5 / 39
婚約者を探していたら、浮気現場と覗きをしている令嬢を見つけたのだが①
しおりを挟む
今日は親戚のキンギョソウ侯爵の夜会に婚約者と来ている。
と、言えれば良かったのだが、婚約者であるチェリー・ブロッサム伯爵令嬢から、学園のご友人と一緒に行くとの事でエスコートを断られた。
『では、私にはひとりで行けという事かな?』
『あっ……! も、申し訳ありません、マロウ様。あの、その……あまりにもお友達がお気の毒で、その時にはその話でいっぱいいっぱいになってしまったから……』
なんでも、相手には親しい令嬢がおらず、夜会に一人で行かないといけないと困っていたらしい。そこで、あまり深く考えずに一緒に行く事を提案してしまったようだ。
彼女はもともと平民で、貴族の習慣やルールに疎い。俺よりもひとつ上だが、ブロッサム伯爵がせめて一年間だけでも結婚前に学園で過ごし、少しでも礼節を学ぶよう配慮したので、同じ学園に在籍している。
本来なら、学園に入学するまでに最低限のマナーや学業を修めておくのが大前提ではあるが、学園に多額の寄付金を納める事で、一年だけ編入が許されたらしい。
突然変わった環境に戸惑いつつも、学園での生活を楽しんでいるようだとほっとしていた。
だが、どうも彼女は不可解な言動が多い。同じクラスであれば、色々配慮できただろうし、日を追うごとにふたりの時間を持つ事で距離が近づいたのかもしれない。だが、生憎、俺と彼女ではカリキュラムが違う。
同じ学園に通っているにも拘らず、俺と彼女はほとんど会う事がなかった。時間を作り、彼女に会いにいっても、ご友人たちと一緒に何処かに行っている始末。
今回の夜会についてのエスコートやドレスコードなどを打ち合わせする時間すらないなど、敢えて避けられているとしか思えなかった。
しかも、婚約者である俺と夜会に出ないとなると、どれほどの醜聞になるか考えもしないのだろうか……。
いい加減にしてほしい。ついでに言うなら、これが初めてではない。
ひょっとしたら、わざと、俺の対面をつぶしたいのかもしれない。そこまで嫌われるような失礼な言動をしただろうかと、一時期は真剣に悩んでいた。
『はぁ……。何度も伝えてはいるが、これで5度目だ。私たちは、家同士の事業の繋がりで結ばれた婚約者とはいえ、もう少し、私の家や、私自身との事を考えてはくれないだろうか?』
『あの、その……か、考えていますけど、マロウ様とはクラスも違うし、あ、違いますし。つい……。それに、マロウ様には、私じゃなくても、親戚の誰かがいるじゃないですか。彼は、本当に親戚にも女の子がいないし、とってもかわいそうなんですよ……』
婚約を結ぶ際に出会ってから、明らかに彼女は俺に対して素っ気ないというか、距離を置いている。
自慢ではないが、容姿は普通くらいだと思う。体型は、父のような巨漢ではなく親戚で一番華奢だと言われているが、同世代の男よりも大きい。ただ単に、俺の外見から性格、何から何まで彼女の好みのタイプではないからではないかと思い始めたのである。
身分的にも俺自身に対しても委縮しているのが分かった。しかも、平民は政略などあまりないから、突然、家のために政略結婚をするよう命じられても嫌と言えなかったのだろう。
『チェリー嬢、君が突然身分や立場が変わった事に対しては気の毒だと思う。私との婚約も意に沿わないし、私自身が好みではないのだろう。私には面白い話術もないし、君のご友人である殿下たちのように華やかでもないし、真逆の容貌だからな。それほど私に対して嫌悪感があるのなら、早いうちに婚約を考え直して……』
