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初恋の君と僕①※R15未満くらい
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ヒロインと王子とのR15。
『僕らはともだちだろう? 好きだよ……』
彼女への気持ちを自覚したのは、初めて会ったあの時だった。ぎゅうぎゅう詰めのスケジュールに、気の抜けない大人たち。近づく子供たちすら油断できない日々。
心を許せるのは両親と兄、そして、乳兄弟である5つ年上のアルフレッドだけだ。
今日は、兄の妃候補を集める茶会だ。僕の出番はないとばかりに、お茶会に参加する前に隠れた。いつもの場所で、木の枝を取りブンブン振り回して騎士のマネをしていると、繁みの向こうから女の子の声がした。
とても明るく耳障りの良い声で、ニャアニャアと猫の鳴き声に合わせて「ミャーニャー」とか言って笑ってる。
声をかけた途端、猫が逃げ出してしまい文句を言われた。この僕に対してぷくっとほっぺたを膨らまして睨んできた子は初めてだった。
面食らったものの、猫に気を取られていた彼女がこの場所と、僕の正体には気づいてないけれど高位貴族の令息だと思ったのか、顔を赤と青を交互に色を変えて謝り出してしまい、なんだか楽しくなった。
暫く彼女と、自分の素の言動で接した。すると、アルフレッドが呼びに来てしまい、もっと彼女といたいなと惜しく思いつつ、仕事である王子という役者を演じる。
お茶会に姿を現すと、途端に僕の機嫌を取りに少年少女たちが群がる。ひとしきりそつなく彼らと話をした後、テーブルから動かない令嬢たちにも声をかけていった。
その中に、俯いて、まるで僕の視線から隠れているつもりの様子のさっきの彼女を見つけた。戦の起こりやすい辺境の領地付近の侯爵の娘だと、日々頭に叩き込まれる人物像と一致させる。
先ほどの時間を無礼だとちょっとからかってやろうかと、悪戯心が首を擡げたが、そんな事をすれば、本気で彼女や侯爵の立場がない。それ以来、この社交シーズンでごくたまにしか会えなかったが、僕の行動や気持ちは母上に筒抜けだったようだ。
すぐさま、侯爵家に婚約の打診をされそうになり慌てて止めた。その頃には、すでに彼女の心に誰がいるのかを知っていたからだ。それに、こちらからの要望を断れないのに、いずれ婚約を結び結婚するであろう、辺境伯と侯爵との間に亀裂を入れるわけにはいかなかった。
ところが、辺境での戦争が激化してしまいイヴォンヌが辺境に戻る事がなくなった。いつも明るく、苦しい片想いをする健気な彼女が最後にこっぴどく拒絶されたあげく捨て置かれた状況になったと泣いた。
なんてやつだと、会った事もない彼女の想い人に怒りが沸く。そして、僕の腕の中で、誰にも見せた事がないだろう泣きじゃくる姿に胸がぎゅぅっと熱くなった。
────折角諦めたのに向こうから手放したのだ。もう遠慮しない……!
『好きだよ……』
本心に、少しの嘘を混ぜる。今はまだ友達としてでいい。
だけど、いつか僕を見て。君だけを好きだよ。
※※※※
頑なだった彼女の心の壁が、僕にどんどん崩されていくのを感じる。友達以上ではあるみたいで心が浮き立つ。もっともっとと、貪欲に彼女の気持ちが欲しくなった。だが、まだ焦りは禁物だろう。
ゆっくり、時に強引に、彼女に寄り添い、中に入り込んでいった。けれど、長年の彼女の恋はなかなかしぶとかったようで時々彼を想っている事に気づいていた。
その度に胸がずうんと重くなる。だけど、だからこそ僕は微笑んで切なそうにしている彼女を抱きしめた。
「イヴ……」
「殿下……?」
あっという間に妃としての教育を吸収していく彼女は、本当の二人きりの時以外、名前で呼ぶことがなくなってしまって残念だ。少し、むっとなり、彼女の白くて細い手首を持ってプライベートルームに連れ込んだ。
「名前」
「え?」
「今は、二人っきりでしょう?」
にっこり微笑むと、少し照れたかのように頬を染めてフラットという彼女が愛しい。可愛い彼女をぎゅっと抱きしめると、おずおず背に腕を回されるほど、彼女との心の距離が近づいた。
「イヴ」
短く名を呼んで、僕を見上げる彼女の少し開いた小さな柔らかい所に僕のそれをちゅっと当てた。
「え……? フラット……?」
「好きだよ、イヴ」
驚いて、何が起こったのか分かってなさそうな彼女に、今度はしっかりと口づける。すでに閨の教育は施されていた。
「ちゅ……、くちゅ……」
彼女の小さな口腔内に舌を這わせる。突然やり過ぎたかとも思うが止まれなかった。逃げる舌を追いかけて絡めとる。頬の内、歯、そして、上あごまで舐めあげて行く。
例の彼とはキスなどしなかったのだろう。
無垢で何も知らない様子の彼女の様子に嬉しくなり、彼女の心に居座り続けるここにはいない男に対して溜飲が下がる。
「ん……、はぁ、はぁ……」
「イヴ、かわいい……。鼻で息をして」
目を開けて、しっかり瞼を閉じて必死な彼女は嫌がってはいなさそうに見える。ホッとして呼吸をゆっくり促した。唇から溢れて顎を濡らすお互いの唾液と、腫れた彼女の赤くなった唇にずくりと下半身に血が溜まる。
「はぁ、はぁ……、ん、はぁ……。苦し……、はぁ……」
そういった方面にはとことん無知なようだ。
