今世ではのんびりしたいのですが…無理ですか…

弥生 桜香

文字の大きさ
20 / 133
第二章

《初めてのクエスト》

しおりを挟む
「ご登録ありがとうございます。」

 受付の彼女はニッコリと微笑み、いつの間に用意したのかカルムが言っていた薬草のクエストを三つほど見せる。

「こちらの二つが常時募集している薬草です。」
「痛み止めと魔草ね。」
「で、こちらはあと一週間しか納期期限がない分になるわ。」
「カルム。」
「何だ?」
「こういうクエストって、複数同時に受けられるの?」
「ああ、そうだな、出来る奴なら同時にやっている奴らもいる。」
「そうなんだ。」
「どうする?」
「えっ?」

 聞いてくるカルムにセイラはキョトンとなる。

「もし、必要なら俺だけ討伐クエストをとってもいい、懐寒くないか?」
「……。」

 セイラは無性に泣きたくなってしまった。
 何故、こんな幼い子供が自分の懐具合を心配しているのだと。

「大丈夫、こっちの常時クエストだけでも、一日分のご飯になるし、それに、森に入るのなら食べられる何かをとってもいいでしょ?」
「まあな。」
「あっ、ペナルティとかあるのかな?」
「ランクが上がればあるけど、セイラと俺のランクならペナルティはないぞ。」
「そうなんだ。」
「ああ、Bランクからはペナルティがあるけど、そこまで上がるには功績とか講習とか色々とかかるんだ。」
「へー。」
「セイラ様。」
「セイラ様。」

 突然双子がセイラを呼ぶ。

「どうしたの?」
「お話を伺うのなら受付嬢に多い記した方がいいんではないでしょうか。」
「でも、簡単なお話しなのよ。」
「もし、こいつが間違ってたらまずいんじゃないですか?」
「……。」

 レラの言葉にセイラは思わず苦笑し、カルムはどうして自分をそこまで目の敵にするのだと呆れたような顔をしている。

「あの、カルムくんの話は間違ってないわよ。」
「……。」
「……。」

 受付の彼女は苦笑気味にそう言えば、双子は面白くなさそうな顔をする。

「えっと、ごめんなさい。」
「大丈夫、大丈夫、双子ちゃんはカルムくんに嫉妬しているんだね。」
「シット?」
「……。」

 レラは意味が分からないのか、首を傾げ、ミラはきまり悪そうな顔をしている。

「うーん、やきもち……、セイラちゃんを取られたくないとか、あと、セイラちゃんがカルムくんばっかりに目を向けているからむかむかするとかかな?」
「それをシットって言うんだ。」
「ええ、そうね。」
「なら、シットしています。」
「ちょっと、レラ。」

 ミラは少し焦ったような顔をしながらレラの服を引っ張る。

「何で言うのよ。」
「だって、本当の事だもの。」
「それは…。」
「ふふふ。」

 こそこそとしているけども、完全にバレバレの二人の会話に受付の彼女は微笑ましそうに見ている。

「えっと、あの、クエスト受けたいんですけど。」

 セイラは遠慮がちにそう言い、紙をギュッと握っている。

「あっ、ごめんなさいね。」
「いえ。」

 セイラは苦笑しながら、紙を並べる。

「こちらの二つを受けられるんですか?」
「はい、お願いします。」
「では、こちらの方にサインをしてください。」

 セイラは紙に自分の名前を記入する。

「そう言えば、パーティを組んでおきますか?」
「パーティですか?」
「はい、ソロ受注でも構いませんが、パーティでしたら代表者の名前とパーティ名を書けばそれで大丈夫です。」
「……。」

 セイラは困ったような顔をして、カルムを見る。

「いいんじゃねぇか、組んでも。」
「そんな軽く言わなくても…。」

 困惑しているセイラにカルムは笑う。

「だって、傍に居るって決めているし、それなら始めから決めとけばいいじゃねぇか。」
「……。」
「セイラ様、わたしたちも構いません。」
「むしろ、組んでください。」
「ミラ、レラ。」

 双子の後押しもあり、セイラは決めたのか、ニッコリと笑う。

「そうね。それなら、パーティ名どうする?」
「セイラ様大好き同盟。」
「セイラ様お守りします隊。」
「……。」
「……。」
「……。」

 双子のネーミングセンスに受付の彼女も含め黙り込む。

「カルムは何かある?」
「………………お嬢と愉快な仲間たち?」
「……。」
「ダサい。」
「無いわ。」

 なけなしの知恵を振り絞ったカルムだったが、セイラは苦笑い、双子はバッサリと切り伏せた。

「だから、嫌だったんだよ……俺もないな、とは思ったけど。」
「そうね………「キセキ」かしら。」
「キセキ?」
「私たちが出会えた「奇跡」、私たちという「貴石」の原石、そして、未来を紡ぎ出来る「軌跡」それぞれを総合して「キセキ」かな。」
「いいです。」
「素敵です」
「いいんじゃねぇか。」

 絶賛する二人に、肯定する一人にセイラは慌てだす。

「え、でも私も安直に考えているんだよ。」
「他の奴らよりましだからな。」
「……一番変な人が。」
「俺は変じゃない、ネーミングセンスがないだけだ。」
「いっしょじゃん。」
「一緒じゃねぇ。」
「えっと……。」
「セイラちゃん、他の人もダメって言ってないし、記入しちゃおう、どうせ、止まらないと思うし。」

 受付の彼女は苦笑しながらセイラに紙を差し出す。
 セイラは一瞬戸惑うがそれでも、彼らを見て溜息を零し、苦笑する。

「そうですね。」

 セイラから見ても、彼らは止まらないだろう、それならば、記入した方が時間を無駄にしなくても済むだろう。
 セイラはしっかりとした字で、「キセキ」と記入した。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

まったく知らない世界に転生したようです

吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし? まったく知らない世界に転生したようです。 何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?! 頼れるのは己のみ、みたいです……? ※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。 私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。 111話までは毎日更新。 それ以降は毎週金曜日20時に更新します。 カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...