【完結】【R18】妹に婚約者を寝取られ断罪されたわたくし。~連行する騎士様、監禁先で蹂躙してくださいませ【本編完結。番外編7つ】

にじくす まさしよ

文字の大きさ
31 / 33

Create a family 1

しおりを挟む
文字数が長くなったのでわけます





 トールは、わたくしが、大きくなってきた商会のトップと知った様々な人物が狙い始めたのをきっかけに護衛としてわたくしとずっといるようになった。

 わたくしや、重要人物にとって護衛というのは立派な職業であると認識されているが、一般庶民にとっては、何もない平時の方が多く、トールをあからさまにヒモのように侮蔑の視線で見て来る者もいた。

 トラブルは彼らの前では起こらない物で、トールの実力が彼らの目に入らないのも原因の一つだろう。

 トールは、国王すら守る事のできる超級の凄腕騎士だというのに、彼の足元にも及ばない弱いひょろひょろした男が、この世界ではイケメンであり、トールがそうでない事も相まって、彼の目の前でわたくしにコナを掛けて来る者もいた。勿論、わたくしたちの関係や、トールの実力を知っていたり、情報を得た者たちは彼に対してきちんとした誠意のある態度を取ってくれる。

「おお、これはいつみてもお美しい。今日は色よい返事を聞かせてくれると思いこうして来た。 その男では、夜が物足りんだろう?」

 身の程知らずの、前世での外部業者の営業部長とかそのあたりの役職のイケメン(ひょろりん)が、普段は許されているだろう偉そうな態度でセクハラをかましてくる。

「トール、何か聞こえたかしら?」
「何も」

 わたくしは、男を見もせずに立ち上がり、商談のための部屋の出口に向かう。すると、あからさまに無視をされたのを不快に思ったイケメン営業部長(笑)が、タコのように真っ赤になりぎゃんぎゃんわめいていく。女はこれだからだのなんだのうるさい。

 男がわたくしの腕を掴み、舌なめずりをするように体に視線を這わす。とても気持ちが悪い。

「女は大人しく股を開いておればいいものを。わたしが相手をしてやると言っているのだ。光栄に、ぐおおお!」

 視界の下、つまり床に男はうつ伏せの状態で寝転んでいる。トールが一瞬で男を転ばせて動きを封じて腕をひねり上げている。

「あら? トールったら、どうしたの? 床に何かがあったのかしら?」
「目障りなうるさい害虫が。お気になさらず。二度と目の前に現れないよう駆除しておきます」
「そう。退治をお願いね」
「はっ」

 トールは公私混同をあまり好まない。護衛中は、まるで騎士のようで、ますます格好いいのだが背後にいるため堪能出来ないのが残念。

  わたくしは、その場をあとにする。断末魔のような声が廊下まで聞こえるけれど気のせいね。執務室に戻ると、この場にわたくしを案内した担当者を呼び出した。

 どうやらこの担当者は、最近先ほどの害虫の商会からこちらに転職してきた人物のようだ。業績がよく人当たりもいいため、あの商会とのつながりを持てると言い含めて見事に商談を成功させたらしいのは本当だった。
 ただ、お飾りの、枕営業をする会頭だと思われていたのかとげんなりする。前世でもこういう男たちはいたと記憶の欠片にはあるなと苦笑いが漏れた。どちらにせよ、相手の商会との取引は今後一切なくなるだろう。

「で、あの商会との取引の最終確認のための会合だと聞いていたのですけれども。先方は何の案もなくこちらを侮辱してきた。どうなっているのか説明していただけるかしら?」

 わたくしは、にこにこと微笑んでいる。最初はこちらを伺うようにしどろもどろに説明をしだしたが、噂の通りお飾りの会頭だと思ったのかべらべらと話し始めた。



※※ ※※ ※※


「ですから、あなたさえ彼に応じていただければ、あの商会の大口取引を約束されるのです。あのような何も出来ない見目の悪い男を夫に持たれたあなたの力になりたいと、あの方が立ち上がってくれたのに。あの方は慈悲深く、彼に声を掛けられると女性は喜ぶというのに、一体、何が不満なのです?」

 男は、ニヤニヤとわたくしをイヤラシイ目で見ながら言い切った。

「不満? そうねえ……。まず、商談というのなら、きちんと内容をわたくしに示すべきでしょう? それから契約に関する事項の最終調整も。事前調査では申し分のない商談取引の内容に期待していたのに。でも、あなたのいう、誠実で優しい彼は、開口一番にわたくしの体を求めただけだった。どうしても挨拶と、今回の取引についてわたくし自身に申し伝えたい事があるというからわざわざ行ったのです。どういう事かしら? それと、わたくしの最愛の夫を侮辱するとは、どういった考えなのかしら? まあ、答えはありきたりでしょうけれど、勘違いなさらないで? 夫以外、興味はございませんの」

 微笑んでいるというのに、目の前の男が青ざめて冷や汗を流し始めた。どういう事かしら、わたくし怖い言い方をしないように努力しているのに、失礼しちゃうわ。

「会頭、わたしどもの教育不足でございます」
「まあねえ……。大きくし過ぎた弊害、というものでしょう。わたくし、もう充分働いたし生活に困らなそうだから引退しましょうか?」
「そ、それは困ります。貴女様が撤退すれば、わが社の取引先の6割が手を引くではありませんか」
「貴方がたがいるでしょう?」
「いやいや、こいつは即刻クビにします。二度とこのような事がないようにしますから、どうか!」
「クビは流石に……。そうね、優秀な人材だと聞いているし、少々わたくしとお話致しましょうか」

 男は、会頭の雰囲気とトップクラスの男と対等どころかはるかに上の立場な彼女の対応を見て、判断をまちがっていたのかと戦々恐々として内心ふるえていた。けれど、お話と聞いてにやりと口元がゆるむ。やはり、この女はベッドでのお話がメインなのだと。

 ところが通されたところは、重役たちの集まる会議室だった。

「これはイザベル様……。今日はもうお帰りになったかと。一体どうなさいましたか?」
「いえ、優秀な人材が入ったらしくて。わたくしには判断がつかないのでちょっとここでお話してみようかと」
「……、またですか……。申し訳ございません」
「ふふふ、たまに、本当に優秀で使える人もいるじゃない。貴方のようにね」
「いやはや耳が痛いですな」

 男は、何が何やらわからず、呆然と突っ立っていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→

AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」 ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。 お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。 しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。 そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。 お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。

処理中です...