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以前の立場なら、ブラインが離れに入り浸るわけにはいかない。けれど、来月呼び出される、鳥肌ものの予定の日までは護衛としていてくれることになった。どちらにしても、離れには私とクローザしかいないし、監視があっても中まではブラインの魔法で覗く事ができないようになったから、彼には空いている部屋に住んでもらっている。
おかげで、力仕事や、高い位置にある場所の掃除や修繕まで行き届くようになり、一週間後にはきれいな家に変化した。
「ブラインさん、クローザさん、ごはんにしましょう」
今日のランチは、ブラインが獲ってきてくれたアユとイワナの塩焼きと、丸ごとタマネギのスープ、そしてポテトサラダを挟んだロールパン。半分はチーズをかけて焦げ目がつくくらいまで焼いている。
「すごい、こんなに丸まるとしてほっこりほろほろの川魚なんて初めてー。美味しいです」
日本で昔食べたことのあるそれらよりも、二回りは大きい。串に通して、塩をつけて焼いただけなのだが、だからこそ美味しさが際立っている。
「裏に、これほど見事な川魚が獲れる川があるなんて。国に帰る前に、釣りをしてみたいものですね。手づかみでも面白そう」
「急流で、川底は尖った石もありますし、岩場も険しいのでおふたりはやめておいたほうが……」
「そうかー。怪我をするわけにはいかないですもんね。そんな危ない場所でこんなにも獲ってきていただいてありがとうございまーす」
「本当に。いい味方ができましたね、アカネ様」
私とクローザが、次もこきつかおうという邪な気持ちでにこにこしていると、案の定ブラインは二つ返事でまた獲って来ると約束してくれた。
(チョロい。チョロすぎる……。もしかして、ブラインってヒロインのテンプレセリフでコロッといっちゃう、チョロいサブ主人公とかモブ枠なのかも)
彼を見ると、簡単に美人局とかにひっかかりそうだと心配になる。彼の境遇を考えるに、世間に慣れていないのだろう。私たちを助けてくれるひとなのだから、しっかりそういう人たちから守ってあげようと思った。
ところで、私はまだこの世界がどの小説とかゲームなのかわかっていない。有名なものを少しかじっただけだし、星の数ほどもあるエンタメのストーリーなど、それこそ漫画とかじゃあるまいし、ピンポイントでそうそうは合致しないと思う。
(でも、命を狙われているのよね。ブラインさんが言うには、過激派らしいけど、やっぱり私をざまあする何かの小説とか漫画とかゲームの中ってやつなのかしら? それにしても、しつこいなあ。早く逃げないと、マジでヤバいかも)
そんな連中が、あれだけで諦めるとは思えない。これから、攻撃もさらに過熱していくだろうし、他の罠とか色々仕掛けられそう。
まあまあ普通の不倫浮気者の妻みたいなポジションで、ほったらかしにされて自由に生きるとか離婚ものでよかったんだけど、現実はそう甘くはなさそうだ。
「アカネ様、伏せてっ!」
「はいっ!」
過激派の攻撃は、これで5回め。クローザの声で、即座に伏せることができるようになった。そう、海外でピストルのような音だけで、周囲の人が一斉に瞬時に伏せるように。
日本で過ごしていた頃の呑気なままだったら、「え? え?」って戸惑っているうちにヤられたと思う。
しかも、今はブラインもいる。彼は、敵のいる方向に必ず移動して、私がかすり傷ひとつつけないように守ってくれるのだ。大きくて俊敏な彼が、人間防御壁になっているのだから、万が一にも攻撃が当たっても彼が全て受けてくれる。といっても、彼もやすやすとは攻撃に当たらないくらい素晴らしい攻防をしているのだから、ふたりがいれば出る幕がないくらい。
ただ、敵も相当強いのか、毎回逃げられている。悔しい。
「ねぇ、私、この攻撃方法なら大丈夫だから、ブラインさんも捕まえに行ってくれないかしら?」
「しかし……」
「本当に、これが、もしも360度から襲ってきても大丈夫だから。ずっと、同じ攻撃魔法ばっかりだから、同じ人よね。また逃げられたら、これが、ずーーーーっと繰り返しになるんですよね。だから、ね?」
私は、立ち上がると同時に、ブラインさんの背中を押した。そして、こっちにやってくる物体を次々切って落としていく。
「アカネ様、危ないですから」
「油断はしないようにするから、ほら、行って。クローザと挟み撃ちにしてくれる? ここで言い争っていると、また逃げられちゃうじゃないですか。私だって、戦えるんですよ」
「ブラインさん、アカネ様の言う通りです。行きましょう。この攻撃に関しては、私たちのほうが足手まといのようですし」
私のそばを離れようとしない彼を、クローザが有無を言わさないような低い声で呼んだ。
「そうそう。他の攻撃ならともかく、今かけられている攻撃は、簡単な世界ランキング3位の曲のリズムと譜面じゃん。余裕余裕」
クローザやブラインよりも素早く、確実に中心を切っていく。その様子を見ていたブラインは、真剣な眼差しで敵がいる方に足を向けた。
「よっ、ほっ。よーし、これで、ラストかな!」
最後の立方体を、思いっきり切り落とす。そして、少し離れた場所から、ブラインとクローザがひとりの男を引きずって戻ってきたのであった。
おかげで、力仕事や、高い位置にある場所の掃除や修繕まで行き届くようになり、一週間後にはきれいな家に変化した。
「ブラインさん、クローザさん、ごはんにしましょう」
今日のランチは、ブラインが獲ってきてくれたアユとイワナの塩焼きと、丸ごとタマネギのスープ、そしてポテトサラダを挟んだロールパン。半分はチーズをかけて焦げ目がつくくらいまで焼いている。
「すごい、こんなに丸まるとしてほっこりほろほろの川魚なんて初めてー。美味しいです」
日本で昔食べたことのあるそれらよりも、二回りは大きい。串に通して、塩をつけて焼いただけなのだが、だからこそ美味しさが際立っている。
「裏に、これほど見事な川魚が獲れる川があるなんて。国に帰る前に、釣りをしてみたいものですね。手づかみでも面白そう」
「急流で、川底は尖った石もありますし、岩場も険しいのでおふたりはやめておいたほうが……」
「そうかー。怪我をするわけにはいかないですもんね。そんな危ない場所でこんなにも獲ってきていただいてありがとうございまーす」
「本当に。いい味方ができましたね、アカネ様」
私とクローザが、次もこきつかおうという邪な気持ちでにこにこしていると、案の定ブラインは二つ返事でまた獲って来ると約束してくれた。
(チョロい。チョロすぎる……。もしかして、ブラインってヒロインのテンプレセリフでコロッといっちゃう、チョロいサブ主人公とかモブ枠なのかも)
彼を見ると、簡単に美人局とかにひっかかりそうだと心配になる。彼の境遇を考えるに、世間に慣れていないのだろう。私たちを助けてくれるひとなのだから、しっかりそういう人たちから守ってあげようと思った。
ところで、私はまだこの世界がどの小説とかゲームなのかわかっていない。有名なものを少しかじっただけだし、星の数ほどもあるエンタメのストーリーなど、それこそ漫画とかじゃあるまいし、ピンポイントでそうそうは合致しないと思う。
(でも、命を狙われているのよね。ブラインさんが言うには、過激派らしいけど、やっぱり私をざまあする何かの小説とか漫画とかゲームの中ってやつなのかしら? それにしても、しつこいなあ。早く逃げないと、マジでヤバいかも)
そんな連中が、あれだけで諦めるとは思えない。これから、攻撃もさらに過熱していくだろうし、他の罠とか色々仕掛けられそう。
まあまあ普通の不倫浮気者の妻みたいなポジションで、ほったらかしにされて自由に生きるとか離婚ものでよかったんだけど、現実はそう甘くはなさそうだ。
「アカネ様、伏せてっ!」
「はいっ!」
過激派の攻撃は、これで5回め。クローザの声で、即座に伏せることができるようになった。そう、海外でピストルのような音だけで、周囲の人が一斉に瞬時に伏せるように。
日本で過ごしていた頃の呑気なままだったら、「え? え?」って戸惑っているうちにヤられたと思う。
しかも、今はブラインもいる。彼は、敵のいる方向に必ず移動して、私がかすり傷ひとつつけないように守ってくれるのだ。大きくて俊敏な彼が、人間防御壁になっているのだから、万が一にも攻撃が当たっても彼が全て受けてくれる。といっても、彼もやすやすとは攻撃に当たらないくらい素晴らしい攻防をしているのだから、ふたりがいれば出る幕がないくらい。
ただ、敵も相当強いのか、毎回逃げられている。悔しい。
「ねぇ、私、この攻撃方法なら大丈夫だから、ブラインさんも捕まえに行ってくれないかしら?」
「しかし……」
「本当に、これが、もしも360度から襲ってきても大丈夫だから。ずっと、同じ攻撃魔法ばっかりだから、同じ人よね。また逃げられたら、これが、ずーーーーっと繰り返しになるんですよね。だから、ね?」
私は、立ち上がると同時に、ブラインさんの背中を押した。そして、こっちにやってくる物体を次々切って落としていく。
「アカネ様、危ないですから」
「油断はしないようにするから、ほら、行って。クローザと挟み撃ちにしてくれる? ここで言い争っていると、また逃げられちゃうじゃないですか。私だって、戦えるんですよ」
「ブラインさん、アカネ様の言う通りです。行きましょう。この攻撃に関しては、私たちのほうが足手まといのようですし」
私のそばを離れようとしない彼を、クローザが有無を言わさないような低い声で呼んだ。
「そうそう。他の攻撃ならともかく、今かけられている攻撃は、簡単な世界ランキング3位の曲のリズムと譜面じゃん。余裕余裕」
クローザやブラインよりも素早く、確実に中心を切っていく。その様子を見ていたブラインは、真剣な眼差しで敵がいる方に足を向けた。
「よっ、ほっ。よーし、これで、ラストかな!」
最後の立方体を、思いっきり切り落とす。そして、少し離れた場所から、ブラインとクローザがひとりの男を引きずって戻ってきたのであった。
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