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6 遅刻の原因 R18要素が少々あり
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リーマの昇進が決まった。平民である彼は、なんと歴代平民騎士の中で、最年少で部隊長、しかも、王族直属の第一部隊なのだ。
これは、保守的な貴族たちの一部には脅威となる。口さがなくリーマを悪く言い、昇進をなくそうと画策する一派もいた。でも、私という妻の父さまがたのひと睨みでその人達は口を閉ざした。
ただ、それ以上の出世は望めないだろうとのこと。でも、それでも良かった。十分すぎるほど、リーマが頑張ったその功績が認められたのだから。
他にも昇進した人々もいて、そのお祝いを王家主催で盛大にすることになった。
「リーマ、素敵よ」
「エルにそう言ってもらえて嬉しい」
リーマは、向上心が高く、もっと上を目指している。もしかしたら、リーマなら前例を度外視して、トップに上り詰めるかも。
誇らしく、誰よりも素敵な夫の姿に、嬉しくて皆に言いふらしたいほど鼻が高くなる。
「エルにもっと誇れるように、更に頑張るからね」
「うう、今でも十分すぎるのに、これ以上頑張られたら、私の立つ瀬がないわ」
「何を言っているんだ。エルがいるから、エルを幸せにしたいから頑張るんだ。エルがいなかったら、未だに下っ端だよ」
私も、彼の横に立つのにふさわしい女性になろうと思った。彼にも、私自身を誇らしく思って欲しいから。
王宮の一番大きな祝賀のための宮殿に来るのは初めてだ。あちこちで、集まってきた人々が談笑している。
「あ、あのひと……」
ひときわ賑わっている場所に、結婚式に参加してくれた騎士の皆様がいた。長いポニーテールの美女が、私を、というよりもリーマを見つけて大きな声で彼を呼んだ。
「隊長、たいちょー! もう、1時間も遅刻なんて珍しいじゃないですか。こっちこっちー」
彼女のいきなり発せられた声に、周囲は驚いてこっちを見た。こういう貴族も大勢いるパーテイで、あのように大声を出すことはマナー違反ではある。しかし、彼女も今日の主役のひとり。
平民で女性騎士の彼女に、内心眉をしかめているのがわかった。
「おい、こういう場所ではおしとやかにしろって」
彼の直属の部下の筆頭担った彼女に、リーマは呆れて注意する。
「すみません。こんな場所、いつも警護する側だったからはしゃいじゃいました。奥様、本日はおめでとうございます」
「トーチ卿も、昇進おめでとうございます。女性騎士の中でも快挙なんですってね」
「ふふふ、頑張りましたから! リーマの、いえ、リーマ隊長が、私達をひっぱってくれたからですよ!」
満面の笑顔で、リーマのおかげだと話す彼女のひとことに、胸がざわつく。
彼女は、普段リーマって呼んでいるのね……
聞かなくてもわかる。だって、普段からそう呼んでなかったら、こういう時に、いくら仲が良い上司部下だからって、リーマなんて呼び捨てなんてしないだろうから。
やっぱり、彼女の存在は、私を平静でいられなくする。
でもちょっとした引っかかり位でこの場を台無しにはできない。
「いいえ。いつも主人が言っていますの。皆様が支えてくれるから、安全に、そして迅速に仕事がこなせると。訓練にしても、どの隊よりも厳しいのに、真面目に取り組んでいらっしゃる。そんな皆様の実力が認められたのですわ」
私は、あえて部隊の全員の功績だと伝えた。すると、リーマは私の言葉を心から喜んでくれて、私のこめかみにキスをした。
トーチさんも笑っているけど、一瞬だけ顔を歪めたことに気づいたのは私だけだろう。
やっぱり、気の所為なんかじゃない。彼女はリーマのことを……
でも、リーマは私に夢中だもの。あれから、家に帰っている時は、毎日のように求められていた。正直ヘトヘトなんだけど、嬉しい気持ちもあって彼を受け入れている。
あと、先輩マダムたちが言っていた気持ちがいいという感覚もわかったし……って何を考えているの。しゃきっとしなきゃ。
一瞬、淫らなことを考えそうになった。それもこれも、ここに来る直前に、ドレスアップした私を立ったまま背後から愛した彼のせいだと思う。そんなことを考えていると、体が熱く火照る。心做しか、足の付根が、じゅんっと濡れた気がした。
せっかく整えたヘアスタイルが乱れて、直すのに時間がかかって遅刻しちゃったのよね。
私達の甘い空間に、彼の部下たちが囃し立てる。
「あー、俺も、隊長のように、可愛くてきれいで色気のある妻が欲しいです!」
「ははは、今日見初められるといいな」
「いつもの騎士服よりも、正装しているんだから3割り増しだからな」
「パーティと酒のマジックが発動して、今日は皆モテモテ間違いなしだ」
いつの間にか、トーチさんは別の場所に移動していた。色んな男性から声をかけられているから、そのまま誰かを夫にしてくれたらいいのに、なんて願う。