至らない部分を自分で言っていて凹む。だが、他人から突き付けられるよりはましだ。
『ち、違います! そんな事はありません! マロウ様はとてもご立派ですし、とても誠実に接してくれています……こ、婚約破棄だなんて、そんな、酷いです! ちょっと、エスコートを数回お断りしただけで、そんな風に仰るだなんて……うう、グス、グスッ……』
『エスコートを断る事で、どのような事になるのか、もうすでに私からも伝えているし、理解できなければ、きちんと伯爵家に聞くように伝えたはずだ。こちらの事を、こう度々軽んじられては困る。それに、破棄とかじゃなくて、解消をだな……事業のほうも、君と私がどうしても結婚しなければならないというわけでもないのだし……チェリー嬢、感情的になって、すぐに泣くのをやめてくれ。まずは話を聞いてくれないか? まいったな……』
初めて、婚約者として紹介された彼女を見た時には、なんて美しい子なんだろうと、政略結婚ではあるが綺麗な妻を持てる事に喜んだ。
タイプかそうでないかと言われれば、俺だって彼女外見はタイプではない。俺は、彼女のようにスレンダーな儚げ美女よりも、ちまっとした小動物系のかわいい女の子のほうが好みだ。
例えば、ローズ嬢とよく一緒にいる、笑顔がかわいいビオラ・バイオレット子爵令嬢のような。
とはいえ、政略結婚をする以上、愛情と誠意を持って彼女と仲を深める事が出来ればと思っていた。両親も、結婚式の日が初対面で、結婚してから愛を深めていき、今でも鬱陶しいくらい仲が良すぎる。
両親よりは早く知り合ったのだ。結婚までに、同級生たちのいちゃいちゃしている婚約者同士や、恋人たちのような関係になりたいと思っていたのである。
だが、完全に避けられて蔑ろにされている現状の上、事が起こる度に、このように泣きだされ建設的な話にならない。
彼女のご友人も男性ばかりで、親戚のローズ嬢が彼女に声をかけてもそっぽを向かれると嘆いていたように、女友達が皆無だなんておかしな話だ。
女性には女性の社交が求められる。今のうちに、我がゼニアオイの侯爵夫人となるのだから人脈を作り、最低限の知識などを習得せねばならないというのに、全く向上心がなさそうだ。
父に現状を申し出ても、女性の扱い方など皆無でモテない俺の僻みかと笑われた。父達がそうしてきたように、結婚してからでも、おいおいそういった物を作り上げていけばいいと。
ブロッサム伯爵と父は、学生時代からの親友同士なのだ。その事もあり、婚約解消は難航しそうだと米神あたりの頭痛を感じる。
彼女にとって、俺を結婚相手にしたくないと思っているように、俺にとってもそうだ。
もうすでに、彼女に会いに行かねばならないと思っただけで、心なしか、胃の辺りも重だるく痛い気がするようになった。外見はともかく、内面がこうも許容範囲外の妻を迎えなければならないなんて……
夜会でエスコートをしなくていいなら、案外そのほうがいいかもしれない。なんとか彼女の言い分に頷いて、結局エスコートはご友人にしてもらう事になった。
『本当ですか? マロウ様、ありがとうございますっ! やったー !』
するとどうだろう。さっきまで泣いていたのに、スキップしそうなほど嬉しそうに去っていったではないか。
ついでに聞こえた、チョロいとかいう言葉はなんだ?
