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婚約者を探していたら、浮気現場と覗きをしている令嬢を見つけたのだが①
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今日は親戚のキンギョソウ侯爵の夜会に婚約者と来ている。
と、言えれば良かったのだが、婚約者であるチェリー・ブロッサム伯爵令嬢から、学園のご友人と一緒に行くとの事でエスコートを断られた。
『では、私にはひとりで行けという事かな?』
『あっ……! も、申し訳ありません、マロウ様。あの、その……あまりにもお友達がお気の毒で、その時にはその話でいっぱいいっぱいになってしまったから……』
なんでも、相手には親しい令嬢がおらず、夜会に一人で行かないといけないと困っていたらしい。そこで、あまり深く考えずに一緒に行く事を提案してしまったようだ。
彼女はもともと平民で、貴族の習慣やルールに疎い。俺よりもひとつ上だが、ブロッサム伯爵がせめて一年間だけでも結婚前に学園で過ごし、少しでも礼節を学ぶよう配慮したので、同じ学園に在籍している。
本来なら、学園に入学するまでに最低限のマナーや学業を修めておくのが大前提ではあるが、学園に多額の寄付金を納める事で、一年だけ編入が許されたらしい。
突然変わった環境に戸惑いつつも、学園での生活を楽しんでいるようだとほっとしていた。
だが、どうも彼女は不可解な言動が多い。同じクラスであれば、色々配慮できただろうし、日を追うごとにふたりの時間を持つ事で距離が近づいたのかもしれない。だが、生憎、俺と彼女ではカリキュラムが違う。
同じ学園に通っているにも拘らず、俺と彼女はほとんど会う事がなかった。時間を作り、彼女に会いにいっても、ご友人たちと一緒に何処かに行っている始末。
今回の夜会についてのエスコートやドレスコードなどを打ち合わせする時間すらないなど、敢えて避けられているとしか思えなかった。
しかも、婚約者である俺と夜会に出ないとなると、どれほどの醜聞になるか考えもしないのだろうか……。
いい加減にしてほしい。ついでに言うなら、これが初めてではない。
ひょっとしたら、わざと、俺の対面をつぶしたいのかもしれない。そこまで嫌われるような失礼な言動をしただろうかと、一時期は真剣に悩んでいた。
『はぁ……。何度も伝えてはいるが、これで5度目だ。私たちは、家同士の事業の繋がりで結ばれた婚約者とはいえ、もう少し、私の家や、私自身との事を考えてはくれないだろうか?』
『あの、その……か、考えていますけど、マロウ様とはクラスも違うし、あ、違いますし。つい……。それに、マロウ様には、私じゃなくても、親戚の誰かがいるじゃないですか。彼は、本当に親戚にも女の子がいないし、とってもかわいそうなんですよ……』
婚約を結ぶ際に出会ってから、明らかに彼女は俺に対して素っ気ないというか、距離を置いている。
自慢ではないが、容姿は普通くらいだと思う。体型は、父のような巨漢ではなく親戚で一番華奢だと言われているが、同世代の男よりも大きい。ただ単に、俺の外見から性格、何から何まで彼女の好みのタイプではないからではないかと思い始めたのである。
身分的にも俺自身に対しても委縮しているのが分かった。しかも、平民は政略などあまりないから、突然、家のために政略結婚をするよう命じられても嫌と言えなかったのだろう。
『チェリー嬢、君が突然身分や立場が変わった事に対しては気の毒だと思う。私との婚約も意に沿わないし、私自身が好みではないのだろう。私には面白い話術もないし、君のご友人である殿下たちのように華やかでもないし、真逆の容貌だからな。それほど私に対して嫌悪感があるのなら、早いうちに婚約を考え直して……』
至らない部分を自分で言っていて凹む。だが、他人から突き付けられるよりはましだ。
『ち、違います! そんな事はありません! マロウ様はとてもご立派ですし、とても誠実に接してくれています……こ、婚約破棄だなんて、そんな、酷いです! ちょっと、エスコートを数回お断りしただけで、そんな風に仰るだなんて……うう、グス、グスッ……』
『エスコートを断る事で、どのような事になるのか、もうすでに私からも伝えているし、理解できなければ、きちんと伯爵家に聞くように伝えたはずだ。こちらの事を、こう度々軽んじられては困る。それに、破棄とかじゃなくて、解消をだな……事業のほうも、君と私がどうしても結婚しなければならないというわけでもないのだし……チェリー嬢、感情的になって、すぐに泣くのをやめてくれ。まずは話を聞いてくれないか? まいったな……』
初めて、婚約者として紹介された彼女を見た時には、なんて美しい子なんだろうと、政略結婚ではあるが綺麗な妻を持てる事に喜んだ。
タイプかそうでないかと言われれば、俺だって彼女外見はタイプではない。俺は、彼女のようにスレンダーな儚げ美女よりも、ちまっとした小動物系のかわいい女の子のほうが好みだ。
