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キス、キス、キス。そして、キス。
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アダムは、産まれた時の境遇から、親戚などから地位を奪おうと画策され続けていた。時には暗殺までされそうになる事も。
両親たち、特に母親は、自ら産み落としたにも拘らず、先祖返りした不気味で不吉な瞳を持つ彼を毛嫌いして必要最低限しか会おうとしなかった。
酷い虐待はなかったものの、アダムの代わりはいくらでもいるため、母が産んだ他の息子たちに比べて格段に落ちる生活を強いられていた。
表立っては媚を売る大人たち。大人の目に触れない所でいじめをしてくる子供たちに囲まれながら、徐々に性格は拗れてしまいすっかり人間不信となる。
さっさと家から追い出したかったのだろうか、格下の家の令嬢たちと見合いをセッティングされた。ところが、アダム自身が誰に対しても興味がなく、アダムに興味を持つ令嬢たちが現れても一向にチヤホヤしないため断られ続け、これまで独身を貫き通していたのであった。
なぜアダムが実家で実権を握るようになったかと言えば、棚からぼた餅といった状態で、兄弟たちが他家に婿入りした後、跡取りである姉が子を産むことなく事故で亡くなったのである。
息子たちが婿入りした家には女の子が一人しかなく、他に女性のない家系であるため、親族会議が開かれた。
跡取りの妻がいなくなれば直系の子を次に据えなければならない。婿入りしてきた亡き姉の夫たちとの間に産まれた息子たちよりも、より血の近いアダム。
当時、唯一独身だったアダムにその座が舞い込んだ。とはいえ、アダムが今後婿入りした先で産まれた女児のDNAが一致すれば、その子を跡取りとするまでの間のかりそめの当主の座なのだ。
それまで、アダムを軽視し、容姿について陰口を叩き、下に見ていた周囲の態度ががらりと変わったのはアダムが15歳の時。
跡取りとしての教育や、彼の周囲にいる人物の総替えにより世界が変わったアダムは、手に入らない物はないほどの富と栄光を得たが、心は渇く一方であった。
今更すり寄って来る女たちに辟易としていた時、パーティ会場から抜け出して、そしてマリアに出会ったという事らしい。
ぽつりぽつりと、言いづらそうに自分自身の事を嘘偽りなく伝えて来るアダムの姿を見て、マリアは、小さな彼がどれほど寂しく悲しい思いをしてきたかと思うと胸がきゅぅっと痛み、ほろりと涙がこぼれた。
「アダムさん……」
「実は、先ほどまでのやり取りも、この事情も全て彼らには話してある。他人を信じきれない僕に、貴女はどれほど最初に失礼な態度を取ったとしても誠意を尽くせば最後まで聞いてくれるからと、君を試してみてはどうかと背中を押してくれたのは彼らなんだ。他の女性なら、最初に僕を見た瞬間そっぽを向かれるだろうし、あんな物言いをすれば開始3分で退場になっただろうね」
「……で、しょうね。私、周囲からも散々言われて来ましたし、我ながら甘いとは思います。あの、私に対して試すのは分かりますけれど、二人に対する侮辱的な発言は許せません……。たとえ、事前に彼らに許可を得ていたとしても。だって、あなたは、有無を言わせない立場なんですから断れないし、了承したとしても気分がいいわけではないわ」
「……その通りだね……」
「だから、きちんと二人に謝罪してください。二人は直接聞いていなくても、私が聞いてしまいました。私は、二人を夫候補として選んだんですから、二人を尊重してくれない人は嫌なんです……。そりゃ、未だに一夫一妻制には憧れます。でも、無理なのですから私もここに来ました。私だけじゃなくて、他の人たちと仲良くなれないなら、このまま帰ってください」
「マリア嬢……」
アダムは、すっと立ち上がり、マリアの足元に膝をついて頭を垂れた。
「我が女王……。貴女に出会えたあの時と、そして、今に感謝を……。俺の全ては貴女のもの。貴女が言うからではなく、俺も他の夫たちと一緒に貴女と共にありたい。今更だけど、もしも許されるなら、俺を受け入れて欲しい。今後、第四以降の夫が加わる事を完全に阻止できるのは俺だけ。どうか、俺を盾としてでいいから貴女の側にいさせてくれませんか?」
「盾、ですか? それでいいんですか?」
「はい。いずれは貴女の心に住みたいと願うけれど、今は盾としてでいい。勿論、俺の全ての愛も、心も、そして体ごと捧げるから」
マリアは、柔らかな手でそっと手をとられ、額に手の甲を当てられた。
「……、アダムさん、いいえ、アダム」
アダムは、名を呼ばれて、閉じていた目を見開きそのままマリアを見上げた。浅黒い肌がほんのり赤く染まり、瞳が潤んでいる。
「ああ、俺の女王……」
「女王はやめてくださいね? あと、きちんと二人に謝罪をしてください」
アダムは、頬を染めたまま、まるで欲しかったおもちゃを買ってもらった少年のように満面の笑みになった。
「はい……、はい! ありがとう、……マリア」
マリアはアダムに立って横に座るように伝えた。
「これからは、みんなで幸せになりましょう」
アダムはとても綺麗な涙を流して、懇請するようにマリアの手の平に唇を当てた。
時が過ぎ打ち解けた頃、一度去って行った二人が彼らの元にやってきた。アダムは先ほどのやり取りを説明した後頭を下げた。
彼のすっきりとした表情を見た二人は、構わないよとアダムに伝え、屈託なく笑い合いながら肩を叩き合ったのである。
どうやら、本当に三人は事前に話し合い理解していたようで、少々面食らうとともにホッとした。
「マリア、愛している」
「マリア、愛しています」
「マリア、愛しているよ」
三人はそう言うと、順番にマリアの頬にキスをした。そして、
「私のために、三人とも色々心を砕いてくれてありがとう……。私も、貴方たちがお相手で本当に良かったと思う……」
マリアが瞳を潤ませ、嬉しそうに微笑む彼ら一人一人と視線を合わせる。
容姿も地位も申し分ないけれどそんな事がどうでもいいくらい、マリアを一心に愛してくれる夫候補たちに、マリアから頬にキスを返していったのであった。
両親たち、特に母親は、自ら産み落としたにも拘らず、先祖返りした不気味で不吉な瞳を持つ彼を毛嫌いして必要最低限しか会おうとしなかった。
酷い虐待はなかったものの、アダムの代わりはいくらでもいるため、母が産んだ他の息子たちに比べて格段に落ちる生活を強いられていた。
表立っては媚を売る大人たち。大人の目に触れない所でいじめをしてくる子供たちに囲まれながら、徐々に性格は拗れてしまいすっかり人間不信となる。
さっさと家から追い出したかったのだろうか、格下の家の令嬢たちと見合いをセッティングされた。ところが、アダム自身が誰に対しても興味がなく、アダムに興味を持つ令嬢たちが現れても一向にチヤホヤしないため断られ続け、これまで独身を貫き通していたのであった。
なぜアダムが実家で実権を握るようになったかと言えば、棚からぼた餅といった状態で、兄弟たちが他家に婿入りした後、跡取りである姉が子を産むことなく事故で亡くなったのである。
息子たちが婿入りした家には女の子が一人しかなく、他に女性のない家系であるため、親族会議が開かれた。
跡取りの妻がいなくなれば直系の子を次に据えなければならない。婿入りしてきた亡き姉の夫たちとの間に産まれた息子たちよりも、より血の近いアダム。
当時、唯一独身だったアダムにその座が舞い込んだ。とはいえ、アダムが今後婿入りした先で産まれた女児のDNAが一致すれば、その子を跡取りとするまでの間のかりそめの当主の座なのだ。
それまで、アダムを軽視し、容姿について陰口を叩き、下に見ていた周囲の態度ががらりと変わったのはアダムが15歳の時。
跡取りとしての教育や、彼の周囲にいる人物の総替えにより世界が変わったアダムは、手に入らない物はないほどの富と栄光を得たが、心は渇く一方であった。
今更すり寄って来る女たちに辟易としていた時、パーティ会場から抜け出して、そしてマリアに出会ったという事らしい。
ぽつりぽつりと、言いづらそうに自分自身の事を嘘偽りなく伝えて来るアダムの姿を見て、マリアは、小さな彼がどれほど寂しく悲しい思いをしてきたかと思うと胸がきゅぅっと痛み、ほろりと涙がこぼれた。
「アダムさん……」
「実は、先ほどまでのやり取りも、この事情も全て彼らには話してある。他人を信じきれない僕に、貴女はどれほど最初に失礼な態度を取ったとしても誠意を尽くせば最後まで聞いてくれるからと、君を試してみてはどうかと背中を押してくれたのは彼らなんだ。他の女性なら、最初に僕を見た瞬間そっぽを向かれるだろうし、あんな物言いをすれば開始3分で退場になっただろうね」
「……で、しょうね。私、周囲からも散々言われて来ましたし、我ながら甘いとは思います。あの、私に対して試すのは分かりますけれど、二人に対する侮辱的な発言は許せません……。たとえ、事前に彼らに許可を得ていたとしても。だって、あなたは、有無を言わせない立場なんですから断れないし、了承したとしても気分がいいわけではないわ」
「……その通りだね……」
「だから、きちんと二人に謝罪してください。二人は直接聞いていなくても、私が聞いてしまいました。私は、二人を夫候補として選んだんですから、二人を尊重してくれない人は嫌なんです……。そりゃ、未だに一夫一妻制には憧れます。でも、無理なのですから私もここに来ました。私だけじゃなくて、他の人たちと仲良くなれないなら、このまま帰ってください」
「マリア嬢……」
アダムは、すっと立ち上がり、マリアの足元に膝をついて頭を垂れた。
「我が女王……。貴女に出会えたあの時と、そして、今に感謝を……。俺の全ては貴女のもの。貴女が言うからではなく、俺も他の夫たちと一緒に貴女と共にありたい。今更だけど、もしも許されるなら、俺を受け入れて欲しい。今後、第四以降の夫が加わる事を完全に阻止できるのは俺だけ。どうか、俺を盾としてでいいから貴女の側にいさせてくれませんか?」
「盾、ですか? それでいいんですか?」
「はい。いずれは貴女の心に住みたいと願うけれど、今は盾としてでいい。勿論、俺の全ての愛も、心も、そして体ごと捧げるから」
マリアは、柔らかな手でそっと手をとられ、額に手の甲を当てられた。
「……、アダムさん、いいえ、アダム」
アダムは、名を呼ばれて、閉じていた目を見開きそのままマリアを見上げた。浅黒い肌がほんのり赤く染まり、瞳が潤んでいる。
「ああ、俺の女王……」
「女王はやめてくださいね? あと、きちんと二人に謝罪をしてください」
アダムは、頬を染めたまま、まるで欲しかったおもちゃを買ってもらった少年のように満面の笑みになった。
「はい……、はい! ありがとう、……マリア」
マリアはアダムに立って横に座るように伝えた。
「これからは、みんなで幸せになりましょう」
アダムはとても綺麗な涙を流して、懇請するようにマリアの手の平に唇を当てた。
時が過ぎ打ち解けた頃、一度去って行った二人が彼らの元にやってきた。アダムは先ほどのやり取りを説明した後頭を下げた。
彼のすっきりとした表情を見た二人は、構わないよとアダムに伝え、屈託なく笑い合いながら肩を叩き合ったのである。
どうやら、本当に三人は事前に話し合い理解していたようで、少々面食らうとともにホッとした。
「マリア、愛している」
「マリア、愛しています」
「マリア、愛しているよ」
三人はそう言うと、順番にマリアの頬にキスをした。そして、
「私のために、三人とも色々心を砕いてくれてありがとう……。私も、貴方たちがお相手で本当に良かったと思う……」
マリアが瞳を潤ませ、嬉しそうに微笑む彼ら一人一人と視線を合わせる。
容姿も地位も申し分ないけれどそんな事がどうでもいいくらい、マリアを一心に愛してくれる夫候補たちに、マリアから頬にキスを返していったのであった。
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