初耳だが、いい意味合いではないのはわかる。
いくらなんでも失礼すぎるし、あからさまに嫌われ過ぎじゃないかと、胸が苦しくなる。
『……双方ともに、結婚が嫌だと言えばなんとかなると思うのだがなあ……チェリー嬢が、一向に解消に頷いてくれない……。なぜだ。解消になったほうが、彼女も好みのご友人のひとりと結婚できるだろうに……はぁ……』
るんるん気分の彼女とは違い、俺は、石臼でも胃の中に仕込まれているかのような気分のまま、遠縁のご令嬢をエスコートして夜会に出席したのであった。
と、言えれば良かったのだが、婚約者であるチェリー・ブロッサム伯爵令嬢から、学園のご友人と一緒に行くとの事でエスコートを断られた。
『では、私にはひとりで行けという事かな?』
『あっ……! も、申し訳ありません、マロウ様。あの、その……あまりにもお友達がお気の毒で、その時にはその話でいっぱいいっぱいになってしまったから……』
なんでも、相手には親しい令嬢がおらず、夜会に一人で行かないといけないと困っていたらしい。そこで、あまり深く考えずに一緒に行く事を提案してしまったようだ。
彼女はもともと平民で、貴族の習慣やルールに疎い。俺よりもひとつ上だが、ブロッサム伯爵がせめて一年間だけでも結婚前に学園で過ごし、少しでも礼節を学ぶよう配慮したので、同じ学園に在籍している。
本来なら、学園に入学するまでに最低限のマナーや学業を修めておくのが大前提ではあるが、学園に多額の寄付金を納める事で、一年だけ編入が許されたらしい。
突然変わった環境に戸惑いつつも、学園での生活を楽しんでいるようだとほっとしていた。
だが、どうも彼女は不可解な言動が多い。同じクラスであれば、色々配慮できただろうし、日を追うごとにふたりの時間を持つ事で距離が近づいたのかもしれない。だが、生憎、俺と彼女ではカリキュラムが違う。
同じ学園に通っているにも拘らず、俺と彼女はほとんど会う事がなかった。時間を作り、彼女に会いにいっても、ご友人たちと一緒に何処かに行っている始末。
今回の夜会についてのエスコートやドレスコードなどを打ち合わせする時間すらないなど、敢えて避けられているとしか思えなかった。
しかも、婚約者である俺と夜会に出ないとなると、どれほどの醜聞になるか考えもしないのだろうか……。
いい加減にしてほしい。ついでに言うなら、これが初めてではない。
ひょっとしたら、わざと、俺の対面をつぶしたいのかもしれない。そこまで嫌われるような失礼な言動をしただろうかと、一時期は真剣に悩んでいた。
『はぁ……。何度も伝えてはいるが、これで5度目だ。私たちは、家同士の事業の繋がりで結ばれた婚約者とはいえ、もう少し、私の家や、私自身との事を考えてはくれないだろうか?』
『あの、その……か、考えていますけど、マロウ様とはクラスも違うし、あ、違いますし。つい……。それに、マロウ様には、私じゃなくても、親戚の誰かがいるじゃないですか。彼は、本当に親戚にも女の子がいないし、とってもかわいそうなんですよ……』
婚約を結ぶ際に出会ってから、明らかに彼女は俺に対して素っ気ないというか、距離を置いている。
自慢ではないが、容姿は普通くらいだと思う。体型は、父のような巨漢ではなく親戚で一番華奢だと言われているが、同世代の男よりも大きい。ただ単に、俺の外見から性格、何から何まで彼女の好みのタイプではないからではないかと思い始めたのである。
身分的にも俺自身に対しても委縮しているのが分かった。しかも、平民は政略などあまりないから、突然、家のために政略結婚をするよう命じられても嫌と言えなかったのだろう。
『チェリー嬢、君が突然身分や立場が変わった事に対しては気の毒だと思う。私との婚約も意に沿わないし、私自身が好みではないのだろう。私には面白い話術もないし、君のご友人である殿下たちのように華やかでもないし、真逆の容貌だからな。それほど私に対して嫌悪感があるのなら、早いうちに婚約を考え直して……』
至らない部分を自分で言っていて凹む。だが、他人から突き付けられるよりはましだ。
『ち、違います! そんな事はありません! マロウ様はとてもご立派ですし、とても誠実に接してくれています……こ、婚約破棄だなんて、そんな、酷いです! ちょっと、エスコートを数回お断りしただけで、そんな風に仰るだなんて……うう、グス、グスッ……』
『エスコートを断る事で、どのような事になるのか、もうすでに私からも伝えているし、理解できなければ、きちんと伯爵家に聞くように伝えたはずだ。こちらの事を、こう度々軽んじられては困る。それに、破棄とかじゃなくて、解消をだな……事業のほうも、君と私がどうしても結婚しなければならないというわけでもないのだし……チェリー嬢、感情的になって、すぐに泣くのをやめてくれ。まずは話を聞いてくれないか? まいったな……』
