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「ヴァレリー、どこに行こうとしているの?」
ぎくりと、ヴァレリーは体を止めた。ふんわりしたドレスの中の足の小さな動きを気づかれてしまい、優しくヴァレリーを見つめるフレデリックを見上げた。
「ヴァレリー? どういうことだ?」
フレデリックのその言葉に、逃げようとしていた事など気づかなかったロランが、ヴァレリーに問いかける。
「えっと……どこにも、行こうとなんて、してません……」
ヴァレリーは、自分が逃げ出そうとしているのを見破ったフレデリックの楽しそうに笑う顔を恐る恐る見上げてそんな風に返した。
「そう? じゃあ、ここでは人目につきすぎるし一緒に外に行こうか」
フレデリックの突然の誘いはとても魅力的だ。このグサグサ突き刺さる数多の視線から逃れるために、飛びつくように差し出された肘に手を添えた。
ロランは、完全に出鼻をくじかれた状態になりつつ、二人をそのまま行かせてなるものかと一緒に歩いて行く。ロランとフレデリックはお互いにヴァレリーを狙っている事を悟っていて牽制しあっていた。学園でヴァレリーと数年一緒だったロランのほうが有利なはずだと、目の前で小さな頃のように並んで歩く二人をロランは苦々しく見つめる。
「さて、ここまでくれば五月蠅い外野はいないかな。ヴァレリー、久しぶりだね。小さな頃も可愛らしかったけれど、とても綺麗なレディになって……。はは、あんなに小さかったのに、私の妖精はいつの間に魅力的な女性になったんだろう」
「フレデリック様……」
フレデリックの歯が浮くようなセリフを聞いて、ヴァレリーは首から上が爆発したかのように真っ赤になる。こんな風に言うのは彼だけだったし慣れていない。しかも、今日のフレデリックは礼服を着ていてとてもかっこいい。まさに絵本に出て来るような王子様だ。
「ヴァレリー、昔みたいにフレドお兄様と呼んで、いや、お兄様はいらないな。フレドと呼んで?」
「そんな、そんな事……」
たとえ社交辞令であっても、口説き文句のように聞こえてしまい体中がふわふわして熱くなった。心なしか甘やかさを感じるフレデリックの視線から逃れるように下を向く。
「フレデリック様! 先ほどはご助力ありがとうございました。その、さっきまで私は彼女に求婚をしていて……」
「……知っているよ。少々出し抜かれてしまったけれど、それを続けさせるつもりは微塵もないから声をかけたからね」
ロランは、小さな頃から、自分が泣かせたら必ずヴァレリーを助けにくる年上の憧れでもある青年のその言葉に、やはり感じていた事が正しかったのだと思った。完全にマナー違反のような横やりをしてきたフレデリックを忌々しく睨みつける。
「……ヴァレリーをずっと側で見て守っていたのは俺です……!」
「同い年で学園で一緒に過ごしたからね。でも、先ほどのロランとヴァレリーの様子じゃあお察しの通りかな?」
「はっきりとした求婚は今日までできませんでしたからね。でも、俺といてヴァレリーは笑ってくれていたし長い間離れている兄のような存在の男よりはよほど近い、異性の男ですよ?」
「近い、ね」
ヴァレリーは、ロランとフレデリックが静かに、だが、明らかに敵対しているかのように言葉の応酬を初めてしまい、どうした事かと二人を交互に見つめた。フレデリックは数年の間、兄としてしか思われていない上にまんまとヴァレリーの隣にロランがいた事で、ロランは数年かけても尚ヴァレリーに二つ返事で了承を得れなかった事で心が焦燥で埋められつつ睨み合う。
ぎくりと、ヴァレリーは体を止めた。ふんわりしたドレスの中の足の小さな動きを気づかれてしまい、優しくヴァレリーを見つめるフレデリックを見上げた。
「ヴァレリー? どういうことだ?」
フレデリックのその言葉に、逃げようとしていた事など気づかなかったロランが、ヴァレリーに問いかける。
「えっと……どこにも、行こうとなんて、してません……」
ヴァレリーは、自分が逃げ出そうとしているのを見破ったフレデリックの楽しそうに笑う顔を恐る恐る見上げてそんな風に返した。
「そう? じゃあ、ここでは人目につきすぎるし一緒に外に行こうか」
フレデリックの突然の誘いはとても魅力的だ。このグサグサ突き刺さる数多の視線から逃れるために、飛びつくように差し出された肘に手を添えた。
ロランは、完全に出鼻をくじかれた状態になりつつ、二人をそのまま行かせてなるものかと一緒に歩いて行く。ロランとフレデリックはお互いにヴァレリーを狙っている事を悟っていて牽制しあっていた。学園でヴァレリーと数年一緒だったロランのほうが有利なはずだと、目の前で小さな頃のように並んで歩く二人をロランは苦々しく見つめる。
「さて、ここまでくれば五月蠅い外野はいないかな。ヴァレリー、久しぶりだね。小さな頃も可愛らしかったけれど、とても綺麗なレディになって……。はは、あんなに小さかったのに、私の妖精はいつの間に魅力的な女性になったんだろう」
「フレデリック様……」
フレデリックの歯が浮くようなセリフを聞いて、ヴァレリーは首から上が爆発したかのように真っ赤になる。こんな風に言うのは彼だけだったし慣れていない。しかも、今日のフレデリックは礼服を着ていてとてもかっこいい。まさに絵本に出て来るような王子様だ。
「ヴァレリー、昔みたいにフレドお兄様と呼んで、いや、お兄様はいらないな。フレドと呼んで?」
「そんな、そんな事……」
たとえ社交辞令であっても、口説き文句のように聞こえてしまい体中がふわふわして熱くなった。心なしか甘やかさを感じるフレデリックの視線から逃れるように下を向く。
「フレデリック様! 先ほどはご助力ありがとうございました。その、さっきまで私は彼女に求婚をしていて……」
「……知っているよ。少々出し抜かれてしまったけれど、それを続けさせるつもりは微塵もないから声をかけたからね」
ロランは、小さな頃から、自分が泣かせたら必ずヴァレリーを助けにくる年上の憧れでもある青年のその言葉に、やはり感じていた事が正しかったのだと思った。完全にマナー違反のような横やりをしてきたフレデリックを忌々しく睨みつける。
「……ヴァレリーをずっと側で見て守っていたのは俺です……!」
「同い年で学園で一緒に過ごしたからね。でも、先ほどのロランとヴァレリーの様子じゃあお察しの通りかな?」
「はっきりとした求婚は今日までできませんでしたからね。でも、俺といてヴァレリーは笑ってくれていたし長い間離れている兄のような存在の男よりはよほど近い、異性の男ですよ?」
「近い、ね」
ヴァレリーは、ロランとフレデリックが静かに、だが、明らかに敵対しているかのように言葉の応酬を初めてしまい、どうした事かと二人を交互に見つめた。フレデリックは数年の間、兄としてしか思われていない上にまんまとヴァレリーの隣にロランがいた事で、ロランは数年かけても尚ヴァレリーに二つ返事で了承を得れなかった事で心が焦燥で埋められつつ睨み合う。
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