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第70話 弁当納品に関して
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ルドガーは最近知り合ったばかりの、『クルス』と『リーナ』の能力が計り知れないと思っていた。
国の崩壊と共に、市場とかが機能しなくなる手前まで街も被害をこうむったというのに。ある日突然現れた『関所』。攻撃を加える連中がいても、頑丈なまでに出来ていたそれはどんな武器も魔法も通さない。
なのに、十日以上前にそのうちのひとつが『開いた』のだ。中から出てきたのは荷車を引いた中年くらいの男。ルドガーより痩せているが、なにか訓練を受けていたのかで荷車を引く力はまあまあ強い。
それが『クルス』であり、混乱していた民らへ『炊き出し』を無償でするなど……誰の差し金かにしても、やはり関所が邪魔で詳しいことがわからない。それにもうひとりの『リーナ』は若々しいにも関わらず、クルスよりも賢いことが顔を見てすぐにわかるほど。
しかし、リーナはクルスを優先するばかりで自分は日陰者だというような行動をするだけだ。
そんなふたりと接触するのに、少しばかり様子を見ていたが。三回目の炊き出しでやっとこさギルマスだと打ち明ければ、『遅い』と言わんばかりの対応をリーナには取られた。こればかりは性分と役職の関係もあるからと説き伏せたが。報奨金も無理にクルスへ握らせたので、一応の謝罪は受け入れてもらったのだ。
そして、四回目の今回。
今までにない『炊き出し』の仕込みに口を大きく開けてしまいそうになった。
「……なんだ? これは」
「弁当、やけど」
「いや……弁当?」
主食はパンではなく、穀物の『コメ』。主菜以外に副菜まで。スープは今回もきちんと別で用意してくれているが……それぞれを『容器』とやらにまとめている入れ物の意味が不明だ。錬金術で加工したような風体ではあるものの、食器についても似た素材で『可燃』ができるなどと……正直言って意味が分からない。
これもまた、クルスらの上司が整えさせたにしても『都合が良過ぎる』代物ばかり。炊き出しは基本、パンとスープで軽く腹に溜まるくらいしか出来ないが……この仕組みをギルドが整えれば、まだ資金がある国民たちに行き渡らせることくらい簡単な所業と同じだ。
とはいえ、これは一度使用すると洗えば使い物にならない仕組みらしく。それだと買取は不可かと残念に思うしかない。
「ざっと、ふたりで百人前くらいは作ってきました」
「あたしたちへの賃金は安くていいよ~? こっちはほとんど慈善事業と同じだし」
「いやいやいや!? それはちょっと待ってくれ!! こんな……こんな、素晴らしい品を?」
「と言っても、なあ?」
「うちらにとっちゃ、普通だし」
「……お前たちはなんかの使節団か?」
「「全然」」
「……はあ」
ともあれ、二百人分であれば周辺の炊き出しには事足りるだろう。出来立て温かではなくとも、受け取りに来る国民は多いはず。冒険者ギルドの方も今は魔獣発生が多発だと立て込んでいるため、こちらの職員で炊き出しを回せば問題はない。
だが、毎回このやり取りで生産ギルドがこのふたりを放っておくわけにはいかない。ルドガーは前々から用意していたカードを二人の前に差し出した。
「おん?」
「ギルドカード??」
「生産ギルドの『職員』に匹敵するレベルのものだ。お前たちにはそれくらいの能力があると、今日で納得出来たよ」
「いいのー? こんなのもらって。炊き出ししか出来てないのに」
「おん」
「十分だ。むしろ、職員と認知された方が国民たちも気軽に近づけれるだろう。首から下げれるチェーンもあるだろう? 炊き出しの時に目立つようにつけてくれ」
「あーね」
「そんなら、怪しまれへんと?」
「そういうことにしてくれ。容器については……洗いまわしじゃない方がいいのか?」
「これ、ゴミをベースに作ったものだから」
「ばっちくはないけど、よくないと思わん?」
「……それなら、処分できるようにした方がいいな」
ギルドの解析班に預けてもいいか聞けば、さすがにちょっと待ってくれと二人が唸った。やはりそこは向こうの上司の命令があるからということで、一旦保留。だが来たからにはと、それぞれ炊き出しの準備に行こうと言い出した。
(仲が良いようだが、恋仲なのか微妙な距離感だな?)
