8 / 56
7
しおりを挟む入学する為には試験がある。入学する2ヶ月くらい前にある試験を受ける為に、僕は家族みんなで一緒に学園のある王都へとやってきた。
王都へは初めて来た。王都の人の多さに驚いたし、凄く大きな場所できょろきょろと周りを見回してしまった。
「アシェルもライリーもすっかりおのぼりさん状態だな。」
「母さんも父さんも、こういうのは慣れてるんだっけ?」
「まぁな。クリステン王国にいた時は王都に住んでたから。…でも久しぶりにこういう所来ると、人が多くてめんどくさいな。今住んでるところがちょうど良くて慣れてしまったな。」
「兄ちゃん、すごいね。僕たちが住んでるところもこの国では2番目に大きい街だけど、王都は比べ物にならないよ。」
「そうだね、ライリー。…僕、やっていけるかな。」
ソルズも人は多いけど、ここまで多くはない。なんかいろいろ圧倒されてしまってついていけない。
「心配するな。大丈夫だ。すぐに慣れる。」
父さんに頭をぽんぽんとされてしまった。僕は背があまり伸びなかった。母さんよりちょっと高いくらいで、弟のライリーにも追い越されてしまった。頭をぽんぽんされるのは嫌いじゃないけど、ずっと子供扱いされてる感じがしてちょっと恥ずかしい。
王都へは転移門を使ってきたから一瞬だけど、学園へは乗り合い馬車に乗っていく。
ガタガタと揺られながら、学園へと向かう。その馬車の中、なんだか凄い視線を感じる。ソルズでもあったけど、向こうはもう皆僕たちに慣れてるのと仲が良いから忘れてた。
これ、久しぶりだな。ここまでジロジロ見られるのはちょっと嫌だ。
僕と母さんの顔は似てる。父さんに言わせると、地上に舞い降りた神の御使い、天使らしい。初めて会う人にジロジロ見られるのはそのせいだって。容姿が整いすぎてみんな惚けてしまうって。
…学園に入ったらめんどくさい事にならなきゃいいんだけど。
父さんも母さんもそれを心配してる。入学したら僕は学園の寮に入る事になる。だから家族とは別々になる。僕は自分で自分の身を守るように、より気を張らないといけない。だから父さんは剣術や体術をしっかり教え込んできた。
しかも学園生はほとんどが貴族だ。僕みたいな平民は他にも居るかも知れないけど、物凄く少ない。変な事に巻き込まれないように、平民らしく慎ましくしよう。
そして学園の近くで馬車を降りる。ここからは徒歩だ。
まだ入り口までは遠いのに、学園の大きさに目がいってしまう。すごい…これが貴族学園。煌びやかすぎて緊張する…。学園の建物は白が基本。あちこち金で縁取られたり、ピカピカと光るものが目に映る。
こんな環境で落ち着いて勉強できるのかな…。
まぁそれも試験に合格しないといけないんだけど。
僕達は学園へと足を進め、入り口までやってきた。その間も馬車が何台も横を通り過ぎていく。
受付を済ませて、会場の案内を受ける。ここからは僕1人だ。
「アシェル、今まで勉強してきた事をぶつけてこい!」
「兄ちゃんなら絶対大丈夫!」
「毎日頑張ったんだ。気を楽にして受けてこい。」
僕が緊張している事がわかっているのか、明るく励ましてくれる。
「うん。絶対合格するから。……じゃ、行ってきます。」
家族に手を振って、試験会場へ向かう。
試験は筆記と実技の2種類だ。魔法科に進む僕は、筆記に魔法理論と歴史。そして魔法の実技。これを受ける事になる。
他にも騎士科や経済科などがある。それぞれ進む科によって試験内容は異なる。
魔法科の試験会場へ着いた。すーはーと深呼吸を一つ。
大丈夫大丈夫。母さんがいっぱい教えてくれた。父さんも気を楽にしろって言ってた。
よし、と意気込んで中へと入る。僕の番号が書かれた席を探していると、またジロジロと視線を感じる。気にしない気にしない。いつものことだ。
なるべく表情を変えないように歩き、見つけた指定の場所へ座る。
……凄い視線を感じる。気にしないって思ってたけど気になる。早く試験始まらないかな。
