邪神を喰った少女は異世界を救済します

犬社護

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5章 レーデンブルク 悪魔討伐編

束の間の休息とラギウスの選択

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昨日の宴会は、私にとって地獄だった。休憩なしで料理を作らされるとは思わなかった。結局、私はたこ焼きすら食べれなかった。こういう悲惨な忙しさにならないように朝に通信した時、ラーメンも1回の食事で3杯までならOKだって言ったのよ。朝のうちに食べておけば、夜には慣れて食欲も落ちるだろうと踏んだのに、あの刺激臭Ver.2のお仕置きを見た人達が、全員にあの悲劇を話したせいで、結局私が帰って来るまで、誰1人ラーメンや揚げ物を食べなかったそうだ。


料理長からも言われたけど、昨日のようなパーティー料理の作製は当分控えよう。というか、レーデンブルクで作る事自体を控えよう。


今日は、昼から悪魔討伐会議を開く事になっているから、それまで王城を散策しているんだけど、獣人達の顔色が凄く良い。ストレスを全く感じさせない晴れやかな顔をしている。そりゃあ、あれだけ派手に暴れてたら、日頃のストレスも発散するでしょうね。今日から醤油ラーメン・オーク骨ラーメン・唐揚げ・コロッケ・餃子が、食堂で自由に食べれる事になったから、食事面での不満は出ないでしょう。たこ焼きは器具製作中の為、現状食べれない。まあ、1週間程で台数も揃うでしょうね。


さて、いよいよ悪魔討伐を実行するわけだけど、いくつか確認しておきたい事があるわね。1つ目がラギウスをどうするかね。これに関しては、スフィアタリアに残れる方法をこちらから提示して、ラギウス自身に決めさせればいい。2つ目がフィンに関してだ。悪魔討伐が終了し秒寺との決着が着けば、レオンはアルテハイム王国の新たな国王として、その日から公務をしていく事になるだろう。フィンがアルテハイムに留まるのか、それとも邪王討伐が終わってからも私達と一緒に旅を続けるのか、これについてもフィン自身に決断させよう。


○○○


昼食を食べ終わり、私と仲間達、王族メンバー、ラギウスは会議室に集まった。

「これから悪魔討伐会議を開催します。まずは、アルテハイムの現状を見てもらうわね」

セキュリティーバードからの映像を壁に映写した。

王都全体に活気がない。どこか異様な雰囲気が漂っている。約3000人近くが悪魔と一体化しているのだから当然か。まだ悪魔に取り憑かれていない国民達は約2000人近くいる。自分の家族や親類が突然豹変しているのだから、何かが起こっているのはわかっているはずだ。でも、国王が何も言わないから、この奇妙な状況を理解しつつも、とりあえず普通の生活を送っているという感じかな。

そして、レオン以外の王族はこの王都にいるらしく、セキュリティーバードで観察した結果、残念な事に全員が悪魔に取り憑かれていた。今、レオンはその真実を知り泣き崩れているところだ。

「父上----母上-----兄上----キャロル(妹)-----くそ-----くそ、くそ!最悪な事を想定してはいたけど----」

「レオン---、師匠、一体化した者を救う手立てはないんですか?」

「残念ながら無理よ。魂自体が悪魔に喰われてしまっているわ。私達が出来るのは、悪魔に喰われた魂を解放する事ぐらいね。明日の朝、アルテハイム王都に出発して、早急に悪魔王ベリアルを討伐するわよ」

昨日と落差が激し過ぎるわね。私がレオンを奮い立たせる事も出来るけど、ここはフィンに任せよう。

「レオン、元気出して!----悔しい気持ちもわかる。----自分にもっと力があればという気持ちもわかるよ。だから、師匠の加護をもらって頑張って来たんだから。----今、私達が出来る事をやろうよ。私達がこうやっている間も、悪魔の一体化は増えている。これ以上の犠牲者を増やさないために、私達が動かないと!もう、アルテハイムに王族はいない。それが知れ渡れば、大変な事になる。私達で、新しくアルテハイムを立て直すしかない!アルテハイムの国王様だって、同じ事を言うはずだよ。『こんなところで泣く暇があったら、とっとと行動を起こせ。国民達を第1に考えろ!貴様は、それでも第2王子か。そんな子に育てた覚えはない!』あの方なら、多分こう言うはずだよ」

