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19-1.恋の相談(チェスト視点)
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マールじゃないけど、えらいこっちゃと思うしかなかった。
「……え、マジ?」
「そうとしか思えんのだ!」
なにがあったかと言うと、クロの屋敷に来ていつもどおりにポーションを受け取りに来ただけなのに。
ちょっと来いと、クロに調合室まで引っ張って来られて、相談に乗って欲しいと言われたのだ。
しかも、セリカちゃんのことについて。
僕はマールから、二人が思い合っていることは聞いてたけど……ここまで重症だったとはね?
とりあえず、調合室まで引っ張られて押し込められた直後に、『セリカが俺様のことを好いてくれてるかもしれん!』って、ドヤされた時はびっくりしたよ?
「ふーん、へー? 僕は他のホムンクルスのこととかはよく知らないけど。それ、君が主人だからじゃないの?」
「そうは言っても、普段無表情に近いんだぞ? 感情を露わにしないアレが、いきなりとは言え俺様に笑顔を向けるか?」
「へーえ?」
いったいどんな笑顔? どんなの? と聞くと、だいぶ痩せてほとんど元通りになってきたクロの表情といえば、りんごのように真っ赤っか!
ああ、この表情を元取り巻き軍団の女の子達が知ったら、取り乱すだけですまないだろうけどー?
早く早く、と言えば、クロはおずおずって感じに口を開いた。
「……この上ない、極上の微笑みだった」
「……へ、へぇ」
あの綺麗な無表情から、そんな表情が?
マールの影響で、少なからず僕らも綺麗なものに対する目は肥えているとは言え。
クロの口から、そんな言葉が出るとは思わなかった。極上って、あの綺麗でも無表情が普通のセリカちゃんから?
取り巻きの女の子達には絶対言わなかった、最上級の褒め言葉。
しかも、今顔を最大にまで赤らめながら口にしているのが、あの俺様であるクローム=アルケイディスがだよ?
初恋もまだ済ませていなかったクロが、恋する女の子のようにもじもじしながら好きな相手のことを口にしてるんだよ?
僕はたまたまお互いが思い合っていることを知ってるからって。
どうすればいいんだよ、これ!?
なんで、今日はマールが一緒じゃないんだ!
って、第二王子とディスケットの捕物計画の進行に関わっているからだーけーど。
それも、まだクロには言えないからね? 国家機密並の事態になっちゃったから。
なら、こっちはこっちでクロの恋の進展について手伝おうじゃないか。
「まさか……まさか、とは思っていたが。俺様は創造主だ。ひなの刷り込みのように思わせているかもしれないと思ってもいたんだ!」
「まあ、そうだねー? けど、開口一番に『醜い』って言われて、ほとんど強制的に減量生活強いられていたんでしょ? それだけで聞くと、どこが? って僕も思うし」
「だが……だが、あの笑顔は違った!!」
「ふーん……他に何かあった?」
「他……」
「あったんだ?」
何々? と近づいて、つんつんほっぺを指でつつくと、赤いままのクロの顔が、耳まで赤くなった。
「……まだ気持ちを自覚する前に。笑顔とか、表情を見せろと言ったら」
「言ったら?」
「髪に口づけられた!」
「ぶふぅ!?」
な、何気に大胆な行動をするんだね!?
ま、まあ、好きな相手がなんか見せてみろとか言われたら……親愛を見せるのに、いきなり髪にでもキスする?
いや、まあまあ、好きだから?
とは言え、セリカちゃんの顔と行動が一致してないとは。
「あの無表情から、極上の微笑みを浮かべたんだぞ? もうこれは……と期待半分思わずにいられないじゃないか!?」
「聞いてみたらー? てか、告白しないの!?」
「元に戻るまではしないと決めている!!」
「もう、ほぼ戻っているじゃーん?」
「まだ10キロ近く痩せていない!!」
「律儀~?」
それに、クロのひねくれてた性格をここまで変えちゃうのは、セリカちゃんのお陰だ。
無表情とは言え、真面目で厳し過ぎるところはあるけど。クロの胃袋を掴むくらい、美味しい料理を作っては家事全般を担当したり……って、あれ?
ホムンクルスとは言え、これってほぼほぼお嫁さんと変わりない?
「……お前は、セリカから何か聞いているか?」
「うーうん? ポーション納品以外、あんまり話さないし」
「そう、か。であれば、マールか」
「面白がって、色々計画立てられるよ?」
「う、そうだった……」
今日は来てないけど、クロのことはともかく、セリカちゃんのことは応援してたし。
まあ、僕もクロのことは応援しないわけじゃないけど、幼馴染みとしてはこの上なく良いことだと思っている。
街にいた頃は、腐れ縁ってことで色々巻き込まれはしたけど、今のクロは一人前の人間のように相手を気遣えている。
告白もケジメがついてからって、ほんと珍しく律儀な性格になっちゃってー?
他にも、ビーツとかの件もあったからのだろうけど……クロにはビーツの秘密はまだ言えない。
セリカちゃんを想っているなら、なおのこと。
「僕も彼女とかいないけど~。まあ、君よりは経験もあるし、相談には乗るよ~?」
「く、頼んだ」
「うぃー」
これで相談はひと段落ついたけど、帰る前に一度セリカちゃんの様子を見よう。
クロには隠れて、こっそり洗濯置き場に行くと、普通の女の子のようにワンピースを着ているセリカちゃんは甲斐甲斐しく大きなシーツを畳んでいるところだった。
「セーリカちゃん」
「……なんでしょう?」
僕が挨拶しても、無表情で軽く会釈されただけだった。
うん、確かにこれが普通ならクロも自分に好意を持たれているのか自信ないのもわかるね?
「君にちょーっと聞きたいことがあってさ?」
「はい?」
「マールに聞いちゃったんだけど、君クロが好きなんだって~?」
「!……マールドゥ、さん!」
あ、すごい。
あれだけ、顔色ひとつ変えなかったのに、赤くなったり青くなったりしてる。ちょっと面白ーい!
「大丈夫。あいつも、一人で抱えているよりはって。同じ幼馴染みの僕にも相談してきただけだよ。クロには言ってないから」
「そ、う……ですか」
「本当なら、僕も一緒に応援するよー? あそこまで、中身や外見を変えてくれたのは他でもない君だしー?」
「え?」
「ホムンクルスだからって、主人に恋慕しちゃいけないとか国では決まりもないしー? 遠慮なくクロを好きでいてよー」
「えと……それだけを言いに?」
「うん。何かクロについて聞きたいことがあれば、僕やマールに聞いていいから」
「あ、りがとう……ござい、ます」
うんうん、照れてる顔も初々しいねー?
マールにももう一度確認は取りたいし?
第二王子との件が無事に終わって、クロの姿も元に戻ったら。
あいつはセリカちゃんに、婚約の申し込みでもしそうだ。その時は目一杯お祝いしなきゃね!
だから、例の件は絶対解決しなくちゃ!
セリカちゃんと別れて、もう一度クロに帰ることを告げてから僕は荷馬車に乗って街へ戻ることにした。
「けど……王太子殿下まで乗り気、となると」
約二週間前の、あのいきなりの登場には僕は今でも驚きを隠せなかった。
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