しばらく居心地の悪い思いをしていると、試験官が入ってきて試験が始まった。
気持ちを切り替えて、集中集中。よし。
キーンという音と共に試験が終了する。
ふぅ。筆記の出来はまあまあかな。見直す時間もあったし、ミスはなさそうだ。不安な場所もあったけど、多分大丈夫……だと思う。
それから、30分ほど休憩して実技試験の会場へ向かう。
………まだ見られてる。そんなに見て飽きないのかな。
実技は、どうやらあの沢山ある的に向かって魔法を当てるようだ。コントロールとスピードを見るんだろう。
僕の出番が来るまで、他の人の実技を見てみる。……普通の人は10個ある的の半分も当てられてない。母さんも言ってたけど、コントロールって凄く難しいんだ。
やがて僕の番になった。指定された場所へ行く。
「アシェルです。宜しくお願いします。」
「アシェル、ですね。君は…平民なのか。ふーん。じゃあの的に魔法を当てられるだけ当てて。どんな魔法でもいいよ。壊しちゃっても大丈夫。請求したりしないから。ま、平民なら魔力量も大した事ないだろうし、無理だと思うけど。」
そう言ってニヤニヤとしながら説明する試験官。貴族至上主義がいるから嫌な思いもするだろうって父さん言ってたけど、もうそういう人に出会っちゃった。
とりあえず、あの的に魔法を当てなきゃ。壊してもいいって言ってたっけ。…いや、やめておこう。なんかめんどくさい事になりそうな気がする。
使う魔法は水でいいかな。10個の小さめの水球を作って、一気にそれぞれの的へ向かって放つ。パンパンパンと10個の的にほぼ同時に当てる。うん、今日も悪くない。
ちらっとさっきの試験官を見ると、口をパカって開けて固まってた。
「…あの。これでよろしいでしょうか?」
「え?…あ……ああ、だ、大丈夫だ、です。お疲れ、様でした…。」
ペコっと頭を下げてその場を後にする。あの人、変な喋り方になってたな。周りも僕を見て固まってる。…やり過ぎちゃったかな。あんなコントロール、普通はなかなかできないもんね。
もう見た目で目立ってるから今更か。合格しなきゃ意味ないんだから、これでいいよね。
そして、全ての試験を終わらせて学園の入り口へ戻ると父さん達が待っててくれた。
「アシェルお疲れ様!どうだった?」
「うん。たぶん大丈夫だと思う。凄く緊張して疲れちゃった。」
「流石の兄ちゃんでもそうなるのか…。僕もすごく緊張してミスしそう。2年後が怖い…。」
「嫌な目にあわなかったか?」
「すごく見られたけど、声掛けられたりとかはなかったよ。大丈夫。」
そうか。と一言言って頭をぽんぽんしてくれた。
じゃあせっかく王都に来たから観光でもして帰ろうか、と馬車乗り場へ向かい出した時だ。
「…待って!待って!待ってくれ!そこの銀髪の君!」
ん?なんか聞いたことのあるセリフだな、と思って後ろを振り返ると背の高い、くすんだ金の髪の男の子がこっちへ向かって駆けてきた。
「あのっ!…君はソルズの街に住んでる子だよな?」
「? 確かにソルズの街に住んでいますが…。」
誰?なんで僕がソルズの街に住んでるって知ってるの?
「…貴族の方とお見受けします。失礼ですがお名前を伺っても?」
父さんが僕を庇うように一歩前に出る。
「あ。失礼した。俺はアーネスト・スタンディング。スタンディング辺境伯の三男だ。」
「…スタンディング辺境伯令息様が、うちの息子になにか御用でしょうか?」
彼の名前を聞いて、父さんの言葉の中に硬さが出る。
「あの…子供の頃に一度彼に会っていて、まさかここでまた会えるとは思わず声をかけてしまった。君もこの学園に入学を?」
「……はい。そのつもりで本日は入学試験を受けに参りました。」
「…そうか。……急に声をかけてすまない。これで失礼する。」
そう言うと彼はそのまま何処かへ消えていった。僕と会ったことがあるって言ってたけど、誰だっけ??
