10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護

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4章 ベイツの過去

37話 不思議な依頼人

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光希との交流が始まってから、10日が経過した。

私は毎日交流を続け、楽しい毎日を送っているけど、レベルは2のままなんだよね。私的には、写真の送受信ができるだけで充分なんだけど、光希はビデオチャットを希望しているわ。交流を行い、そこで何らかの貢献を果たせば、多分レベルも上がると思うけど、そういった機会って早々ないんだよね。

あれから、私の現世の家族にも進展があった。

ベイツさんがフェルデナンド伯爵を尋問しているおかげで、彼はフェルデナンド家に関する情報をどんどん暴露していき、遂にレストラン[クザン]の全店舗の閉店が決まった。それに伴い、フェルデナンド家も瓦解したようで、貴族籍から完全抹消されたみたい。私の家族全員が平民になったようだけど、今頃どうしているのだろう? 

全員がスキル[コントラクト]から解放されている以上、もしかしたら私のことを心配してくれている人だっているかもしれない。私がもっと強くなったら、冒険者として一人前と言われるDランクになったら、一度ベイツさんに相談してみよう。

最近になって、フェルデナンド伯爵自身の方でも、変化が起きている。現在、領主様の邸で監禁状態にあり、ベイツさんたちに命令されない限りは、一応普通の生活を送れる。自分自身が操られる側になったせいなのか、彼は今になって自分の仕出かした所業を悔やむ言葉を言っており、更に王都のフェルデナンド家にいる家族の安否を気にかけている。ただ、そういった感情はあるのに、何故か私に関する謝罪の言葉が一切出てこないようで、お話ししているベイツさんもルウリもかなりご立腹だったらしい。

私が家のリビングにて物思いに耽っていると、ユウキが買い物から帰ってきた。
今、家にいるのは、ソファーで寝ているフリードを入れると、2人と1体になる。

ルウリはここ最近忙しいようで、頻繁に外へ出ているわ。上の方から急にお呼び出しがかかり、そこで発生した急を要する業務で、かなり忙しいみたい。

「ユウキ、お疲れ様。ほら、タオル」

この5日間、リリアムの街近辺は大雨に見舞われている。かなりの土砂降りで、近所の人たちもゲンナリしており、かくいう私たちも、冒険者として活動しにくいので、早く止んで欲しいと思っている。

「ありがとう。外は、完全に豪雨だ。これで5日連続の大雨だ。良い加減、止んでほしい。咲耶がここに転移される数日前にも、地域にもよるが、4日間近く雨が降り続いたらしい。特に、酷かったのがスムレット山だとさ。2年半くらい前から、こういった天災が九度も起きていて、その原因は未だに解らないようだ」

また、天災か。
私はその天災で死んでいるから、早く原因も掴んでほしいな。

私はユウキから買い物袋を貰い、濡れた野菜類を拭いてから、魔道具[冷蔵庫]に入れていく。

「そういえば、ベイツさんもリリアム近辺で起きている天災を、2年間ずっと調査しているんだよね。私は、そのおかげで助けられたんだよ」

2年半前に起きた天災で奥さんと子供を亡くしているから、ベイツさんなりにケジメを付けたいのかもしれない。

「そうだったな……あ」

ユウキが続きを言おうとした時、来客の鈴がなる。

「咲耶は、野菜類を冷蔵庫に入れてくれ。私が行くよ」

ユウキが玄関へと行きしばらくすると、リビングに30歳くらいの女性と7歳くらいの女の子が入ってきた。ユウキが他人を中に入れると言うことは、私に用事があるのかな? 私が立ち上がり、タオルを持って来ようとしたのだけど、2人は大雨の中を歩いて来たにも関わらず、全く濡れていない。

というか、濡れた形跡すらもないわ。
疑問に思っていると、ユウキが話しかけてきた。

「咲耶、この親子は私たちの依頼人だ」
「え、依頼人!?」

私たちを指名してくれるのは嬉しいけど、直接尋ねてくるということはギルドを通していないことになる。

「私も詳しく聞いていないが、この人たちは何らかの理由で、ギルドに依頼できないらしい。Fランクとしての報酬をきちんと支払うから、依頼を引き受けてくれないかと真摯に頼んできている。どうする?」

アメリアさんから、ギルドを通さない依頼は極力引き受けないでと言われている。規定違反というわけじゃあないんだけど、ギルド職員の視点から見れば、あまりいい印象を持たれない。それにベイツさんからも、登録試験の前に依頼人に関することを習ったわ。

【ギルドを通さず、冒険者に直接依頼してくる者は稀にいる。そういった者は、必ず何らかの事情を抱えているから慎重に接するように】

どうしよう?
とりあえず、話だけでも聞いてみようかな?

