10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護

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5章 猫の恩返し

54話 倉木家緊急会議 *光希視点

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「只今より、第1回緊急家族会議を開催します!!」

現在時刻は夜8時、私たち家族はリビングに集まり、私の隣にはお兄ちゃん、テーブルを挟んだ形で、お父さんとお母さんが対面に座っている。

事の始まりは、お姉ちゃんから届いた1通のメッセージだ。明日、フードフェスタが開催されるのだけど、恒例イベント[未知なる食材の探求]に露店を出す人たち全員が強制参加させられることになり、そこにお姉ちゃんが含まれているの‼︎ 今年の食材は、[テンタクルズオクトパス]という海の巨大魔物、お姉ちゃん自身も実物を知らないけど、食用という評価なのに調理難易度Aランクの食材で、これまで世界中の人々がこの魔物の調理に挑戦しているけど、誰1人正しい調理方法に辿り着いていない。

これまで幾度もお姉ちゃんから相談を受けてきたけど、今回は超難題なんだよ。 

「お母さん、何かいい調理法はないかな?」

「う~ん、この内容を見た限り、一般的に知られているぬめりの除去方法に関しては、全部書かれているのよね。これに関しては、お母さんもお手上げね」

「そんな!? お兄ちゃんは?」

「いや、こういったものは俺の専門外だよ。内容を読んだ限り、こいつは俺たちの知るタコでもイカでもない全く未知なる巨大生物だから、ぬめりの性質自体だって違う。ネットで検索して何かを見つけたとしても、迂闊に知らせない方がいい。最悪、毒ガスがヌメリや肉から発生して、姉さんを死なせてしまうことになる」

毒ガス…火で焼いただけで発生するのだから、それ以外の刺激で発生してもおかしくない。こんな危険生物の肉が、何で食用なのかな?

「光希、今回ばかりは我々から何も言わない方がいい。我々の助言で咲耶を死なせる可能性がある以上、見守るしかない」

お父さんから言われた言葉が、私の心に響く。
死なせる……それはいやだ。

去年の命日やお盆の時だって、お兄ちゃんは自分を責めていたし、自分のせいでお姉ちゃんを死なせたと、ずっと仏壇の前で『すまない』『ごめん』と謝罪を言い続けていた。私は、【死】と言う言葉を、これまでに何度も何度も聞いている。人が死ぬと、みんなが悲しむ。死んだ人とは、2度と会えないと聞いていたけど、私は死んだお姉ちゃんとほんの少しだけ出会えたし、こうして異世界交流もできるようになった。

お姉ちゃんとは、もっと色んなお話しをしたい。
お姉ちゃんのおかげで、家族の雰囲気がより明るくなった。
私たちのせいで、助言でお姉ちゃんを死なせたくない。
だから、ヌメリの除去に関しては諦めるしかない。

「わかった。でもお兄ちゃん、お姉ちゃんはどうやって課題を乗り越える気なのかな?」

「光希、与えられた課題を無理に乗り越える必要はないんだ。姉さんは、参加するだけでいい。何もせず、制限時間が過ぎたら、魔物の肉をバッグごと主催者側に返却すればいいのさ。そういった難題に関しては、プロの料理人に任せれば、誰かがいつか調理法を見つけてくれるよ」

「そうだね…わかった。でもさでもさ、誰かがヌメリを除去してくれる可能性を考えて、タコ料理のレシピだけでも、お姉ちゃんに教えてあげようよ!!」

お姉ちゃんが、課題を解決する必要性はないんだよ‼︎
でも、誰かがヌメリを除去してくれたら、そこからは調理するだけでいい。
せめて、タコの調理方法だけでもお姉ちゃんに教えてあげたい‼︎

「それは良いアイデアだ。あの世界に転生者もいるから、既に料理が存在している可能性もあるけど、姉さんでも調理可能なものを教えてあげよう」

「うん‼︎」

私はネットで色々とタコ料理のレシピを検索していく途中、ある疑問が唐突に頭に浮かんだ。

[焼けば猛毒ガス][塩でぬめりを取っても塩辛くて食べられたものじゃない][手渡されてから21時間経過したら、身が腐ってしまい、魔物を引き寄せる]、こんな危険な魔物の肉が街内にあるのに、街自体は何の警備もしていないのかな? もしものことを考えないのかな?

参加者全員が調理に失敗し、毒ガスが街に充満して、住民全員が死亡する事件に発展しないよね?

調理が中途半端に成功して、フェスタ参加者全員が食中毒を起こして苦しんだりしないよね?

魔物を保管するマジックバッグが壊れて、巨大魔物の死体がフェスタ真っ最中に出現して、大混乱に陥らないよね?

死んだ巨大魔物が突如として復活して、住民を襲ったりしないよね?

変な事を考え出したせいか、猛烈に不安になってきて、検索の手も止まっちゃった。お兄ちゃんたちに、私の不安を全部話すと、3人とも苦笑いを浮かべた。

「光希、大袈裟だよ」

「お兄ちゃん、何でそんな酷いことを言うの‼︎ みんなが失敗したら、魔物が襲ってくるかもしれないんだよ‼︎」

もし、大勢の魔物が押し寄せてきたら、お姉ちゃんが食べられちゃうのに。

「光希、 悠太の言う通りよ。仮に、全員が調理に失敗して24時間経過したとしても、魔物の肉をバッグに入れておくだけでいいのよ。そうすれば、匂いが街に充満することもなく、魔物たちも街を襲わないわ」

「お母さん、甘いよ‼︎ 私、あれからネットで異世界小説をいくつも読んでいるからこそわかるの‼︎ こういうイベントには、想定外の事故が付きものなの‼︎ 絶対、何かが起きて、お姉ちゃんたちが危険になるんだよ‼︎」

私がそう力説すると、お兄ちゃんたちの雰囲気がなんだかおかしい。
お母さんとお兄ちゃんが、ヒソヒソと話し合っている。
何の話をしているの?

『母さん、光希は小説の読み過ぎなんじゃあ?』

『咲耶との交流が始まって以降、ネットの小説サイトにある異世界小説にハマっちゃってね。私も困っているのよ』

『小説のような大規模イベントなんて、普通は早々起きない。俺が、光希を宥めておくよ』

『お願いね』

もう、何を話し合っているの?

「なあ光希、姉さんのいる街には最強のボディーガードがいるんだ」
「ボディーガード? そんな人、いたっけ?」

お姉ちゃんから教えてもらったけど、ベイツさんはかなり強いと聞いているけど、最強なのかな?

「人じゃなくて、魔物と精霊だ」
「あ、フリードとルウリだ‼︎」
「正解。あの2体は経験豊富だから、魔物が押し寄せてきても、毒ガスが発生しても、必ず姉さんたちを守ってくれる」

そっか、あの2体がいれば、騒動が起きてもすぐに終息するよね。
お兄ちゃんのおかげで、さっきまで抱えていた私の不安も薄まってきた。

お姉ちゃんには申し訳ないけど、今回はヌメリに関する助言はなしで、タコ料理のレシピだけを送っておこう。
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