死神と呼ばれた公爵は転生した元巫女を溺愛する

冬野月子

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第三章

03

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「ねえ見てサラちゃん。似合うかしら」
私の目の前で女神がくるりと回った。
彼女が着ているのは、先日の夜会で私が着ていたマーメイドラインのドレスだ。色は青で、裾の方が淡くなってグラデーションになっている。
女神が魔法で作り出したのだ。

「綺麗なんだけど、なんか少し違う気がするのよね」
「そうですね……お母様だったらもう少し、スカートの裾部分にボリュームを出してもいいかと」
「こんな感じ?」
ふわりとスカートが膨らんだ。
「もっと下から膨らませる感じで……ああ、そうです」
「まあ、こっちの方が素敵ね!」
鏡に映る自分の姿を見て女神は嬉しそうに声を上げた。
「顔が似ているから同じドレスでもいいと思ったんだけど」
「体型が違いますから」
女神は私より可愛らしい感じなので、ドレスも柔らかみがあった方がいい。

「ねえ、アダムも気に入ってくれるかしら」
「お父様? ええ、多分……」
「それとも今の見た目に合わせて可愛いドレスの方がいいかしら」
「……それは気にしなくていいかと」
「そうね、いつもと違う雰囲気の方もいいわよね」
鏡を見つめながら頷いて、女神は振り返った。

「それで、アダムはどこにいるの?」
「尋問をしに前に住んでいた所に行って……まだ帰ってきません」
「尋問?」
私は昼間起きたイザベラの事件のこと、そしてパレードでの女王暗殺計画のことを女神に説明した。
「まあ。そんなことが……。ごめんなさいね、私も他国のことまでは把握できないから」
「いえ」
国ごとにその国を守護する神がいるという。
そして神々同士は互いに不干渉であり争わないという取り決めがあるのだという。――神同士で戦争を起こせば、人間の世界などあっという間に焼き尽くされてしまうからだ。

フィンたちは昨日の件で尋問や対応などの話し合いをしていて、オリバーも外出中。
私は部屋から絶対出ないように言われて暇していたところに女神が現れたのだ。

「でもお母様……国内の貴族も女王暗殺に関わっていたのでしょうか」
「どうかしら、私も全てを知っているわけではないから」
女神は首を振った。
「王族殺しは神殺しと同罪よ。もしもそんな者がいたら、私自ら罰を与えるわ」
「ではあの小娘への罰は任せようか」
ふいにオリバーの声が聞こえた。

「……お帰りなさいお父様。小娘って、イザベラ嬢のこと?」
「ああ。散々お前への悪態をついていた。巫女を陥れようとするのも神への罪と同じだろう」
そう言ってオリバーは気づいたように女神を見た。
「その格好は……」
「サラちゃんがいた世界のドレスですって。似合う?」
「――似合ってはいるが。そんなに尻の形が出るのはどうなんだ」
フィンと同じようなことを言いながらオリバーは眉をひそめた。
「これがこのドレスの魅力なんじゃない」
「そんなのじゃなくとも魅力的な服ならいくらでもあるだろう」
「もう。気に入らないの? このドレス」
女神は腰に手を当てるとオリバーを見下ろした。

「……そんなことはないが」
オリバーは視線を逸らせた。
「ないが?」
「……卑猥だろう」
「卑猥?」
女神と私は顔を見合わせた。
もう一度オリバーを見ると、その耳が赤くなっている。
「そういうドレスでは……」
「もう、あなたって本当にそういう所はいつまでたってもウブなんだから」
女神は笑顔でオリバーをぎゅっと抱きしめた。
「もっと刺激的な姿も見てるじゃない、裸とか……」
「娘の前でそんなことを言うな!」

「相変わらず仲が良いですね」
見た目二十歳と十二歳の、それこそ姉弟がじゃれているようだけれど、数百年来の夫婦だ。
「そう? まあね、歴代の夫の中でアダムが一番だもの」
女神の言葉に、オリバーは嬉しそうな、悔しそうな複雑な表情を見せた。

「ところでお父様。尋問はどうだったの?」
「――ああ。一緒にいた魔術師はやはりサザーランドの者だった。小娘はアーキン男爵から紹介されたと言っている」
「そう……そのアーキン男爵もフィンたちが尋問していたわ。商会の取引相手から魔術師を紹介されたって。両国の商取引を独占したかったみたい」
「己の利益しか考えていない愚か者が」
チッとオリバーは舌打ちした。
「それで、お前の婚約者はどこにいる」
「フィンなら今回の件の話し合い中よ、多分国王の執務室にいるわ」
「そうか。行ってくる」
「行ってらっしゃい」
部屋から出て行くオリバーを見送ると、女神は私を振り返った。

「サラちゃん。アダムが転生したのは、私ともう一度結婚するためかしら?」
「……おそらく」
彼が女神のことを好きなのは、その反応から見ても明らかだし。
「ふふっ。アダムってああ見えてとっても嫉妬深いのよ。前の夫の話をするとすごく不機嫌になるし」
「何でそんな話をするんですか」
「だって拗ねた顔が可愛いんだもの」
「……お母様もいい性格していますよね」

「うふふ」
悪びれた様子もなく、女神は嬉しそうに微笑んだ。
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