例えば、ローズ嬢とよく一緒にいる、笑顔がかわいいビオラ・バイオレット子爵令嬢のような。
とはいえ、政略結婚をする以上、愛情と誠意を持って彼女と仲を深める事が出来ればと思っていた。両親も、結婚式の日が初対面で、結婚してから愛を深めていき、今でも鬱陶しいくらい仲が良すぎる。
両親よりは早く知り合ったのだ。結婚までに、同級生たちのいちゃいちゃしている婚約者同士や、恋人たちのような関係になりたいと思っていたのである。
だが、完全に避けられて蔑ろにされている現状の上、事が起こる度に、このように泣きだされ建設的な話にならない。
彼女のご友人も男性ばかりで、親戚のローズ嬢が彼女に声をかけてもそっぽを向かれると嘆いていたように、女友達が皆無だなんておかしな話だ。
女性には女性の社交が求められる。今のうちに、我がゼニアオイの侯爵夫人となるのだから人脈を作り、最低限の知識などを習得せねばならないというのに、全く向上心がなさそうだ。
父に現状を申し出ても、女性の扱い方など皆無でモテない俺の僻みかと笑われた。父達がそうしてきたように、結婚してからでも、おいおいそういった物を作り上げていけばいいと。
ブロッサム伯爵と父は、学生時代からの親友同士なのだ。その事もあり、婚約解消は難航しそうだと米神あたりの頭痛を感じる。
彼女にとって、俺を結婚相手にしたくないと思っているように、俺にとってもそうだ。
もうすでに、彼女に会いに行かねばならないと思っただけで、心なしか、胃の辺りも重だるく痛い気がするようになった。外見はともかく、内面がこうも許容範囲外の妻を迎えなければならないなんて……
夜会でエスコートをしなくていいなら、案外そのほうがいいかもしれない。なんとか彼女の言い分に頷いて、結局エスコートはご友人にしてもらう事になった。
『本当ですか? マロウ様、ありがとうございますっ! やったー !』
するとどうだろう。さっきまで泣いていたのに、スキップしそうなほど嬉しそうに去っていったではないか。
ついでに聞こえた、チョロいとかいう言葉はなんだ?
初耳だが、いい意味合いではないのはわかる。
いくらなんでも失礼すぎるし、あからさまに嫌われ過ぎじゃないかと、胸が苦しくなる。
『……双方ともに、結婚が嫌だと言えばなんとかなると思うのだがなあ……チェリー嬢が、一向に解消に頷いてくれない……。なぜだ。解消になったほうが、彼女も好みのご友人のひとりと結婚できるだろうに……はぁ……』
るんるん気分の彼女とは違い、俺は、石臼でも胃の中に仕込まれているかのような気分のまま、遠縁のご令嬢をエスコートして夜会に出席したのであった。
と、言えれば良かったのだが、婚約者であるチェリー・ブロッサム伯爵令嬢から、学園のご友人と一緒に行くとの事でエスコートを断られた。
『では、私にはひとりで行けという事かな?』
『あっ……! も、申し訳ありません、マロウ様。あの、その……あまりにもお友達がお気の毒で、その時にはその話でいっぱいいっぱいになってしまったから……』
なんでも、相手には親しい令嬢がおらず、夜会に一人で行かないといけないと困っていたらしい。そこで、あまり深く考えずに一緒に行く事を提案してしまったようだ。
彼女はもともと平民で、貴族の習慣やルールに疎い。俺よりもひとつ上だが、ブロッサム伯爵がせめて一年間だけでも結婚前に学園で過ごし、少しでも礼節を学ぶよう配慮したので、同じ学園に在籍している。
本来なら、学園に入学するまでに最低限のマナーや学業を修めておくのが大前提ではあるが、学園に多額の寄付金を納める事で、一年だけ編入が許されたらしい。
突然変わった環境に戸惑いつつも、学園での生活を楽しんでいるようだとほっとしていた。
だが、どうも彼女は不可解な言動が多い。同じクラスであれば、色々配慮できただろうし、日を追うごとにふたりの時間を持つ事で距離が近づいたのかもしれない。だが、生憎、俺と彼女ではカリキュラムが違う。
同じ学園に通っているにも拘らず、俺と彼女はほとんど会う事がなかった。時間を作り、彼女に会いにいっても、ご友人たちと一緒に何処かに行っている始末。
今回の夜会についてのエスコートやドレスコードなどを打ち合わせする時間すらないなど、敢えて避けられているとしか思えなかった。
しかも、婚約者である俺と夜会に出ないとなると、どれほどの醜聞になるか考えもしないのだろうか……。
いい加減にしてほしい。ついでに言うなら、これが初めてではない。
ひょっとしたら、わざと、俺の対面をつぶしたいのかもしれない。そこまで嫌われるような失礼な言動をしただろうかと、一時期は真剣に悩んでいた。
『はぁ……。何度も伝えてはいるが、これで5度目だ。私たちは、家同士の事業の繋がりで結ばれた婚約者とはいえ、もう少し、私の家や、私自身との事を考えてはくれないだろうか?』
『あの、その……か、考えていますけど、マロウ様とはクラスも違うし、あ、違いますし。つい……。それに、マロウ様には、私じゃなくても、親戚の誰かがいるじゃないですか。彼は、本当に親戚にも女の子がいないし、とってもかわいそうなんですよ……』