私が迷っていると、ふんわりして何処か儚げな女性が私の方へと踏み出してきた。

「私は、ミーシャと言います。あなたたちのことは、[とある方]から聞いています。その方の名を申せませんが、せめてお話だけでも聞いて頂けないでしょうか?」

この女性、何処か切羽詰まった表情をしているわ。
何か、大きな問題を抱えているんだ。
せめて、[とある方]の名前だけでも知りたい。
母親のミーシャさんが頭を下げると、子供もこちらへ来た。

「ティリルって言います!! 咲耶お姉ちゃん、どうか私たちのお願いを聞いてください!!」

え、この子も頭を下げてきたわ!!

「わかりました。立ったままでは疲れますから、ソファーへお座りください」

とにかく、どんな依頼なのか聞くだけ聞いてみよう。
私とユウキの力だけで、解決できればいいけど。


○○○


私とユウキは、ミーシャさんとティリルに飲み物を出し、2人が落ち着いてから依頼内容を聞いた。

【リリアムの街外れに、樹齢1000年以上とされる大樹があり、その根元に埋められている[箱]を掘り出してほしい】

これが2人からの依頼だ。依頼内容自体は凄く簡単なんだけど、それくらいなら自分たちでできるよね。

「何故、ご自分でやらないのですか?」

質問すると、ミーシャさんとティリルは悲しい表情となる。

「私たちには特殊な事情があって、あちらのエリアには行けないのです。依頼内容も簡単ですから、Fランクの方に頼もうと思ったんです」

[とある方][特殊な事情][ギルドを通さない依頼]、何を抱え込んでいるのか気になるところだけど、依頼自体は簡単だから引き受けようかな。

「ただ、一つだけ気になる点があります。地中に埋めた物次第ですが、稀に瘴気を発生させ、周囲に住む生物を魔物化させることがあるんです。すぐ近くに大樹様がありますので、最悪大樹様が魔物化する恐れがあります」

それを聞いた瞬間、私もユウキも驚きの声をあげてしまう。私は実物を見たことないけど、樹齢1000年ともなると、かなりの大きさになるはずだよ。それが魔物化したら、大変な事態になるんじゃあ?

「それは不味いな。それほどの大樹が魔物化したら、最低でも脅威度Bのエルダートレントになってしまう」

ユウキもミーシャさんもかなり険しい顔つきとなっているので、事の深刻さが私にも伝わってくる。【脅威度B】に該当される魔物は、村や小さな街を簡単に滅ぼせる程の強さがあると、冒険者登録試験前にベイツさんから教わったわ。

「あくまで、最悪の可能性です。箱の中身は私も知りませんが、余程の曰く付きの物でない限り、大丈夫だと思います。箱は、大樹に通じる道の丁度180度後方の根本に埋めてあります。大雨のところ申し訳ありませんが、どうか今日中に掘り出してくれないでしょうか?」

「「今日中!?」」

大樹のあるエリアまで結構遠いし、大雨も止む気配はなさそう。正直、行きたくないけど、最悪な事を考慮すれば、今のうちに対処しておくべきだよね。

「ユウキ、とりあえず私たちだけで、その大樹を直接見てみようよ。もし、深刻な事態だったら、私たちからアメリアさんに伝えよう」

「そうだな、それが妥当な判断だな。私も咲耶も、その大樹を間近で見たことがない。まずは状況を知ろう。ベイツさんがいないから、慎重に動くぞ」

危険度が高い場合は、ベイツさんとルウリにも伝えよう。

「フリードはどうする?」

2人の依頼人が来たことで、フリードも目を覚まし話を聞いていたけど、何故か2人をジッと見つめている。

「ふむ、悪い者ではなさそうですね。いいでしょう、魔物が目覚めてしまった場合、私が対処します。エルダートレントはかなり厄介な魔物ですから、完全覚醒する前に叩いておくべきです」

よかった、フリードは私たちについて来てくれるのね。まだ、ユウキとフリードには言ってないけど、今回の依頼人ミーシャさんとティリルは何処かおかしい。

ベイツさんの言う通り、何かを抱え込んでいるのは間違いない。[とある方]の正体を知ろうと、2人にスキル【心通眼】を発動させたら、どういうわけか心を読めなかった。

これって、心を閉ざしているということだ。
あれだけ必死に懇願しているのに、矛盾しているわ。

不思議な依頼人さんだけど、内容が事実なら大変なことになるかもしれない。
まずは、私たちだけで様子を見に行こう。
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