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第68話 炊き出し弁当??
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「……ベントー? 炊き出しを??」
衣服錬成の任務をちょうど終えたところで、連絡版の方から新しい任務が。
次はスープやパンではなく、『定食』を決まった容器に入れて『弁当』にするという新しい試みだった。
その容器はゴミなどを肥料に加工したものから錬成するようで、ポイ捨てのゴミにしてもまた土にかえるという優れもの。気になるなら、回収してまた肥料にと加工すればいい。
とりあえず、収穫してもしても止まらない『畑の恵み』を腐らせないためにも、との注意書きがあったので、これにはクルスも頷けた。
「……たしかに。腐ったいうか、変にデカいのはどうしようか悩んだしな?」
熟し過ぎたものは変色しかけているものもあったので、勘ではあったが収穫していない。それらを無駄にしないようにするには、優先的に収穫して『調理』しなくてはいけないのだろう。まだ炊き出しの日程はリーナとも決めていないので、彼女と打ち合わせすることにした。昼と夜の食事だけは、なんだかんだでいっしょに食べるのが最近の日課なのだ。
「そうだね~。あたしたちだけじゃ食べきれないのは毎回だし? ここの敷地にほかの人たち入れれないなら……売ることも出来ないもんね?」
「せや。それはまだ時期やないと思う」
いくら、外の方で知人が出来たといえど。まだギルマスだというルドガーにもここでのことは打ち明けない方がいい気がした。
『姿の無い上司』『豊富な資源』『形の変わる家』とかを、打ち明けていいかどうかの基準にはまだ満たしていないと思うからだ。
「急がなくていいもんね~? けど、どの『定食』をお弁当にする? あたしは『トンカツ定食』やりたいなー」
「ほな。それは譲るわ。俺は『カラアゲ定食』もろていい?」
「もっちろん!」
とにかく今は、連絡版からの指示で新しい『炊き出し』をしなくてはいけない。それぞれが今日まで『レシピ本』から知り得た『定食』で自分の味見も兼ねて作っていくことにした。リーナはまだ若い分こってりしたものが好みらしい。
少しばかり興味のある娘の好きな食事を知ったときは咳払いしたくはなったが、子ども扱いくらいは止めようと踏み込むのを堪えた。
今日の夕方前には出来上がるように用意しようとリーナは自宅に戻っていき、ひとりだけになるとやはりいくらかの寂しさが出てくる。
「……はよ、作ろ」
まずは、容器。一見木に似た薄い素材だったが、フォークやスプーンまで用意されていた。『加工室』とネームプレートがある部屋に、と指示があったので……そこに行けば既に用意されていたのだ。錬成などで自分が加工したと思わせるような細工に、これなら言い訳がつくかとギルマスへの説明も考えておく。
容器の使い方は、『コメ』をある程度詰めたあとに、主菜や副菜を詰めていくのが『簡単』とも連絡版に書いてあった。見た目が良いように詰めれるかはわからないが、それくらいならクルスにでも出来そうだ。
「よっしゃ。詰めていくもんは出来た!!」
弁当は『熱々』を提供するのが少し難しい。と、これも連絡版に書いてあったが。少し冷まして『適温』とやらでほかの食材との温もりを均一にすると美味しさを損なわなくするそう。
カラアゲ以外の揚げ物もある程度冷ましてから、フォークなどを器用に扱って『詰めて』いく。自分で独り占めする必要はないし、これは炊き出し用の弁当なのだから。リーナも今同じように作業していると思うと、いっしょに作った方が楽しいような……の気がしてきて、ふいに、『ああ』と納得している自分がいることにようやく気が付けた。
「……結局。理由つけまくって、引き離そうにも出来へんな?」
最初の炊き出しの時から。
隣接した塀から、邪魔すると扉を開けて目が合った時から。
あの、くるくる表情が変わる愛くるしい女の部分を見た時から。
結局のところ、『惚れてない』と線引きする理由にはならなかったようだ。実に単純思考でしかないが、クルスへの好意を今はひた隠しにしていないところも可愛くて仕方がない。
「クーちゃぁん! こっち終わったよー」
そして、この遠慮のなさな行動も受け入れている時点で、『落ちた』と言葉にせずとも再認識した。
「おー。こっちも終わるで」
「あと運ぶだけかな? ね、ね! 第一号はクーちゃんに!!」
「ほ? ええの?」
「うん。食べて欲しいなぁ」
お互い明確な『好意』を口にしていないが、これはこれで逃げ延びた上での生活には……もったいないくらいの再スタートだ。リーナが手に持っていた『トンカツ弁当』とそれなら交換しよう、とクルスもちょうど出来上がっていた『カラアゲ弁当』を交換した。
炊き出し前に、まずは腹ごしらえしなくてはいけないのでちょうどいい理由にして。