初めて、婚約者として紹介された彼女を見た時には、なんて美しい子なんだろうと、政略結婚ではあるが綺麗な妻を持てる事に喜んだ。
タイプかそうでないかと言われれば、俺だって彼女外見はタイプではない。俺は、彼女のようにスレンダーな儚げ美女よりも、ちまっとした小動物系のかわいい女の子のほうが好みだ。
例えば、ローズ嬢とよく一緒にいる、笑顔がかわいいビオラ・バイオレット子爵令嬢のような。
とはいえ、政略結婚をする以上、愛情と誠意を持って彼女と仲を深める事が出来ればと思っていた。両親も、結婚式の日が初対面で、結婚してから愛を深めていき、今でも鬱陶しいくらい仲が良すぎる。
両親よりは早く知り合ったのだ。結婚までに、同級生たちのいちゃいちゃしている婚約者同士や、恋人たちのような関係になりたいと思っていたのである。
だが、完全に避けられて蔑ろにされている現状の上、事が起こる度に、このように泣きだされ建設的な話にならない。
彼女のご友人も男性ばかりで、親戚のローズ嬢が彼女に声をかけてもそっぽを向かれると嘆いていたように、女友達が皆無だなんておかしな話だ。
女性には女性の社交が求められる。今のうちに、我がゼニアオイの侯爵夫人となるのだから人脈を作り、最低限の知識などを習得せねばならないというのに、全く向上心がなさそうだ。
父に現状を申し出ても、女性の扱い方など皆無でモテない俺の僻みかと笑われた。父達がそうしてきたように、結婚してからでも、おいおいそういった物を作り上げていけばいいと。
ブロッサム伯爵と父は、学生時代からの親友同士なのだ。その事もあり、婚約解消は難航しそうだと米神あたりの頭痛を感じる。
彼女にとって、俺を結婚相手にしたくないと思っているように、俺にとってもそうだ。
もうすでに、彼女に会いに行かねばならないと思っただけで、心なしか、胃の辺りも重だるく痛い気がするようになった。外見はともかく、内面がこうも許容範囲外の妻を迎えなければならないなんて……
夜会でエスコートをしなくていいなら、案外そのほうがいいかもしれない。なんとか彼女の言い分に頷いて、結局エスコートはご友人にしてもらう事になった。
『本当ですか? マロウ様、ありがとうございますっ! やったー !』
するとどうだろう。さっきまで泣いていたのに、スキップしそうなほど嬉しそうに去っていったではないか。
ついでに聞こえた、チョロいとかいう言葉はなんだ?
初耳だが、いい意味合いではないのはわかる。
いくらなんでも失礼すぎるし、あからさまに嫌われ過ぎじゃないかと、胸が苦しくなる。
『……双方ともに、結婚が嫌だと言えばなんとかなると思うのだがなあ……チェリー嬢が、一向に解消に頷いてくれない……。なぜだ。解消になったほうが、彼女も好みのご友人のひとりと結婚できるだろうに……はぁ……』
るんるん気分の彼女とは違い、俺は、石臼でも胃の中に仕込まれているかのような気分のまま、遠縁のご令嬢をエスコートして夜会に出席したのであった。
0
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
悪役令嬢、記憶をなくして辺境でカフェを開きます〜お忍びで通ってくる元婚約者の王子様、私はあなたのことなど知りません〜
咲月ねむと
恋愛
王子の婚約者だった公爵令嬢セレスティーナは、断罪イベントの最中、興奮のあまり階段から転げ落ち、頭を打ってしまう。目覚めた彼女は、なんと「悪役令嬢として生きてきた数年間」の記憶をすっぽりと失い、動物を愛する心優しくおっとりした本来の性格に戻っていた。
もはや王宮に居場所はないと、自ら婚約破棄を申し出て辺境の領地へ。そこで動物たちに異常に好かれる体質を活かし、もふもふの聖獣たちが集まるカフェを開店し、穏やかな日々を送り始める。
一方、セレスティーナの豹変ぶりが気になって仕方ない元婚約者の王子・アルフレッドは、身分を隠してお忍びでカフェを訪れる。別人になったかのような彼女に戸惑いながらも、次第に本当の彼女に惹かれていくが、セレスティーナは彼のことを全く覚えておらず…?
※これはかなり人を選ぶ作品です。
感想欄にもある通り、私自身も再度読み返してみて、皆様のおっしゃる通りもう少しプロットをしっかりしてればと。
それでも大丈夫って方は、ぜひ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる