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あとで必ず行くと言っていた王たちはまだ来ない。おそらく、重役たちと招かざる客についてどうするのか話し合いをしているのだろう。特に、ずっとヴィクトリアを王女と認めていなかった宰相が、意気揚々とあれこれ難癖付けている姿が容易に想像され、ふたりはげんなりする。
「儀式で無理に人化しなくとも、そのうち換毛期に入り人化するだろうけど、リアちゃんの気持ちが第一だ。今後は、あの子を本物の王女だと言ってはばからない一部の声がどんどん大きくなるに違いない。いっそ、落ち着くまで騒がしいここを離れるのも悪くないだろう。俺の国とか。王位継承の放棄を正式にしてきた見返りに領地をもらったんだ。そこなら静かに過ごせる」
「ショーリさん、それなら、行先はうちの領地に決まってます。僕とリアは、結婚する約束をしているんですから」
「そんなもの口約束だろう? それに、お前は病弱だから、健康な子供の出産を望まれるリアちゃんの夫にはふさわしくないって反対している老人たちがいるだろうが」
「それは、そうですけど。でも、リアは僕のお嫁さんになるんです。絶対に幸せにしてみせます」
「あのなあ、リアちゃんが姿が同じなお前と一緒にいたがったから遠慮してたが、俺だってリアちゃんと一緒にいたい。これまで一緒にいられなかった分、俺にリアちゃんをまかせろ」
「いいえ。リアは、小さなころにいじめてきたショーリさんのことを怖がっていました。そんなこと許しません」
「そんな子供のころのことを。あのな、あれは事情があってやっていたんだ」
「その事情とやらも聞きましたが、そんなのこじつけです。そもそも、好きな子をいじめるってありえない。リアは、何をしていてもかわいかったでしょうけど」
「かわいかったぞ。小さいころにしか見られない、びっくりして慌てるリアちゃんも、恥ずかしがるリアちゃんも、心から楽しそうに遊んで笑うリアちゃんも」
「僕と知り合ってからのリアは、僕にしか見せない姿がたくさんありましたけどね」
ふたりとも、しばらくは王宮から離れたほうがいいと意見が合致した。だが、彼女と一緒に過ごす場所について、どうせならふたりきりがいいと譲ろうとしない。
「そもそもショーリさんはリクガメじゃないですか。種族が違いすぎますから、子を成せないでしょ」
「俺は結婚っていう形態をとれなくても、リアちゃんと一緒にいられたらそれでいい。俺は、子を望まれていないからな。俺自身、俺との子が産まれなくても、リアちゃんがいれば十分幸せだ。ただ、リアちゃんが自分の子を欲しがるだろうから、うーん。そうだ……いっそお前も一緒にくるか? お前の領地でも、病弱な後継者は困るともめてるんだろ? 俺は、お前とのペンギンの子でも、リアちゃんの子だから大事にするし、それでいいぞ」
ショーリが大きなためいきとともにそう言った時、ヴィクトリアがふんわり羽毛にうずめていた顔をあげる。目をしょぼしょぼさせていて、それを見たふたりは、かわいいと小声でつぶやき、一瞬で肝心のヴィクトリアの意見がない不毛な論争をやめた。
「す、ぴぃ……?(んー、なぁに……?)」
「リア、なんでもないよ。ずっとここにいるからね。おやすみ」
「うるさかったか。リアちゃんごめん、静かにする。話が飛びすぎたな。まずは落ち着いたらリアちゃんの気持ちを聞こう。話はそれからだ」
「もちろんです。リアの気持ちが一番大事ですから」
その日、夜が更けてもヴィクトリアは目を覚ますことはなかった。まるで、現実に帰りたくないと、夢の中に閉じこもるかのように。
「儀式で無理に人化しなくとも、そのうち換毛期に入り人化するだろうけど、リアちゃんの気持ちが第一だ。今後は、あの子を本物の王女だと言ってはばからない一部の声がどんどん大きくなるに違いない。いっそ、落ち着くまで騒がしいここを離れるのも悪くないだろう。俺の国とか。王位継承の放棄を正式にしてきた見返りに領地をもらったんだ。そこなら静かに過ごせる」
「ショーリさん、それなら、行先はうちの領地に決まってます。僕とリアは、結婚する約束をしているんですから」
「そんなもの口約束だろう? それに、お前は病弱だから、健康な子供の出産を望まれるリアちゃんの夫にはふさわしくないって反対している老人たちがいるだろうが」
「それは、そうですけど。でも、リアは僕のお嫁さんになるんです。絶対に幸せにしてみせます」
「あのなあ、リアちゃんが姿が同じなお前と一緒にいたがったから遠慮してたが、俺だってリアちゃんと一緒にいたい。これまで一緒にいられなかった分、俺にリアちゃんをまかせろ」
「いいえ。リアは、小さなころにいじめてきたショーリさんのことを怖がっていました。そんなこと許しません」
「そんな子供のころのことを。あのな、あれは事情があってやっていたんだ」
「その事情とやらも聞きましたが、そんなのこじつけです。そもそも、好きな子をいじめるってありえない。リアは、何をしていてもかわいかったでしょうけど」
「かわいかったぞ。小さいころにしか見られない、びっくりして慌てるリアちゃんも、恥ずかしがるリアちゃんも、心から楽しそうに遊んで笑うリアちゃんも」
「僕と知り合ってからのリアは、僕にしか見せない姿がたくさんありましたけどね」
ふたりとも、しばらくは王宮から離れたほうがいいと意見が合致した。だが、彼女と一緒に過ごす場所について、どうせならふたりきりがいいと譲ろうとしない。
「そもそもショーリさんはリクガメじゃないですか。種族が違いすぎますから、子を成せないでしょ」
「俺は結婚っていう形態をとれなくても、リアちゃんと一緒にいられたらそれでいい。俺は、子を望まれていないからな。俺自身、俺との子が産まれなくても、リアちゃんがいれば十分幸せだ。ただ、リアちゃんが自分の子を欲しがるだろうから、うーん。そうだ……いっそお前も一緒にくるか? お前の領地でも、病弱な後継者は困るともめてるんだろ? 俺は、お前とのペンギンの子でも、リアちゃんの子だから大事にするし、それでいいぞ」
ショーリが大きなためいきとともにそう言った時、ヴィクトリアがふんわり羽毛にうずめていた顔をあげる。目をしょぼしょぼさせていて、それを見たふたりは、かわいいと小声でつぶやき、一瞬で肝心のヴィクトリアの意見がない不毛な論争をやめた。
「す、ぴぃ……?(んー、なぁに……?)」
「リア、なんでもないよ。ずっとここにいるからね。おやすみ」
「うるさかったか。リアちゃんごめん、静かにする。話が飛びすぎたな。まずは落ち着いたらリアちゃんの気持ちを聞こう。話はそれからだ」
「もちろんです。リアの気持ちが一番大事ですから」
その日、夜が更けてもヴィクトリアは目を覚ますことはなかった。まるで、現実に帰りたくないと、夢の中に閉じこもるかのように。
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