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第二章 小森の場合①

第4話『二十歳の誕生日会料理』②

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 まずは、唐揚げ。

 つなぎに卵を使っているのでしっとりした仕上がりだが……ニンニクと生姜のパンチは効かせているので、れいが大口で美味しそうに食べてくれたから感想がなくても嬉しかった。


「おいひー! おいひいよー!!」


 泣きはしなかったが、目尻がどんどん緩んでいくのも可愛かった。


「ささ、姫よ。次はせっかくだからライスコロッケも」

「ふふふ、とくとしんぜよう!!」


 箸だと持ち上げにくいので、フォークを渡して刺すように頼んだ。完全に球体ではないが、コロッケはコロッケでも米を使っているので重たいのが難点なのだ。

 サクッと、フォークを刺しただけで音が聞こえる。

 裕司ゆうじもフォークで持ち上げると、トングを使って揚げた時もわかっていたが、それなりに重い。

 怜がかぶりついてから、裕司も口にしてみる。


(……うんうん、まずまず)


 少し冷めているが、やはり出来立てなので中のケチャップライスが熱い。

 中央には、クリームチーズも入れてあるので……ケーキとかよりもさらに柔らかくなったそれが、ケチャップライスに少し浸透するように溶けて……濃いめのケチャップライスをまろやかにしてくれる。

 ガッツリと揚げ物にしたので、さすがに何個も食べられないが……気づいたら、怜が三つも平らげていた。

 ひとつ下だけとは言え、やはり食べ盛りの若い子の胃袋だと再認識した。


「これ癖になるー! おいひいよー!!」

「クリームチーズもいいけど、とろけるチーズでも今度やってみるか?」

「わーい!! 絶対美味しそう!!」


 揚げ物の最後は春巻き。

 中身を伝えていないので、怜の反応がどのようになるか気になるが……。怜がシャンパンを少し飲んでから、パリッと音を立てて春巻きを口にしてくれた。

 その時の顔が、驚いた感じと不思議そうな表情が混じったもので可愛らしく見えた。


「中身は、アボカドを味噌マヨで和えたものぜよ?」

「おお!」


 チーズでもよかったが、ライスコロッケにクリームチーズを入れたので、少しやめておいたのだ。今日は揚げ物メインの食事だから……同じこってりめでも和風仕立てにしたわけである。

 怜も気に入ったのか、もぐもぐと美味しそうに口に入れていった。

 ひと通り、ふたりで食べたが……流石に量も量だったため、少し余った。それらは、夕飯に回すことにして……裕司は冷蔵庫から今度はケーキを取り出した。

 ホテルの料理長らにバイトでも従業員特権と言うことで、特別に作ってもらったホールケーキを。


「ハッピーバースデー、怜やん」

「すっごい、凄い!!」


 見た目は普通のショートケーキだったが……内側に缶詰めではなく、フルーツのコンポートがたっぷりと使われていて。これも揚げ物をたっぷり食べたふたりには、ワンカットくらいしか食べられなかった。

 しかし、食後のコーヒーにはとても合ったため、いい味変になった。


「あ~……食べた食べた」

「私もさすがにお腹いっぱい!」


 贅沢を尽くしたわけではないが、付き合って最初の誕生日祝いを喜んでもらえて良かった。

 次は裕司の番だが、どのように祝ってくれるのか少し楽しみだ。イベントや食べることが大好きな怜のことだから……裕司が喜ぶチョイスをしてくれるかもしれない。

 とりあえず……どこかへ出かけるよりも、ゆっくりしたいと怜が言ったので、料理とは別に用意したプレゼントには……これまた盛大に喜んでもらえたのだった。
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