」
「聞いていて気分のいい話じゃ無いんだが、聞いてくれるか?」
「もっと、落ち着いてから聞こうか?」
「いや、アヤメさえ良ければ、今話したい。話して、さっきの」
「さっき?」
「話を聞いた上で、告白の返事が欲しい」
フィリシスに助けられた彩芽とストラディゴスは、ひと気のない場所におろされる。
「お前の事、俺の好きにさせてくれるんだよな」
「何でもする。煮るなり焼くなり好きにしてくれ」
「ストラディゴスさん……」
ストラディゴスが、彩芽がオルデンと付き合うと勝手に思い込んで、身を引く覚悟だった事は、先ほどの告白までの会話から察しがついていた。
だからこそ、フィリシス達に最初から殺されても良いから償おうと、彩芽を助ける覚悟のもと城に乗り込んできたのは明らかだ。
それなのに、告白をして尚、フィリシスに対して罪を償おうと本気でぶつかっていくストラディゴスは、ただ彩芽の事が好きなだけでは無い事が彩芽にもわかった。
愛する人に対して相応しい人間になりたいと言う、覚悟がそこにはある。
ストラディゴスは、相応しい人間に近づくには、命を懸けても足りないと思っている。
ブルローネでルイシーが彩芽に言っていた通り、巨人の望む自分へ変わる為に必要な事が、この贖罪なのだろう。
フィリシスは、許しを乞うのではなく、償いたいと願うストラディゴスを見て、悔しいと思った。
自分と仲間達を蔑ろにした愛する男が、別の女の為に、誠実で前よりも魅力的に変わろうとしているのだ。
なぜそれが自分の為では無かったのか、未練があればこそ思ってしまう。
だからこそ、試したくもなる。
「アヤメ、ディーに計画の事を全部話してやってくれ。俺は城に戻る」
「待ってくれフィリシス!」
「それとアヤメ、お前も聞いてたよな。俺の好きにさせるって言ってたのをよ。ディー、お前が俺達にした事を全部アヤメに話しな、それでチャラだ」
フィリシスは、悪戯に悪い笑顔をストラディゴスに向け、それだけ言うと、二人を置いて城へと飛び去って行ってしまった。
* * *
滝のほとり、岩場に座る二人。
彩芽に計画の全貌を説明され、ストラディゴスはショックを受けていた。
ルイシーがオルデンに自分よりも遥かに信用されていた事。
オルデンやエルム達、計画に関わるメンバーの一連の行動が演技であった事。
元カノ四人組が、自分の事を既に許し、今でも好意を持っていた事。
そして自分が騎士団の副長の地位にありながら、信頼されずに計画の外側に置かれていた事にである。
自分の行動が全てにおいて空回っていた事実に、愕然とするしかない。
「大丈夫?」
彩芽の言葉に我に返る。
彩芽に出会う前の自分が、どんな風に周囲に見られ評価されていたのかを知り、わかっていても吐き気がした。
しかし、周囲からその様に見られていた事が、今なら十分に理解も納得も出来た。
自業自得。
フォローのしようのない自業自得である。
騎士団副長、元傭兵団団長、金も地位も部下もあり、酒も女も選び放題。
その全ての上に胡坐をかいて、快楽にふけっていたのが、ほんの少し前の自分なのだ。
あの夜、彩芽に聞かされた肩書の話を思い出す。
目の前の女性に出会うまでは、いや、出会ってからも、肩書に踊らされ続けて来たのかもしれない。
「大丈夫だ……」
全然大丈夫では無いが、受け入れるしかない。
アイデンティティだった騎士の肩書を捨て、目の前の女性以外に心の拠り所が残されていないストラディゴス。
それでも、約束を果たさなければならない。
それが、彩芽に相応しい自分になる為の乗り越えなければならない試練と言うならば。
「アヤメ、フィリシスの言っていた……話なんだが」
「酒場でも言ってたよね……」
「聞いていて気分のいい話じゃ無いんだが、聞いてくれるか?」
「もっと、落ち着いてから聞こうか?」
「いや、アヤメさえ良ければ、今話したい。話して、さっきの」
「さっき?」
「話を聞いた上で、告白の返事が欲しい」
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
異世界で大往生した私、現代日本に帰還して中学生からやり直す。~最強の補助魔法で、冴えないおっさんと最強美女を操って大金持ちになります~
タカノ
ファンタジー
異世界へ転移し、聖女として崇められ、愛する家族に囲まれて88歳で大往生した……はずだった。 目が覚めると、そこは現代日本。 孤児の中学2年生、小金沢ヒナ(14)に戻っていた。
時間は1秒も進んでおらず、待っていたのは明日のご飯にも困る極貧生活。 けれど、ヒナの中身は酸いも甘いも噛み分けたおばあちゃん(88歳)のまま!
「もう一度、あの豊かで安らかな老後(スローライフ)を手に入れてみせる!」
ヒナは決意する。異世界で極めた国宝級の【補助魔法】と【回復魔法】をフル活用して、現代社会で大金を稼ぐことを。 ただし、魔法は自分自身には使えないし、中学生が目立つと色々面倒くさい。 そこでヒナがビジネスパートナー(手駒)に選んだのは――
公園で絶望していた「リストラされた冴えないおっさん」と、 借金取りに追われる「ワケあり最強美女」!?
おっさんを裏から魔法で強化して『カリスマ社長』に仕立て上げ、 美女をフルバフで『人間兵器』に変えてトラブルを物理的に粉砕。 表向きはニコニコ笑う美少女中学生、裏では彼らを操るフィクサー。
「さあ善さん、リオちゃん。稼ぎますよ。すべては私の平穏な老後のために!」
精神年齢おばあちゃんの少女が、金と魔法と年の功で無双する、痛快マネー・コメディ開幕!
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”
どたぬき
ファンタジー
ある日乗っていた飛行機が事故にあり、死んだはずの井原は名もない世界に神によって召喚された。現代を生きていた井原は、そこで神に”ダンジョンマスター”になって欲しいと懇願された。自身も建物を建てたい思いもあり、二つ返事で頷いた…。そんなダンジョンマスターの”はじまお”本編とは全くテイストの違う”普通のダンジョンマスター物”です。タグは書いていくうちに足していきます。
なろうさんに、これの本編である”はじまりのまおう”があります。そちらも一緒にご覧ください。こちらもあちらも、一日一話を目標に書いています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる