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第一章
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「ん……。」
夢を見る事無く、体の痛みで目が覚めた。
目を開けるとぼやける視界の中で師範が小百合さんに怒られていた。
師範は僕が目を覚めたことに気づいていたのか、助けを求めるように僕にすがるような視線を向ける。
僕は少し考えまた目を瞑る。
どうせ小百合さんの怒っている理由が分からないのだろう、それなら僕が手を差し出す必要がないのだ。
もし、彼女の怒りの理由が分かっているのならば確実に僕が目を覚ます前に彼女の怒りは収まっているはずだから。
だから、この状態は師範の自業自得なんだ。
「ふぅ……紫織さん?」
「……。」
どうやら小百合さんも僕が起きていたことに気づいていたようだ。
「おはようございます。」
「おはよう…ございます?」
ニッコリと微笑んでいる小百合さんからよくない何かが発せられている。
「紫織さん、体は大丈夫ですか?」
「多少痛みますけど、大丈夫です。」
「聞き方が悪かったですね、どこが痛いですか?」
「……。」
ああ、これは素直に答えないと怒られるパターンだと僕は気づく。
「えっと、打ち付けた背中、後、師範の攻撃を受けたお腹で、後はところどころに出来ている擦り傷です。」
「分かりました、紫織さん脱いでくださいね?」
「えっ、でも…。」
「紫織さん?」
ニッコリと微笑む小百合さん。
「紫織さん。」
「はい。」
これは大人しく言う事を聞いた方がいいだろう。
僕は着ていた服を脱ぐ。
「……。」
小百合さんは僕の体を見て眉間にしわを寄せる。
「もう少し手加減をなさればいいのに。」
「それだと強くなれません。」
「相手が貴方だから青あざで済んでいるんですよ、そうじゃなければ骨折していても可笑しくない怪我ですからね。」
「それは……師範は僕だから。」
「それはないですよね?」
小百合さんはその笑っていない笑みを師範に向ける。
「う、うむ、だが…わしも……。」
「……。」
「いや。なんでもない。」
小百合さんの無言の圧力に師範は負けた。
「紫織さんも紫織さんです。」
「いつつ…。」
小百合さんは容赦なくけがを負った場所に痛みの強い消毒液を掛ける。
僕は涙目になりながらそれを見ていた。
「何を焦っているのですか。」
「……。」
「まるで自分を痛める事で何かを振り払うようですね。」
「……。」
「あの人を八つ当たりの道具にするのは構いませんが、そんなんで戦っていましたら勝てるものも勝てなくなりますよ。」
「冷静じゃなかったですか?」
「ええ、そうね。」
「……。」
はっきりと言う小百合さんに僕は先ほどの戦いを思い出す。
別段変わったところはなかったと思った。
普段通りだと思っていた。
そうじゃなかったのだろうか?
僕は師範を見る。
師範は顎に手を当て僕と同じように先ほどの戦いを思い出す、
「ふむ、変わらないように感じたが…、だが、言われてみればいつもの意外性のある攻撃もなかった。」
「意外性ですか?」
「それにすでに固執していただろう。」
「……。」
「まあいつもも頑固だが今日は酷かったようだな。」
「……。」
僕は額に手を当ててため息を零す。
どうやら僕はまだ昨日のアレを引きずっていたのかもしれない。
それが攻撃やら色々なものに出ていたようだ。
「本当に僕は弱いな。」
「自分の弱さを認めるのは良い事ですが、必要以上に自分を貶すのはよくありませんよ。」
「そんな事はしていませんよ。」
「……無自覚とはなんと罪深い事なんでしょう。」
頬に手を当て小百合さんはため息を零す。
「貴方のそれは長所であり、短所であります。」
「……。」
「過ぎた謙遜は嫌味です。」
「……。」
「すぐには理解できないのは仕方ないと思いますが、それでも、少しは胸に止めておいてください。」
「小百合さん。」
「さてと、料理教室はどうしますか?その怪我ですし今日は止めておきます?」
「いえ、やります。」
「分かりました。」
「国光さん、紫織さんをお借りしますので、しっかりと自分が壊したものを修理してくださいね?」
あたりを見渡すと戦っている時は気づかなかったが壁が傷ついていたり、悲惨な状態になっていた。
「あっ。」
僕はどうして小百合さんが起こっていた理由に気づいた。
まあ、僕をボロボロにのしたのが理由かと思っていたが、それにしては嫌に怒りのボルテージが上がっている事に違和感を覚えていた。
だけど、道場のこの状態を見て納得せざるを得ない。
僕も多少は攻撃を仕掛けたが、それでも、師範のみに攻撃をしていた。
つまりはこの悲惨な状態にしたのは師範だ。
いくら僕が避けただけとはいえこんなにも破壊するのはいかがなものだろうか。
「ほら、紫織さん、時間は有限ですので行きましょう?」
「は、はい。」
僕は小百合さんの後を追いながら道場を後にする、
その時普段よりも幾分か小さくなっている背中を見て可哀そうに少し思ったが、それでも、これは師範の自業自得なので僕は声をかける事はしなかった。
「小百合さん、本当に師範に任せてよかったのですか?」
「あの人の事ですから余計に酷くするようでしょうけど、まあ、それはそれです。」
「あの…僕が。」
「いいえ、大丈夫です、業者を呼びますから。」
「ああ、よかった。」
「あの人も本当に……。」
「あははは。」
小百合さんは僕が思っている以上に師範に苦労を掛けられているようだった。
翌日は師範たちのお陰で学校では特に問題なく過ごせたと思う。
それに、実技の方も今日は見る方だったので問題なく過ごせた。
こうやって平穏な時間が続くと思っていた。
だけど、裏では様々な事が蠢いていた。