返事、なるものを言えていないのは、やはり、クルスがまだ恋情には『臆病な』ところがあってうまく前に進めないのだった。
衣服錬成の任務をちょうど終えたところで、連絡版の方から新しい任務が。
次はスープやパンではなく、『定食』を決まった容器に入れて『弁当』にするという新しい試みだった。
その容器はゴミなどを肥料に加工したものから錬成するようで、ポイ捨てのゴミにしてもまた土にかえるという優れもの。気になるなら、回収してまた肥料にと加工すればいい。
とりあえず、収穫してもしても止まらない『畑の恵み』を腐らせないためにも、との注意書きがあったので、これにはクルスも頷けた。
「……たしかに。腐ったいうか、変にデカいのはどうしようか悩んだしな?」
熟し過ぎたものは変色しかけているものもあったので、勘ではあったが収穫していない。それらを無駄にしないようにするには、優先的に収穫して『調理』しなくてはいけないのだろう。まだ炊き出しの日程はリーナとも決めていないので、彼女と打ち合わせすることにした。昼と夜の食事だけは、なんだかんだでいっしょに食べるのが最近の日課なのだ。
「そうだね~。あたしたちだけじゃ食べきれないのは毎回だし? ここの敷地にほかの人たち入れれないなら……売ることも出来ないもんね?」
「せや。それはまだ時期やないと思う」
いくら、外の方で知人が出来たといえど。まだギルマスだというルドガーにもここでのことは打ち明けない方がいい気がした。
『姿の無い上司』『豊富な資源』『形の変わる家』とかを、打ち明けていいかどうかの基準にはまだ満たしていないと思うからだ。
「急がなくていいもんね~? けど、どの『定食』をお弁当にする? あたしは『トンカツ定食』やりたいなー」
「ほな。それは譲るわ。俺は『カラアゲ定食』もろていい?」
「もっちろん!」
とにかく今は、連絡版からの指示で新しい『炊き出し』をしなくてはいけない。それぞれが今日まで『レシピ本』から知り得た『定食』で自分の味見も兼ねて作っていくことにした。リーナはまだ若い分こってりしたものが好みらしい。
少しばかり興味のある娘の好きな食事を知ったときは咳払いしたくはなったが、子ども扱いくらいは止めようと踏み込むのを堪えた。
今日の夕方前には出来上がるように用意しようとリーナは自宅に戻っていき、ひとりだけになるとやはりいくらかの寂しさが出てくる。
「……はよ、作ろ」
まずは、容器。一見木に似た薄い素材だったが、フォークやスプーンまで用意されていた。『加工室』とネームプレートがある部屋に、と指示があったので……そこに行けば既に用意されていたのだ。錬成などで自分が加工したと思わせるような細工に、これなら言い訳がつくかとギルマスへの説明も考えておく。
容器の使い方は、『コメ』をある程度詰めたあとに、主菜や副菜を詰めていくのが『簡単』とも連絡版に書いてあった。見た目が良いように詰めれるかはわからないが、それくらいならクルスにでも出来そうだ。
「よっしゃ。詰めていくもんは出来た!!」
弁当は『熱々』を提供するのが少し難しい。と、これも連絡版に書いてあったが。少し冷まして『適温』とやらでほかの食材との温もりを均一にすると美味しさを損なわなくするそう。
カラアゲ以外の揚げ物もある程度冷ましてから、フォークなどを器用に扱って『詰めて』いく。自分で独り占めする必要はないし、これは炊き出し用の弁当なのだから。リーナも今同じように作業していると思うと、いっしょに作った方が楽しいような……の気がしてきて、ふいに、『ああ』と納得している自分がいることにようやく気が付けた。
「……結局。理由つけまくって、引き離そうにも出来へんな?」
最初の炊き出しの時から。
隣接した塀から、邪魔すると扉を開けて目が合った時から。
あの、くるくる表情が変わる愛くるしい女の部分を見た時から。
結局のところ、『惚れてない』と線引きする理由にはならなかったようだ。実に単純思考でしかないが、クルスへの好意を今はひた隠しにしていないところも可愛くて仕方がない。
「クーちゃぁん! こっち終わったよー」
そして、この遠慮のなさな行動も受け入れている時点で、『落ちた』と言葉にせずとも再認識した。
「おー。こっちも終わるで」
「あと運ぶだけかな? ね、ね! 第一号はクーちゃんに!!」
「ほ? ええの?」
「うん。食べて欲しいなぁ」
お互い明確な『好意』を口にしていないが、これはこれで逃げ延びた上での生活には……もったいないくらいの再スタートだ。リーナが手に持っていた『トンカツ弁当』とそれなら交換しよう、とクルスもちょうど出来上がっていた『カラアゲ弁当』を交換した。
炊き出し前に、まずは腹ごしらえしなくてはいけないのでちょうどいい理由にして。
返事、なるものを言えていないのは、やはり、クルスがまだ恋情には『臆病な』ところがあってうまく前に進めないのだった。
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