婚約破棄を卒論に組み込んだら悪魔に魅入られてしまい国から追放されました

犬社護

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最終章 ティアナの夢

三十一話 ミルフィアの説得

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 事故から一週間、ベイツ様も目覚め、二人の経過も良好、退院の日も近い…のだけど、彼は魔導具開発クラブの部長でストラトス公爵家の長男、そんな方が王位継承権第一位のお兄様に大怪我を負わせてしまった。

 通常であれば、これは王族に叛旗を翻すと思われて仕方ない事件と言えるけど、状況から顧みて故意ではないと判断され、公爵自体には何の処分も課せられることはなかった。お兄様自身はクラブメンバーではないし、品評会前日になって、誰も志願しようとしないベイツ様の模擬戦相手に自ら申し出た。こういった事情もあり、ベイツ様自身にも、罰が与えられることはなかったのだけど、当の本人がそれを納得しなかった。

 自分たちの開発した魔導具で、王族に大怪我を負わせたことは事実、彼はそれを強く自覚しているからこそ、目覚めたその日のうちに、側近候補の辞退を進言する。当然、お兄様はこれを拒否、何故ならばこの事態を引き起こしたのは他ならぬ自分自身にあるからだ。そんな真実をベイツ様に言うはずもなく、兄は彼を言葉だけで説き伏せる。

 そして現在、両者は二人部屋の病室にて互いに握手を交わしているのだけど、私はルミアと共に、学園の少人数用サロンにて、ラプアス経由でず~~~っと監視していたこともあり感動しています。

「ルミア~泣けてくるわね~。ベイツ様、めっちゃ良い人じゃないの。性悪お兄様には勿体無いわ~~」

「ええ、それは私も同感なんですが、その光景をずっと無断で盗み見ている私たちも大概かと思うのですが?」

「あははは、それは仕方ないじゃん。このシーン、卒論でバッチリ使わせてもらいましょう。あ、当然事前にストラトス公爵の許可を貰うわよ」

 こんなドラマのような名シーン、絶対卒論の観客たちに見せないと損でしょう? まあ、あの事件の根源にお兄様が深く関わっていると知ったらどうなるかわからないけど、そこはお兄様の行動次第ね。

「あ~久々に感動の涙を流したわ~。そろそろ、ミルフィア様が来る時間よね?」

 現在、私のクラスでは本日の授業を全て終えており放課後となっているが、高等部のミルフィア様のクラスでは、あと一限授業が残っている。だから、私とルミネは、誰もいない少人数用サロンで待っている。私はミルフィア様に、自分の持つプライズのことを公表し、編集されたお兄様の監視映像を見てもらい、《設計図の盗難》と《私の誘拐》について知ってもらった上で、婚約を継続するのかを問いたい。そして卒業論文の発表の際、私自らが兄の更生のため、その答えの有無を皆の前で宣言することを承諾してもらいたい。

「はい。そろそろ授業も終わりますので、あと三十分もしないうちに、ここへ来られると思います」

 ミルフィア様はキューブ事件の際に、お兄様の本性を垣間見ている。あれ以来、二人は少しの間だけ距離をあけたけど、彼女自身が今まで以上に兄の真意を知りたいと思い、接触頻度を少し増やして、距離を縮めようと愛されようと必死に努力している。肝心のお兄様が、それに応えていないけどね。

○○○

 私はミルフィア様に、自分の持つプライズの力を説明する。その力がどれだけ強力なものなのか、魔導具《ラプアス》の監視映像を視聴してもらうことで、その脅威と同時に、お兄様がどれだけ悪虐非道なことを実行したのかを強制的に納得してもらった。

 監視映像の中には、私の設計図を盗んだ犯人と兄の対談が映されているものもあり、兄自身が直接的に関わってこそいないけど、設計図盗難の全貌を知っていることが明らかになる。そして、魔導具を開発する上で重要な材料の選定にて、大きく苦しむことになり、その結果、クラブメンバーの一人が腕輪を装着し、魔導具の効果を確認しようとしたが、それが一切現れず、大怪我を負う事態となり、これが原因で私の誘拐へ至る。

 その誘拐に関しては、事前に知っていたこともあり、ルミネが機転を効かすことで、無事に解決したけど、実質魔導具自体は未完成のまま品評会を迎えてしまい、そのまま強行出場することとなり、あの爆発事故へ至った。最後に、兄とベイツ様の友情とも言えるシーンを見せたけど、兄と去年の審査員の一部が諸悪の根源ということで、当然ミルフィア様が感動することはなかった。

「キューブの件だけじゃなく…こんな愚かな事をしていたなんて…」

 顔色も悪く、言葉を失っているわね。
 無理もないか、決定的証拠となるこんな映像を見せられたら、反論しようもないものね。

「ご理解いただけましたか? 以上の点を踏まえて、お兄様にはなんとしてでも更生してもらいます。ただ、あそこまで私に拘っている以上、通常の方法では絶対に兄の心に届きません。ですから、一度絶望を味わって頂き、そこから這い上がってもらおうと思います。そのためにも、レインブルク公爵家の協力が必要不可欠なのです」

 この映像を見せる前、私は彼女に卒論発表のタイトルと発表の流れを伝えると、大変驚かれていた。《婚約破棄》、目下の者が目上の者に向けて言える言葉ではない。しかし、例外というものがある。そう言わざるおえない何かを犯していた場合に限り、それは許される。また、この言葉自体は、私が促すものであるため、ミルフィア様に全ての責任を押し付けるような事はしない。

「これを…見る限り…更生の余地などない…気がするのですが?」

 顔色を悪くしながらも、必死に言葉を紡ぐミルフィア様。

「それが、そうでもないのです」

 私とて、初めはそう思った。でも、監視映像を見て思ったけど、兄の言動が時折おかしい時があることを発見した。まるで、誰かと話し合い、それによって強制的にそう思わされているような場面が多々あるのよ。

 兄は、私たちの知らない何かを隠している。
 そこが、兄を更生させるためのキーポイントになるだろう。
 その映像をミルフィア様にも視聴してもらい、今後の対策を練っていく。
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