この時の僕はその片鱗すら気づいていなかった。
夢を見る事無く、体の痛みで目が覚めた。
目を開けるとぼやける視界の中で師範が小百合さんに怒られていた。
師範は僕が目を覚めたことに気づいていたのか、助けを求めるように僕にすがるような視線を向ける。
僕は少し考えまた目を瞑る。
どうせ小百合さんの怒っている理由が分からないのだろう、それなら僕が手を差し出す必要がないのだ。
もし、彼女の怒りの理由が分かっているのならば確実に僕が目を覚ます前に彼女の怒りは収まっているはずだから。
だから、この状態は師範の自業自得なんだ。
「ふぅ……紫織さん?」
「……。」
どうやら小百合さんも僕が起きていたことに気づいていたようだ。
「おはようございます。」
「おはよう…ございます?」
ニッコリと微笑んでいる小百合さんからよくない何かが発せられている。
「紫織さん、体は大丈夫ですか?」
「多少痛みますけど、大丈夫です。」
「聞き方が悪かったですね、どこが痛いですか?」
「……。」
ああ、これは素直に答えないと怒られるパターンだと僕は気づく。
「えっと、打ち付けた背中、後、師範の攻撃を受けたお腹で、後はところどころに出来ている擦り傷です。」
「分かりました、紫織さん脱いでくださいね?」
「えっ、でも…。」
「紫織さん?」
ニッコリと微笑む小百合さん。
「紫織さん。」
「はい。」
これは大人しく言う事を聞いた方がいいだろう。
僕は着ていた服を脱ぐ。
「……。」
小百合さんは僕の体を見て眉間にしわを寄せる。
「もう少し手加減をなさればいいのに。」
「それだと強くなれません。」
「相手が貴方だから青あざで済んでいるんですよ、そうじゃなければ骨折していても可笑しくない怪我ですからね。」
「それは……師範は僕だから。」
「それはないですよね?」
小百合さんはその笑っていない笑みを師範に向ける。
「う、うむ、だが…わしも……。」
「……。」
「いや。なんでもない。」
小百合さんの無言の圧力に師範は負けた。
「紫織さんも紫織さんです。」
「いつつ…。」
小百合さんは容赦なくけがを負った場所に痛みの強い消毒液を掛ける。
僕は涙目になりながらそれを見ていた。
「何を焦っているのですか。」
「……。」
「まるで自分を痛める事で何かを振り払うようですね。」
「……。」
「あの人を八つ当たりの道具にするのは構いませんが、そんなんで戦っていましたら勝てるものも勝てなくなりますよ。」
「冷静じゃなかったですか?」
「ええ、そうね。」
「……。」
はっきりと言う小百合さんに僕は先ほどの戦いを思い出す。
別段変わったところはなかったと思った。
普段通りだと思っていた。
そうじゃなかったのだろうか?
僕は師範を見る。
師範は顎に手を当て僕と同じように先ほどの戦いを思い出す、
「ふむ、変わらないように感じたが…、だが、言われてみればいつもの意外性のある攻撃もなかった。」
「意外性ですか?」
「それにすでに固執していただろう。」
「……。」
「まあいつもも頑固だが今日は酷かったようだな。」
「……。」
僕は額に手を当ててため息を零す。
どうやら僕はまだ昨日のアレを引きずっていたのかもしれない。
それが攻撃やら色々なものに出ていたようだ。
「本当に僕は弱いな。」
「自分の弱さを認めるのは良い事ですが、必要以上に自分を貶すのはよくありませんよ。」
「そんな事はしていませんよ。」
「……無自覚とはなんと罪深い事なんでしょう。」
頬に手を当て小百合さんはため息を零す。
「貴方のそれは長所であり、短所であります。」
「……。」
「過ぎた謙遜は嫌味です。」
「……。」
「すぐには理解できないのは仕方ないと思いますが、それでも、少しは胸に止めておいてください。」
「小百合さん。」
「さてと、料理教室はどうしますか?その怪我ですし今日は止めておきます?」
「いえ、やります。」
「分かりました。」
「国光さん、紫織さんをお借りしますので、しっかりと自分が壊したものを修理してくださいね?」
あたりを見渡すと戦っている時は気づかなかったが壁が傷ついていたり、悲惨な状態になっていた。
「あっ。」
僕はどうして小百合さんが起こっていた理由に気づいた。
まあ、僕をボロボロにのしたのが理由かと思っていたが、それにしては嫌に怒りのボルテージが上がっている事に違和感を覚えていた。
だけど、道場のこの状態を見て納得せざるを得ない。
僕も多少は攻撃を仕掛けたが、それでも、師範のみに攻撃をしていた。
つまりはこの悲惨な状態にしたのは師範だ。
いくら僕が避けただけとはいえこんなにも破壊するのはいかがなものだろうか。
「ほら、紫織さん、時間は有限ですので行きましょう?」
「は、はい。」
僕は小百合さんの後を追いながら道場を後にする、
その時普段よりも幾分か小さくなっている背中を見て可哀そうに少し思ったが、それでも、これは師範の自業自得なので僕は声をかける事はしなかった。
「小百合さん、本当に師範に任せてよかったのですか?」
「あの人の事ですから余計に酷くするようでしょうけど、まあ、それはそれです。」
「あの…僕が。」
「いいえ、大丈夫です、業者を呼びますから。」
「ああ、よかった。」
「あの人も本当に……。」
「あははは。」
小百合さんは僕が思っている以上に師範に苦労を掛けられているようだった。
翌日は師範たちのお陰で学校では特に問題なく過ごせたと思う。
それに、実技の方も今日は見る方だったので問題なく過ごせた。
こうやって平穏な時間が続くと思っていた。
だけど、裏では様々な事が蠢いていた。
この時の僕はその片鱗すら気づいていなかった。
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