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第十七章 眞島の場合⑨

第2話 打ち合わせ

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 たっぷりまかないを食べたれいは、その日もバイトに励み……勤務が終わったのは、夜の十時過ぎ。

 ビジネスホテルだからこそ、通常のホテルよりもいくらか安いプランで部屋を借りれるので……新年もだが、一時期を除けば宴会の仕事は多いのだ。

 少ないのは、盆や夏休み。帰省とかがあったり、数日でも会社が休みをつくるので宴会の件数も自然と減ってしまう。年末年始は逆に、忘年会と新年会でてんやわんやだ。三ヶ日を明けると、怜達のバイト先も新年会があちこちの部屋で開催されるのでなかなかに忙しかった。

 明日もバイトはあるが、もう帰るだけだとロッカールームのフロアに行くと。


「お疲れ様」


 まかない処の入り口前で、裕司ゆうじが飴を舐めながらスマホをいじっていた。裕司のバイトはとっくに終わっているのに。

 怜の部屋にも行かずに待っててくれていたようだ。


「お疲れ~? 待っててくれたの??」

「新年早々。怜やんがキャッチとか不審者に会わないとも言い切れんからね? あと打ち合わせもしたかった」

「おお、ありがとう!……打ち合わせ?」

「親同士の挨拶」

「おっとぉ!」


 まかないを食べている時は忘れてはいなかったが、仕事中は仕事に集中していたため……すっかり忘れていたのだった。

 すぐに着替えると、怜は向かいの女子更衣室の中に入り。まとめていた髪もだが、制服なども綺麗にロッカーに入れてから着替え……五分くらいで、更衣室を出たのだった。


「ほいほい、行くぜよ」

「帰ろ、帰ろー!」


 社内公認ではあるが、警備室の前を腕組みした状態で通るのは少し恥ずかしいが……台帳記入よりも入館証を見せなくてはいけないため、それぞれバラバラに歩いた。裏口を出てから、裕司の腕に抱きつき……帰宅への地下鉄までゆっくりと歩いていく。


「うちの親はいつでも良いって言ってたけど、怜やんとこは?」

「おんなじー。ねえ、両家挨拶とかって。家族全員参加??」

「家によるんじゃない? うちは兄貴とちっこい妹いるけど」

「うちはうるさい弟ふたりー」

「うーん。無理に呼ぶ必要はないけど」

「弟達は、写真じゃないこもやんに会ってみたいって言ってた」

「うちの方も。妹は綺麗なお姉さんだって、ずっと言ってた」

「おおぅ! 嬉しいねー?」


 歳の離れた妹がいるのは聞いていたが、まさかそこまで称賛されるとは思わなかった。


「ん~……時期をもうちょい遅くしてもいいならだけど」

「うん?」

「ホテル、使わせてもらわん?」

「…………キャプテンらが、変にはしゃぎそう」

「…………やめとくか。俺も源さんにいじられる」

「それは……まだ先の方がいいかもだね?」

「ですなあ?」


 大晦日の通話でも少しだけ話題にしたが。

 お互いがお互いを認め合っているし、尊重している。

 怜もだが、裕司もそれくらい将来のことを考えているのだから。
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