婚約を結ぶ際に出会ってから、明らかに彼女は俺に対して素っ気ないというか、距離を置いている。
自慢ではないが、容姿は普通くらいだと思う。体型は、父のような巨漢ではなく親戚で一番華奢だと言われているが、同世代の男よりも大きい。ただ単に、俺の外見から性格、何から何まで彼女の好みのタイプではないからではないかと思い始めたのである。
身分的にも俺自身に対しても委縮しているのが分かった。しかも、平民は政略などあまりないから、突然、家のために政略結婚をするよう命じられても嫌と言えなかったのだろう。
『チェリー嬢、君が突然身分や立場が変わった事に対しては気の毒だと思う。私との婚約も意に沿わないし、私自身が好みではないのだろう。私には面白い話術もないし、君のご友人である殿下たちのように華やかでもないし、真逆の容貌だからな。それほど私に対して嫌悪感があるのなら、早いうちに婚約を考え直して……』
至らない部分を自分で言っていて凹む。だが、他人から突き付けられるよりはましだ。
『ち、違います! そんな事はありません! マロウ様はとてもご立派ですし、とても誠実に接してくれています……こ、婚約破棄だなんて、そんな、酷いです! ちょっと、エスコートを数回お断りしただけで、そんな風に仰るだなんて……うう、グス、グスッ……』
『エスコートを断る事で、どのような事になるのか、もうすでに私からも伝えているし、理解できなければ、きちんと伯爵家に聞くように伝えたはずだ。こちらの事を、こう度々軽んじられては困る。それに、破棄とかじゃなくて、解消をだな……事業のほうも、君と私がどうしても結婚しなければならないというわけでもないのだし……チェリー嬢、感情的になって、すぐに泣くのをやめてくれ。まずは話を聞いてくれないか? まいったな……』
初めて、婚約者として紹介された彼女を見た時には、なんて美しい子なんだろうと、政略結婚ではあるが綺麗な妻を持てる事に喜んだ。
タイプかそうでないかと言われれば、俺だって彼女外見はタイプではない。俺は、彼女のようにスレンダーな儚げ美女よりも、ちまっとした小動物系のかわいい女の子のほうが好みだ。
例えば、ローズ嬢とよく一緒にいる、笑顔がかわいいビオラ・バイオレット子爵令嬢のような。
とはいえ、政略結婚をする以上、愛情と誠意を持って彼女と仲を深める事が出来ればと思っていた。両親も、結婚式の日が初対面で、結婚してから愛を深めていき、今でも鬱陶しいくらい仲が良すぎる。
両親よりは早く知り合ったのだ。結婚までに、同級生たちのいちゃいちゃしている婚約者同士や、恋人たちのような関係になりたいと思っていたのである。
だが、完全に避けられて蔑ろにされている現状の上、事が起こる度に、このように泣きだされ建設的な話にならない。
彼女のご友人も男性ばかりで、親戚のローズ嬢が彼女に声をかけてもそっぽを向かれると嘆いていたように、女友達が皆無だなんておかしな話だ。
女性には女性の社交が求められる。今のうちに、我がゼニアオイの侯爵夫人となるのだから人脈を作り、最低限の知識などを習得せねばならないというのに、全く向上心がなさそうだ。
父に現状を申し出ても、女性の扱い方など皆無でモテない俺の僻みかと笑われた。父達がそうしてきたように、結婚してからでも、おいおいそういった物を作り上げていけばいいと。
ブロッサム伯爵と父は、学生時代からの親友同士なのだ。その事もあり、婚約解消は難航しそうだと米神あたりの頭痛を感じる。
彼女にとって、俺を結婚相手にしたくないと思っているように、俺にとってもそうだ。
もうすでに、彼女に会いに行かねばならないと思っただけで、心なしか、胃の辺りも重だるく痛い気がするようになった。外見はともかく、内面がこうも許容範囲外の妻を迎えなければならないなんて……
夜会でエスコートをしなくていいなら、案外そのほうがいいかもしれない。なんとか彼女の言い分に頷いて、結局エスコートはご友人にしてもらう事になった。
『本当ですか? マロウ様、ありがとうございますっ! やったー !』
するとどうだろう。さっきまで泣いていたのに、スキップしそうなほど嬉しそうに去っていったではないか。
ついでに聞こえた、チョロいとかいう言葉はなんだ?
初耳だが、いい意味合いではないのはわかる。
いくらなんでも失礼すぎるし、あからさまに嫌われ過ぎじゃないかと、胸が苦しくなる。
『……双方ともに、結婚が嫌だと言えばなんとかなると思うのだがなあ……チェリー嬢が、一向に解消に頷いてくれない……。なぜだ。解消になったほうが、彼女も好みのご友人のひとりと結婚できるだろうに……はぁ……』
るんるん気分の彼女とは違い、俺は、石臼でも胃の中に仕込まれているかのような気分のまま、遠縁のご令嬢をエスコートして夜会に出席したのであった。
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