【完結】パンでパンでポン!!〜付喪神と作る美味しいパンたち〜

櫛田こころ

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第36話 クロワッサン生地

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 クロワッサンの生地は。

 最初は粉を混ぜて……固くなるまで混ぜて。

 次に、生地に『おりこみ』のバターを入れるんだって……美濃みのさんは教えてくれたんだけど。


「……美濃さん。これ、大丈夫?」


 バターを入れるって言っても……ほとんど板だわ。

 焼いたら、すごいことになる気がするんだけど。


『無論。サクサクのために、この折り込みをきちんとせねばならん』

「どろどろにならない?」

『ふむ。では、桜乃さくの。父御……涼太りょうたの作るクロワッサンはどうじゃ? サクサクで美味じゃろう?』

「……おいしい」


 おとうさんのパンは……おいしい。

 全部、全部おいしい!!

 クロワッサンもサックサクだったわ!!


『要……大事なのが、このバターじゃ。まずは、あちきと同じようにしてくりゃれ』

「はーい」


 美濃さんは、うすーく切ったバターを……広げた生地にのせて、すぐにたたんだわ。


『ここを手早くせねば、サクサクの生地にならぬ』

「そうなの?」

『うむ。ぶにょぶにょした焼き上がりになることは、ここで生地をゆるませてしまうのが多い』

「へー!」


 サクサクするために大事なのは……そういうことなんだ!!

 だから、手袋をした手でパタパタとたたんでいったわ! 全部の生地に、バターをおりこんでいって……次に、バターをまた大きく切って。


『ここで生地を重ねるのじゃ』


 まとめた生地を……一緒にしちゃうの?


「一個にするの?」

『うむ。最終的にひとつにまとめるのじゃ』

「……違うのじゃなくて?」

『サクサクにするのに大事なのはな? 『層』じゃ』

「そう?」

『折り紙で遊んだことはあるか?』

「え、おりがみ?」


 遊んだことがあるから、うんとは首を縦に振ったわ。

 美濃さんは、ふふっと笑顔になって……生地をまとめたのよね?


『あれが幾重……何枚も重なっておるじゃろう? クロワッサンのサクサクの正体はそれよ』

「何枚も?」

『折りたたんで、薄くして……また重ねる。そうすることで、一枚の生地になるのじゃ』

「??」


 全然よくわかんないや……。

 けど、美濃さんは怒ったりせずに……生地をどんどん重ねていく?

 で、ラップして……あたしとハイタッチしたわ。


『桜乃。ここで、時間短縮クイックじゃ』

「ここで?」

『普通にクロワッサン生地を作ると……普通のパン以上に時間がかかるのじゃよ』

「はーい!」


 そう教えてもらったので、あたしは『時間短縮クイック』って声を出したの!!

 すると……ふくらんだりはしなくて、そのままだったのよね??


『これを……機械があればいいのじゃが』


 今はこれで……と、美濃さんが長いめん棒でぺちゃんこにしちゃった。
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