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第40話 それは何の声?(???視点)
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ああ、苦しい……。
流れに流れて。
ただただ、苦しい……。
どこどこ? どこどこ?
我らは……なに?
お前は、誰?
何が我らを縛っていた?
我らは何であったかわからない。
ただの『何』だったのか
その最上の『穢れ』だったのか
わからない……わからない
この身に受けたそれは、あまりにも多く……多過ぎて、あふれて
我が身すら……もう、『形が無い』
「……だからこそだ。君らを冥府へ送る歌を、僕が施した」
そなたは神か?
「イリスを継ぐ意味では、僕も神かもしれない」
ではなぜ、我らは『無い』?
「形が残らないくらいに、混ざってしまったんだね……でも、ひとつは意識を浮上できたようだ。あの子を態と逃がした『元婚約者』くん?」
言われて思い出した。俺は……そうだ。
レイシア嬢をあの国から『逃がした』本人だ。あんな偶像劇のような小芝居を仕立てて。
俺の意識がひとつになったのか、神とやらの男の前に魂が集い……透けてはいたが、形を成すことが出来た。
「……最後の最後。レティが逃げるように仕向けてくれてありがとう。でなければ、この国の崩壊にあの子を巻き込んでしまった」
『……けど、俺たちはただの屍人だった』
「それくらい。あの子も『形が無い』人間だったんだ。今でこそ、イリス国に匿われて『ある』ことになっている。まだ誰も気づいていないだろうね」
『……無事、ならよかった』
「何百年も前に、君が大事にしたかった公爵家の末姫。でも、その頃には……もう礎は穢れに犯されていた」
『……そう、でした』
今の形が整っている間なら、思い出せた。本来なら、俺の妻になるはずの女性が……少し前に俺が他所の女と浮気したことで『婚約破棄』したのだ。それは本意ではなかったのに、それをしなくてはいけない理由は当然あった。
『俺たちはすべて屍人』だったからだ。
唯一、この神に見出された少女としてスキルの中に封じていたのが『レイシア嬢』だけだったが。俺は手にすることが出来なかった。もう死んでいる状態が百年以上は続いていたため。甦りも不可能だし、そもそもの夫となる相手は俺じゃなかった。
最後の最後、冥府へと旅立つ前に神に呼び出されたのであれば……彼女へ『遺言』を伝えてくれるのだろうか。それくらいの譲歩は、この神でもしてくれるかもしれない。あふれる『何か』があっても、とろみがあって汚いものとしか思っても止めずに流しておいた。
「君たち『魂の核』はすべて冥府に送り届けるのは……クロノソティスの名をかけて確実に届けてやろう。彼女……レイシアに何か伝えたいことは?」
『……幸せを、知ってほしい。と』
ほかに何を言えばいいんだ。あの少女は幸せをあえて『避けながら』……俺とともに、眠っていたんだ。数日前に、イリスの王太子がスキルの開花を見つけたことで、ギリギリ間に合ったと思う。おかげで、これまでの小芝居を止めることが出来て、レイシア嬢を『国外』へ追放することもうまくいった。
だから、大きな穢れによる『封印』が成されたあと……肉体ごと蕩けて、魂も混在してしまったんだ。この神が早々に来てくださったことで、レイシア嬢の今後も保障された。であれば、自分勝手な欲望など、あの子に伝える意味がない。
ただただ、これまで『偽り』だった生活を塗り替えるくらいに……あの王太子らのところで幸せになってほしいんだ。俺なんかのような、偽物の横よりも。
「……時が来たら、確実に伝えてあげよう」
クロノソティス神が口から言祝ぎのような歌を紡ぎ始めれば、俺の意識は蕩けてしまいそうになった。冥府に旅立つのだと理解したときには、もう抗うことなくゆだねておくことにした。
流れに流れて。
ただただ、苦しい……。
どこどこ? どこどこ?
我らは……なに?
お前は、誰?
何が我らを縛っていた?
我らは何であったかわからない。
ただの『何』だったのか
その最上の『穢れ』だったのか
わからない……わからない
この身に受けたそれは、あまりにも多く……多過ぎて、あふれて
我が身すら……もう、『形が無い』
「……だからこそだ。君らを冥府へ送る歌を、僕が施した」
そなたは神か?
「イリスを継ぐ意味では、僕も神かもしれない」
ではなぜ、我らは『無い』?
「形が残らないくらいに、混ざってしまったんだね……でも、ひとつは意識を浮上できたようだ。あの子を態と逃がした『元婚約者』くん?」
言われて思い出した。俺は……そうだ。
レイシア嬢をあの国から『逃がした』本人だ。あんな偶像劇のような小芝居を仕立てて。
俺の意識がひとつになったのか、神とやらの男の前に魂が集い……透けてはいたが、形を成すことが出来た。
「……最後の最後。レティが逃げるように仕向けてくれてありがとう。でなければ、この国の崩壊にあの子を巻き込んでしまった」
『……けど、俺たちはただの屍人だった』
「それくらい。あの子も『形が無い』人間だったんだ。今でこそ、イリス国に匿われて『ある』ことになっている。まだ誰も気づいていないだろうね」
『……無事、ならよかった』
「何百年も前に、君が大事にしたかった公爵家の末姫。でも、その頃には……もう礎は穢れに犯されていた」
『……そう、でした』
今の形が整っている間なら、思い出せた。本来なら、俺の妻になるはずの女性が……少し前に俺が他所の女と浮気したことで『婚約破棄』したのだ。それは本意ではなかったのに、それをしなくてはいけない理由は当然あった。
『俺たちはすべて屍人』だったからだ。
唯一、この神に見出された少女としてスキルの中に封じていたのが『レイシア嬢』だけだったが。俺は手にすることが出来なかった。もう死んでいる状態が百年以上は続いていたため。甦りも不可能だし、そもそもの夫となる相手は俺じゃなかった。
最後の最後、冥府へと旅立つ前に神に呼び出されたのであれば……彼女へ『遺言』を伝えてくれるのだろうか。それくらいの譲歩は、この神でもしてくれるかもしれない。あふれる『何か』があっても、とろみがあって汚いものとしか思っても止めずに流しておいた。
「君たち『魂の核』はすべて冥府に送り届けるのは……クロノソティスの名をかけて確実に届けてやろう。彼女……レイシアに何か伝えたいことは?」
『……幸せを、知ってほしい。と』
ほかに何を言えばいいんだ。あの少女は幸せをあえて『避けながら』……俺とともに、眠っていたんだ。数日前に、イリスの王太子がスキルの開花を見つけたことで、ギリギリ間に合ったと思う。おかげで、これまでの小芝居を止めることが出来て、レイシア嬢を『国外』へ追放することもうまくいった。
だから、大きな穢れによる『封印』が成されたあと……肉体ごと蕩けて、魂も混在してしまったんだ。この神が早々に来てくださったことで、レイシア嬢の今後も保障された。であれば、自分勝手な欲望など、あの子に伝える意味がない。
ただただ、これまで『偽り』だった生活を塗り替えるくらいに……あの王太子らのところで幸せになってほしいんだ。俺なんかのような、偽物の横よりも。
「……時が来たら、確実に伝えてあげよう」
クロノソティス神が口から言祝ぎのような歌を紡ぎ始めれば、俺の意識は蕩けてしまいそうになった。冥府に旅立つのだと理解したときには、もう抗うことなくゆだねておくことにした。
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