10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護

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5章 猫の恩返し

53話 調理難易度Aランクの食材

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【テンタクルズオクトパス】、皆が驚愕する理由を知りたい。

「アレス、その魔物の調理って、そんなに難しいの?」

皆が私を見る。
やっぱり、私だけがその魔物の知識を持っていないのね。
公爵令息のアレスは、何故知っているの?

「咲耶、君も記憶を失う前に、その魔物の脅威を聞いているはずなんだけど?」

そうなの?
全然、覚えていないわ。

「テンタクルズオクトパスは、生きていても死んでいても、我々を脅かす魔物なんだ」

どういうこと? 生きている時はわかるけど、死んじゃったら動かないのだから脅威になりえないよね。

「生きている時の脅威度がAランク、死んだ後の脅威度もAランクなんだよ」
「え、そんな魔物が存在するの!?」

死んでいるのに、なんで脅威度が消失しないの?

「これは貴族でも平民の間でも有名な話なんだけど……」

アレスが、テンタクルズオクトパスについて色々と解説してくれた。全てを教えてもらったことで、どうして脅威度が死んでも付くのか、私も納得したわ。

① テンタクルズオクトパスは海の魔物、足が20本もあり、その長さは体長30メートル程。弱点は20本の足の中心にある脳を破壊すればいい。

② 身体全体に非常に強いヌメリがあり、その所為で打撃も魔法も殆ど弾かれてしまう。火魔法で焼却すると、有毒ガスがヌメリと肉から大量発生してしまい、大惨事を引き起こす。

③ 討伐してから24時間経過すると、人にとって強い腐敗臭と刺激臭がその巨体から発せられ、それが大気中に散布されることで、魔物たちがその臭いを目指して誘導されてしまい、全方位から臭いの元となる場所へ押し寄せ、死体を全て食べ尽くす。

④ 現在でも、この魔物の正しい調理方法は未解明。この魔物を討伐する場合、空間魔法[アイテムボックス]を習得している魔力量Sランクの人、もしくは最高級マジックバッグ(収納力S;時間機能停止付き)を探し出さないといけない。何故なら、ヌメリが非常に強く、剣による切断も困難だから、その巨体のまま収納しないといけないからだ。

⑤ 唯一、塩を使用することでヌメリを除去できるけど、身1kgに対し、塩10kgを必要とする。でも、この方法には大きなデメリットがあり、ヌメリを除去し終える頃になると、塩分が身全体に染み込んでしまい、非常に塩辛くなってしまう。しかも、そこからどのような処置を施しても、塩分が身から抜けない。

⑥ こういった習性のため、対処方法がない場合、人はヌメリを塩で除去した後、塩辛くなった身を生のまま、必ず24時間以内に食さなければならない。

⑦ 世界中の国々がこの魔物の処理に困っているため、調理難易度Aランクの調理不可能食材と呼ばれている。

う~ん、皆が驚くのもわかるわ。
現状、この魔物を食するには、塩漬けするしかない。
でも、30メートルの塩辛い巨大生物を食べたい人なんていないわ。
でも、何の対処もない場合は、これまでそこにいる人々だけで食べたんだね。

「【ヌメリ】を簡単に除去する調理方法があれば、かなり楽になる。しかし、世界中の料理人が挑戦しているものの、未だ誰1人成し遂げていない」

火で焼いたら猛毒ガスが発生し、塩で取ったら塩辛い。
うわ~、八方塞がりの状態だ。

「揚げても、凍らせても取れないの?」
「それは既に試されていて、効果なしと判明しているんだ」

完全に、お手上げだよ。

「アルドさんは、この難題に挑戦するんですか?」

全員の視線が、アルドさんに集まる。

「それがな……このイベントに限っては、露店に出店する者全員が強制参加なんだ。我々飲食店経営者に関しては、自由参加になっていて、1店につき、1kgの身が渡される。あの巨大魔物をバッグから1kg分ずつ出し、細い釘などでヌメリと身を貫き固定さえすれば、何とか剣や包丁などで切断できるそうだ。全員に、1kg分入った時間停止機能付きの小型マジックバッグが手渡される手配になっている。それと今回に限り、塩以外で調理に成功した者、塩を調理し美味いと認められた者には、参加賞として使用したバッグ自体を貰える。そして、最優秀と認められた者には、国から1000万ゴルドが進呈される」

うわあ~、マジックバッグの中にあるテンタクルズオクトパスの身を少しでも減らしたいから、強硬手段に出たんだ。

あれ、ちょっと待って!!
なんか、凄く嫌な予感がするよ!!

「アルドさん、露店だと飲食に関与しない店もありますよ?」

「今回のイベントの規定は、調理できる者だ。実質、誰でもいいということだから、飲食に関与しない露店も強制参加だ。明日の早朝7時30分、露店参加者と飲食店関係者が大樹マナリオの下に集められ、そこで手渡される予定になっている」

その言葉に、私は身を震わせる。
ということは…

「それだと、私も強制参加なんですけど?」

全員が、一斉に私を見る。アマンガムさんに無理を言って頼んでいるから、今更キャンセルなんてできない。しかも、1kgもあるんでしょ?

「そうなんだよ、だから急遽電話したのさ。ただ、強制参加ではあるが、調理に挑戦するかは自由だ。危険な食材である以上、何もせず、バッグごと返却してくれれば問題ないし、塩漬けにして生で食べてくれても構わないとのことだ。ちなみに、フェスタ終了直後に、バッグから警報が鳴り響くシステムになっている」

そんな危険生物、いらないよ!! 
塩漬けにして食べても、絶対塩辛いだけでう美味しくないと思う。

私の場合、アマンガムさんが気を利かしてくれたおかげで、大樹マナリオの横で猫たちと戯れる予定だから、日中に食材を弄る時間がない。タイムリミットは最大24時間だけど、マジックバッグの中に入れるまで多少の時間をかけているだろうから、正確な時間を知らないといけないわ。

「アレスさん、タイムリミットは?」
「21時間だ。残り時間が18時間以上あれば、身も返却可能だ。それ以下ならば、自己責任だそうだ」

も~最悪、主催者側の人たちは、何でこんな無理難題を押し付けてくるかな? 私が挑戦するか迷っていると、アレスが助け舟を出してくれた。

「咲耶は、挑戦しなくていい。いくら何でも危険過ぎる。あの食材は、未知な部分が多いから、他の人々だって敬遠するはずだ。こう言うのは、プロに任せるべきだ」

アレスの意見に賛成だけど、一応光希たちに相談してみよう。
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