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高嶺の花、マリア
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マリアが、相手も決めずに20歳になった途端、マリアを知る相手のいない男たちがざわつきだした。
基本的に、女性が男性を選ぶ立場のため、男性に対して上から目線の女性が多い。しかし、マリアは違った。どんな相手に対しても、丁寧に対応してくれる。だからこそ、脈があると勘違いしてマリアにのめり込む少年たちが絶えずにいたのであった。
「あの、マリア・エヴァンス嬢……!」
「? なんでしょう?」
声を掛けられて振り向けば、真っ赤な顔をして背に彼女へのプレゼントを隠し持っている少年がいたとしよう。
「あの、あのぉ、そのぉ……。ぼ、僕……、その、……」
緊張のあまりどもってしまった途端、他の少女なら、そのような無様な態度を取る少年など見向きもしない。ふんっとそっぽを向かれてしまい、あっという間にいなくなるのだ。人によっては馬鹿にされ悪口まで言われるのが関の山。
「どうしましたか? 大丈夫でしょうか?」
ところが、マリアは、顔が紅潮し、息を荒げる目の前の少年が、何か体調不良ではないかと思い、心配までしてくれるのだ。しかも、彼は薄幸の美少年かとつっこみたくなるほど華奢で可愛らしい顔立ちをしており更に気遣われる。女の子みたいだと同級生にはからかわれたりもしているような人物だ。
「い、いえ。すみませんっ。あの、僕、………………、あなたが好きですっ!! 是非、第一じゃなくてもいいんです。末席でかまいませんから、夫にしてくれませんか?」
「あー……」
マリアは、意を決して伝えて来る彼の言葉は、このご時世、かなり誠意を持ったものである事は頭では理解している。だが、一夫一妻制を望むマリアにしてみれば、一妻多夫制が当たり前の異性はお呼びではない。今の世でこれがスタンダードというのに、我ながら無茶ぶりな考えをもつと自重する。
眉をハノ字にして、申し訳なくなるくらい、マリアの反応にしょんぼりする相手に断りを入れなければならないのだ。
「僕、スティーブ・マクガードと言います。特別秀でた物は持ち合わせていないかもしれません。けれども、経済的にあなたを困らせる事は絶対にありません。あの、もっと、しっかり男らしくなります! ですから、どうか……」
たしかに、目の前の少年の容姿は中の上、いや、長い年月を経て、トップクラスの男が子作りをしてきた美形揃いの今の世界では、中の下と判断されるだろう。ありきたりの髪と目の色に、頼りなげで華奢な体。自信なさげな弱さを見せる態度と言葉は、これまで数多の女性にこっぴどく断られたに違いない。
マクガードといえば、名門中の名門である侯爵家の一つであり政財界に著名人を何人も排出している。世界一といって過言でないほどの大病院の経営者も侯爵家だ。おそらく、金なら唸るほどあるだろう。
だが、そのような家など、求婚する男の立場からするとあまり際立つものでもない。なぜなら、マリアのように、上等な女性に対してアプローチする周囲の男たちも同等以上の経済力や権力を兼ね備えているからだ。
「スティーブさん、お気持ちはありがたいのですが、ごめんなさい……。私もそれほど大した人間じゃあないんですけれども……。どうか、あなたにとって善き縁がこれからありますよう祈ってますね」
断るにしても、これである。マリアにとって、誠意をもって対応しているだけなのであるが、彼みたい人物は、一言すら声をかけて貰えない事の方が多いのだ。それなのに、優しく美しいマリアが、心を込めた言葉を贈ると、彼のような少年はどうなるかというと。
「マリアさん……。僕、諦めませんから……っ!」
結果、このようにほんの少しでも脈がありそうだと執着される事に。だが、一貫して誰に対しても同じように断るものだから、次第に大部分の少年たちが諦めて別の女性に鞍替えをしていくのであった。
マリアは、太陽光を浴びると、キラキラと輝く柔らかでふんわりした亜麻色の髪に、淡い緑の瞳。ちょこんと可愛らしく乗った鼻に、ぷっくり膨らんだ唇は、美人というよりは愛らしく魅惑的な部分も持ち合わせている容姿だ。
長いまつ毛が影を作り、やや俯きながら憂いを帯びた吐息などを吐けば、少年たちの一部が瞬時に熱くなるほどの色気がある。別に、露出が多かったり、体のラインがはっきりした服を着ているわけではないのに。
本人は、大したことないと思っているが、少年たちにとっては、容姿は極上とまではいかないが、上の上であり色気もある。なんといっても、性格は特上。家柄も、母は代々続く伝統ある伯爵家の当主であり、その夫たちも各方面で知らない人はいないほどの有名人たちだ。
マリアの夫たちになる者の出自は、親戚に様々な分野の著名人が多くいるほど良い。
もしも、マリアの夫の一人になれたら、その人物の実家はもろ手を挙げて喜ぶだろう。
マリアがモテる理由はそれだけではない。家系的に、女児が産まれる確率が非常に高いのだ。女児が産まれたら、政府から莫大な報奨金が与えられる。
マリアには、すでに既婚者になった妹たちがいる。どの子も健康かつ、母やマリアに似て愛らしく穏やかな性格で結婚後も夫となりたがる人物が後を絶たない。
長女で跡継ぎのマリアは、そんな妹たちに輪をかけて引く手あまたなのだ。