「ライトちゃん、久しぶりね」
騎士団の仲間と楽しそうに話しているリーマを隣でながめていると、名前を呼ばれてそちらを向いた。
これは、保守的な貴族たちの一部には脅威となる。口さがなくリーマを悪く言い、昇進をなくそうと画策する一派もいた。でも、私という妻の父さまがたのひと睨みでその人達は口を閉ざした。
ただ、それ以上の出世は望めないだろうとのこと。でも、それでも良かった。十分すぎるほど、リーマが頑張ったその功績が認められたのだから。
他にも昇進した人々もいて、そのお祝いを王家主催で盛大にすることになった。
「リーマ、素敵よ」
「エルにそう言ってもらえて嬉しい」
リーマは、向上心が高く、もっと上を目指している。もしかしたら、リーマなら前例を度外視して、トップに上り詰めるかも。
誇らしく、誰よりも素敵な夫の姿に、嬉しくて皆に言いふらしたいほど鼻が高くなる。
「エルにもっと誇れるように、更に頑張るからね」
「うう、今でも十分すぎるのに、これ以上頑張られたら、私の立つ瀬がないわ」
「何を言っているんだ。エルがいるから、エルを幸せにしたいから頑張るんだ。エルがいなかったら、未だに下っ端だよ」
私も、彼の横に立つのにふさわしい女性になろうと思った。彼にも、私自身を誇らしく思って欲しいから。
王宮の一番大きな祝賀のための宮殿に来るのは初めてだ。あちこちで、集まってきた人々が談笑している。
「あ、あのひと……」
ひときわ賑わっている場所に、結婚式に参加してくれた騎士の皆様がいた。長いポニーテールの美女が、私を、というよりもリーマを見つけて大きな声で彼を呼んだ。
「隊長、たいちょー! もう、1時間も遅刻なんて珍しいじゃないですか。こっちこっちー」
彼女のいきなり発せられた声に、周囲は驚いてこっちを見た。こういう貴族も大勢いるパーテイで、あのように大声を出すことはマナー違反ではある。しかし、彼女も今日の主役のひとり。
平民で女性騎士の彼女に、内心眉をしかめているのがわかった。
「おい、こういう場所ではおしとやかにしろって」
彼の直属の部下の筆頭担った彼女に、リーマは呆れて注意する。
「すみません。こんな場所、いつも警護する側だったからはしゃいじゃいました。奥様、本日はおめでとうございます」
「トーチ卿も、昇進おめでとうございます。女性騎士の中でも快挙なんですってね」
「ふふふ、頑張りましたから! リーマの、いえ、リーマ隊長が、私達をひっぱってくれたからですよ!」
満面の笑顔で、リーマのおかげだと話す彼女のひとことに、胸がざわつく。
彼女は、普段リーマって呼んでいるのね……
聞かなくてもわかる。だって、普段からそう呼んでなかったら、こういう時に、いくら仲が良い上司部下だからって、リーマなんて呼び捨てなんてしないだろうから。
やっぱり、彼女の存在は、私を平静でいられなくする。
でもちょっとした引っかかり位でこの場を台無しにはできない。
「いいえ。いつも主人が言っていますの。皆様が支えてくれるから、安全に、そして迅速に仕事がこなせると。訓練にしても、どの隊よりも厳しいのに、真面目に取り組んでいらっしゃる。そんな皆様の実力が認められたのですわ」
私は、あえて部隊の全員の功績だと伝えた。すると、リーマは私の言葉を心から喜んでくれて、私のこめかみにキスをした。
トーチさんも笑っているけど、一瞬だけ顔を歪めたことに気づいたのは私だけだろう。
やっぱり、気の所為なんかじゃない。彼女はリーマのことを……
でも、リーマは私に夢中だもの。あれから、家に帰っている時は、毎日のように求められていた。正直ヘトヘトなんだけど、嬉しい気持ちもあって彼を受け入れている。
あと、先輩マダムたちが言っていた気持ちがいいという感覚もわかったし……って何を考えているの。しゃきっとしなきゃ。
一瞬、淫らなことを考えそうになった。それもこれも、ここに来る直前に、ドレスアップした私を立ったまま背後から愛した彼のせいだと思う。そんなことを考えていると、体が熱く火照る。心做しか、足の付根が、じゅんっと濡れた気がした。
せっかく整えたヘアスタイルが乱れて、直すのに時間がかかって遅刻しちゃったのよね。
私達の甘い空間に、彼の部下たちが囃し立てる。
「あー、俺も、隊長のように、可愛くてきれいで色気のある妻が欲しいです!」
「ははは、今日見初められるといいな」
「いつもの騎士服よりも、正装しているんだから3割り増しだからな」
「パーティと酒のマジックが発動して、今日は皆モテモテ間違いなしだ」
いつの間にか、トーチさんは別の場所に移動していた。色んな男性から声をかけられているから、そのまま誰かを夫にしてくれたらいいのに、なんて願う。
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