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ヴィクトリアは、人化した姿で王宮に帰ってきた。あまり騒々しくされたくないため、まだ日が昇る前で、彼女の姿は門番や夜勤の騎士たち、そして数人の侍女たちの目にのみ映ることになる。彼らには、現在王宮を騒がしている状況が落ち着くまで厳しく口止めをした。
もともと、彼らは宰相たちとは違う派閥であり、内心は喜んで彼女の人化した姿を大声で話をしたいが、そのような命令などなくとも口を開かないだろう。
「お母様、ただいまかえりました。長らくご心配をおかけして、ごめんなさい。でも、もうわたくしは大丈夫です。だって、この通り人化して、どんな姿であっても娘だと言ってくれる両親と兄、そして、わたくしを愛してくれる人たちがいるから」
王妃は、人化したヴィクトリアの姿を見て、目と口を丸くした。自分や夫にまったく似ていない。とはいえ、美しい顔立ちと佇まいに感心したように首を縦に振る。
似ていないというのに、彼らは親子だと確信している。その理由は、ヴィクトリアが胸を張って言っていたことのほかに、まったく似ていないその姿であることこそがその証明なのだ。今のヴィクトリアの姿は、全国民が彼女こそが真の王女だと熱狂するだろう。
「リア、お帰り。まあまあ、なんてこと。よく顔をみせてちょうだい。まさか、あなたが人化した姿がそんなだったなんて……。それにしても、無事でよかったわ。リクガメの国ではよくしてもらったみたいね。ショーリ君とズィーク君がいてくれてよかったわ。本当に何と言っていいのか……。娘を守ってくれてありがとう」
「僕たちは、愛する人を守るという、ごく当たりまえのことをしただけです」
「ズィークの言う通りです。もしも、彼女がこの国の血を継いでいなかったとしても、何があっても守っていたでしょう。王妃様、父たちから手紙を預かっております。どうぞ、中を検めてください」
「まあ、リクガメ国王から……。ふふふ、おそらくはあなたとリアの今後のことかしら? リアの姿が、わたくしたちに似ていなかったからこその手紙でしょうね」
「ご慧眼、恐れ入ります。どうか、前向きに検討していただければ、と思います」
ヴィクトリアの現在の姿を、その姿が目に入る全員が食い入るように見ている。そこには少々の戸惑いがあるものの、眠気を一瞬でふきとばすほどの輝きがみてとれた。
「リア、不便だろうけれど、もう少し、人化はしないでいてくれるかしら?」
王妃が神妙な顔でそういうと、ヴィクトリアは理由も聞かずすぐさま獣化した。彼女にとって、家族の言葉は自分のためになることを知っているからだ。
「ぷわー、ぷっぷー『何か理由があるのですね。わかりました。お母様がたの許可がでるまで、わたくしはこの姿で過ごします』」
「ふふふ、あなたときたら……。物分かりが良すぎるのも考え物ね。あとで、ガニアンから話を聞いてちょうだい。ふふふ、あの人たちの驚く顔が目に浮かぶわ」
くすくすと、心から面白そうに美しい王妃が笑い声を発する。数分前には考えられないほど、今までの気苦労が報われたと、心から笑みがこぼれた。何よりも、ヴィクトリアが一番幸せそうにしていることが嬉しくて、自分が彼女の今の姿を自慢してまわりたいほど心が躍る。
「ぷーわっ、ぷーぅ『お母様、彼女と宰相の息子の婚約を許可されたとか。それは……』」
「ふふふ、そのことについても、あとからガニアンの説明があるわ。大丈夫、すべてうまくいくわ」
「ぷわぷわ『言いたくないけど、宰相の息子さんは父親が言うのを鵜吞みにし、宰相のいう通りに行動していたのもあって意地悪でした。彼が、わたくしにしたように、ヴィクトリアさんに意地悪をしたり、万が一、彼女の恋心を利用しだましているのなら、わたくし、絶対に許せません』」
「彼は彼で、多少は問題のある子なんだけれど、複雑な立場なの。実は、ふたりの婚約を認める前に、宰相には内緒で彼と話をしたの。ふふふ、彼女のことを真剣に慕っているそうよ。その件についても問題ないから大丈夫」
「ぷぅ『それならいいけど……』」
「さっそくなのだけれども、明日、あなたの帰還と、ふたりの婚約発表を正式にします。リア、疲れたでしょう? ぐっすり眠って、明日は、とびっきりおしゃれしましょうね」
王妃がこの話は終わりだと軽く手を叩く。そして、つやつやぴかぴかの換羽したばかりの、自分たちコウテイペンギンよりも小さなキングペンギン姿の娘の滑らかな羽を撫でると、ヴィクトリアは嬉しくて目を細め羽をバタつかせたのであった。
もともと、彼らは宰相たちとは違う派閥であり、内心は喜んで彼女の人化した姿を大声で話をしたいが、そのような命令などなくとも口を開かないだろう。
「お母様、ただいまかえりました。長らくご心配をおかけして、ごめんなさい。でも、もうわたくしは大丈夫です。だって、この通り人化して、どんな姿であっても娘だと言ってくれる両親と兄、そして、わたくしを愛してくれる人たちがいるから」
王妃は、人化したヴィクトリアの姿を見て、目と口を丸くした。自分や夫にまったく似ていない。とはいえ、美しい顔立ちと佇まいに感心したように首を縦に振る。
似ていないというのに、彼らは親子だと確信している。その理由は、ヴィクトリアが胸を張って言っていたことのほかに、まったく似ていないその姿であることこそがその証明なのだ。今のヴィクトリアの姿は、全国民が彼女こそが真の王女だと熱狂するだろう。
「リア、お帰り。まあまあ、なんてこと。よく顔をみせてちょうだい。まさか、あなたが人化した姿がそんなだったなんて……。それにしても、無事でよかったわ。リクガメの国ではよくしてもらったみたいね。ショーリ君とズィーク君がいてくれてよかったわ。本当に何と言っていいのか……。娘を守ってくれてありがとう」
「僕たちは、愛する人を守るという、ごく当たりまえのことをしただけです」
「ズィークの言う通りです。もしも、彼女がこの国の血を継いでいなかったとしても、何があっても守っていたでしょう。王妃様、父たちから手紙を預かっております。どうぞ、中を検めてください」
「まあ、リクガメ国王から……。ふふふ、おそらくはあなたとリアの今後のことかしら? リアの姿が、わたくしたちに似ていなかったからこその手紙でしょうね」
「ご慧眼、恐れ入ります。どうか、前向きに検討していただければ、と思います」
ヴィクトリアの現在の姿を、その姿が目に入る全員が食い入るように見ている。そこには少々の戸惑いがあるものの、眠気を一瞬でふきとばすほどの輝きがみてとれた。
「リア、不便だろうけれど、もう少し、人化はしないでいてくれるかしら?」
王妃が神妙な顔でそういうと、ヴィクトリアは理由も聞かずすぐさま獣化した。彼女にとって、家族の言葉は自分のためになることを知っているからだ。
「ぷわー、ぷっぷー『何か理由があるのですね。わかりました。お母様がたの許可がでるまで、わたくしはこの姿で過ごします』」
「ふふふ、あなたときたら……。物分かりが良すぎるのも考え物ね。あとで、ガニアンから話を聞いてちょうだい。ふふふ、あの人たちの驚く顔が目に浮かぶわ」
くすくすと、心から面白そうに美しい王妃が笑い声を発する。数分前には考えられないほど、今までの気苦労が報われたと、心から笑みがこぼれた。何よりも、ヴィクトリアが一番幸せそうにしていることが嬉しくて、自分が彼女の今の姿を自慢してまわりたいほど心が躍る。
「ぷーわっ、ぷーぅ『お母様、彼女と宰相の息子の婚約を許可されたとか。それは……』」
「ふふふ、そのことについても、あとからガニアンの説明があるわ。大丈夫、すべてうまくいくわ」
「ぷわぷわ『言いたくないけど、宰相の息子さんは父親が言うのを鵜吞みにし、宰相のいう通りに行動していたのもあって意地悪でした。彼が、わたくしにしたように、ヴィクトリアさんに意地悪をしたり、万が一、彼女の恋心を利用しだましているのなら、わたくし、絶対に許せません』」
「彼は彼で、多少は問題のある子なんだけれど、複雑な立場なの。実は、ふたりの婚約を認める前に、宰相には内緒で彼と話をしたの。ふふふ、彼女のことを真剣に慕っているそうよ。その件についても問題ないから大丈夫」
「ぷぅ『それならいいけど……』」
「さっそくなのだけれども、明日、あなたの帰還と、ふたりの婚約発表を正式にします。リア、疲れたでしょう? ぐっすり眠って、明日は、とびっきりおしゃれしましょうね」
王妃がこの話は終わりだと軽く手を叩く。そして、つやつやぴかぴかの換羽したばかりの、自分たちコウテイペンギンよりも小さなキングペンギン姿の娘の滑らかな羽を撫でると、ヴィクトリアは嬉しくて目を細め羽をバタつかせたのであった。
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