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花たちの密談 一番美しい花はビオラに決まっている
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「まあ、そうでしたの……これまでの事はともかく、おふたりともお互いを大切に想ってしているなんて素敵ですわね」
「ですわねえ。ビオラさんの言う通り、これまでのデンデン殿……コホン。ふたりの言動はともかくとして、わたくし、チェリーさんが殿下を庇う時に見せた、彼女の優しい気持に心打たれましたの」
「そうか、チェリー嬢は殿下を……」
なんと、殿下とチェリー嬢は本気で愛し合っていたらしい。一時の火遊びかと思っていた。
当家を馬鹿にしたような態度だった彼らを結婚させ、多少は痛い目を見てもらおうと父と話をしていたが考え直さねば。ここは、個人的な感情を優先するより、ふたりの将来を心から祝福できるようになろうと思う。
最愛の妻であるビオラに誇れる夫になるためにも。
純粋に喜ぶビオラの瞳の美しさを見ると、そんな考えをしていた自分を恥じるばかり。俺だって、愛するビオラと世界一幸せになるのだ。俺も、少しはふたりの恋を応援したくなった。
ローズ嬢は、ビオラほどではないが慈愛に満ちた優しい人物ではある。純真無垢な俺のビオラと違って、高位貴族らしい令嬢だ。あれでいて計算高い。彼女の周囲は腹にいくつも何かを抱えて近づく人間が多いから、そうでなければやっていけないのだろう。
……いや、ローズ嬢は、小さな頃から悪戯好きで、最終的にはいいところをかっさらうようなやんちゃ少女だったかもしれない。
例えば、小さな子供たちのお守りを俺やウスベニが苦労してしていたのに、おやつの時間になると、その子たちの優しい姉のように振舞いおやつをあげるなど、かいがいしく世話をするから人気がうなぎのぼりだった。
それはともかくとして、彼女を個人的に利害や他意なく慕うのはごく少数だ。その中でもとりわけビオラはローズ嬢を心の底から大好きなようだ。
少々焼けるが、ビオラは「ローズ様」という名前を出す度に語尾に♡でもついているんじゃないかと思うほど。
ローズ嬢が男でなくて良かった、と心底思う。ビオラは、見た目も中身も俺だけに夢中だから、万が一そんな事があっても負けるつもりはないが。
ローズ嬢は、自分の利にならない事にはあまり着手しない冷徹さがある。そんな彼女が、ほとんど得にならない貧乏子爵令嬢であるビオラと仲良くしている事に多少疑問を感じていたが、ビオラのそういう心根の居心地の良さを側で楽しんでいたに違いない。俺だって、もっと早くに愛しいビオラと会って、ずっと一緒にいたかった。
ビオラの清らかで裏表のない、殿下とチェリー嬢を素直に応援しようという意見に、俺だけでなく、ウスベニも大きく頷いた。
「ですが、どうやって……? あの、先日の証拠などを公にしては、殿下とチェリーさんの未来に影を落とすのでは?」
「ふふふ、多少の脚色をする必要はありますが、頭の固い大人たちの意見を変えるには、まず大衆を味方につける事が大きな力になりますわ。ですから……」
ローズ嬢のアイデアに、ウスベニは間髪入れず賛成した。ビオラも、あのような破廉恥な事実を隠して上手く行くのなら、良い案だとはしゃいだものの、現実的にそれが出来るのかどうか、そして、効果はどうなのか首をかしげて不安そうにしている。
俺はビオラの手を握って安心させてやりたい、いっそ膝の上で抱きしめてやりたいが、生憎ビオラの横にはローズ嬢が居座り続けていて叶わない。
ぐぬぬ。やはりローズ嬢はライバルとして認識しておいたほうがよさそうだ。
「その案にはおおむね賛成ではあるが、時と場所、そして、人はどうするつもりだ?」
「観客が大勢いて、多少の時間のゆとりと周囲の協力がないといけません。ですから、まずはマロウ様とチェリーさんの婚約解消をすませて、お二人の婚約パーティを開催してはいただけませんこと? その日に決行というのはいかがかしら? 思い出深い感動の婚約披露パーティになるかと思いますわ。それに、マロウ様とチェリーさんの婚約解消の事も、良い印象に変わるでしょう」
「ビオラ、当初の予定よりも早くなりそうだが、俺たちの婚約を皆に認めてもらおうな」
「マロウ様……わたくし、恥ずかしいです。ですが、嬉しいですわ」
頬に小さな手を当てて、恥ずかしそうにしているビオラは、この世のどんなものよりも貴重で可愛らしく、愛らしい。
うーん。……今すぐ、ローズ嬢と場所を変わってもらえないだろうか?