「------あはは、そうだな。父上は、いつも私達に厳しく、いつも民のことを考えていた。もう王族は私しかいない。私が新たな国王となってアルテハイムを立て直すしかない。フィン、協力してくれるか?」

「うん!もちろんだよ!」

「レオン、レーデンブルクも全面的に支援するぞ。だから、君が存命している事を国民達に知らせてあげるんだ」

「はい!ありがとうございます!」

レオンは、もう大丈夫ね。
フィンも強い決意を固めている。

「師匠、父上、母上、悪魔討伐終了後、私はレオンと共にアルテハイムに留まります。今の私達なら、アルテハイム全土の人達を幅広く見渡せると思います。この力を使って、アルテハイムを再興させてみせます!

「フィンは、留まる道を選んだか。応援するわ、頑張りなさい!」

「私も王妃も、フィンがその道を選ぶ事はわかっていたよ。何かわからない事があったら通信してこい。私達は、いつまでもお前達の味方だ。レオン、フィンが強いといっても、まだ12歳と若い。しっかりと支えてやれ。今日1日は、国王としての公務を終日教えてやろう」

「はい、お願いします!」

レオンもフィンもやる気になったようだし、私からプレゼントをあげようかな。

「レオン、この短期間でステータス数値とスキルレベルを大幅に向上させたご褒美として、能力値を+10万、スキルレベルを+10追加しておくわ。それで虚無魔法も扱えれるでしょう」

「サーシャ、良いのか?------ありがとう。これで存分に悪魔を討伐出来る。ところで、どういった方法で王都に潜入するんだ?」

「正面から突撃するだけよ。私が王城に乗り込み、悪魔王ベリアルを討伐し秒寺伸太郎を救出する間、あなた達は虚無魔法で悪魔達を徹底的に排除しなさい」


「----あのお姉様、国民達はどうするんですか?避難は?」


「おっと、手順を省き過ぎたわね。順に説明していくわ。まず、サリアが王都全体に気絶しない程度の威圧を掛ける。国民や悪魔達を完全に動けなくした後、レオンが国民達にアルテハイム王都の現状を伝え、今から悪魔討伐を行う事を伝える。その時、悪魔を討伐すると、一体化した獣人も灰になる事を必ず伝えること。伝え終わったら、虚無魔法で悪魔を討伐すれば良いわ。今のあなた達なら、悪魔を宿した獣人達を瞬時に見分けれるでしょう。このやり方で行えば、味方や国民達のダメージは最小限に抑えれるわ。何か質問ある?」

「-----お姉様、あまりにも完璧過ぎて、反論出来ません」
「ふん、私がいればこそ、出来る良案ね」
「師匠、あまりにも呆気なく、悪魔討伐が終わると思うんですが」

「はい!サーシャ様、それだと面白味がありません。せっかく修行したんですから、攻めてくる悪魔達を私達が虚無魔法で応戦しましょう。その内に強い悪魔がでてくるから、私とジンが全力で戦うんです。危なくなってきたら、私達の真の力が目覚めて、悪魔全員を殲滅するんです。それなら面白い展開になると思います」

《ピキッ》

そんな都合良く真の力に目覚めてたまるか!どこぞのアニメの展開か!

「ジン、リッカは馬鹿なのか?せっかく良い雰囲気でまとまっていたのに、ここでそれを言ったら----」

「ラギウス、リッカが空気を読まないアホだという事は、ここにいる全員がわかっている」

リッカ以外の全員が、この後の展開を予想出来たようね。

「リッカ~~、あなた達は悪魔とどこで戦うか理解してる?」
「はい、王都のど真ん中で戦います!」

「そんな場所で、敵味方全員が全力で戦ったら、周りはどうなるかな~~?」
「うーん、廃墟になると------あ!」

自分で言って、ようやく失言したと思ったわね。

「ああ、あの、あのお仕置きだけは----お仕置きだけは----あの臭いは----あの臭いだけは------」

「ふ~、今回だけは、許すわ。でも、これからは軽々しく言わないようにね~」
「ひいー!はい、すいませんでした!」

全く、少しは考えて行動するようになったと思ったら、これか!

