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─葉璃─
聖南の温かい唇が、何度も優しいキスを落としてくる。 触れるだけのそれが行為を予感させるものではないから、なんだかいつも以上に照れてしまった。
聖南の鼻先がほっぺたに当たる感触もやたらと気恥ずかしくて、突然で気障な誓いの言葉の後だし聖南の顔をまともに見られない。
「……ごちそうさん。 今何時だっけ? わ、ヤバ」
うっとりするくらいカッコいい笑顔で離れて行った聖南が、腕時計で時間を確認すると慌てて俺を抱き起こした。
「え、何時ですか?」
「八時半」
「えぇ!? ラジオって九時からじゃ……! すみません!」
「いや葉璃のせいじゃねぇよ。 本番までに着けば大丈夫。 スタッフにはアキラがうまいこと言ってくれてるだろ」
「うぅ……俺が余計な事をしたばっかりに……」
「ぐるぐるすんなっての」
ここからラジオのスタジオまで十分もかからないからって、移動を含めてあと三十分で本番なんだからもう少し急ぐ素振りを見せたらいいのに……。
項垂れた俺を抱き起こした聖南は、「葉璃のせいじゃねぇから」と言って背中を撫でてくれて、俺の方が焦ってくる。
「聖南さん、マジで急ぎましょ。 本番に遅刻はダメですよ……!」
「……今日泊まれんの?」
「もちろん泊まります! 今日だけは親がダメって言っても聖南さん優先します、だから早く!」
「よっしゃ、じゃあ行こ」
聖南はいそいそと後部座席を降りて運転席へ移動し、車を走らせた。
俺は後部座席に乗ったまま、シートを起こすレバーが見付からなくて探していると、本当にあっという間に到着してしまった。
ゆったりと歩いている聖南の背中を押してスタジオへ入ると、スタッフの人が物凄く慌てた様子で駆け寄ってきた。
台本らしきものを持って、待ってましたと言わんばかりの必死の形相を見る限り、本番まで本当にギリギリなんだ。
「セナさん! 待ってたよ~! もう二人にはスタンバイしてもらってるから、はい、これ台本。 セナさんならぶっつけでも大丈夫だろうから任せたよ!」
台本を受け取った聖南がこんなに落ち着いてるのは、スタッフと馴れ合ってるからとか仕事を甘く見てるからとかじゃなく、本番の流れを狂わせない自信があるからなんだ。
信頼を勝ち得ているスタッフさんの聖南への言葉に、やっぱり聖南を追い掛けていてもたどり着ける気がしないなと思った。
聖南はいつどんな時もかっこいいけど、現場で真剣な表情をしている横顔が一番やばいかもしれない。
「悪いな、遅くなって。 本番は任せとけ。 あ、この子事務所の後輩だから、俺らの控え室で待たしといてやってくれる?」
「分かりました!」
台本を受け取った聖南が俺に視線を寄越して、「行ってくる」と瞳で話し掛けてくる。
スタッフの人に控え室へと誘導された俺は、スタジオへと向かう聖南の背中を見送りたくて振り返った。
すると聖南も、その場で俺のことを見ていた。
「(がんばって)」
眼鏡を掛けてない聖南に見えるかどうか分からなかったけど、俺の口パクは伝わったみたいだ。
思わずハッとするほどの微笑みを浮かべて、しっかりと頷いてくれたから───。
聖南の温かい唇が、何度も優しいキスを落としてくる。 触れるだけのそれが行為を予感させるものではないから、なんだかいつも以上に照れてしまった。
聖南の鼻先がほっぺたに当たる感触もやたらと気恥ずかしくて、突然で気障な誓いの言葉の後だし聖南の顔をまともに見られない。
「……ごちそうさん。 今何時だっけ? わ、ヤバ」
うっとりするくらいカッコいい笑顔で離れて行った聖南が、腕時計で時間を確認すると慌てて俺を抱き起こした。
「え、何時ですか?」
「八時半」
「えぇ!? ラジオって九時からじゃ……! すみません!」
「いや葉璃のせいじゃねぇよ。 本番までに着けば大丈夫。 スタッフにはアキラがうまいこと言ってくれてるだろ」
「うぅ……俺が余計な事をしたばっかりに……」
「ぐるぐるすんなっての」
ここからラジオのスタジオまで十分もかからないからって、移動を含めてあと三十分で本番なんだからもう少し急ぐ素振りを見せたらいいのに……。
項垂れた俺を抱き起こした聖南は、「葉璃のせいじゃねぇから」と言って背中を撫でてくれて、俺の方が焦ってくる。
「聖南さん、マジで急ぎましょ。 本番に遅刻はダメですよ……!」
「……今日泊まれんの?」
「もちろん泊まります! 今日だけは親がダメって言っても聖南さん優先します、だから早く!」
「よっしゃ、じゃあ行こ」
聖南はいそいそと後部座席を降りて運転席へ移動し、車を走らせた。
俺は後部座席に乗ったまま、シートを起こすレバーが見付からなくて探していると、本当にあっという間に到着してしまった。
ゆったりと歩いている聖南の背中を押してスタジオへ入ると、スタッフの人が物凄く慌てた様子で駆け寄ってきた。
台本らしきものを持って、待ってましたと言わんばかりの必死の形相を見る限り、本番まで本当にギリギリなんだ。
「セナさん! 待ってたよ~! もう二人にはスタンバイしてもらってるから、はい、これ台本。 セナさんならぶっつけでも大丈夫だろうから任せたよ!」
台本を受け取った聖南がこんなに落ち着いてるのは、スタッフと馴れ合ってるからとか仕事を甘く見てるからとかじゃなく、本番の流れを狂わせない自信があるからなんだ。
信頼を勝ち得ているスタッフさんの聖南への言葉に、やっぱり聖南を追い掛けていてもたどり着ける気がしないなと思った。
聖南はいつどんな時もかっこいいけど、現場で真剣な表情をしている横顔が一番やばいかもしれない。
「悪いな、遅くなって。 本番は任せとけ。 あ、この子事務所の後輩だから、俺らの控え室で待たしといてやってくれる?」
「分かりました!」
台本を受け取った聖南が俺に視線を寄越して、「行ってくる」と瞳で話し掛けてくる。
スタッフの人に控え室へと誘導された俺は、スタジオへと向かう聖南の背中を見送りたくて振り返った。
すると聖南も、その場で俺のことを見ていた。
「(がんばって)」
眼鏡を掛けてない聖南に見えるかどうか分からなかったけど、俺の口パクは伝わったみたいだ。
思わずハッとするほどの微笑みを浮かべて、しっかりと頷いてくれたから───。
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