スキル『洗濯』の能無し悪役令嬢は、冷酷王太子殿下と虹染めに夢中〜無自覚溺愛に振り回されつつも、隣国は楽園です!〜

櫛田こころ

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第38話 なんてことのない?

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 びっくりしましたわ……。物語の挿絵にでもなりそうな光景が目の前で起きましたもの。リデル様は驚かれたのでしょうか?とちらっと見ましたが、なぜか難しい顔をされていらっしゃいました??


「……リデル様?」
「……血族は王族と縁戚がある者でも。『心臓の内側』か。厄介だな」
「え?」


 独り言を聞いてしまいましたが、もしかしたらわたくしが浄化の方法を間違えてしまったのでしょうか? お姉様はその間も何度か咳き込み、また膿のような黒いものを吐き出されてましたが……お兄様の口移しは一回切りで、あとは杯からゆっくりとお水を飲まれていました。


「久しぶりに吐いたが。大丈夫か、リル?」
「……申し訳ございません。姫様の前で、無様な姿を」
「いいえ、いいえ! わたくし、とんでもないことを」
「いや、レティ。それは違う。王族以外の血族の人間は……症状に個人差はあるんだが、たまに吐くんだ。穢れというのはこういうことなんだよ」
「……そうですの?」


 お姉様を見ても、お姉様は頷かれるだけ。お兄様に渡していただいたハンカチで口元を押さえていらっしゃいましたが、もう黒いものには染まっていませんでした。


「……お見苦しいところを」
「いや、済まない。今まで以上だから、俺もディーも対処の必要があるのを忘れていた」
「いつもは、ほこりを吐く程度だったもんな?」
「……はい」
「あの! お姉様、もう苦しくありませんか!? 大丈夫でしょうか!!?」


 わたくしのスキルのせいとはいえ、あんなにも苦しそうに穢れを吐いてしまわれたんですもの。リデル様たちのように、見える場所でないのが『服の下』かと思っていたのですが……これから、気を付けるためにもそこはよく知りたいのです!!

 お姉様は息を整えられてから、ふっ……と、胸のあたりを撫でられていましたが。おやっという表情にもなられましたの。


「……時折、痛むくらいはありましたが。すっきりとした感じですわ」
「リル。水はもういいか?」
「あ、はい。……本当に、すっきりし過ぎて驚きました」
「……よう、ございました」


 わたくし、調子に乗り過ぎていましたわ。お役に立ちたいからと一生懸命のつもりでいて、相手のことを何も考えていませんでしたもの。


「いや、姫さんが悪いわけじゃねぇ。俺もリルも、予想してなかっただけだ。気になさんな」
「……いいんですの?」

 ちょっと荒っぽい手つきですが、お兄様はわたくしの頭を撫でてくださいました。この方も、内側に穢れを抱えていらっしゃるとしたら……今度は対策が出来ますから、お姉様が口移しを?? それはなぜか見てみたくなりましたわ!! そうではなく、きちんとした言祝ぎを考えませんと。

 手と顔以外の部分は、痛みを強く感じてしまうのであれば……お兄様は主に目ですから。

 リデル様もそれに気づいてくださったのか、なぜか……お兄様を椅子に座らせて、どこからか取り出した縄でぐるぐる巻きに??


「おい。対策にしては雑じゃね!?」
「仕方ない。リルは今疲弊しているし、体格差のある俺ではこれくらいが限度だ」
「あ~、まあ? 水はリルの方がいいしな?」
「誰が野郎に人工呼吸以外で触れなければならん?」
「こっわ?! 姫さんの方に振り向くなよ!!?」
「当然だ。レティ、俺のことは気にしなくていいから始めてくれないか?」
「あ、はい。布はどうしましょう?」
「俺が持っているから、今度は『移す』を強く意識してもらえないか?」
「わかりましたわ」


 外側もだけど、内側にも穢れがしみ込んでいるとしたら……もう少し長く、ゆっくり紡いだ方がいいでしょう。学の少ない、わたくしの言の葉でもうまく組み合さなければ。お兄様に痛い思いをしていただきたくありませんが……リデル様が、もしお兄様に、のは見たくありませんもの!!


『貴方様の御身。その汚れた身体のすべてを、この虹の彼方へと……永久に洗い流そう。ゆるやかに、さらさらに』


 さて、少しアレンジしただけの言祝ぎでしたが。お兄様が絶叫を上げられたと同時に、わたくしは少し回復したお姉様に後ろを見るなと抱っこされまして。

 リデル様が『うっわ……』とかと、見たくないものを見ているしかないような反応の声を耳にしましたわ。 
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