「今言った方法を実行すれば、短時間で殆どダメージなく悪魔を討伐出来るわ。面白味があろうがなかろうが、損害0が一番なのよ。もしリッカのような事が発生したら、全員にお仕置きを喰らわすからね」

「確かに、その方法なら短時間で終わるな。サーシャは、王城にどうやって侵入するんだ?」

ラギウスは、そこが気になるか。

「悪魔王ベリアルと秒寺以外は、一切興味がないわ。だからレオンが国民達に話し終えた後、王城を覆うほどの虚無球で、悪魔王ベリアル以外の悪魔達を一気に殲滅するわ。その後、正面から堂々と入っていく予定よ。一応、ベリアルと少し話してから討伐ね」

「-----ベリアルが気の毒に思えてきた。あいつ、何があったかわからず混乱するだろうな」

「あいつが、どう思うが知ったこっちゃないわ。とりあえず秒寺に関する話をして、何も異常がなければ、そのまま討伐ね」

「おいおい、こういう時はボスがこれまでの経緯を言うところだろ!そして今後の事を話して、『そうして欲しくなければ私を倒す事だ』とか言って、善と悪の最後の戦いが始まるのが一般的だよな?」

「ラギウス、世の中そんな都合良くいかないわ。用がなくなったら、即殲滅あるのみ。悪魔王である以上、何か仕出かす可能性もあるしね。あいつが泣こうが喚こうがどんな行動を取っても、その途中で討伐すれば良いだけよ」

「容赦ね~~。アニメや小説と何か違う」
「現実なんだから、当たり前でしょ!用が済んだら、すぐ処分する!これは鉄則ね」


さて、とりあえずは、悪魔討伐はこれで良いでしょう。
次はラギウスについてだ。


「それでベリアルを討伐した後、予定通りいけば秒寺を救出して、悪魔を送還してもらうわけなんだけど、ラギウスはどうする?」

「どうするとは?」

「このままいけば、あなたも送還されてしまうわ。送還されて悪魔の住処へ戻るか、それともスフィアタリアに残るか、どちらかを選択しなさい」

そう言った瞬間、悲しい表情をしていた第1王女のレベッカと第2王女のアデリナがひどく驚いた。この会議に参加した時点で、どこか寂しげだった。多分、察していたんだろう。ここで、ラギウスに決断してもらおう。

「サーシャ様、ラギウスは残れるんですか!」
「サーシャ様、本当ですか!」
「おいおい、残れるのかよ!俺は悪魔だぞ!」

ラギウスは悪魔だ。通常なら、スフィアタリアには残れない。でも、残れる方法はある。

「方法はあるわ。今のあなたは悪魔でも、まあ魂のような状態ね。それなら、今の獣人の身体と定着させれば、あなたは悪魔から獣人に種族変更出来る。当然、寿命もあるわよ」

「マジかよ。お前、完全に神様だな。それなら、------俺はここに残りたい。せっかく、レベッカやアデリナとも知り合えたんだ。ここを離れたくないな。この獣人の身体で問題ない。結構気に入ってるんだよ」

レベッカやアデリナも、ラギウスの発言を聞いて、顔が真っ赤になっているわ。2人ともわかりやすい。

「わかったわ。今から魔法を使うけど良いわね?」
「おう、後悔はない!」

「-----『定着』」

ラギウスの身体が光った。ラギウスが獣人の身体と定着していっている。うん、上手くいったようだ。

「お、光が収まった。これは-----、確かにこの獣人の身体になったな。魂を動かせない。完全に固定された。これで悪魔から獣人へ種族変更したのか?」

「ええ、ステータスも引き継がれたわ」

「-----おお、俺の強さが数値化されてる!平均したら3200万くらいか。あれ?俺は神族化しないのか?」

よし、完全に成功したようね。

「ラギウスは例外。神族化の条件をもっと詳細に言うと、魂の初期値から100万倍以上強くなる事よ。スフィアタリアの人達や私達異世界召喚者の魂の初期値は10前後なの。だから神族化するには1000万以上なのよ。ラギウスの魂の場合は3200万からの状態で身体に定着させて、獣人レベル1からのスタートとなる。つまり初期値が3200万だから、そこから100万倍以上強くなれば神族化するわけだけど、実質不可能よ」

「いくらレベル1スタートでも、今から100万倍も強くなれるか!まあ、安心したぜ。俺は普通に歳食って、みんなと生活したいからな」

「ラギウス、完全な獣人になったの?」
「ああ、レベッカやアデリナと同じ獣人だ。これからも宜しくな!」

「「うん!」」

あらら、レベッカもアデリナも泣いちゃっているわね。
これでラギウスの件は解決だ。

「ラギウス、私達がいない間、レーデンブルクを頼むわよ」
「ああ。任せろ!」


レオン・フィン・ラギウスの進路が決定し、悪魔討伐方法も滞りなく終わった。

その日、レオンとフィンは国王と王妃が何たるものかを教えられた。といっても、国王にしても王妃にしても、そんな簡単に身につけれるものではない。本来なら最低でも、5年以上は教育させられるだろう。教育が不十分な状態で国王と王妃になれば、国民達が愛想を尽かす可能性もある。悪魔討伐終了後、私からも国民達に事情を話して、きちんと理解してもらおう。そして、レオンとフィンには、私と同レベルの転移魔法をプレゼントしてあげよう。それならば、一瞬でレーデンブルクに移動して相談することも可能だからね。

フィン、レオン、今は家族との交流を深めておきなさい。



○○○



翌朝、私達は王城の会議室にいた。

私がオリュンプス遺跡に行っている間、レーデンブルクの国民達には、何者かがスフィアタリア全土に悪魔が召喚され、各国が窮地に立たされている事を説明したらしい。今回の任務は、私達がアルテハイム王城に極秘に潜入して、悪魔を召喚した者を誘拐し、悪魔達を元の居場所へ送還する方法を強制的に教えてもらい実行に移すと伝えてある。また、悪魔の乗り移りと一体化に関しても説明しており、国民達からも理解を得られたようだ。まあ、ラギウスがレーデンブルク王都にいた乗っ取り者も一体化された者も対処してくれたから、説明の際、特に大きな混乱も発生しなかったようね。

「父上、母上、行ってきます!」
「ああ、フィン、気をつけてな」
「サーシャがいますから問題ないと思いますが気をつけてね」

王族メンバーが、レオンとフィンに次々と激励の言葉を送っている。多分、スムーズに進めば、2時間とかからないと思うのよね。

「サーシャ、あの人達、わかっているのかしら?この悪魔討伐、多分1時間くらいで終わるんじゃない?」

「終わるでしょうね。でも、レオンとフィンに関しては、しばらく会えないだろうから、ああやって激励の言葉を送っているのよ」

「サーシャ、転移魔法をレオンとフィンに与える気でしょ?伝えてないの?」

はは、サリアにはわかっちゃうか。

「うーん、言える雰囲気でじゃなかったわね。昨日の会議、あの場で言ったらシラケるような気がしてね」

「まあ、わかるわね。それじゃあ悪魔討伐終了後に与える気?」
「ええ、これまでのご褒美としてね。まあ、加護者達全員にいずれ与えるつもりよ」

私の加護者達は、今後特別待遇させるだろうから与えるあったほうが便利でしょ。
さて、そろそろ出発しますか!

「フィン、レオン、そろそろ行くわよ!」
「ああ」
「はい!それじゃあ、みんな、行ってきます」


私達は王族メンバーに別れを告げ、アルテハイム王都へ転移した。

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