なので、スミレが言っていたように、優良物件の青年が少ないとはいえ、彼女を狙っている少年たちや、青年も多くおり、ぎりぎりまで夫たちを決めるのを引き延ばす事が出来たのであった。
基本的に、女性が男性を選ぶ立場のため、男性に対して上から目線の女性が多い。しかし、マリアは違った。どんな相手に対しても、丁寧に対応してくれる。だからこそ、脈があると勘違いしてマリアにのめり込む少年たちが絶えずにいたのであった。
「あの、マリア・エヴァンス嬢……!」
「? なんでしょう?」
声を掛けられて振り向けば、真っ赤な顔をして背に彼女へのプレゼントを隠し持っている少年がいたとしよう。
「あの、あのぉ、そのぉ……。ぼ、僕……、その、……」
緊張のあまりどもってしまった途端、他の少女なら、そのような無様な態度を取る少年など見向きもしない。ふんっとそっぽを向かれてしまい、あっという間にいなくなるのだ。人によっては馬鹿にされ悪口まで言われるのが関の山。
「どうしましたか? 大丈夫でしょうか?」
ところが、マリアは、顔が紅潮し、息を荒げる目の前の少年が、何か体調不良ではないかと思い、心配までしてくれるのだ。しかも、彼は薄幸の美少年かとつっこみたくなるほど華奢で可愛らしい顔立ちをしており更に気遣われる。女の子みたいだと同級生にはからかわれたりもしているような人物だ。
「い、いえ。すみませんっ。あの、僕、………………、あなたが好きですっ!! 是非、第一じゃなくてもいいんです。末席でかまいませんから、夫にしてくれませんか?」
「あー……」
マリアは、意を決して伝えて来る彼の言葉は、このご時世、かなり誠意を持ったものである事は頭では理解している。だが、一夫一妻制を望むマリアにしてみれば、一妻多夫制が当たり前の異性はお呼びではない。今の世でこれがスタンダードというのに、我ながら無茶ぶりな考えをもつと自重する。
眉をハノ字にして、申し訳なくなるくらい、マリアの反応にしょんぼりする相手に断りを入れなければならないのだ。
「僕、スティーブ・マクガードと言います。特別秀でた物は持ち合わせていないかもしれません。けれども、経済的にあなたを困らせる事は絶対にありません。あの、もっと、しっかり男らしくなります! ですから、どうか……」
たしかに、目の前の少年の容姿は中の上、いや、長い年月を経て、トップクラスの男が子作りをしてきた美形揃いの今の世界では、中の下と判断されるだろう。ありきたりの髪と目の色に、頼りなげで華奢な体。自信なさげな弱さを見せる態度と言葉は、これまで数多の女性にこっぴどく断られたに違いない。
マクガードといえば、名門中の名門である侯爵家の一つであり政財界に著名人を何人も排出している。世界一といって過言でないほどの大病院の経営者も侯爵家だ。おそらく、金なら唸るほどあるだろう。
だが、そのような家など、求婚する男の立場からするとあまり際立つものでもない。なぜなら、マリアのように、上等な女性に対してアプローチする周囲の男たちも同等以上の経済力や権力を兼ね備えているからだ。
「スティーブさん、お気持ちはありがたいのですが、ごめんなさい……。私もそれほど大した人間じゃあないんですけれども……。どうか、あなたにとって善き縁がこれからありますよう祈ってますね」
断るにしても、これである。マリアにとって、誠意をもって対応しているだけなのであるが、彼みたい人物は、一言すら声をかけて貰えない事の方が多いのだ。それなのに、優しく美しいマリアが、心を込めた言葉を贈ると、彼のような少年はどうなるかというと。
「マリアさん……。僕、諦めませんから……っ!」
結果、このようにほんの少しでも脈がありそうだと執着される事に。だが、一貫して誰に対しても同じように断るものだから、次第に大部分の少年たちが諦めて別の女性に鞍替えをしていくのであった。
マリアは、太陽光を浴びると、キラキラと輝く柔らかでふんわりした亜麻色の髪に、淡い緑の瞳。ちょこんと可愛らしく乗った鼻に、ぷっくり膨らんだ唇は、美人というよりは愛らしく魅惑的な部分も持ち合わせている容姿だ。
長いまつ毛が影を作り、やや俯きながら憂いを帯びた吐息などを吐けば、少年たちの一部が瞬時に熱くなるほどの色気がある。別に、露出が多かったり、体のラインがはっきりした服を着ているわけではないのに。
本人は、大したことないと思っているが、少年たちにとっては、容姿は極上とまではいかないが、上の上であり色気もある。なんといっても、性格は特上。家柄も、母は代々続く伝統ある伯爵家の当主であり、その夫たちも各方面で知らない人はいないほどの有名人たちだ。
マリアの夫たちになる者の出自は、親戚に様々な分野の著名人が多くいるほど良い。
もしも、マリアの夫の一人になれたら、その人物の実家はもろ手を挙げて喜ぶだろう。
マリアがモテる理由はそれだけではない。家系的に、女児が産まれる確率が非常に高いのだ。女児が産まれたら、政府から莫大な報奨金が与えられる。
マリアには、すでに既婚者になった妹たちがいる。どの子も健康かつ、母やマリアに似て愛らしく穏やかな性格で結婚後も夫となりたがる人物が後を絶たない。
長女で跡継ぎのマリアは、そんな妹たちに輪をかけて引く手あまたなのだ。
なので、スミレが言っていたように、優良物件の青年が少ないとはいえ、彼女を狙っている少年たちや、青年も多くおり、ぎりぎりまで夫たちを決めるのを引き延ばす事が出来たのであった。
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