ポイ活で、異世界ファームを育成しよう!

櫛田こころ

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第111話 こっちの『ナツ』

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 三富夏奈は、寒さで凍えそうになったが身体も頭も動けないでいた。


「看護師さん!? どーなってんの!!?」


 数日前は、叫べば『はいはい』と言わんばかりに来てくれたと言うのに。点滴が外れ、拘束器具はそのままで食事以外は寝ていなくてはいけない入院状況にはなったものの。

 年度が変わり、それでも眠くないだろうとうつらうつらしていた夏奈は空調が聞かなくなってきたことに違和感を覚え、もう十分以上は叫び続けている。空気穴や小窓からいつもは聞こえる看護師らの声が一切聞こえないのだ。

 おまけに、『あーあー』などと騒いでいた患者の声も、まったくと言っていいくらい聞こえない。

 病棟特有の対応はともかく、セキュリティで監視カメラも設置されているはずの部屋を……しばらくでも放置プレイはよくないと思う。もしくは、ほかの患者の症状が悪化したとかで対応しているのか。

 叫び続けた結果、その考えに行き着けた夏奈は少し落ち着こうと息を吐く。

 左右、胴体、足に拘束させられ、トイレに行けないようにカテーテルも装着されているのは……夏奈が起こした症状への対策だとしても。ここ数日は食事のときだけは片手でも外してくれるので、少しは質疑応答も出来るようになってきた。

 けど、冬場にしては薄い防寒対策でしかないので、今の凍えてしまうくらいの冷気には到底布団では耐えきれそうにない。それをなんとかしてほしいのに、肝心の看護師が誰も来ないのだ。


「……あ~、もぉ! 暴れてたときの記憶は曖昧。変な記憶と混ざって、住んでたとこめちゃくちゃにしてたとか……あんまり覚えてないけど。謝罪はいくらでもするから!! とにかく、今めっちゃ寒いの!!」


 毛布を何枚どころか、こたつに入りたいくらいに寒くて堪らない。叫んでも意味がないとなれば、ぎりぎり動ける範囲でうずくまるしかできないだろう、だが、この状況はいくらなんでも変過ぎる。空調が壊れて寒いなら、ほかの患者たちも目が覚めて叫ぶはずなのに。


「……なに? あの変な夢?というか、並行世界って感覚が間違ってなければ……外がおかしくなったの??」


 四日前に意識が少し落ち着いたところで、医師には告げていない『秘密』があった。夢と同じようで現実的な感覚に陥っていた『SF世界』のようなそれ。

 身体がない代わりに、精神体のみで行き来していたのを夏奈は記憶を繋ぐためにゆっくりと思い出していたのだ。医師に質問されながらも、自宅でなにをしていたのとか。警察と救急隊を困らせる言動と行動をしていたのは、現実と相対する世界にリンクしていたからわからなかったのだ。

 それを医師に告げたとて、『幻想』『幻聴』だと判断されるのは簡単だ。態と告げずに、身体面の回復のために大人しくはしていたが、感覚としては現実味がなさ過ぎてうつらうつらしていると……『あちらへ』呼ばれるような感覚が強くなっていく。

 もしかすると、『今』もそうなのか。

 それにしては、身体面の感覚が鋭くなって凍えそうなのはそのままだが。


「……えーっと?? いくつかの並行世界があって。あたしがよく行き来していたのは、こんくらい寒い場所。最近覚えているのだと、一組の男女がその土地をゲームのように開拓してから……結ばれたんだっけ??」


 曖昧だが、まあまあ覚えているにしてはリアリティが凄くて何度も目を覚ましたような気がした。間に看護師が何度か身体を揺すって起こしてくれたが、27日の日以降についてはあんまり騒がないようにして来たのだ。

 今回は、それを大幅に無視するくらい寒くて耐えられないのだけれど。


『なーんだ。藍葉には劣るが、結構しゃっきり起きてんな?』


 また幻聴かと思ったが、看護師にしては聞いたことがない声。

 きょろきょろと動く頭だけで探せば、ベッドのサイドにもたれかかっている『誰か』がいたのだが……暗くても、少し透けているようなのがわかった。

 ドアを開けた形跡もないのに、どうやって入ってきたのだろう。ここは窓も固定されて開けることは不可能なのに。


「……だ、れ?」
『ん? 向こうでのお前にとっちゃ、パートナー』
「向こう?」
『ナツとか呼ばれてたのが……反対側のお前だ、夏奈』
「……夢、の続き?」
『これが夢じゃないんだよなあ? いわゆる、ファンタジーまじり? 俺、一応神だし』
「はい?」
『とりあえず、無事は確認出来たし。……入れ替わるか、お互い』


 パチン、とその男が指を鳴らした途端。夏奈の意識は、また『並行世界側』へと移動させられたのがわかった。暗い暗い底のような場所に、自分と同じ顔をした『神』がいたのだから。
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