それ以来、徐々に触れあう場所を増やして僕という存在を刻み付けていった。
『僕らはともだちだろう? 好きだよ……』
彼女への気持ちを自覚したのは、初めて会ったあの時だった。ぎゅうぎゅう詰めのスケジュールに、気の抜けない大人たち。近づく子供たちすら油断できない日々。
心を許せるのは両親と兄、そして、乳兄弟である5つ年上のアルフレッドだけだ。
今日は、兄の妃候補を集める茶会だ。僕の出番はないとばかりに、お茶会に参加する前に隠れた。いつもの場所で、木の枝を取りブンブン振り回して騎士のマネをしていると、繁みの向こうから女の子の声がした。
とても明るく耳障りの良い声で、ニャアニャアと猫の鳴き声に合わせて「ミャーニャー」とか言って笑ってる。
声をかけた途端、猫が逃げ出してしまい文句を言われた。この僕に対してぷくっとほっぺたを膨らまして睨んできた子は初めてだった。
面食らったものの、猫に気を取られていた彼女がこの場所と、僕の正体には気づいてないけれど高位貴族の令息だと思ったのか、顔を赤と青を交互に色を変えて謝り出してしまい、なんだか楽しくなった。
暫く彼女と、自分の素の言動で接した。すると、アルフレッドが呼びに来てしまい、もっと彼女といたいなと惜しく思いつつ、仕事である王子という役者を演じる。
お茶会に姿を現すと、途端に僕の機嫌を取りに少年少女たちが群がる。ひとしきりそつなく彼らと話をした後、テーブルから動かない令嬢たちにも声をかけていった。
その中に、俯いて、まるで僕の視線から隠れているつもりの様子のさっきの彼女を見つけた。戦の起こりやすい辺境の領地付近の侯爵の娘だと、日々頭に叩き込まれる人物像と一致させる。
先ほどの時間を無礼だとちょっとからかってやろうかと、悪戯心が首を擡げたが、そんな事をすれば、本気で彼女や侯爵の立場がない。それ以来、この社交シーズンでごくたまにしか会えなかったが、僕の行動や気持ちは母上に筒抜けだったようだ。
すぐさま、侯爵家に婚約の打診をされそうになり慌てて止めた。その頃には、すでに彼女の心に誰がいるのかを知っていたからだ。それに、こちらからの要望を断れないのに、いずれ婚約を結び結婚するであろう、辺境伯と侯爵との間に亀裂を入れるわけにはいかなかった。
ところが、辺境での戦争が激化してしまいイヴォンヌが辺境に戻る事がなくなった。いつも明るく、苦しい片想いをする健気な彼女が最後にこっぴどく拒絶されたあげく捨て置かれた状況になったと泣いた。
なんてやつだと、会った事もない彼女の想い人に怒りが沸く。そして、僕の腕の中で、誰にも見せた事がないだろう泣きじゃくる姿に胸がぎゅぅっと熱くなった。
────折角諦めたのに向こうから手放したのだ。もう遠慮しない……!
『好きだよ……』
本心に、少しの嘘を混ぜる。今はまだ友達としてでいい。
だけど、いつか僕を見て。君だけを好きだよ。
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頑なだった彼女の心の壁が、僕にどんどん崩されていくのを感じる。友達以上ではあるみたいで心が浮き立つ。もっともっとと、貪欲に彼女の気持ちが欲しくなった。だが、まだ焦りは禁物だろう。
ゆっくり、時に強引に、彼女に寄り添い、中に入り込んでいった。けれど、長年の彼女の恋はなかなかしぶとかったようで時々彼を想っている事に気づいていた。
その度に胸がずうんと重くなる。だけど、だからこそ僕は微笑んで切なそうにしている彼女を抱きしめた。
「イヴ……」
「殿下……?」
あっという間に妃としての教育を吸収していく彼女は、本当の二人きりの時以外、名前で呼ぶことがなくなってしまって残念だ。少し、むっとなり、彼女の白くて細い手首を持ってプライベートルームに連れ込んだ。
「名前」
「え?」
「今は、二人っきりでしょう?」
にっこり微笑むと、少し照れたかのように頬を染めてフラットという彼女が愛しい。可愛い彼女をぎゅっと抱きしめると、おずおず背に腕を回されるほど、彼女との心の距離が近づいた。
「イヴ」
短く名を呼んで、僕を見上げる彼女の少し開いた小さな柔らかい所に僕のそれをちゅっと当てた。
「え……? フラット……?」
「好きだよ、イヴ」
驚いて、何が起こったのか分かってなさそうな彼女に、今度はしっかりと口づける。すでに閨の教育は施されていた。
「ちゅ……、くちゅ……」
彼女の小さな口腔内に舌を這わせる。突然やり過ぎたかとも思うが止まれなかった。逃げる舌を追いかけて絡めとる。頬の内、歯、そして、上あごまで舐めあげて行く。
例の彼とはキスなどしなかったのだろう。
無垢で何も知らない様子の彼女の様子に嬉しくなり、彼女の心に居座り続けるここにはいない男に対して溜飲が下がる。
「ん……、はぁ、はぁ……」
「イヴ、かわいい……。鼻で息をして」
目を開けて、しっかり瞼を閉じて必死な彼女は嫌がってはいなさそうに見える。ホッとして呼吸をゆっくり促した。唇から溢れて顎を濡らすお互いの唾液と、腫れた彼女の赤くなった唇にずくりと下半身に血が溜まる。
「はぁ、はぁ……、ん、はぁ……。苦し……、はぁ……」
そういった方面にはとことん無知なようだ。
それ以来、徐々に触れあう場所を増やして僕という存在を刻み付けていった。
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