じとっと、そんな意思を込めてローズ嬢を見たが、彼女だって俺の気持ちを気づいているくせに、何も見なかったかのようにビオラを見つめて、これ見よがしにビオラの肩に手を置いた。絶対に俺への当てつけだ。
おのれ、その役目は俺のものだ。ローズ嬢め……だが、ビオラもそんなローズ嬢の行動を嬉しそうにしている。ここはぐっと我慢だ。がまん……がまん。
結局、その日はそのまま別れた。ビオラとそのまま夜明けまで一緒にいたかったが、まだ節度ある行動をせねばならない。
ビオラ、今頃俺の事を思ってくれているだろうね。寂しいけれど、同じ夢を見てデートをしよう。どこに行こうか。夢ならどこにでもいけるはずだ。君が望むのなら、あの星すらプレゼントしてみせる。
ああ、彼女を抱きしめて一緒に眠りたいなあ……と切なくなる。寝衣の胸ポケットに、ビオラからもらったハンカチを忍ばせて瞼を閉じたのであった。
※※※※
翌日、殿下とチェリー嬢に、洗いざらい根掘り葉掘り、彼らのなれそめを嬉々として面白そうに聞き出していくローズ嬢。彼女はからかうとまではいかないが、応援しながらも面白がっているようにみえる。
いかんな、どうもビオラの心を一部とはいえ独占している彼女に対して、含みのある見方をしてしまう。反省せねば。
その隣で、心の底から、彼らの身分違いや、お互いに婚約者がいてどうにもならない状況や切ない想いを聞きながら、一緒に涙を流すビオラの様子は可憐な天使か妖精のようだ。
ちょうど、昨日ビオラたちが作った花のムースがあるので、それを食べながら、その内容を右から左へと受け流した。
ああ、ビオラが作ったムースは絶品だ。出来れば、恋人同士の愛の証である「あーん」をして食べさせて欲しいが……流石にそれは二人きりの時がいい。
チェリー嬢は、ビオラと俺の婚約予定を聞いて目を丸くした。
「まぁ……ビオラさんがマロウ様と? もしや金銭的な事情で……? お気の毒に……ビオラさん、よろしかったら力になりますわ。ですから、早まらないで……」
心からビオラに同情して、痛ましそうに顔を悲し気にゆがめながら、ビオラにそんな事をいうなんて相変わらず失礼な令嬢だ。
俺たちはチェリー嬢たちよりももっと深く愛を交わしているというのに。
「あの……チェリーさん。わたくしの家は、たしかに裕福とは言えませんけれど、その……仰っている意味がわからないですわ。だって、マロウ様はカッコいいし、誰よりも素敵な方ですから、わたくしなどが新たな婚約者として選んでいただけるなんて嬉しいんです」
「は? え? ねぇ、ファーレ。わたくし、耳がおかしくなっちゃった?」
「俺も、不具合だらけのようだ。ビオラ嬢から、マロウがカッコいいなどという幻聴が聞こえてしまった」
「あの、ビオラさん。もしかして、本気でマロウ様を美男子だと思ってらっしゃる……なんてこと……?」
「どうして皆様そのように仰るのかわかりません……。だって、かの有名な世界のトップ俳優であるトゥームーン・カーネーショクルーズ様よりもカッコいいじゃないですか」
「ええええ! そ、そこまで……いったい、この子の美意識とか目はどうなってんの……あっ! えーと、えーと。そうですわねっ! 好みは人それぞれだとは思います。ええ、ええ。マロウ様は実直で真面目で、頼りがいのある誠実で素敵な男性ですものね!」
「そうでしょう? ああ、良かった。チェリーさんが分かってくださって」
こういう話題になると、俺だって、少しばかり不快にもなる。自分の事は自分が良く分かっている。チェリー嬢や殿下の言いたい事もわかるし。
今すぐ、ビオラを抱き上げてふたりきりで別荘にでも行こうかな。そうだ、あそこがいい。
今の季節でも海に入れて、青く輝く天然の洞窟があるプライベートビーチ。水遊び用の薄手の衣に着替えたビオラの姿が目に浮かぶ。
不快な現実よりも、頭の中で、肌も露わにしたビオラと海で戯れていたほうがいい。
『マロウさま~、きゃぁ、波が……!』
『ビオラ、俺にしっかり掴まっているだ』
『はい……マロウ様こうですか?』
『もっとしっかり。ほら、おいで』
密着した肌と肌。俺たちは楽しみながらもどこか照れくさくて、頬を赤らめて水で濡れた色っぽい彼女の潤んだ瞳と見つめ合う。そして……
「で、話しは変わりますけれど。チェリーさん、ブロッサム伯爵に婚約解消の意向は伝えられました? 伯爵のサインはいただけそうですか?」
せっかく、幸せな近い未来の俺たちのデートの夢が、現実という名のローズの言葉で引き裂かれてしまった。そうだった、今は婚約解消の話もしていた。
俺は、あのわけのわからない思考回路であるブロッサム伯爵の顔を思い出した事で、幸せいっぱい夢いっぱいな世界から現実に戻れた。
危うく、おっさんがビキニを着ている姿を想像しそうだった。
「それが……わたくし、マロウ様から解消の提案をお聞きしてすぐ、義父に話してみたのです。ですが……」
チェリー嬢が、しょんぼり肩を落として、伯爵とのやりとりを伝え始めたのである。
「ですわねえ。ビオラさんの言う通り、これまでのデンデン殿……コホン。ふたりの言動はともかくとして、わたくし、チェリーさんが殿下を庇う時に見せた、彼女の優しい気持に心打たれましたの」
「そうか、チェリー嬢は殿下を……」
なんと、殿下とチェリー嬢は本気で愛し合っていたらしい。一時の火遊びかと思っていた。
当家を馬鹿にしたような態度だった彼らを結婚させ、多少は痛い目を見てもらおうと父と話をしていたが考え直さねば。ここは、個人的な感情を優先するより、ふたりの将来を心から祝福できるようになろうと思う。
最愛の妻であるビオラに誇れる夫になるためにも。
純粋に喜ぶビオラの瞳の美しさを見ると、そんな考えをしていた自分を恥じるばかり。俺だって、愛するビオラと世界一幸せになるのだ。俺も、少しはふたりの恋を応援したくなった。
ローズ嬢は、ビオラほどではないが慈愛に満ちた優しい人物ではある。純真無垢な俺のビオラと違って、高位貴族らしい令嬢だ。あれでいて計算高い。彼女の周囲は腹にいくつも何かを抱えて近づく人間が多いから、そうでなければやっていけないのだろう。
……いや、ローズ嬢は、小さな頃から悪戯好きで、最終的にはいいところをかっさらうようなやんちゃ少女だったかもしれない。
例えば、小さな子供たちのお守りを俺やウスベニが苦労してしていたのに、おやつの時間になると、その子たちの優しい姉のように振舞いおやつをあげるなど、かいがいしく世話をするから人気がうなぎのぼりだった。
それはともかくとして、彼女を個人的に利害や他意なく慕うのはごく少数だ。その中でもとりわけビオラはローズ嬢を心の底から大好きなようだ。
少々焼けるが、ビオラは「ローズ様」という名前を出す度に語尾に♡でもついているんじゃないかと思うほど。
ローズ嬢が男でなくて良かった、と心底思う。ビオラは、見た目も中身も俺だけに夢中だから、万が一そんな事があっても負けるつもりはないが。
ローズ嬢は、自分の利にならない事にはあまり着手しない冷徹さがある。そんな彼女が、ほとんど得にならない貧乏子爵令嬢であるビオラと仲良くしている事に多少疑問を感じていたが、ビオラのそういう心根の居心地の良さを側で楽しんでいたに違いない。俺だって、もっと早くに愛しいビオラと会って、ずっと一緒にいたかった。
ビオラの清らかで裏表のない、殿下とチェリー嬢を素直に応援しようという意見に、俺だけでなく、ウスベニも大きく頷いた。
「ですが、どうやって……? あの、先日の証拠などを公にしては、殿下とチェリーさんの未来に影を落とすのでは?」
「ふふふ、多少の脚色をする必要はありますが、頭の固い大人たちの意見を変えるには、まず大衆を味方につける事が大きな力になりますわ。ですから……」
ローズ嬢のアイデアに、ウスベニは間髪入れず賛成した。ビオラも、あのような破廉恥な事実を隠して上手く行くのなら、良い案だとはしゃいだものの、現実的にそれが出来るのかどうか、そして、効果はどうなのか首をかしげて不安そうにしている。
俺はビオラの手を握って安心させてやりたい、いっそ膝の上で抱きしめてやりたいが、生憎ビオラの横にはローズ嬢が居座り続けていて叶わない。
ぐぬぬ。やはりローズ嬢はライバルとして認識しておいたほうがよさそうだ。
「その案にはおおむね賛成ではあるが、時と場所、そして、人はどうするつもりだ?」
「観客が大勢いて、多少の時間のゆとりと周囲の協力がないといけません。ですから、まずはマロウ様とチェリーさんの婚約解消をすませて、お二人の婚約パーティを開催してはいただけませんこと? その日に決行というのはいかがかしら? 思い出深い感動の婚約披露パーティになるかと思いますわ。それに、マロウ様とチェリーさんの婚約解消の事も、良い印象に変わるでしょう」
「ビオラ、当初の予定よりも早くなりそうだが、俺たちの婚約を皆に認めてもらおうな」
「マロウ様……わたくし、恥ずかしいです。ですが、嬉しいですわ」
頬に小さな手を当てて、恥ずかしそうにしているビオラは、この世のどんなものよりも貴重で可愛らしく、愛らしい。
うーん。……今すぐ、ローズ嬢と場所を変わってもらえないだろうか?
じとっと、そんな意思を込めてローズ嬢を見たが、彼女だって俺の気持ちを気づいているくせに、何も見なかったかのようにビオラを見つめて、これ見よがしにビオラの肩に手を置いた。絶対に俺への当てつけだ。
おのれ、その役目は俺のものだ。ローズ嬢め……だが、ビオラもそんなローズ嬢の行動を嬉しそうにしている。ここはぐっと我慢だ。がまん……がまん。
結局、その日はそのまま別れた。ビオラとそのまま夜明けまで一緒にいたかったが、まだ節度ある行動をせねばならない。
ビオラ、今頃俺の事を思ってくれているだろうね。寂しいけれど、同じ夢を見てデートをしよう。どこに行こうか。夢ならどこにでもいけるはずだ。君が望むのなら、あの星すらプレゼントしてみせる。
ああ、彼女を抱きしめて一緒に眠りたいなあ……と切なくなる。寝衣の胸ポケットに、ビオラからもらったハンカチを忍ばせて瞼を閉じたのであった。
※※※※
翌日、殿下とチェリー嬢に、洗いざらい根掘り葉掘り、彼らのなれそめを嬉々として面白そうに聞き出していくローズ嬢。彼女はからかうとまではいかないが、応援しながらも面白がっているようにみえる。
いかんな、どうもビオラの心を一部とはいえ独占している彼女に対して、含みのある見方をしてしまう。反省せねば。
その隣で、心の底から、彼らの身分違いや、お互いに婚約者がいてどうにもならない状況や切ない想いを聞きながら、一緒に涙を流すビオラの様子は可憐な天使か妖精のようだ。
ちょうど、昨日ビオラたちが作った花のムースがあるので、それを食べながら、その内容を右から左へと受け流した。
ああ、ビオラが作ったムースは絶品だ。出来れば、恋人同士の愛の証である「あーん」をして食べさせて欲しいが……流石にそれは二人きりの時がいい。
チェリー嬢は、ビオラと俺の婚約予定を聞いて目を丸くした。
「まぁ……ビオラさんがマロウ様と? もしや金銭的な事情で……? お気の毒に……ビオラさん、よろしかったら力になりますわ。ですから、早まらないで……」
心からビオラに同情して、痛ましそうに顔を悲し気にゆがめながら、ビオラにそんな事をいうなんて相変わらず失礼な令嬢だ。
俺たちはチェリー嬢たちよりももっと深く愛を交わしているというのに。
「あの……チェリーさん。わたくしの家は、たしかに裕福とは言えませんけれど、その……仰っている意味がわからないですわ。だって、マロウ様はカッコいいし、誰よりも素敵な方ですから、わたくしなどが新たな婚約者として選んでいただけるなんて嬉しいんです」
「は? え? ねぇ、ファーレ。わたくし、耳がおかしくなっちゃった?」
「俺も、不具合だらけのようだ。ビオラ嬢から、マロウがカッコいいなどという幻聴が聞こえてしまった」
「あの、ビオラさん。もしかして、本気でマロウ様を美男子だと思ってらっしゃる……なんてこと……?」
「どうして皆様そのように仰るのかわかりません……。だって、かの有名な世界のトップ俳優であるトゥームーン・カーネーショクルーズ様よりもカッコいいじゃないですか」
「ええええ! そ、そこまで……いったい、この子の美意識とか目はどうなってんの……あっ! えーと、えーと。そうですわねっ! 好みは人それぞれだとは思います。ええ、ええ。マロウ様は実直で真面目で、頼りがいのある誠実で素敵な男性ですものね!」
「そうでしょう? ああ、良かった。チェリーさんが分かってくださって」
こういう話題になると、俺だって、少しばかり不快にもなる。自分の事は自分が良く分かっている。チェリー嬢や殿下の言いたい事もわかるし。
今すぐ、ビオラを抱き上げてふたりきりで別荘にでも行こうかな。そうだ、あそこがいい。
今の季節でも海に入れて、青く輝く天然の洞窟があるプライベートビーチ。水遊び用の薄手の衣に着替えたビオラの姿が目に浮かぶ。
不快な現実よりも、頭の中で、肌も露わにしたビオラと海で戯れていたほうがいい。
『マロウさま~、きゃぁ、波が……!』
『ビオラ、俺にしっかり掴まっているだ』
『はい……マロウ様こうですか?』
『もっとしっかり。ほら、おいで』
密着した肌と肌。俺たちは楽しみながらもどこか照れくさくて、頬を赤らめて水で濡れた色っぽい彼女の潤んだ瞳と見つめ合う。そして……
「で、話しは変わりますけれど。チェリーさん、ブロッサム伯爵に婚約解消の意向は伝えられました? 伯爵のサインはいただけそうですか?」
せっかく、幸せな近い未来の俺たちのデートの夢が、現実という名のローズの言葉で引き裂かれてしまった。そうだった、今は婚約解消の話もしていた。
俺は、あのわけのわからない思考回路であるブロッサム伯爵の顔を思い出した事で、幸せいっぱい夢いっぱいな世界から現実に戻れた。
危うく、おっさんがビキニを着ている姿を想像しそうだった。
「それが……わたくし、マロウ様から解消の提案をお聞きしてすぐ、義父に話してみたのです。ですが……」
チェリー嬢が、しょんぼり肩を落として、伯爵とのやりとりを伝え始めたのである。
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