僕がサポーターになった理由

弥生 桜香

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第一章

111 『裏サイド』

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「………本当に人は何でこんなにも醜いんだろう。」

 少年の言葉に背の高い彼は背後から少年を抱きしめる。

「いっそすべて壊すか?」
「まさか。」

 彼の言葉に少年は嘲笑を浮かべる。

「自滅するのに何で君が手を汚す必要があるの?」
「お前が望めばオレは何でもするぞ。」
「知っている。」

 抱きしめられる逞しい腕に手を添え、少年はそっと目を閉じる。

「君がボクの望みをかなえたいと思っているのは知っているよ、君はもっと自分中心で考えた方がいいじゃないか?」
「十分だろう。」
「全然だよ。」
「……………………で、何を考えていたんだ。」

 突然の言葉に少年はため息を零す。

「君は本当に……。」
「何がだ?」
「いいよ、大したことない話だし。」

 少年は手を振りこの話題は終わりだと、仕草で追い払う。

「……。」

 彼はまだなにか言いたげな顔をしていたが、少年の表情を見てこれ以上語る事はないのだと悟る。

「今日もまたあそこで人が死んだ。」
「……。」
「あいつらはボクたちを人だと思っていないだろうけどね。」
「…黄織。」
「彼らとは何の接点もなかったけど、それでも、彼らはボクたちと同じく生きている一人の人間なのに。」
「ああ。」
「何人死んだんだろう、彼らだってただ死ぬだけに生まれたわけじゃないのに。」
「……わりぃ。」
「………。」

 突然謝った彼に少年は何とも言えない顔で彼を見る。

 彼は何人もの同胞を灰にした。

 生きている同胞も、死んでいる同胞も。

 何人も、何十人も、何百人も。

 それを少年も彼の横で見ていた。

 初めて出会った時だって少年は彼が同胞を焼き殺しているところを見ていた。

 人体が焼ける嫌な臭いも。

 悲痛な叫び声も。

 必死で生にしがみ付こうとする目も。

 何もかもがこの体に記憶されている。

「もう誰も残っていないかもしれない。」
「……。」
「生きていても希望なんてない屍となっているかもしれない。」
「……。」
「ボクたちは彼らに行動できるのは今日明日じゃない、その間にどんなけもの血が流れるのかと思うと、正直怖いんだ。」
「黄織。」
「今突っ込んだところでボクたちが無駄に怪我を負って、そして、生き残った彼らの死に水を取るだけに終わってしまうだろう。」
「……そこまでひどくはないだろう。」

 彼の言葉に少年ははっきりと首を振る。

「これはかなりの確率になりえる未来だ、よくて数名動けているだろうけど、最悪はボクも君も死んでいる。」
「まさか。」
「あいつらはボクたちが逃げ出して確実に強化している。ちゃんとしたハッキングをしたいけど設備も何も何環境で正確なものは分からないけど、それでも、ちょっかいを多少出している限りでは確実だね。」

 少年の言葉に彼は忌々しそうに舌打をする。

「今ボクたちに必要なのはちゃんとした設備の整ったアジトを作る事。そして、助けた彼らをかくまう場所を複数確保する事。」
「何年かける気だ?」
「何年?」

 彼の言葉に少年はクスリと笑う。

「そんなにも時間をかけたら…ボクたちの負けだよ。」

 口角を上げ、死をも見据えた目が彼を射抜く。

「早ければ数か月、遅くとも今年度中には片を付ける。」
「可能なのか?」
「可能、不可能のはなしじゃないよ、やらないといけなんだよ。」
「……。」
「今のままだとそれも夢物語状態だろうけど。」
「あちこち転々としてたもんな。」
「お陰で色々分かったけどね。」

 少年はそう言うと、ある方角を見る。

「恨みなんてものはないけど、悪いけど利用させてもらうよ、空野紫織。」

 今頃温かい家庭でぬくぬくと暮らしているだろう男に対して少年は吐き捨ているように言う。

「恨むんならボクらを作った連中にぶつけてね。」
「……あいつの方は利用しないのか?」
「御神氷夏?」

 少年の言葉に彼はコクリと頷く。

「御神氷夏に関しては国の方も絡んでくるから、パスかな。
 その点、空野紫織なら一般人だし、それに、利用できる伝手が山のようにある。
 たとえ空野紫織が何か気づいたとしてもしっぽを掴ませない。
 こっちは生まれてからずっと裏で生きてきたからね。」
「そうか。」
「さーて、空野紫織はここまでたどり着けるかな?」

 家の明かり、会社の照明、さまざまなネオン、それらが星のように、宝石のように煌めく地上。

 それを少年と彼は誰も登ってこれないような場所から見下ろしている。

 そして、瞬く間に姿を消した彼らはまるで闇そのもののようだった。
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