そこは本人たちの問題なので、ルドガーも炊き出しを手伝おうと防寒着をまとう。外は相変わらずの極寒そのものだが、荷車の跡を辿ってきたのか自分たちでは食事が不可能な国民らが集まってきていた。
ここはギルマスらしく、クルスらの前に出て『炊き出し』の開始を告げたが注意すべきことをきちんと告げれば。疲弊していた彼らの顔が少しばかり笑みに変わるのが見えて安心出来た。やはり、クルスらの普段使う食材とやらの調達方法から考えたかった。
このままでは、国民たちがどんどん集まってきて炊き出しどころでは『元通り』の生活など不可能とみた。彼らの上司がどんな人物かは介入できないが、交渉の人間がいるだけでもマシな方だ。
今回の弁当をひとつひとつ手渡し、ゴミの回収を頼む。特に手際の良いリーナの横顔を見ると、どこかで垣間見た記憶があったものの……思い出せなかった。
国の崩壊と共に、市場とかが機能しなくなる手前まで街も被害をこうむったというのに。ある日突然現れた『関所』。攻撃を加える連中がいても、頑丈なまでに出来ていたそれはどんな武器も魔法も通さない。
なのに、十日以上前にそのうちのひとつが『開いた』のだ。中から出てきたのは荷車を引いた中年くらいの男。ルドガーより痩せているが、なにか訓練を受けていたのかで荷車を引く力はまあまあ強い。
それが『クルス』であり、混乱していた民らへ『炊き出し』を無償でするなど……誰の差し金かにしても、やはり関所が邪魔で詳しいことがわからない。それにもうひとりの『リーナ』は若々しいにも関わらず、クルスよりも賢いことが顔を見てすぐにわかるほど。
しかし、リーナはクルスを優先するばかりで自分は日陰者だというような行動をするだけだ。
そんなふたりと接触するのに、少しばかり様子を見ていたが。三回目の炊き出しでやっとこさギルマスだと打ち明ければ、『遅い』と言わんばかりの対応をリーナには取られた。こればかりは性分と役職の関係もあるからと説き伏せたが。報奨金も無理にクルスへ握らせたので、一応の謝罪は受け入れてもらったのだ。
そして、四回目の今回。
今までにない『炊き出し』の仕込みに口を大きく開けてしまいそうになった。
「……なんだ? これは」
「弁当、やけど」
「いや……弁当?」
主食はパンではなく、穀物の『コメ』。主菜以外に副菜まで。スープは今回もきちんと別で用意してくれているが……それぞれを『容器』とやらにまとめている入れ物の意味が不明だ。錬金術で加工したような風体ではあるものの、食器についても似た素材で『可燃』ができるなどと……正直言って意味が分からない。
これもまた、クルスらの上司が整えさせたにしても『都合が良過ぎる』代物ばかり。炊き出しは基本、パンとスープで軽く腹に溜まるくらいしか出来ないが……この仕組みをギルドが整えれば、まだ資金がある国民たちに行き渡らせることくらい簡単な所業と同じだ。
とはいえ、これは一度使用すると洗えば使い物にならない仕組みらしく。それだと買取は不可かと残念に思うしかない。
「ざっと、ふたりで百人前くらいは作ってきました」
「あたしたちへの賃金は安くていいよ~? こっちはほとんど慈善事業と同じだし」
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「と言っても、なあ?」
「うちらにとっちゃ、普通だし」
「……お前たちはなんかの使節団か?」
「「全然」」
「……はあ」
ともあれ、二百人分であれば周辺の炊き出しには事足りるだろう。出来立て温かではなくとも、受け取りに来る国民は多いはず。冒険者ギルドの方も今は魔獣発生が多発だと立て込んでいるため、こちらの職員で炊き出しを回せば問題はない。
だが、毎回このやり取りで生産ギルドがこのふたりを放っておくわけにはいかない。ルドガーは前々から用意していたカードを二人の前に差し出した。
「おん?」
「ギルドカード??」
「生産ギルドの『職員』に匹敵するレベルのものだ。お前たちにはそれくらいの能力があると、今日で納得出来たよ」
「いいのー? こんなのもらって。炊き出ししか出来てないのに」
「おん」
「十分だ。むしろ、職員と認知された方が国民たちも気軽に近づけれるだろう。首から下げれるチェーンもあるだろう? 炊き出しの時に目立つようにつけてくれ」
「あーね」
「そんなら、怪しまれへんと?」
「そういうことにしてくれ。容器については……洗いまわしじゃない方がいいのか?」
「これ、ゴミをベースに作ったものだから」
「ばっちくはないけど、よくないと思わん?」
「……それなら、処分できるようにした方がいいな」
ギルドの解析班に預けてもいいか聞けば、さすがにちょっと待ってくれと二人が唸った。やはりそこは向こうの上司の命令があるからということで、一旦保留。だが来たからにはと、それぞれ炊き出しの準備に行こうと言い出した。
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そこは本人たちの問題なので、ルドガーも炊き出しを手伝おうと防寒着をまとう。外は相変わらずの極寒そのものだが、荷車の跡を辿ってきたのか自分たちでは食事が不可能な国民らが集まってきていた。
ここはギルマスらしく、クルスらの前に出て『炊き出し』の開始を告げたが注意すべきことをきちんと告げれば。疲弊していた彼らの顔が少しばかり笑みに変わるのが見えて安心出来た。やはり、クルスらの普段使う食材とやらの調達方法から考えたかった。
このままでは、国民たちがどんどん集まってきて炊き出しどころでは『元通り』の生活など不可能とみた。彼らの上司がどんな人物かは介入できないが、交渉の人間がいるだけでもマシな方だ。
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