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「ぴぃ、ぴぅ『うう、ひっぅ……』」

「リア、せっかくの儀式が、変なやつらのせいで台無しになってかわいそうに。今は何も考えずに、ゆっくりお休み」
「リアちゃん、儀式はまた盛大にしてくれるよ。だって、リアちゃんは王女なんだからね。安心しておやすみ」
「ぴ……ぴ……」

 あのあと、すぐに部屋にたどり着いた彼女たち。侍女たちがお茶を準備したあと下がらせ、自分たちだけになった。
 泣きつかれて、うとうと顔を上下に振り船を漕ぎ始めた彼女は、ふたりの言葉に力なく返事をしたあと、羽に顔を埋め眠り始める。

「リアちゃんの魔力は、少ないがまちがいなく自分に似ているってガニアンが言っていた。それを証明する手立てがないから、人化した姿を見せることで、何を言っても信じない周囲を完全に黙らせる予定が台無しだ。何よりも、リアちゃん本人が確実に陛下たちの娘だという確信と自信を持つ、大切な日になるはずだったのに」
「その話は、僕も聞いています。リアにも、ガニアンさんがそう言っていましたし、リアもそれを頼りにして自分がこの国の王女だと信じる糧にしていました。ですが、ガニアンさんが自分を慰めるために、そう言っているだけなんじゃないかって、思ってもいましたし……。何よりも、王族なのに魔力がほとんどなく、ずっと人化できないことも苦にしていたんです」

 魔法で、会場の様子を見ながら、ズィークとショーリは目の辺りの羽毛が涙で濡れた彼女をそっと撫でる。今もなお、周囲の口さがない言葉を聞いても癇癪を起こすわけでもなく、その人物が処罰されないように、ぐっと堪えて自分の心にしまうような内気で優しい彼女に愛しさが募る。

「あの女性の話は、なんとなく、辻褄が合っているような感じですね。ですが、旅先の旅館で、いくらなんでも王女の保育器の管理が杜撰になるなんてこと、あるのでしょうか? ショーリさんはどう思います?」
「王家の保育器なのだから、ほかの保育器を預かったとしても別々に保管するだろうな。ただ、もう18年も前のことだ。いくらでもなんとでも言いようがある。調査も難しい。あの老人たちが嘘を言っているようには一見してわからないし、話は難航するだろう」
「リアが人化して、姿が変わればいいのでしょうけど……。でも、実は、今日もリアは人化することを怖がっていました。似てなかったらどうしようって。こんなことになって、リアはますます人化したくないって思うでしょうね」

 会場からひとり、またひとりと口を閉ざすことなく去っていった。ズィークは、ヴィクトリアが見えない位置に映し出していた会場内の投影魔法をログアウトする。
 他言無用と王が言っていたが、この話はあっという間に広がるだろう。ますますヴィクトリアが傷つく事態にならないか、ふたりは心配そうに彼女を見つめた。







 
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