124
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたから能力隠すのやめまーすw
ミクリ21
BL
婚約破棄されたエドワードは、実は秘密をもっていた。それを知らない転生ヒロインは見事に王太子をゲットした。しかし、のちにこれが王太子とヒロインのざまぁに繋がる。
軽く説明
★シンシア…乙女ゲームに転生したヒロイン。自分が主人公だと思っている。
★エドワード…転生者だけど乙女ゲームの世界だとは知らない。本当の主人公です。
恋人に捨てられた僕を拾ってくれたのは、憧れの騎士様でした
水瀬かずか
BL
仕事をクビになった。住んでいるところも追い出された。そしたら恋人に捨てられた。最後のお給料も全部奪われた。「役立たず」と蹴られて。
好きって言ってくれたのに。かわいいって言ってくれたのに。やっぱり、僕は駄目な子なんだ。
行き場をなくした僕を見つけてくれたのは、優しい騎士様だった。
強面騎士×不憫美青年
もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか
まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。
そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。
テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。
そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。
大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン
ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。
テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。
【完結】王子様たちに狙われています。本気出せばいつでも美しくなれるらしいですが、どうでもいいじゃないですか。
竜鳴躍
BL
同性でも子を成せるようになった世界。ソルト=ペッパーは公爵家の3男で、王宮務めの文官だ。他の兄弟はそれなりに高級官吏になっているが、ソルトは昔からこまごまとした仕事が好きで、下級貴族に混じって働いている。机で物を書いたり、何かを作ったり、仕事や趣味に没頭するあまり、物心がついてからは身だしなみもおざなりになった。だが、本当はソルトはものすごく美しかったのだ。
自分に無頓着な美人と彼に恋する王子と騎士の話。
番外編はおまけです。
特に番外編2はある意味蛇足です。
婚約破棄署名したらどうでも良くなった僕の話
黄金
BL
婚約破棄を言い渡され、署名をしたら前世を思い出した。
恋も恋愛もどうでもいい。
そう考えたノジュエール・セディエルトは、騎士団で魔法使いとして生きていくことにする。
二万字程度の短い話です。
6話完結。+おまけフィーリオルのを1話追加します。
冤罪で追放された王子は最果ての地で美貌の公爵に愛し尽くされる 凍てついた薔薇は恋に溶かされる
尾高志咲/しさ
BL
旧題:凍てついた薔薇は恋に溶かされる
🌟第10回BL小説大賞(2022年)奨励賞。2025年11月アンダルシュノベルズより刊行🌟
ロサーナ王国の病弱な第二王子アルベルトは、突然、無実の罪状を突きつけられて北の果ての離宮に追放された。王子を裏切ったのは幼い頃から大切に想う宮中伯筆頭ヴァンテル公爵だった。兄の王太子が亡くなり、世継ぎの身となってからは日々努力を重ねてきたのに。信頼していたものを全て失くし向かった先で待っていたのは……。
――どうしてそんなに優しく名を呼ぶのだろう。
お前に裏切られ廃嫡されて最北の離宮に閉じ込められた。
目に映るものは雪と氷と絶望だけ。もう二度と、誰も信じないと誓ったのに。
ただ一人、お前だけが私の心を凍らせ溶かしていく。
執着攻め×不憫受け
美形公爵×病弱王子
不憫展開からの溺愛ハピエン物語。
◎書籍掲載は、本編と本編後の四季の番外編:春『春の来訪者』です。
四季の番外編:夏以降及び小話は本サイトでお読みいただけます。
なお、※表示のある回はR18描写を含みます。
🌟第10回BL小説大賞での応援ありがとうございました!
🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。
一日だけの魔法
うりぼう
BL
一日だけの魔法をかけた。
彼が自分を好きになってくれる魔法。
禁忌とされている、たった一日しか持たない魔法。
彼は魔法にかかり、自分に夢中になってくれた。
俺の名を呼び、俺に微笑みかけ、俺だけを好きだと言ってくれる。
嬉しいはずなのに、これを望んでいたはずなのに……
※いきなり始まりいきなり終わる
※エセファンタジー
※エセ魔法
※二重人格もどき
※細かいツッコミはなしで
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる