26 / 66
24 侯爵家に現れた女帝②
しおりを挟む
シンディは正式な次期当主であるはずなのに、乗っ取られた状態の伯爵家で孤軍奮闘状態だったようだ。
『あの、もしかしてターニャ様でいらっしゃいますか? エローヤーネン侯爵家先代当主の奥様でいらっしゃった……。違っていたらすみません』
『おや、初対面なのによく気づいたね。とっくに離縁されて追い出され(正確には自ら出奔したけど)、ぼろを纏い化粧もしていないというのに』
『テッポ様、貴女様の孫である婚約者の彼に見せて頂いた肖像画を覚えておりました』
『そうかい、そうかい。じゃあ孫の結婚相手なんだね。色々聞いたよ。執事たち使用人ばかりでは出来ない部分もあるだろ? ほかならぬ未来の孫の嫁だ。色々協力してあげようかね』
『よろしいのでしょうか? あの……とても危ない事なのですが……』
『私の事を知っていて?』
『はい。エローヤーネン侯爵家にこの人ありとうたわれた、女帝ターニャ様。あなた様なくしては過去の侯爵家の栄華はなかったとお聞きしております』
『女帝はいいから。まあ、シンディ、私はあんたを気に入ったよ』
『ありがとうございます、ターニャ様』
すぐに打ち解け、元夫が私がいなくなって全財産の半分以上をどう考えても上手く行かない投資にかけたらしい事を聞いて、魂が体から抜け出るほどの衝撃を受けた。ちょっとした国を買いあげる事の出来るほどの財産をどうやったら一瞬でなくせるというのか。
すぐに差し押さえられ、アールトネン前女伯爵が手を差し伸べなければ侯爵家は国に爵位を返上していただろう。
その後、平民になったため、公に姿を現す事ができずにいたが影で彼女たちを支える。特に戦闘に対して無力な彼らを訓練するために、とある人物をセパスチを経由して呼び寄せた。すると、普通なら半月はかかる行程であるはずが数日でその人物が目の前に現れたのであった。
『ターニャちゃん! ターニャちゃあああああんっ! 俺を頼ってくれるなんて! ああ、こんなに長い間離れていてもやっぱり愛してくれていたんだね! ごめんね、ターニャちゃんが稼いだお金をちょっぴり使い果たしちゃって』
『財産の半分以上の、どこがちょっぴりなんだいっ!』
私をひとめ見るなり飛びつき、唾をまきちらし、鼻水を頬に付けたために殴り飛ばした。すると、地に伏した元夫は頬を染めてうっとりしたのである。年老いたというのに相変わらず気色悪い男だ。
元夫には経営などが出来ない。とんでもない失態を犯して流石に落ち込んでいたらしい。息子から領地の隅っこで暮らすよう言い渡され細々暮らしていたようだ。
『ここの子たちを、誰にも負けないように鍛えてやっておくれ』
『うん! ターニャちゃんの頼みなら、一週間で使えるようにしてあげるね!』
『馬鹿!』
傷つき、戦いの素人に対してスパルタ教育以上をしようとした元夫を張り飛ばす。嬉しそうにされて鳥肌がたった。
彼らを壊さないように数年かけて仕込むよう懇々と言い聞かせた。そういう人材育成に関しては、モヤモヤするものの優秀な指導者なので、めきめきと別邸に保護されていた伯爵家の使用人たちは強くなっていった。
それ以降、元夫はなぜか私と同じ部屋で寝起きしている。解せぬ。
『え? ターニャちゃん息子たちに会いに行くの? なんで? 一緒にいてよ! まさか、また俺から離れる気? 絶対離さないよっ!』
『(どさくさ紛れに離れようとしたのにバレていたか……)伯爵家奪還を無事に済ませたら再婚してやるから、ちゃんとここの子たちを頼んだよ?』
『うん! まかせて! 約束したからね? 破ったらダメなんだからね?』
本邸に乗り込むには心もとないため、戦闘狂ともいえる元夫に彼らを頼んだ。とんでもなく不本意であるが、再婚というエサをぶらさげていれば、あれでも強いから戦力としては最上級だ。あっという間に制圧できるだろう。
それに、本邸にいない男をついでに捕らえて来るように言い含めてある。シンディが帰って来ないのは心配だが、アールトネン伯爵家を継いだのなら、今の彼女はとんでもなく強い。きっと無事だ。
こうして、私は単身侯爵家に転移をして息子と孫とともに情報の共有をしたのである。
テッポが、元夫以上に愚かだとは思わなかった。孫はシンディを裏切っていたとはいえ、一時的な物であり、いずれはシンディと向き合い政略結婚をし、アールトネン伯爵家を正常に戻すと心のどかで期待をしていたのである。
そんな自分の甘い判断のために、エローヤーネン侯爵家は終わりを告げるかもしれないと内心ため息を吐いた。
孫に、自分が見聞きしてきた事、今、伯爵家で行われているだろう事実、そして、今後の侯爵家の未来を淡々と語ったのであった。
『あの、もしかしてターニャ様でいらっしゃいますか? エローヤーネン侯爵家先代当主の奥様でいらっしゃった……。違っていたらすみません』
『おや、初対面なのによく気づいたね。とっくに離縁されて追い出され(正確には自ら出奔したけど)、ぼろを纏い化粧もしていないというのに』
『テッポ様、貴女様の孫である婚約者の彼に見せて頂いた肖像画を覚えておりました』
『そうかい、そうかい。じゃあ孫の結婚相手なんだね。色々聞いたよ。執事たち使用人ばかりでは出来ない部分もあるだろ? ほかならぬ未来の孫の嫁だ。色々協力してあげようかね』
『よろしいのでしょうか? あの……とても危ない事なのですが……』
『私の事を知っていて?』
『はい。エローヤーネン侯爵家にこの人ありとうたわれた、女帝ターニャ様。あなた様なくしては過去の侯爵家の栄華はなかったとお聞きしております』
『女帝はいいから。まあ、シンディ、私はあんたを気に入ったよ』
『ありがとうございます、ターニャ様』
すぐに打ち解け、元夫が私がいなくなって全財産の半分以上をどう考えても上手く行かない投資にかけたらしい事を聞いて、魂が体から抜け出るほどの衝撃を受けた。ちょっとした国を買いあげる事の出来るほどの財産をどうやったら一瞬でなくせるというのか。
すぐに差し押さえられ、アールトネン前女伯爵が手を差し伸べなければ侯爵家は国に爵位を返上していただろう。
その後、平民になったため、公に姿を現す事ができずにいたが影で彼女たちを支える。特に戦闘に対して無力な彼らを訓練するために、とある人物をセパスチを経由して呼び寄せた。すると、普通なら半月はかかる行程であるはずが数日でその人物が目の前に現れたのであった。
『ターニャちゃん! ターニャちゃあああああんっ! 俺を頼ってくれるなんて! ああ、こんなに長い間離れていてもやっぱり愛してくれていたんだね! ごめんね、ターニャちゃんが稼いだお金をちょっぴり使い果たしちゃって』
『財産の半分以上の、どこがちょっぴりなんだいっ!』
私をひとめ見るなり飛びつき、唾をまきちらし、鼻水を頬に付けたために殴り飛ばした。すると、地に伏した元夫は頬を染めてうっとりしたのである。年老いたというのに相変わらず気色悪い男だ。
元夫には経営などが出来ない。とんでもない失態を犯して流石に落ち込んでいたらしい。息子から領地の隅っこで暮らすよう言い渡され細々暮らしていたようだ。
『ここの子たちを、誰にも負けないように鍛えてやっておくれ』
『うん! ターニャちゃんの頼みなら、一週間で使えるようにしてあげるね!』
『馬鹿!』
傷つき、戦いの素人に対してスパルタ教育以上をしようとした元夫を張り飛ばす。嬉しそうにされて鳥肌がたった。
彼らを壊さないように数年かけて仕込むよう懇々と言い聞かせた。そういう人材育成に関しては、モヤモヤするものの優秀な指導者なので、めきめきと別邸に保護されていた伯爵家の使用人たちは強くなっていった。
それ以降、元夫はなぜか私と同じ部屋で寝起きしている。解せぬ。
『え? ターニャちゃん息子たちに会いに行くの? なんで? 一緒にいてよ! まさか、また俺から離れる気? 絶対離さないよっ!』
『(どさくさ紛れに離れようとしたのにバレていたか……)伯爵家奪還を無事に済ませたら再婚してやるから、ちゃんとここの子たちを頼んだよ?』
『うん! まかせて! 約束したからね? 破ったらダメなんだからね?』
本邸に乗り込むには心もとないため、戦闘狂ともいえる元夫に彼らを頼んだ。とんでもなく不本意であるが、再婚というエサをぶらさげていれば、あれでも強いから戦力としては最上級だ。あっという間に制圧できるだろう。
それに、本邸にいない男をついでに捕らえて来るように言い含めてある。シンディが帰って来ないのは心配だが、アールトネン伯爵家を継いだのなら、今の彼女はとんでもなく強い。きっと無事だ。
こうして、私は単身侯爵家に転移をして息子と孫とともに情報の共有をしたのである。
テッポが、元夫以上に愚かだとは思わなかった。孫はシンディを裏切っていたとはいえ、一時的な物であり、いずれはシンディと向き合い政略結婚をし、アールトネン伯爵家を正常に戻すと心のどかで期待をしていたのである。
そんな自分の甘い判断のために、エローヤーネン侯爵家は終わりを告げるかもしれないと内心ため息を吐いた。
孫に、自分が見聞きしてきた事、今、伯爵家で行われているだろう事実、そして、今後の侯爵家の未来を淡々と語ったのであった。
0
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します
スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」
眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。
隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。
エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。
しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。
彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。
「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」
裏切りへのカウントダウンが今、始まる。
スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜
丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。
与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。
専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、
失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。
そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、
セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。
「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」
彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、
彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。
嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、
広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、
独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。
栄養と愛情を取り戻したセレナは、
誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、
社交界で注目される存在となる。
一方、セレナを失った伯爵家は、
彼女の能力なしでは立ち行かず、
ゆっくりと没落していくのだった――。
虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
王宮メイドは今日も夫を「観察」する
kujinoji
恋愛
「はぁぁ〜!今日も働くヴィクター様が尊すぎる……!」
王宮メイドのミネリは、今日も愛しの夫ヴィクターを「観察」していた。
ヴィクターが好きすぎるあまり、あますところなく彼を見つめていたいミネリ。内緒で王宮メイドになり、文官である夫のもとに通うことに。
だけどある日、ヴィクターとある女性の、とんでもない場面を目撃してしまって……?
※同じものを他サイトにて、別名義で公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる